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第97話  旅仕度

「う~……気持ちわりぃ~……」


 昨夜は少々飲みすぎたようだ。


 オレの昇格祝いと銘打った冒険者達との盛大な飲み会から一夜明け、オレは二日酔いに苦しんでいた。

 仮にもオレの昇格祝いだ。皆からお酌をされてたら、ついつい飲み過ぎてしまったようだ。


「大丈夫ですか?ちょっと待ってくださいね……キュア!」


 ミルファの解毒魔法キュアにより、オレの体内が浄化されていくのが分かる。


「ぷはぁ。あ!楽になった。サンキュな。」


 オレのそんなお礼にミルファは笑顔で答える。いい娘だわー。

 オレもキュアを使えればいいのだが、残念ながら使えない。

 多分条件は治療スキルを獲得する事だと思うのだが、ミルファがいるからどうも甘えてしまうんだよな。


 まだ誰も起きていないようだ。

 思うに三人とも飲み過ぎが原因だろう。

 まあ、いざとなればマリーがいるので心配はない。

 今はミルファと二人朝食を食べ、少しのんびり過ごしている。


 今日はルナとケントの二人も連れて、色々買い物をする予定である。

 今後の旅に於いて必要そうな物や、防具を新調するのが目的だ。

 ケントはまだオレ達の旅に付いてくるとは言ってないが、防具は新調したいと言うことで今日は同行する事になった。

 待ち合わせ時間などは決めておらず、まずはルナが此処に来る手筈になっている。


「おはよーでーす。」


 のんびりしてたらそのルナが来たようだ。

 ルナの服装は昨日と一緒だ。そう言えばこれ一着しかないと言ってた気がする。

 とりあえず昨夜の居酒屋の匂いだけでも消しておいてあげるか。

 ルナに向かってウォッシュの魔法を掛け、服が一気に綺麗になっていく。


「わわ!凄い綺麗なのです。ありがとです。」


 そんなルナを見て、自分がまだ着替えていない事に気付く。


「ちょっ、そう言えばオレがまだ着替えてもいないわ。」


 大慌てで着替え、準備万端だ。

 勿論ミルファはオレが寛いでいる間に、しっかりと準備を終えていた。


 これからケントの家へ向かうのだが、オレ達は一つ賭けを始めていた。

 賭けの内容は、ケントの家にメイがいるかどうか。


「オレは『いる』に賭けるな。」「『いる』ですね。」「『いる』です。」


 はい。全く賭けにならなかった。


 ケントの部屋のノッカーを叩く。


「はい。どちらさ……あ、ミルファちゃん!おはよう。」


 ほらいた。皆が揃ってハイタッチをする。

 メイは状況についていけずに首を傾げている。


「メイさん、今日は孤児院ですか?」


「今日はお休みなの。この部屋の掃除でもしてあげようかと思って。」


 尽くすタイプなのか?ここまでしてくれるのだ。それはオレ達とは行けないと言うのも分かるな。


「ケントの今日の予定聞いてますか?私達と買い物に行くってなってるんですけど、メイさんも一緒にどうですか?」


「え?えーと……」


 ミルファの突然の問いにメイは驚き、困惑している。

 これはオレ達が来る時に話していた事だ。

 メイが居る方に全員が賭け、賭けにならないって話の後、居るならそのまま誘えばいいんじゃないかと言う話に発展していた。


 戸惑うメイに奥からケントが問いかける。


「メイさん、こいつら人はいいから。それにこれだけの人数が居たら、誰かに見つかっても大丈夫だろ?」


 メイが気にしてるのはシスターという立場での恋愛への罪悪感と、併設する孤児院の子供に手を出した事への背徳感があるのだろう。

 見つかれば即解雇は間違いない。更には教会への出入り禁止措置もありえるとか。


 二人での行動は危険かもしれないが、皆でいれば問題ないと思ってこの提案を出してみたのだ。

 ケントはそんなオレ達の考えを察してくれたようで、メイを諭すように話しかけている。


「それはいいんだけど……邪魔じゃない?」


「「「「全然 (です)!」」」」


「ふふっ、じゃあご一緒させていただこうかな。」


 ◇


 ケントとメイを連れ外に出たのだが、こいつら普通に手繋ぎデートをしてるようだ。うーん、何故だろう。不快だ……

 両手に花のお前が言うなと言われるので黙ってるけど。

 

 先ずは防具屋だ。スタンピードの事もあり、皆の防具はボロボロなのだ。

 

