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第81話  経験不足の最強ブロンズランク

本日2話目!


「ひでぇ顔ツラだなパウロ!一旦下がってマリーに回復してもらって来い。」


「ふん。お前に手を差し伸べられるとはな。俺はお前を許しちゃいないんだ。調子に乗るな。」


 パウロはエイルが差し伸べた手を振り払い自力で起き上がる。

 何やらパウロが一方的にエイルに怒りを覚えているようだ。


「あぶねぇ!」


 エイルがパウロを突き飛ばした。

 そこにはオーガがパウロの居た場所を殴りつけている。

 オーガは簡単にパウロを逃がさないようだ。

 オレも前へ出ていき、パウロが下がる為の壁になるように立ち塞がる。


「三人で六匹ですか?オレって今日ブロンズになったばかりですよ?荷が重いように思うんですが……」


「貴方殆どダメージを受けずに一匹倒してきたんでしょう?だったら二匹でもいけるわよ。

 もし二匹とも倒せたら私とルナで一晩相手してあげるわよ。」


 うん。ソニアにそんな事を言われると俄然やる気が出るに決まっている。今なら六匹全てでもいける気がするな。


「絶対ですよ。その言葉忘れないで下さい。」


「ちょっ……レイジさん!」


 後ろのミルファにまで聞こえていたようだ。

 ヤバい。この約束自体無効になりそうだ。


 オーガは、そんな会話を楽しむ余裕もこれ以上は与えてくれないようだ。

 一匹が此方に殴りかかってきた。が、ソニアの鞭に打たれ弾け飛ぶ。


「貴方は私が相手してあげる。覚悟なさい。」


 エイルは既に先程蹴り飛ばしたオーガとの戦闘に入っていた。

 そして……何故かオレの前には四匹のオーガが……


「マジかよ……死んじまうって……。」


 もう心の声も口に出してしまっている。

 喚いても仕方ない。と、覚悟を決め、オーガに先制攻撃を仕掛ける。


「フレイムサークル!」


 中級炎魔法のフレイムサークルは一定の範囲魔法だ。

 この範囲が何とも言えない微妙な大きさの範囲なので、なかなか使う機会がなかった。


 炎は渦を巻きながら、直径三メートルの範囲を燃やし尽くしていく。

 しかし、範囲外のオーガはそのままオレに攻撃してくる。

 その拳を鋁爪剣で斬りかかるが、今は魔法剣を使っていない為表皮をに斬込みを入れただけだ。

 更に勢いは止まらず、斬られながらもその拳を振り抜いた。

 アバラがミシミシといいながら、オレは二メートル程飛ばされた。

 自分にヒールを掛けながら落ち着いて立ち上がるが痛すぎる。


「くっ……痛ぇ……」


 前を見据えると既に追撃に来ている。

 鋁爪剣を構え、直ぐに剣に魔力を通す。鋁爪剣に雷の力が通っていく。


 受け手に回れば後手後手になるだけだ。

 そう感じ取ったオレは自分から仕掛けていく。

 魔法剣雷を纏った鋁爪剣を一気に振る。

 多分掠ったのだろう。オーガは拳を前に出したまま固まったのだ。

 どんなに硬い皮膚でも麻痺には掛かるようだ。


 止めを刺そうと構えると、左右からオーガが突っ込んできた。

 フレイムサークルで燃やしたオーガだ。其々右半身と左半身が焼け焦げている。

 アレを受けて死なないどころか即座に反撃に来るとは、流石に予想外過ぎた。

 というよりも、これはヤバい。死んだかも……


「しゃがめ!」


 その聞こえた声に反応し、すかさずしゃがみこむ。

 そして次の瞬間には高速の突きがオーガ達に襲いかかった。

 この技は先程目にしたのと同じ技だと思い、技を放った人物に目を向ける。

 パウロだ。回復して戻ってきたのだ。


 一匹はまともに喰らい倒れたが、もう一匹は声に反応してガードしたようだ。

 しかしそのガードを解いた瞬間、矢が高速でそのオーガの眉間に突き刺さる。

