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第87話  ハーレム序章

 オレは今、風呂にお湯を張っている。

 今日はルナが泊まると言ってきた。それは全然問題ない。

 だが、ミルファとルナ、三人で風呂に入る流れになったのだ。

 いやいや、天国ですか?と言いたい気持ちもあるが、流石にそれはないでしょう。と、拒否したい気持ちもある。

 どちらかといえば嬉しい気持ちの方が強いのだが、どうも罪悪感に駆られてしまうのだ。

 そんなモヤモヤした気持ちのままお湯が溜まり、二人を呼びに行く。


「ミルファー、ルナー、風呂いいぞー!」


 二人に声を掛けながらオレは服を脱いでいく。

 なんだかんだと考え込んではいるが、理性としてはやはり三人で入るのに乗り気なのだ。

 二人が来る前に先に風呂へと入っていき、先に入ってた感を出しておく。

 女性が入ってるトコに入るより、女性が後から入ってきた方が気持ち的に余裕が出来ると考えたのだ。

 オレが後から入ったなら目のやり場に困ったり、照れながら入ったりと、色々困ることが発生するが、先に入ってたならば多少なりとも余裕が出来ると思った。

 更に言えば、その瞬間に頭か顔を洗って目を瞑っていたならば、よりその心配は減るだろう。


 そのような様々なパターンをシミュレーションしており、事前準備には余念がない。

 既に脱衣所から二人の声が聞こえているので、頭を洗いながらその時を待つ。


「レイジさん早いですね。もう頭洗ってるなんて。私達も先に洗ってしまいますね。」


 うん?浴槽を大きくした分、洗うスペースが狭いのに三人で洗うのか?

 オレとしては密着してるから全然構わないけど。


「じゃあ今日はルナちゃんと二人で背中洗いますね。」


 此処で思いもよらない出来事が発生した。

 なんとミルファと一緒にルナも背中を洗ってくれるというではないか。

 普段はミルファと二人で入ってるので、お互いの背中を洗い合ってるのだが、今日は二人でとは……。


「ルナはそれでいいのか?」


 一応聞いてみたが、よく分かってないのか首を傾げている。

 本人がいいなら放って置くとしよう。

 終わったら今度はオレが二人の背中を洗ってやる。

 この時になって初めてルナを視界に入れたのだが、後ろ姿でも分かるくらいにスタイルがいい。

 身長も少し低めだから余計にそう見えるのもあるだろうが、それを差し引いても十分過ぎる程のスタイルだろう。

 そしてこの時、背中を下まで洗っていった際に、お尻付近に付いてる物に視線が釘付けになった。

 それは尻尾だ。これは洗ってもいいのだろうか?

 てか、もう触りたくて仕方ない。とりあえず聞いてみるか。


「ルナ。尻尾って洗って大丈夫か?」


「あ……洗ってくれるのです?嬉しいのです。」


 いいようだ。

 ルナの尻尾は短い。今まで尻尾に気が付かなかったくらいだ。

 ルナの普段着てる防具はドレススカートタイプになる。

 尻尾はスカートの中に隠れていて、傍目には分からないようになっていた。


 そんな尻尾を石鹸でしっかり洗っていく。

 どうせだったら頭も洗ってあげれば良かったな。

 そしたらあのモフミミも触る事が出来たのに。


 そんな事を残念がっていたら二人共此方を向いた。

 ミルファはいつも通り美しい身体だ。

 そして、ルナのその肉体が視界に入る。

 

 うん。素晴らしい。てか、本当にスタイルいいな。

 胸の大きさは少し小さめだが、オレは好みだ。

 しかし、あまり見過ぎるのも良くないだろう。

 早めにその身体から視線を外した。


「ど、どうしてこっちを向いた?視線に困るんだけど?」


「どうせだから全部洗って貰おうと思って。」


 理性が壊れてしまいそうだ。

 だが、仕方なくやってるように振る舞いながらも、洗ってやる事にした。

 いや、全然仕方ないではない。寧ろ有難うございますと言いたい。


 そんなこんなで洗い終わり、湯船へ。

 てか、ドラム缶だけど。


 ルナはかなり喜んでいる。


「久しぶりのお風呂なのです。」


 聞くと、普段は水浴び場で軽く洗いだけらしい。

 そういえば転生後最初に食楽亭に泊まっていた時は、オレもそうしてた気がする。

 十分に堪能し風呂から上がる。

 

