第88話 葬儀
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という事で、感謝の本日2話更新です。
毎週日曜は2話更新という事には触れないようお願いしますw
もう1話は夜更新です。お楽しみに!
一夜明け、この日も雨模様。
天までもが、パウロを含めたスタンピード被害者の死を嘆いているようだ。
早々に準備を始めたオレ達は、冒険者姿でギルドへと向かった。
この日の埋葬はパウロの他、領主軍騎士を含めた今回のスタンピード被害者全員同時に行われる。
その理由として、この街の領民による弔問を一度に行う事により、混乱を避ける目的があるようだ。
辺境伯より領民達へ今回のスタンピードの詳細は発表され、今回尊い犠牲となった82名は、街の英雄として盛大に送り出される。
街の英雄と言うのはオレの称号にもあったので、今回参戦した者は全員に与えられた称号なのだろう。
話は逸れたが、その亡くなった犠牲者達は今日、霊柩車の馬車バージョンとでもいうのだろうか、そのような乗り物で街の大通りを進み、その後墓地にて埋葬されるようだ。
街の大通りを通る理由は、犠牲者達に領民の感謝してる姿を見せる事により、自分達が命を掛けて守り抜いた者を知ってもらうという目的があるらしい。
これにより死者のアンデッド化を防ぐ事が出来るという。勿論街の聖職者による浄化はしっかりと行うそうだ。
だったら火葬した方がいいだろ。と思ったのだが、抑も火葬という概念が無いという事が分かった。
ギルドでは既に馬車の準備が出来ていて、柩を運ぶだけになっている。
霊安室から馬車まで柩を運ぶのは、オレ達冒険者の仕事だ。
冒険者の被害は四名と少ないので、運び出す人員以外は外で待機する。
ミルファとルナは外で待つようだが、オレはアイアンランクの犠牲者の柩を運び出す役に抜擢された。
馬車に柩を積み込むと、パーティ毎に集まり、列を作り出発する。
この時の順番は、犠牲者の所属パーティを先頭に、パーティリーダーのランク順になっているようだ。
この後、騎士団詰所へ行き、領主軍犠牲者を先頭にし、街の大通りに向かっていく流れと説明があった。
領主軍犠牲者と合流後は、犠牲者82名と領主軍、冒険者の全員による長い列となり、街の大通りを進んでいく。
大通りは人々で溢れかえっている。
柩を積んだ馬車が通ると人々は一斉に感謝の言葉が響き渡る。
「ありがとーう!」「お前達はこの街の英雄だ!」「パウロ様~」
そんな声の中が飛び交う中、オレ達はこの馬車を追従していく。
住民の方に目を向けると、この死を笑顔で称える者もいれば、涙を流しながら抱き合う親子の姿もある。
オレ達はこれだけの人の命を守る為に戦っていた事を初めて実感させられたのだった。
「凄いな。この街ってこんなに沢山の人がいたんだ……」
オレはそんな言葉を漏らしていた。
近くにいてそれが聞こえていたエイルが微笑みながら返す。
「普段は人が集まる機会ってのはそんなにないからな。特にレイジはこの世界に来て2ヶ月も経ってないだろ?
年に一回の収穫祭の時にはもっと凄い人がこの大通りに押し寄せるぞ。」
エイルはそう言うと遠い目をし、何かを思い出してるようだった。
「皆で収穫祭に行ったのって、もう十年前なのね。
あの時からエイルとパウロの仲が悪くなってたから。」
三人は幼き日の思い出を振り返るように通りを進んでいく。
気が付いた時には、反対側を進んでいたブラッドローズも此方に加わり、ソニアを含めた四人でパウロとの思い出を語り合っていた。
「ソニア姉さまもあの三人といる時はいつもと違うのです。」
「うおっ!びっくりした。」
ブラッドローズが此方に来た事でルナは後ろから話しかけてきたのだ。
他のメンバーも周りに集まって来ている。
「ソニアさんは、あたしらの前では強くいようと振舞っているからね。
ディルさんらの前にいる時だけは素の自分でいられるのかもしれないね。」
そう話すのはブラッドローズのシルバーランクであるレイだ。
この時にレイから聞き、ソニアもエイル達と幼い頃からの仲だと初めて知った。
ただ、孤児でギルド長に育てられたエイル達とは違い、ソニアは普通の家庭育ちだったらしい。
近所で同世代という事もあり、気が付けばエイル達と友達になって遊んでいたとか。
そう考えると、当時遊んでいたメンバー全員が今のゴールドランク冒険者とは、なかなかお目にかかれない事例である。
大通りを抜けて、墓地へとやってきた。
領主軍兵士から順に埋葬されていく。
領主軍兵士の埋葬が終わり、冒険者の順が来る。
先にアイアンランクの三人が埋葬され、最後にパウロだけが残った。
「パウロの墓は既に決まってるんだ。其処に埋葬してもらえないか?」
突然のディルの言葉にエイル達は勿論、マッドネスサイスのメンバーもどういう事か分からず、動揺が隠せなかった。
ディルの指示した場所にあった墓を見て、エイル達はその意味を知る事になる。
〈サフィア此処に眠る〉
「これって……サフィア……?サフィアの墓?あったのか……」
サフィアの死そのものを知らなかったエイル達だが、当時パウロとディルがサフィアが死んだと泣いていた事を覚えている。その為、記憶が戻った際にサフィアが死んでいる事実は理解していた。
だが、記憶が戻ったからといってその事を自分から聴く事が出来ずにいたらしい。
そこに追い打ちを掛けるようにパウロの死があった。
