第86話 ルナのお泊り
オレはシルバーランクへの昇格を賭け、現シルバーランク二名との模擬戦をする事を決めた。
「ルールはこれから決めることになるが、要望はあるか?」
「そうですね……。オレの基本戦闘スタイルは攻撃魔法と魔法剣を状況に応じて使い分けていくスタイルになるんです。
攻撃魔法は問題ないんですけど、魔法剣は相手を確実に殺す為の技になってるんですよね。そんなだから模擬戦には向いていないと思うんですが、そこを考慮して欲しいですね。」
例えば木刀や竹刀で戦う事になると、魔法剣炎なんか使ったら、その瞬間にその武器が使い物にならなくなってしまうだろう。
更には、魔法剣炎なんてのは文字通り一撃必殺の剣だ。人間に当たったら、その瞬間そいつは死んでしまうのは間違いない。
逆に魔法剣なしで戦うならば、オレの戦闘力は半分くらいになるのではないだろうか。
「レイジは魔法戦士だったのか。コモンの時によく魔法を覚える事が出来たな。」
「あー、ロードウインズの力を使って、辺境伯から図書館の閲覧許可を出してもらいましたから。」
「なるほどな。それにしては急成長だな。どうも強すぎる。」
複数ジョブに関しては黙っていたい。
今後この街を出ると決めているから、余計な情報を与えて引き止められたら面倒だ。
「ファスエッジダンジョンに篭っていた期間が結構ありますからね。
聞いてませんか?このミルファだってブリュードルさんの腕をくっつける事が出来るんですから。」
「それも聞いてはいるが……ホントなんだよな……まあ、ロードウインズだからな。常識で考えたらダメか……」
ロードウインズだからとはどういう意味かと考えたが、大量の魔物素材を持ち込んだり、ファスエッジダンジョンで50階層を超えてみたりと、ギルド長が知ってる範囲でもなかなかの事をやってきた事を思い出した。
それでもオレ自身の能力を使ってるのはアイテムボックスくらいで、後はパーティとしての実力だ。
特別隠す要素は無いだろう。
「それと……後でギルドとして発表するが、パウロの埋葬は明日行われる。
冒険者で参加出来る者は極力参加してもらいたい。よろしく頼む。」
ギルド長はそう言うとオレ達に深々と頭を下げた。
息子のように育ててきた者の死。
オレにはその気持ちは分からない。一応前世で娘はいたけど生きていたし、抑もなかなか会えなかったのだから。
だが、大事な人を失う気持ちは分かるつもりだ。
今もそんな気持ちを押し殺しながら業務をこなしているのだろう。
大した人だな。素直にそう思った。
「解体場で呼びに来るって言ってたけど、一度見に行ってきます。
ギルド長、無理しないで下さいね。何かあったらエイルさんが悲しみますから。」
「あ?アイツが悲しむ訳ないだろう。清々したと笑ってるだろうよ。
だが……気遣いは受け取っておく。ありがとよ。」
オレ達三人はギルド長に一礼し、解体場へと再度向かうことにした。
ギルド長室を出ると、通路の向こうから一人の女性が近づいてくる。
「あ!レイジさんですね。オーグストンより解体場へ来て欲しいとの言葉を預かってきました。
解体場へお越し願えますか?」
この人は解体場からの伝令だったようだ。
「ええ。丁度今行くつもりでした。」
「では此方へ。」
伝令役の女性に誘導されながら解体場へ向かうと、オークが全て運び出され、ハイオークに取り掛かっていた。
オレは直ぐに次の魔物素材を用意すべく、オークが置いてあった場所の準備に入った。
が、とにかく汚い。
一旦生活魔法のクリーンでその場を綺麗にしてやった。
おお!いい感じに綺麗になったようだ。
しかし、次に出すのをどうしようかと考えてしまった。
普通に考えたらオークマジシャンでいいはずだ。
だが、オークマジシャンはオレが一人で総取りになっている。
それならばゴールドランクで分けるオーガを先にやって貰った方がいいのではないだろうか。
そんな事で悩んでいたら、オーグストンがオレの迷いに気がついたらしく話しかけてきた。
「レイジの思った通りの順番で構わないぞ。残りはお前とゴールドランクの分だけだろ?
