第95話 シルバーランク レイジ誕生
「エイルさん!オレ、無事シルバーランクになれました!」
ギルド長が他のギルド職員と話し合った結果、オレのシルバーランク昇格が確定した。
それが伝えられた瞬間、オレは真っ先にエイルへ報告に向かっていたのだ。
「おう!流石だなー。最後にいいものが観れたわ。」
「はい!えーと、2ヶ月間色々教えて頂き、本当にありがとうございました。」
オレはエイルへの感謝を伝え、深く頭を下げた。
本当に感謝している。レッドウルフに殺されそうになってる所を助けて貰った事から始まり、そのままロードウインズへ誘ってもらえた。
直ぐにミルファが加入し、パーティランクが下がっても嫌な顔一つせずに、飽くまで対等に接してくれていた。
オレはこの世界に来て、最初にこの人に教わる事が出来て本当に良かった。
「ほら、エイル。弟子がこうして頭を下げてるんだ。気の利いた事の一つでも言ってやれ。」
「うるせーな。おっさんは引っ込んでろ!あー、レイジ。俺は何もしちゃいない。全部お前の実力で此処まできたんだ。自信を持て。……じゃあ、今日はレイジのお祝いだな!パーっと行くぞ。」
照れ隠しなのか、エイルはオレの顔を一切見る事なくそれだけを言いながらその場を離れていった。
「アイツなりの激励のつもりなのよ。ああ見えて結構繊細で、レイジくんに殆ど何もしてやれなかったって結構悔いてるの。
それでも此処まで育ってくれた事をアイツは誇りに思ってるんだって。」
「マリーさん。確かに戦闘面では教わった事は少なかったかもしれないけど、それ以外で色々学べたと思ってますよ。
オレはロードウインズに入って良かったです。」
「ふふっ。そう言って貰えたら、師匠としてやって来て良かったと思うわ。じゃあ後でね。」
「レイジ、流石だ。お前には弓をかじる程度にしか教える事が出来なかったが、命中を伸ばすのは弓兵が一番だ。それだけは覚えておいてくれ。」
「ディルさん、オレのジョブには魔弓士があります。相手との距離によっては弓の活用も今後出てくると思うんです。
ディルさんに弓を教わって本当に良かったです。ありがとうございました。」
ディルはオレの肩を軽く叩き、その場を離れていく。
「レイジさん!」
ミルファ、ルナ、ケントまでが駆け寄ってきた。
このメンツで集まるのが当たり前になってるかも。
「先越されちまったなー。でもゴールドランクには俺が先になってやるけどな。」
「負けねーよ。」
ケントとはこんな無駄口ばかりだが、悪いヤツじゃないんだよな。
一緒に来てくれないかな。メイを置いては来ないだろうな。
「レイジくんは最強なのです。やっぱりウチは……ウチはレイジくんが好きなのです。」
「ルナ。一緒に来るんだろ?よろしくな。」
「……はいです!」
これが答えになってるだろうか。
ミルファの手前、変な事も言えないしな。
ミルファが一番。これは揺るぎない事実なのだから。
「レイジさん!かっこよかったです。惚れ直しました。」
「へへっ、だろ!」
なんだろうな。非常にむず痒い気持ちになってしまう。
「じゃあ皆でギルドカードの更新でもしに、ギルドに行くかー!」
ミルファ、ルナ、ケントの三人はブロンズⅠランクに、そしてオレはシルバーⅡランクへ。
其々が昇格すべく、冒険者ギルドへ向かう。
多分これがロードプルフの冒険者ギルドへ行くのは最後になるだろう。
出来ればオーグストンにも挨拶しておきたい。
◇
「いらっしゃいませ。レイジさん、シルバーランク昇格おめでとうございます。
今後はギルドより指名依頼が発生します。拒否回数が一定以上になりますと、降格処分もありえますので、十分注意してください。」
ギルドに到着するなり、ギルド職員から暖かいもてなしを受け、カウンターへ来ていた。
ランクアップの件は既に伝わっており、その説明から始まったのだ。
だが、降格処分とは初めて聞いたな。
今後この街を離れるのだが、その場合はどうなるのだろうか。念の為聞いておくか。
「それは問題ありません。指名依頼はその街にいる冒険者に直接受注してもらうので、いない人には決して振ったりしませんから。」
それを聞いて安心した。
「それではこちらがレイジさんのシルバーランクのギルドカードになります。」
オレのギルドカードが今までの茶色から銀色へと変わっている。
