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第93話  シルバーランクを賭け模擬戦へ

 シルバーランクへの昇格を掛けた模擬戦当日。

 この日も普段通り、通常運転で朝の支度を済ませていた。


「レイジは今日のような日も普段と変わらないよな。レッドウルフに殺されかけてた頃が懐かしいよな。」


「エイルさん、オレだって日々成長してるんですよ。まあ、今回に至っては全く負けるイメージが湧かないってのもありますけど。」


「そういう時こそ足元をしっかり固めろよ。油断なんてのは負けた時の言い訳になんてならないんだ。」


「はい。大丈夫です。決して油断なんてしてないですよ。寧ろ全力でいきます。

 特にラッセルとかいうヤツにはね。」


 ラッセル。今日の相手で先日ミルファをナンパしていたヤローだ。

 スタンピードでは助けてやったのに、礼どころか悪態をついてきたクソヤローだ。

 多分相手もオレには腹を立てているだろう。だからこそ、遠慮なく全力でやって実力の違いを見せてやる事にした。


「ラッセル?アイツが相手なのか?そりゃお前、全力でやったら可哀想だろ。

 ラッセルには悪いけど、アイツシルバーランクの実力ねぇもんな。」


 思ったとおりだ。エイルから見てもラッセルはシルバーランクの器じゃないようだ。

 ならば余計に格の違いを見せつけて圧勝するだけだ。


「それじゃあ、行ってきます。」


「おう、俺達も見に行くからな。頑張って来い。」


「レイジさん、今日は私は一緒にはいれませんが、絶対勝ってください。応援してます。」


 ミルファも今日は別々に出ることにしたらしい。オレの集中を乱したくないとの事だが、オレは全く気にしてない。

 だが、そんな気持ちを無下にする訳にもいかないので、そんなミルファの気持ちを尊重する事にしたのだ。


 ◇


 今日の模擬戦を行うのは、ギルドではなく領主軍騎士練兵所だ。

 此処にはリライブフィールドという、例え死んでしまってもそれをなかった事にする特殊な魔法が掛かっている。

 その為、オレの魔法剣炎のような一撃必殺のような技でも遠慮なく使用する事が出来るという訳だ。


「おいーす、レイジ!今日はお手柔らかに頼むぞ。」


「あ、ちゃす、ブリュードルさん。」


 道すがら出会ったのは、今日のもう一人の対戦相手であるブリュードルだ。

 ブロンズランク試験の試験官をしていた人物で、軽い口調ながら思いやりがある為、下の冒険者からは結構頼られている男である。

 オレとしても、結構好きなタイプの人物なので、今日の対戦ではどうしようか悩むところだ。

 いや、勿論オレが勝つのには変わりはない。だが、やはり抵抗はある。

 全力で戦うのが礼儀だというが、オレにはその気持ちも分からないのだから。


「お手柔らかにと言っても見え見えの手抜きはするなよ。そっちの方がショックはデカいからな。

 俺が死なない程度に全力でやって、お前の実力を見せてやれよ。かませ犬上等だからよ。」


 オレの悩みを見抜いたかのような事を言ってきた。

 この人はこういう男気も持っているから好かれるのだろう。

 オレもこうなりたいものだ。


 そんな話をしてる間に騎士練兵所に着いていた。

 入口にはギルドから派遣されてきた受付が立っている。

 今回の模擬戦は見世物ではなく、あくもで昇格試験を兼ねた模擬戦である為、入場制限がかけられるようだ。

 エイルやミルファは入れるのだろうか?


「シルバーランクのブリュードルだ。」

「ブロンズランクのレイジです。」


「はい。今回対戦する二人が仲良く来るなんてね。共謀してると思われないようにね。」


 そう見られる事もあるのか。気を付けないとな。

 ブリュードルを見てみたが、苦笑していた。

 特に気にしてもいないようだ。問題ないだろう。


「来たな。だが、二人仲良く来るのは関心しないな。まあいい。其々に控え室を用意した。

 時間まではそこで準備や支度をしていてくれ。」


 ギルド長は早くから準備をしていたらしい。

 聞くと、ラッセルはまだ来ていないようだ。

 まあ別に来てようが来てなかろうがどうでもいいのだが。


「おい!確か今回の模擬戦をやるのはお前だったな。」


 突然後ろから声を掛けられ振り返ると、そこにいたのはシルバーランクのベロニカだ。

 女性でありながらシルバーランク最強と名高い聖騎士(パラディン)。その人がそこに立っていた。


「えーと、ベロニカさんでしたよね。スタンピードの時はどうも。」


「ああ、あの時は世話になった。それよりも聞きたい事があるのだが、いいだろうか?」


 勿論断る理由などない。


「何故今回の模擬戦に私は選ばれずに、あの二人なのだろうか?