余計にそんな話を出来るはずもなかったのだ。
「俺とパウロはサフィアの亡骸をこの街まで運んだ。でも、サフィアの事を知ってる人は誰もいなかった。怒りに震えたよ。サフィアを忘れた奴らも、不甲斐なかった自分にも。
共同墓地への埋葬を提案されたが、俺とパウロはこの墓を建てる事を選んだんだ。
俺達二人だけしか知らないなら二人でこの墓を守っていこうと誓ってな。
そして、先に死んだ方が一緒に入る事にしようと話していた。
アイツとの約束なんだ……パウロは此処に埋葬してやってくれ。」
ディルはマッドネスサイスのメンバーに頭を下げ懇願した。
一瞬の沈黙。
その後にマッドネスサイスのメンバーは全員が快く了承したのだった。
「ディル……今までずっと、パウロと二人でこの墓を守ってきたんだな。本当に悪かった。」
エイルはディルを抱きしめながら謝罪を伝えている。
「ディルさん、俺らもパウロさんのこの墓を守っていきますから。」
マッドネスサイスの面々もディルにそう誓う。
ディルはそんな皆の気持ちに、涙ながらに頷いていた。
その後、全ての死者に黙祷を捧げ、葬送の義は滞りなく終了したのだった。
◇
「レイジ、家を空けて悪かったな。しっかりとお前の事も思い出してるからな。」
オレの肩に手を回しながら、エイルは記憶が戻ってる事を告げてきた。
まあ、記憶が戻って直ぐにそれを伝えてくれたが、サフィアの事で頭がいっぱいになって話がそっちに引っ張られたからな。
「それでな、今日帰ってからレイジとミルファに大事な話があるんだわ。夕食時には家に居るようにしてくれ。」
大事な話……なんだろうか。
ただ、オレからも大事な話があった。
「あ!オレからも話があったんです。」
「じゃあその時に一緒にな。」
そう言うと、エイルはマリー、ディル、そしてソニアとギルドへと向かったいった。
四人で行く事を少し不思議に思ったが、その時は特に気にする事もなく、その姿を見送っていた。
「レイジさんあの話するんですね。」
「ああ。エイルさんの大事な話が気になるけど、こっちも伝えなきゃいけないからな。」
そんな話をしてると、ケントとミルファがやってきた。
「今日はありがとな。皆に送り出して貰えて、パウロさんも幸せだったと思う。」
「ケントも大変だったな。」
「ねえ、ケントはこれからどうするの?」
オレも気になっていた事をミルファが問いかけた。
「いや、何も考えてねぇな。というか、考えられなかったな。
今後マッドネスサイスがどうなっていくのかも分かんねぇし、全くの未定だ。」
まあ、マッドネスサイスはまだそれを考える事は出来ないかもしれない。
辛いだろうが、今いるメンバーで頑張っていくのがベストだと思うが、頭を失えば手足はバラバラに動くのは世の常だろう。
そんな中でケントがどうするのかが気になっている。
「ケント、私とレイジさん、後多分ルナも、パーティを抜けて旅に出る事になると思うんだ。
ケントには一応伝えておきたくて。」
「旅?そうなのか?」
「ああ。元はオレの我儘からなんだけどな。」
「私は絶対に付いて行きますから。」
「ウチもです。」
「まあ、こんな感じで二人は付いて来てくれるらしいんだ。
お前はどうする?一緒に行かないか?」
オレの提案にケントは勿論の事ながら、ミルファとルナも驚きを隠せない。
「オレ?ははっ、どういう事だよ。お前のハーレム旅を眺めてろっていうのか?冗談だろ。」
「そうですよ!ケントは関係ないじゃないですか。」
「ウチには最初反対したのにヒドイです。」
其々が皆反対のようだ。
「まあ、ハーレム旅ってのは否定しないけど、単純にブロンズランク試験の時のああいう雰囲気でやっていけたらいいなーって思ったんだよ。
ルナが付いてくるってなった時に、それだったらケントも居たら楽しく出来るだろうなって考えちゃってな。」
「あれはウチも楽しかったのです。」
「そう言ってくれるのは嬉しいけどな。これでもこの街に俺を必要としてくれる人もいるんだよ。
悪いけど、一緒には行けねぇよ。」
「そうか。分かった。まあ、出発までは時間があるから、また声掛けるからな。」
残念だけど仕方ない。
ミルファもルナも多分イエスマンだと思う。
オレが何か言えば、たとえそれが間違っていても肯定するだろう。
だからこそケントみたいなヤツがいた方が良かったのだが、必要としてる人が居るなら無理に誘う事も出来ない。
「まだ決まりではないけど、行く前には出来なかった打ち上げでもしようか。
一度集まって換金と一緒にでもな。」
「そういやそれがあったな。適当に声を掛けてくれ。じゃあ、またな。」
ブロンズランク試験の時のメノウリザードやオニキスを売ったらそこそこの金になるはずだ。
その換金を一緒にすると約束をし、ケントはメンバーの下へと帰っていった。
「ウチも今日はソニア姉さまが大事な話があるって言うのです。だからウチもその時に旅の話をするのです。」
「そっちも?」
エイルとソニア。二人のゴールドランクが揃ってパーティメンバーに大事な話とか、少しおかしいと思いながらも、考えても仕方ないと頭を切り替える。
「話に進展があったらルナにも伝えにいくよ。」
「はいです。こっちも何かあったら会いにいくのです。」
こうして其々が家へと帰っていった。
この後、家ではエイルの大事な話が待っている。
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