金に困ってないだろうから急がないだろう。」
まあ。確かにその通りだろう。
レイジ達は言わずもがなそうなのだが、ソニアにしても金に困ってる事はないはずだ。
ルナが金に対して執着してるのは気になるけど。
そう考えるなら、今日で全て渡せる順番がベストだろう。
それならば……
「じゃあ先ずはオーガでいいですか?数が少ないので早く終わりますよね。」
オーガは全部で12体だ。
皮膚が硬いので解体に時間が掛かるかもしれないが、とりあえ場所確保だけなら早く終わるだろう。
「12体分か。少し待ってろ。先に運び出してしまおう。そしたら最後のオークマジシャンで終わるだろ。」
オーグストンは此方の都合まで考えてくれて、早々にオーガを運び出してくれた。
最後のオークマジシャンを其処に並べ、今回のスタンピードの魔物素材は全て出し終える事が出来た。
実はオークマジシャンはアイテムボックスにまだ大量に残っている。
ファスエッジダンジョン51階層での討伐分なのだが、今回出すのは控えておく事にした。
オーグストンなら少し悪態を吐きながらも引き取ってくれそうだが、状況を踏まえても出すべきではないだろう。
最後に、オーグストンにはブロンズランク試験で討伐したメノウリザードを後日持ってくる事を伝え、この日の冒険者ギルドでの要件は終了した。
「さてと、オレ達は帰るけど、ルナはどうする?」
「ん~、帰ってもする事がないのです。もう少し一緒に居たいのです。」
「じゃあ一緒に夕食を作らない?ルナちゃんと一緒に作ったら楽しそう!」
ミルファも一緒にいるのを楽しんでるので別にいいか。
こんな時に勝手するのも気が引けるけど、こんな時だからこそとも言えるもんな。
勿論帰る前にブラッドローズの家に寄って、ルナがウチで食事する事は伝えておいた。
まあ、小さい子供じゃないから一々言いに来なくても大丈夫だと呆れられたのだけど。
今日も誰もいない寂しくなってる家に帰ってきた。
やはりこの家にエイル達が居ないのは寂寥感に苛まれてしまう。
そう考えたら、ルナがいてくれて良かったのかもしれないな。
ミルファとルナは早速二人で料理に取り掛かっていた。
オレも何か作ろうとしたのだが、
「今日は私達が作るのでレイジさんはあっちに行ってて下さい。」と、キッチンから追い出されてしまった。
まあ、今日は二人の気持ちを尊重して何もせずにいようか。
この持て余した時間を、久しぶりにステータスとスキルチェックに使おうか。
レイジ(17)
メインジョブ:魔法戦士 LV30
2ジョブ :冒険者 LV34
3ジョブ :魔弓士 LV28
4ジョブ :大魔導師 LV24
5ジョブ :僧侶 LV32
攻撃:230 (85) (45)(56)(0) (32)
魔力:285 (54) (33)(42)(108)(36)
俊敏:252 (57) (57)(63)(32)(36)
体力:263 (75) (65)(38)(27)(48)
命中:259 (51) (40)(75)(44)(42)
精神:228 (23) (33)(32)(36)(96)
運 :194 (40) (40)(33)(30)(43)
スキル:短剣・片手剣・弓・格闘・盾・黒魔法中級・白魔法初級・生活魔法・召喚魔法・魔法剣・ガード・回避・警戒・命中・受け流し・連撃・指揮・手当て・火耐性・水耐性・風耐性・土耐性・氷耐性・雷耐性・毒耐性・暗闇耐性・麻痺耐性・錬成・鍛冶・調合・採掘・料理・清掃・洗濯・洗浄・乗馬・操車・言語変換・鑑定
ジョブスキル:属性付与・属性融合・魔法剣威力UP(魔法戦士)索敵・罠解除・脱出(冒険者)属性付与撃ち・魔力矢(魔弓士)魔力回復速度UP・各属性耐性(大魔導師)回復量UP・魔力回復速度UP・癒しの光(僧侶)
