第85話 シルバーランクへの昇格
10万PV達成~♪
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「お待たせなのです。」
ルナはブラッドローズのメンバーにオレ達のギルドでの用事に付き合うと伝えてきた。
今日一日はオレ達に付き合ってくれるようだ。
「じゃあ一旦解体場に戻ろうか。」
流石にこの短時間で200体を超えるオークを捌く事は出来ておらず、まだまだ時間が掛かりそうな様子だ。
そんな中オーグストンがオレ達の下へとやってきた。
「ん?嬢ちゃんは?レイジの新しい女か?」
オーグストンよ。初対面の女性にいきなりそれは失礼だろ。
そんな事を思ったが、ルナは満更でもでもない様子だ。
「その予定のルナなのです。宜しくなのです。」
「それで、どうしたんですか?」
「ああ、そうだ。このオークなんだがな、通常のオークより全ての素材の質がワンランク上なんだよ。
実質ハイオーククラスだな。しかし見た目はオークだけにどうなってるのかと思ってな。」
それに関しては心当たりがある。
浜辺の洞窟で戦ったキラークラブが同じだった。
その原因はフギンとムニンだ。あの二人によって強化されていたのは間違いない。
ただ、どのようにして強化したのかは分からない。
オレはその事をオーグストンに伝えると、そんな事例は聞いたことがないと首を傾げていた。
「後は、まだ時間は掛かるからギルド長のトコに先に行ってきたらどうだ?
そうするならアソコのスペースに次の魔物を置いってってくれたら暫く来なくていいはずだ。」
確かに先に出来る事はやっておいた方がいいだろう。
次は辺境伯側の報酬になるハイオークだ。
これは50体程なのでそこまでスペースは使わないはずだ。
「これはハイオークか。上位個体並になってるのか調べる必要があるよな。
よし!じゃあオークが終わったくらいに使いを送るから、先にやる事済ませてきてくれ。」
そう言うと、オーグストンは仕事に戻っていった。
「じゃあオレ達はギルド長室に行くか。」
ギルド長は相変わらず忙しそうにしている。
スタンピードの事後処理の方が余程大変だと実感させられてしまう。
「ん?レイジ。終わったのか?案外早かったな。おっ、ルナも来たのか。丁度いい。」
「いえ、まだまだ掛かりそうだったのである程度の魔物を置いて戻ってきました。
それで、オーグストンさんが気になる事を……」
オレ達はギルド長に、魔物の強化について知ってる事を全て話した。
ギルド長はそれを納得した様子で聞いていた。
「なるほど……それで合点がいった。
本来オーク相手にシルバーランクが苦戦するなどありえない事だからな。
まあ。それでも余裕を持って倒したベロニカは別だがな。アイツは近くゴールドになるだろうから、他と一緒に考えたら怒られてしまうか。」
よくよく考えたらその通りだった。
オークは遠征前のオレでも倒す事が出来た魔物だ。
それに苦戦するなど普通に考えたら有り得ない事だろう。
しかし、それを単独で倒したルナとケントは、かなりの実力があるという事になる。
ミルファだけではなく、こいつらも天才なんじゃないかと思ってしまうくらいだ。
「それで、ここからがお前達に関する本題なんだがな。
お前達は昨日ブロンズランクになったばかりで、今はブロンズⅡとなっているんだが、昨日の活躍を聞きブロンズⅠに上げてしまおうと判断した。
今日は受付があの状態だから、明日にでもランクアップしておいてくれ。」
僅か一日でのランクアップだ。
オレとしては、今では金銭よりこっちの方が嬉しかったりもするので、最高の報酬だ。
まあ。オークマジシャンの分も貰うのだが。
「それがレイジ以外の三人な。」
ギルド長の言葉にオレはフリーズした。
ブロンズランク試験にも虚偽報告で落とされかけたオレにとっては、自分だけ評価されない事はトラウマになりつつある。
先ずは落ち着いて理由を聞いて、話はそれからだ。
オレが冷静になろうと思っていた横で、ミルファとルナが熱くなっていた。
「どうしてレイジさんだけがランクアップされないんですか?
