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第90話  ギルドで過ごす一日

 一夜明け、模擬戦まであと二日。

 昨夜のエイルの話を聞く限りでは、ルールについては何も言及していないようだった。

 今日はギルドにでも行ってその話を聞きつつ、今後の事も考えこの国の事でも調べてみよう。

 ミルファはどうするのだろうか。昨日から生理だとしたら今日は大人しく家にいるのかもしれないな。

 一応聞いてみるとしよう。


「ミルファ。今日はとりあえずギルドに行こうと思ってるんだけど、ミルファはどうする?

 お腹が痛いとかあるなら家にいた方がいいだろうし。」


「私も行きます。避妊魔法も掛けて貰いたいので。」


 そう言えば、前回も避妊魔法とか言ってた気がするな。

 それがあるから普段から何回でもセック……ゴホン。なんでもない。


「じゃあ適当に行くか。準備できたら教えてな。」


 その間にアイテムボックスの中身の整理でもしてみようと思う。

 実は今までアイテムボックスの中は弄った事がなかった。

 リストを表示したら入手順になっているので、取り出すのは分かりやすかったのだ。

 しかし、流石に溜まりすぎてるので、ここらで一度整理しておかないと、いざという時に困るかも知れない。

 とは言っても、見るとリストの上に『整頓』と書いてある。

 これを選んだら一瞬にしてアイテムが種類別に並び替えられたのだ。

 うん。やっぱRPGではこれがないと面倒だよな。


 そしてリストを見ていくと、盗賊の死体とかいらない物もそれなりに入っていた。

 これってアイテムボックス内で処理出来ないのだろうか。

 いや、あった。しっかりとゴミ箱のマークが。

 盗賊の死体を選びゴミ箱へ。消えた。

 これは便利だ。だが、間違って必要な物を捨てないように気をつけなければ。


「レイジさん。準備出来ました。何時でもいいですよ。」


 ミルファの準備も整ったし、ギルドへ向かうとしよう。


 ギルドまでのこの道を歩くのもあと数回かと思うと少し寂しい気持ちになる。

 そういえば、この街を出る前に最後に食楽亭で食事をしたいな。一度行くようにしよう。


 ギルドは今日からは早くも通常営業だ。

 スタンピードでの収入が少なめだったコモンランク以下の冒険者は、今日から既に動き出してるみたいだ。

 ブロンズランク以上は、オークが収益になったのでかなり余裕が出来ただろう。

 50人程で200匹を超えるオークを分けると一人当たり100万G以上になるのだ。暫く遊んで暮らせるだろう。

 そう言えば、今日はオレもオークマジシャンの分を含めた今回のスタンピードの収入があるはずだ。

 後でオーグストンにも顔を出してこよう。


「オレはとりあえずギルド長に模擬戦の事で話をしてくるけど、ミルファは?」


「私は避妊魔法を受けてきます。終わったらこの辺りにでもいますから。」


 そう言ってオレ達は一旦別れた。

 