 自惚れる訳ではないが、私は自らシルバーランクの中で最強だと自負している。

 それなのに選ばれなかったのには訳があると思ってな。それを聞きに来た次第だ。」


 ベロニカはその強さ故に選ばれなかったとは聞かされていないようだ。

 まあ、ラッセルのような奴が選ばれて、自分が選ばれなかったら疑問に思うよな。


「だからですよ。ベロニカさんは強すぎると判断して最初から除外されてました。

 今回はオレがシルバーランクの実力があるのかを確かめる為にやるんですよ。

 ベロニカさんだったら強すぎてその基準は測れないんです。」


「……そういう事だったか。申し訳ない。どうも私は其の辺の思慮が浅いようでな。

 聞く前に先走ってしまう事が多いのだ。治そうとは思っているのだが、どうもな……」


「いえいえ、それと、オレはどうも女性との対戦は苦手でして。

 ゴールドのソニアさんとか目のやり場に困るじゃないですか。」


「何?……あーはっはっはっはっ。そうか。見た目に似合わず純情なのだな。

 お前みたいな男は嫌いじゃないぞ。くっくっわかった、今日は応援してるぞ、頑張れ。」


 思わぬ人物から激励を受け、控え室へと入っていく。

 開始まで一時間程。しっかりと集中してその時を待つ。



「レイジ殿、時間になりました。会場へお越し下さい。」


 いよいよその時が来た。

 これが終わればオレもシルバーランクだ。


 戦闘フィールドの広さは10メートル四方程で、その中はリライブフィールドで囲まれている。

 この中への入退場は許可が必要で吹き飛ばされても場外へ出る事はない。


 いつの間にかリライブフィールドの周囲には冒険者を中心に様々な人が見物に来ていた。

 エイル、ミルファ、マリーにディルは勿論、ソニアやルナのブラッドローズの面々。

 ケントやダニエルのマッドネスサイスも来ている。

 他にもブロンズランクを中心に冒険者50人程がこのリライブフィールドを囲っていた。

 入場制限が掛かっていてこれだけ来るのはどうかと思うが、言っても仕方ないだろう。

 正面に位置する場所にはギルド職員の面々がいる。この人らが今回オレがシルバーランクに相応しいか判断する事になるのだと思う。


 逆サイドからはブリュードルとラッセルが入ってきた。

 オレ達はリライブフィールドの中で対峙する。


「ふっふっふっ。よく怖じけずに来たね。それだけで賞賛に値するよ。でも、それに見合うだけの実力が無ければ意味ないけどね。」


 はあっ……。この馬鹿(ラッセル)の頭は沸いてるのだろうか。コイツのおめでたさが賞賛に値するのかもな。

 まともに相手したらストレス死してしまいそうだ。無視を決め込む。


「はっはっはっ。ここに来てビビって声も出せないようだね。しかし残念ながら、お前は俺を怒らせてしまったんだ。その分の報いは受けてもらうよ。」


 そう言い小剣(レイピア)を構える。


「ラッセル。お前って奴は……まあいいや。やれば分かるか。」


 ブリュードルも槍斧(ハルバード)を構えその時を待つ。

 二人のその動きを確認し、オレも鋁爪剣を手に開始を待った。


「では始め!」


 ギルド長の掛け声と共にラッセルが突っ込んできた。大方予想通りの動きだ。

 オレは開始と同時に魔法剣炎を使っている。


「さあ、君にこれを耐えられるかな。三角(トライアングル)突き(ショット)!」


 ラッセルは頭と両胸への高速三点突きを繰り出す。

 が、オレは左前方へ身を躱しながらカウンターの胴払いを繰り出していた。


 ラッセルの身体は真っ二つになりながらそこに落ちていく。

 周囲で観ている者はただ呆然と眺めているだけだった。


 ラッセルの身体はスッと消えていき、リライブフィールドの端に生きた姿で座り込んでいた。


「へっ?なんだ、どうなってる?」


「ラッセル死亡につき戦闘不能!場外へ。」


 ギルド長がラッセルの敗北を宣言する。


「ギ、ギルド長!俺はまだ負けたわけではない。もう一度やらせてもらえないか?」


 ラッセルはギルド長にしつこくせがんでいる。

 だが、その時会場は一気に歓声に包まれた。

 ラッセルと同じように真っ二つにされ消えていくブリュードル。

 そして、次の瞬間にはリライブフィールドの端に座り込んでいた。


「ふっ、ブリュードル死亡。勝者、レイジ!」

つい先日ブクマ250件と言ってたはずが、300人になってました。

読者が増える毎に投稿前の確認作業が念入りになっていきます。

これからも宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] おお、スゴい∑(゜Д゜)おめでとうございます。話もまだまだ序盤だし続けるコトが出来れば、人気作品に追いつくことも可能では!?
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