ユニークスキル:マップ・ジョブ
ジョブスキル(スキル効果):パワースラッシュ(戦士)
契約召喚獣:シームルグ
スキルポイント:1150
称号:転生者・旅立つ者・幸運者・迷宮から帰還せし者・冒険者ランクブロンズ・毒愛好家・中級鍛冶職人・王子の友・街の英雄・神の使いに認められし者・オークスレイヤー
大魔導師を付けてから初めて確認したが、スキルが思いの外増えている。
耐性が増えているのは、ジョブスキルの影響だろう。
気になったのは、冒険者のジョブスキルにある脱出だ。
これに気が付いていれば、ブロンズランク試験であんな苦労しなかったのではないだろうか。
まあ、その際にはブリュードルら試験官は死んでただろうけど。
人助けが出来たから良しとするか。
スキルも一応確認しておこう。
短剣LV2(10/50)
片手剣LV6(391/400)
弓LV3 (52/100)
格闘LV3(29/100)
盾LV4(94/150)
黒魔法中級LV5(55/250)
白魔法初級LV2(24/50)
生活魔法LV MAX
召喚魔法LV2(15/50)
魔法剣LV4(18/150)
ガードLV3(59/100)
回避LV3(70/100)
警戒LV5(10/250)
命中LV4(128/150)
受け流しLV2(06/50)
連撃LV2(11/50)
指揮LV1(05/10)
手当てLV1(01/10)
火耐性LV3(22/100)
水耐性LV1(00/10)
風耐性LV2(04/50)
土耐性LV2(12/50)
氷耐性LV3(09/100)
雷耐性LV1(00/10)
毒耐性LV2(28/50)
暗闇耐性LV2(12/50)
麻痺耐性LV1(06/10)
錬成LV5(41/250)
鍛冶LV5(17/250)
調合LV2(05/50)
採掘LV2(35/50)
料理LV3(17/100)
清掃LV2(26/50)
洗濯LV2(16/50)
洗浄LV2(28/50)
乗馬LV5(41/250)
操車LV2(27/50)
言語変換LV5(140/250)
鑑定LV5(204/250)
マップLV5(49/250)
ジョブLV6(158/400)
此方は多少の成長しか見られないな。
今後はスキルを鍛えていかなければいけないな。
スキルポイントは保留しておこう。
乗馬の時のように、急に必要になる時があるかも知れないからな。
「レイジさん、出来ました。どうぞ召し上がってください。」
出てきたのはハンバーグ。
既にこの家の代表メニューと言っていいだろう。
これをミルファとルナの二人で作ってくれたようだ。
食べてみると、これが最高に美味かった。
何を入れたか聞いてみたが、企業秘密とのことだ。
「ところでルナ、そろそろ帰らなくて大丈夫なのか?」
「今日は泊まったらダメなのです?もう少し一緒に居たいのです。」
「明日は皆でパウロさんのお別れに行くんですから、今日は泊まってもいいんじゃないですか?」
「ミルファもルナもそれでいいなら問題ないぞ。」
「やったのです。また三人で寝れるのです。」
あれ?三人で寝るのか?あれは色んな意味で辛いのだが。
「じゃあ、ルナちゃんも一緒にお風呂入る?気持ちいいよ。」
「お風呂!入るのです。楽しみなのです。」
「じゃあレイジさん皆で入りましょうか。」
マジですか……
何とも素晴らしい時間が始まろうとしていた。
ブクマ・評価を入れていただきありがたいです。
増えてる日はやはりモチベが上がりますね。
これからもよろしくお願いします。