またあの職員がウダウダ言ってきてるんですか?
ちゃんと説明して下さい!」
「ちょ、ちょっと待て。誰もレイジがランクアップしないとは言ってないだろう。」
「え?」
どういうことだろうか。確かにオレがランクアップ出来ないとは一言も言ってはいない。
という事は……
「聞くとレイジは、シルバーランクを囲っていたオークをたった一人で、半分以上倒していったとか。
更には領主軍に大量の死者まで出させたオークマジシャンを殲滅。極めつけがゴールドランクの五人が戦っていたオーガをレイジが誰よりも多く倒したと聞いたぞ。間違いはないな?」
うん。間違ってはいないな。全てオレがやったことだ。
オレはその言葉に頷く。
「まあ、異例中の異例だが、レイジはシルバーランクにしてしまおうという話が出ているんだ。」
あまりの事態にミルファもルナも口が空いたまま固まってしまっている。
オレでさえ驚いているのだ。仕方ないかもしれない。
本来ブロンズランク同様、試験を受けなければシルバーランクにはなれない。
しかもそこには学科試験も含まれてるのだ。
戦いばかりで頭を使ってこなかった冒険者にとって、此処が一番の鬼門であり、ロードプルフにシルバーランクが八人しか居ない原因でもある。
では、学の無さそうなエイルがどうしてソコを乗り越える事が出来たのか。それこそがギルド長がギルド長である理由にもなっているのだ。
「但し、条件がある。間違いなくシルバーランク以上の実力がある事を我々ギルド職員に見せつける事だ。まあ、簡単に言えば模擬戦だな。」
シルバーランクの誰かと模擬戦を行い、間違いなくシルバーランク以上の実力がある事を証明する。
これがオレがシルバーランクに昇格する為の条件らしい。
「その相手だが、流石にベロニカだとやり過ぎだろう。マッドネスサイスの二人はそんな事出来る精神状態ではない。
そうなると残るは二人。ブリュードルとラッセルになるのだが、そこはレイジに選ばせようという事だ。」
ブリュードルはブロンズランク試験の試験官だった男だ。
戦ってる姿も見てるので大体は把握出来ている。
ラッセルは昨夜のスタンピードでは瀕死になってる所をオレが助けた男だろう。
戦ってる姿は見たことないが、あの状態を見たら大体実力は判断出来る。
どちらと戦っても勝てる自信はある。
だがこの試験は間違いなく彼ら以上の実力だと証明する事が大事になるのだ。
そう考えた時、オレには一つの答えが浮かんだ。
「その二人を同時に相手します。」
「なんだと?」
ギルド長の顔が一気に険しくなる。
それはそうだろう。いくら実力があると言っても、昨日ブロンズランクになったばかりの男が、シルバーランク二人を同時に相手して勝てると判断したのだ。
これはある意味ギルドに対する挑戦と取られても可笑しくない行為であった。
「たとえその二人のどちらと戦って圧倒しても、絶対に異を唱える奴はいますよね。
二対一で戦って圧勝すれば誰も文句は言わないでしょう?」
「お前、それは我々が選んできたシルバーランクにはそれだけの実力しかないと判断したって事だぞ。」
「そう捉えられたら困りますね。オレにはそれ以上の実力があるって事の証明じゃないんですか?」
「うーむ……それはそうかもしれないが……」
「いや、皆さんがギルド長が思ったように捉えてしまうなら止めておきましょう。
恨まれてまでする事ではないので。」
ギルド長はその手で顎を触りながら考えている。
そして素早くその結論を出した。
「よし、分かった。それでいこう。周りには勘違いが無いように俺が説明をする。
日取りだが少し時間をくれ。パウロの事を全て終わらせてからにしたい。」
それは勿論了承した。
オレは、シルバーランクになる事をエイルへの恩返しとして旅に出る決意を固めた。