 こんな芸当出来るのは一人だけだろう。

 後方からこの瞬間を狙っていたかのようにディルは悠然と立っている。


 立ち上がったオレは、麻痺して動けないオーガに止めを刺すべく剣を構え、振り下ろす。

 そのオーガは斜めに身体が裂け血を噴き出しながら絶命した。

 最初にフレイムサークルの中心に居たオーガはそのまま燃え尽きていたようだ。


 エイルとソニアも其々がオーガを倒し戻ってきた。

 これで11匹からいたオーガは全て倒し終えたのだった。


「くあ~、つれーわ。何なんだこのオーガは?上位種じゃねぇよな?」


「明らかにおかしいわね。こんな個体は見たことないもの。」


 明らかに強化された個体。最近何処かで聞いたが思い出せないでいる。

 先程は戦闘に入るので考えるのは止めたが、改めて思い出そうとするが思い出せない。

 ホントに最近聞いたはずなのだが……


「それよりもレイジ!なんだ、その強さは?俺ら以上じゃないのか?」


 そんな疑問をぶつけてきたのはエイルだ。

 まあ、最近は一緒に戦う機会は無かったのもあるが、それ以前の記憶も無いので仕方ないかもしれない。


「確かにな。ケントに少しは聞いてたが、想像以上だ。だが、能力は高いが経験不足は否めないな。

 戦闘予測が備わってない。最後のヤツも経験が備わっていれば躱せたはずだ。」


「そこはやはりブロンズランクって事ね。二匹倒せてもそこでマイナスだからあの話は無しね。」


「え?マジっすか?」


「レイジさん?」


 ミルファの方から氷魔法より強力な冷気が発されてる。

 これ以上の刺激は危ないので止めておこう。

 しかし、経験による戦闘予測か。それがオレとゴールドランクとの差という事なのだろう。


「ん?でもよ、俺らは全員二匹ずつ倒したろ?レイジは三匹なんだよな。」


 エイルの言葉に一同は驚きの表情を浮かべた。

 うん。確かに三匹倒したな。それは間違いない。


「まあ、能力の高さと才能は認めてやる。後はとにかく経験を積むことだな。

 才能っていうならこの女の方が高い気もするが。」


 パウロはそう言いながらミルファを指さした。

 先程パウロが負傷したのを回復させたのはミルファだった。


「ああ……ミルファちゃんのセンスはピカイチだものね。その気持ちは分かるわよ。」


 マリーからも太鼓判をもらっている。流石はミルファだ。


「ミルファちゃんって確か神官じゃなかったかしら?それでよくパウロのあの傷を治せたわね。」


「いや、神官ではないはずだ。俺に使った魔法はハイヒールだ。

 あれは神官なんかに使える魔法ではない。」


 ソニアの疑問にパウロが答える。

 その通りだ。ミルファは司祭なのだから。


「ミルファちゃんは私と同じ司祭よ。ウチに来て50日くらい?それでもう追いつかれそうなの。」


 マリーは泣き真似をしてるが皆はドン引きだ。少し可哀想に思ってくる。

 ただ、ゴールドランクが揃ってオレ達の強さを考察してるのを眺めてるのは、何処かむず痒くなってくる。

 小っ恥ずかしいからそろそろ終わりにして欲しいと思い始めていた。


「まあ、これで今回のスタンピードも終息に向かっていけばいいけどな。」


「いや、今回のスタンピードを引き起こしてるのは奴らだ。まだ終わらないだろう。」


 奴らとは誰だ?と考えたが直ぐにそれを理解した。


「それってもしかして……」


 オレが聞こうと声にした瞬間、奴らは姿を現したのだ。



「ねえムニン。折角強くしたのに全部殺られちゃったよ。」


「そうねフギン。此処にいる人間はソレよりも強かったようね。」


 オレにとって忘れる事の出来ない忌々しい声がそこに響き渡った。

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