「まだ寝ないだろ?じゃあミルファ、手を出してみようか。」


 ミルファはよく分からないままオレに手を差し出す。


「ホーリーを使う時の聖属性の魔力を放出して。」


「あ!もしかして!」


 ミルファは気が付いたようだ。

 スタンピードの時に辺りを照らした。二人の合成魔法。

 二人から放たれた魔力が辺りを照らし出す。


「わわっ!凄いのです。一気に昼になったのです。」


 部屋の中が一気に明るくなった。

 オレにとっても、夜に此処まで明るいのは転生前以来である。

 なんだか懐かしい気持ちになってしまうな。


「これなら飲みながら話だってしやすいだろ?」


 二人は最初は驚いていたが、直ぐに笑顔になり、その明るさを喜んでいる。

 もう、これだけでやって良かったと思える程だ。


「じゃあこれでも飲もうか?」


 そう言ってオレが出したのは、キンキンに冷えた缶ビールだ。


「冷たっ。なんですかこれ?」

「冷たくて気持ちいいのです。」


 これはファスエッジダンジョンの50階層、あの宮殿で用意したものだ。

 食べ物はいいと言っていたので、結構大量に用意しておいたのだ。

 喪に服してるので乾杯はしない。

 二人に開け方を教えてあげる。

 プシュッっといい音を立てて缶が開き、勢いよく飲んでいく。

 缶には「お酒は二十歳から」とか書いてあるが、気にしちゃ負けだ。

 この世界では合法なのだ。問題はない。


「これ、エールみたいだけど全然違うのです。こっちの方が美味しいのです。」

「ねっ!ルナちゃんもそう思う?エールより全然美味しいよね。」


 二人にも好評のようだ。流石はビールだ。


「それで、この間話していた事を聞かせて欲しいのです。」


「この間?何か言ったっけ?」


「言ってたのです。今後の身の振り方とか……どういうことなのです?」


 そう言えば、ブロンズランク試験後にミルファが少し口にしていた気がする。

 それにルナが問いただそうとしたところにスタンピードの知らせが入ったんだ。


 オレはミルファを見てみるが、気まずそうに此方に助けを求めた顔をしている。

 まあ、エイルら、パーティメンバーには話してはいないが、いつかはルナにも話さなければいけない事だ。今話してもいいだろう。


「オレな、ロードウインズを抜けて旅に出ようと思ってんだよ。

 ミルファはそんなオレに付いて来てくれるらしい。

 まだ誰にも話していないけどな。エイルさん達には帰ってきたら話すつもりだ。」


「え……旅……なのです?この街が嫌なのです?」


「ルナ。それはない。この街は好きだから。知り合いも結構増えたしな。

 でも、オレはこの街以外を知らないんだよ。この国が、この世界が、一体どうなっているのか、自分の目で見てみたい。だから行ってみようと思う。」


 ルナは泣きそうになりながらも考えている。

 オレとしてもルナと離れるのは辛い。

 今のハーレム状態なんて今後あるとは思えないし。

 それでも、やっぱり行きたいんだよな。


「ウチも……ウチも連れてって欲しいのです。」


「はっ?」


 オレは耳を疑った。いや、好意を寄せてくれているのは分かるが、そこまでとは思っていなかった。

 なにせお金があると言ってからグイグイ来たからだ。

 理由を考えたらそんなあてのない旅に付き合うとは到底考えられるものではなかった。


「ウチはよく分からないけど、レイジくんと一緒にいたいのです。

 さっきもお風呂でレイジくんに触られると、身体が熱くなって嬉しい気持ちになったのです。

 ウチは今まで誰かを好きになった事なんて無いから分からないけど、多分これが好きって気持ちなのです。

 だから……だから一緒に連れてって欲しいのです。」


 このタイミングで告白……どうすればいいのでしょうか。

 いや、オレはその気持ちを受け取りたいのだ。

 もしかしたらこれは前世の記憶に基づいたものなのかも知れない。

 それでもルナのこの気持ちを無下にしたくないのだ。

 しかし、ミルファは?それによってミルファを悲しませるのなら本末転倒だ。

 前世での失敗を此処で繰り返す訳にはいかない。

 どうすれば正解のなのか分からず、悩みに悩んでいる。


「レイジさんはルナちゃんをどう思っているんですか?」


 問いかけたのはミルファだった。

 どう思っているか……それは、


「そりゃ好きだよ。でも一番はミルファなんだ。ミルファ以上は何処にもいないだろ。」


 そんなオレの答えにミルファは少し驚いた顔をしてから微笑んだ。


「ルナちゃんはそれでもいいの?」


「勿論なのです。前にも言ったけど、ミルファちゃんの次でいいのです。」


「じゃあ決まりじゃないですか?私は今のレイジさんの言葉だけで全然嬉しいですし、ルナちゃんとだったら仲良く出来ますし。

 何よりレイジさんが幸せだと私も幸せになれるはずです。

 でも、三人目からは厳しくしますよ。今まで通り愛してほしいですから。」


 本当にそれでいいのか?と思ったが、本人がいいならオレは問題ない。

 ブラッドローズの事もあるから、とりあえず(仮)って事にしておこう。


 そう。あくまで(仮)なのでこの夜に手を出したりはせず、この日は何もせずに三人並んで眠りについていた。

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