 受付嬢に話すとあっさり通してくれた。

 名前も覚えてもらえたようだし、やっと冒険者らしくなってきてるのかもしれないな。


 ギルド長の部屋をノックし、返事を待って入っていく。


「レイジ?どうしたんだ?模擬戦の事ならエイルに言っておいたのだが。」


「ええ。それでルールってどうなったのかと思って。」


「ああ、その件か。それなら問題ない。騎士練兵所で行うのは聴いてるよな?あそこにはリライブフィールドと言って、死亡無効効果の魔法が掛けられた空間があるんだ。

 今回はそこで行うからな。全力でやってもらって結構だぞ。」


 おお!それは凄いな。如何にも異世界って感じだ。

 それなら全力で戦っても殺してしまわずに済むだろう。


「ありがとうございます。全力でやらせて頂きます。」


「はっはっはっ。レイジは物腰は柔らかいが、それが却って恐ろしく感じるようになってしまったな。」


 褒められてる感じがしないな。気のせいだと思いたい。


「それだけ聞きたかったんです。時間を取らせてしまい申し訳ないです。」


「いや、こちらこそ申し訳ない。ロードウインズの事だが……」


 ロードウインズは残る事になったから何の問題もないのだが、オレ達が街を出ると言ったら面倒な事になりそうなので、余計な事は言わないほうがいいだろう。


「気にしないで下さい。オレ達も色々考えるいい機会ですから。」


「そ、そうか。いや、よければパーティの斡旋を引き受けるが。」


「大丈夫ですよ。では、失礼しました。」


 そう言って笑顔で出て行くオレを、ギルド長は苦笑いを浮かべ眺めていた。

 変な所までエイルに影響されてる事を少し心配になっていたらしいが、それは杞憂であるだろう。



 受付ロビーでミルファを探す。いた。

 だが、変な男に言い寄られているようだ。オレのミルファに……許せん。



「いや、あの時は本当に助かったよ。どうだい?お礼にランチでも?なんなら今夜食楽亭でディナーにしようか。」


「いえ、人を待ってるので結構です。」


「それじゃあ俺の気持ちが収まらないよ。せめてお礼くらいはさせてくれよ。」


「ですから結構で……あ!レイジさん!」


「オレのツレに用ですか?オレが聞きますよ。」


 もしかしたら絶妙なタイミングだったのではないだろうか。

 決して狙って現れた訳ではない。


「なんだ。待ってるのは男だったのか。邪魔したね。何でもないよ。」


 待ち人が男であったと分かるとその男は立ち去ろうとした。

 だが、何かを考え踵を返す。


「ん?レイジだと?お前、ブロンズランクのレイジかい?」


 オレの事を知ってるのか。オレも有名になったもんだ。


「だったらどうした。」


「ふっ、あーはっはっはっ。いや、失礼。そうか、お前がレイジか。

 俺はシルバーランクのラッセル。今度お前の模擬戦に付き合ってやることになった。ありがたく思い給えよ。」


「ラッセル?ああ!オークに殺されかけてた方ですね。思い出しましたわ。

 いやー、生きてて良かったですね。助けてやったオレに感謝してくださいよ。」


 我ながら分かりやすい挑発である。

 だが、この馬鹿(ラッセル)は乗ってきた。


「くっ。二日後を見ていろ。皆の見ている前で、死んだ方がマシだと思えるような目に合わせてやるよ。」


「楽しみにしています。先輩。」


 ラッセルはそんな捨て台詞だけを残して去っていった。


「大丈夫だったか?」


「はい。ありがとうございます。」


「あれが対戦相手ね。はあ……ブリュードルさんとの勝負には変わりないけど、その前にアレで準備運動にするか。」


 実際あのオークに殺されかけてたヤツなど相手になる訳無いと考えている。

 アイツではルナやケントの方が10倍強いだろう。全く問題ない。


「次はオーグストンさんのトコだな。行こうか。」



 この日の解体場は解体作業は無いが、スタンピードの素材の最終処理や品出しで忙しそうにしていた。


「オーグストンさん。ちゃす。」


「おう、レイジか。ああ、お前の取り分だな。こっちに来ると思っていたから此処に用意してあるぞ。

 ほら、これだ。」


 渡された額はプラチナ貨30枚、3000万Gだ。

 まあ、大体こんなもんだろう。てか、金銭感覚おかしくなってるな。


「今忙しいですか?実はまだ素材持ってるんですよ。」


「マジかよ!んー、明日にしてもらっていいか?奥の整理が今日中に片付くからよ。」


「分かりました。宜しくでーす。」


「……なんかお前、俺への対応がぞんざいになってきてないか?別にいいけど……」


 少々ショックを受けている様子のオーグストンを放置して、資料室へと足を向ける。


 資料室は結構久しぶりだ。

 確か冒険者になって直ぐの頃に一度来ただけだったはず。

 その頃は今と違って昼食も食べていた。

 そこで初めてミルファに話しかけられたんだ。


 そんな思い出を振り返りながら、資料室でこの国にある他の街などの事を調べていく。

 国外はまだ必要ないだろう。どうせ世界を回るつもりだ。

 それならば、先ずは国内を色々見てからでも遅くはないだろう。


 この間ミルファは、ブロンズランクとしての権限を使い、この資料室で閲覧出来る魔道書を片っ端から目を通していく。後でオレも見ておこう。

 以前何も知らない頃に見た時と、今とでは見え方が全然違うように感じる。

 以前は漠然と見ていたが、このファスエッジ王国は中央に大きな湖がある。

 その湖の西に大きく広がる大森林。それが所謂『東の森』だ。

 その東の森の更に西に位置しているのが、このロードプルフになる。


 湖の東に位置するライトレイク。東の森の南に位置するヒュバルツ。そして此処、ロードプルフが王都を除く三大都市のようだ。

 王都は湖より遥か南西にある。ロードプルフからはかなり距離があるようだ。

 王都へ行くのはまだ先になるかもしれないな。


「先ずはライトレイクかな……」


 ぼんやりとだが、今後の行き先を定め、帰る前に魔道書に目を通す。

 大体は知ってる事柄だったが、魔法の応用の幅は広がった気がする。


「もういいんですか?」


「おう。付き合わせて悪かったな。体調は大丈夫か?」


「そんな心配しなくても大丈夫ですよ。ただの生理ですから。」


 男には一生理解できない問題なのだろうが、大変そうだとは思う。

 それでも心配くらいはするぞ。


 このギルドで過ごした一日は、滞りなく終了した。

昨日最後の日間ランキングで186位と今までの最高順位を出しました。

ブクマ、評価をしていただき本当に感謝です!

第一部は100話を目処に進めていきます。

まずはそこまで一気に駆け抜けます!

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