 ケントは戦士である事から、それなりの重装備がいいようだ。

 オレも近接戦闘はするが、あの装備は無理だな。まともに動く事も出来ないだろう。


 ルナは以前と同様のドレスアーマーを探している。

 短い尻尾は隠したいようで、余裕のあるスカートがいいようだ。

 それを踏まえて、棍を扱う際の可動域などを考慮した結果、ドレスアーマーが最適だとソニアが決めたらしい。

 そりゃあその装備に拘るのも納得だ。


 ミルファは従来のパンツに胸当てのスタイルから、女性らしさを出した装備にするようだ。

 ただ、一般的な神官の装備であるローブは精神値の補助はあるが、動きづらいという欠点もある。

 どんなに同じ素材、同じ手法で作っても、この形でなければ精神上昇効果がないらしい。

 弓を扱うミルファにとってこの装備は選択外のようだ。

 普通のワンピース型ならギリギリ許容範囲らしいのだが、最終的に選んだのは魔糸を使ったドレススタイルだった。

 オレ的にお気に入りポイントはニーハイだな。

 絶妙な色っぽさを演出しているだろう。


 オレは買ってからそこまで経ってないし、今のところ緊急性も必要性もないとの判断から見送っておいた。


 実はこの後が地獄のような時間だった。

 普段着や下着もある程度は用意しておこうという事でそれらを買いに行く事になったのだ。

 ミルファもルナもファッション的な事には気を使わないタイプだったのだが、メイがこだわるタイプだった。

 最初は何でもいいと言っていた二人だったのだが、メイの説明を聞いてるとその様子は激変し、気が付けば可愛いもの選びに没頭していたのだ。

 こうなっては止める術はない。

 オレとケントは二人離れて自分達の服を買いに行く。

 この際に女性の買い物の恐ろしさを二人揃って口にしていた事は内緒にしておこう。


「なあ、こんな事されても俺は行かねぇぞ。分かってるのか?」


「ああ。あの人を置いては行くことが出来ないんだろ。気持ちは分かるからな。

 回復要員として連れていければいいんだろうけど、戦闘経験がないとダンジョンとかは流石に危険だからな。」


「まあ……いや、メイさんは冒険者経験あるんだよ。何年前だったかな?成人して直ぐの時だったはずだな。

 確か一年くらい冒険者やってて、辞めた後に孤児院のシスターとして戻ってきたんだよ。」


「戻って?その前にも孤児院にいたのか。」


「ああ。メイさんも俺達と同じあの孤児院育ちで、更に成人前からシスターとして働いてたからな。本来は一度出て行った者をシスターとして受け入れないんだけど、特別にな。」


「てか、冒険者経験あるなら二人で来いよ。そしたら一人寂しい夜を過ごさなくて済むし。」


 冗談交じりに言ったのだが、ケントの表情は険しい。

 そんなに変な事を言ったつもりはないのだが。


「メイさんは絶対に来ないさ。俺とミルファが冒険者になるのだってスゲー反対されてたんだからな。

 間違っても冒険者に戻ったりしないと思う。」


 冒険者の仲間を魔物に殺されたのか。何かしらの事情があるのだろう。

 これ以上は聞いちゃいけないな。


「そうか。残念だ。」


「悪いな。」


 オレ達は買い物を済ませ、女性達と合流して次の雑貨を買いに向かう。


 雑貨で買う物はとにかく多い。

 調理器具はほぼ全て。野営に必要な物も全て揃えなければいかない。

 今まではロードウインズで元々使っていた物があったので、オレ達は何も気にする必要はなかった。

 だが、これからは自分達でその全てを用意しなくてはいけないのだ。


 魔道具ショップでは大量の魔物避けを買っておく。

 本来この店では生活魔法を封じた魔道具を買っていくのだが、それらは全てオレの魔法で補えるので必要ない。

 前世にあったら便利そうな物は結構あったけどな。


 食材も大量に買い込んでおく。

 まあ、野菜と魚、後は調味料関係ばかりだが。肉は既に多種多様なのが揃ってるので必要ないのだ。

 これで一通り買い終わっただろう。

 後は武器なのだが。


「明日武器を見に行くか。ちょっと会っておきたい人もいるんだ。」


 採掘をした際に世話になったドワーフのバルザムの事だ。

 一度店に行ってみたいと思っていたのだが、なかなか行く機会がなかった。

 この街を発つ前には行っておきたかったのだ。


「武器か……俺もいいか?ブロンズランクとして、武器をもうワンランク強化しておきてぇ。」


「ケントが行くなら私も…と言いたいのですが、明日は孤児院に行かなければならないですからね。

 ケントを宜しくお願いします。」


 メイのそれは確実に保護者の挨拶だ。ケントは弟みたいな扱いされてるんじゃないのだろうか。


 ミルファもルナも武器を買うのには乗り気のようだ。

 二人にはそこそこにでも強い武器を持って欲しいからな。

 

沢山の誤字脱字報告感謝です。

投稿前に見直してはいるのですが、多いですね。

これからもどうぞ宜しくお願いします^^

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