ここからは一流と呼ばれる世界になるらしい。これまで以上に気合入れなくてはな。
ミルファ達もギルドカードの書き換えをしてもらったようだ。
「あと、今言ったようにロードプルフを離れる事になるから、オーグストンさんに挨拶したいんだけど。」
「はい。行って構わないと思いますよ。レイジさんは解体場に通して構わないと言われてるので。」
それでいいのかと思いつつも、受付嬢にお礼を言い解体場へと足を運ぶ。
まだ少し時間が早いが、先日オレが持ってきた魔物素材を捌き終えていないようで、少し忙しそうだ。
「オーグストンさん。ちゃす。」
「おっす。レイジ。まさかまた持ってきたなんて言うなよ。」
疑うようにオレを見てくるオーグストン。
だが、今回はもう魔物素材は出さない事にしたのだ。
いや、まだ素材はあるけどね。一応とっとく事にしたから、問題はない。
「昨日の分の換金だな。また凄い金額だぞ。これだ!」
出されたのは大きめの袋だ。だが、その中身は非常識な金額が入っている。
全てプラチナ貨で1500枚。15億Gが今回の素材売却額だった。
毎度思うのだが、何処に売ったらこれだけの金額になるのだろうか。
聞くと、殆どが船で国外へと運ばれてるとか。
今回も場合によっては20億Gで売れる可能性もあるらしく、ギルドも大儲けだとか。
貰った15億を見て、オレとミルファでさえその額には驚いた。
それ以上に驚愕していたのはルナとケントの二人だ。
オレとミルファは其々4億ずつ、合わせて8億を手に入れた過去があるので、多少だが免疫がある。
だが、この二人にはそれがないのだ。
それは今まで、いや、普通に生きていたら今後も目にする機会すら無かったであろう金額だった。
呆気にとられるとは正にこの事だろう。
ルナもケントも固まって動けないでいた。
「また暫くは勘弁してくれ。儲けは凄いのだが、俺達の身体がもたん。」
「あー、その事でオーグストンさんに話があるんですよ。」
オレはオーグストンにロードウインズを脱退した事や、今後旅に出る事を伝えた。
毎回とんでもない量の魔物素材を持ち込んでたからな。迷惑を掛けたと思う。
これからは落ち着いた日々に戻るだろう。
「そうか。解体場としても寂しくなるな。この一ヶ月程は地獄のような忙しさだったけどな。それもお前さんが居てこそだったんだよな。
元気でやれよ。んで、また帰って来い。待ってるぞ。」
「はい。お世話になりました。オーグストンさんも体に気をつけて。」
最後はお互い笑顔で、握手をして別れた。
「さーて、昇格祝いがあったな。ルナとケントも来るだろ?」
「いいのです?」
「勿論いいだろ。皆昇格した事には変わりないんだし。」
「だったらブラッドローズの皆も呼びたいのです。」
「おう。呼んじゃえ。エイルさんは喜ぶぞ。」
「俺は遠慮するわ。」
ケントが来ないという。
なんとなく理由は想像出来た。マッドネスサイスとしてもまだ傷が癒えるような時期ではない。
パーティのメンバー達もまだまだ騒いだりする雰囲気ではないはずだ。
「パーティの皆も、まだそんな気分にはなれないだろうしな。」
ケントは物憂げな表情を浮かべ、参加しない旨を伝えてきた。
「なら、俺達が参加すればいいのか?」
ギルドの奥から歩いてきた人物がオレ達の会話に入ってきた。
その人物は、マッドネスサイスの新リーダーとなったダニエルだ。
その後ろからはマッドネスサイスの面々が勢ぞろいしている。
「ケント、お前いきなりブロンズⅠランクに昇格したって?」
「は、はい。今回のスタンピードの成果でそうなりました。」
「だったら昇格祝いしてやらないとな。ブロンズ試験に合格した時も何もしてやれなかったんだ。
そこの……レイジだったな?ディルさんに伝えてくれ。マッドネスサイスも参加するってな。」
ケントはそんな先輩達の気遣いに感無量になってしまっている。
嬉しい気持ちは分かるが、人目は気にした方がいいと思うぞ。
まあ、俺も涙腺は緩いから人の事言えないんだけどな。
マッドネスサイスのメンバーにいつもの酒場に集まるよう伝え、一旦解散した。
オレとミルファはエイル達ロードウインズのメンバーを呼びに行く。
多分今夜が、ロードウインズとして外に出るのは最後になるのかもしれない。




