第77話 前線の戦い
前線の戦いは断然此方が有利に戦っていた。
報告ではゴブリンやオークの大群と言っていたが、現在まではゴブリンだけしか攻めて来ていない。
その為、能力平均でブロンズランクはある領主軍が、一切の脱落者を出さずに圧倒していたのだ。
しかし、そんな状況は一瞬で崩されていった。
東より押し寄せていたゴブリン達が途絶えたと思ったら、突如北から押し寄せてきたのだ。
更にはこのタイミングでオークも加わり、領主軍は一人、また一人と倒れていく。
そんな中、オークさえも圧倒していく一団がある。
エイル、パウロ、ソニアのゴールドランクの三名だ。
エイルのスピードと、パウロの力、そしてソニアの技と三者三様のスタイルでの戦闘の前にオーク達が次々と滅ぼされていく。
その一つ後ろにはロードプルフが誇る、五人のシルバーランク冒険者が率いるブロンズランク冒険者20名が待ち構える。
これにより、その後ろに待機するコモン以下の冒険者には出番が回ってこない状況になっていた。
オレとミルファは街門へ向けて走り出していたのだが、外壁より降りた時、ある物の存在を思い出した。
それは、あの暴れ馬を登録した笛だ。
本当にやってくるのか分からないが、とりあえず吹いてみる。
するとギルドからあの暴れ馬が走ってやってきたのだ。
「まあ、ないよりいいよな。」
乗り心地は最悪だが、走るよりいいはずだ。
オレ達は暴れ馬に乗り、外門より外へと出て行く。
「ミルファちゃん?」
そこに待機していたのはマリーだ。
前線の領主軍が崩れ初めているが、最後尾のこのエリアにはまだ運び込まれてはいない為、回復要員は未だ出番が来ていない。
「マリーさん、魔物が進路を変えました。そろそろ前線が崩れるかもしれません。注意してください。」
「レイジくん……分かったわ。前線に向かうのね。気をつけるのよ。私もディルが合流し次第向かうから。」
「はい。先に行ってます。」
オレ達は更に前線にへと向かっていく。
そして直ぐにコモン以下の集団に到達した。
「ルナ!ケント!いるか?」
「レイジ!ここだ。行くんだな。待ちくたびれたぞ。」
「レイジくん、暇だったのです。」
二人共本当に待つのに飽きたようだ。
「じゃあ行くぞ。」
「っしゃー!コモン以下は待機な。抜けてくる魔物がいたら遠慮なくぶちのめしてやれよー!」
ケントは最後にしっかりと役目を果たして、オレ達と共に前線へと出て行く。
最前線の一歩手前、此処が本来のオレ達の持ち場になる。
此処にもオークは押し寄せていて、既にゴブリンの姿は一切見当たらない。
この中でも最前線に近い、シルバーランクが抑えているエリアには20匹以上のオークが攻め寄せてきていた。
「よし!あそこを手伝うぞ。」
五人のシルバーランクが横に広がり、全てのオークを相手にしている。
勿論ブロンズランクも、数人で一つのグループを作りオークと戦っている。
シルバーランクの右から二番目、あれはブリュードルだ。
知らない顔じゃないのでそこから手伝っていく事に決める。
そんな中、ケントは自分のチームのメンバーの手伝いを希望した。
「問題ないんじゃないか?オレがギルド長から言われたのは、お前らを連れていけってだけだからな。」
「おう。じゃあ俺は先輩の手伝いをしに行くわ。」
ケントは同じマッドネスサイスのメンバーの手助けに向かっていく。
マッドネスサイスには三人のシルバーランクが在籍している。
一人は狙撃手なので此処にはいないが、この前線だけで二人のシルバーランクが戦闘しているのだ。
ブラッドローズに在籍しているシルバーランクは二人で、何れも外壁上に行っている。
そう。ディルに惚れている二人だ。
残りの二人はブロンズランクなのでこの周囲にはいるはずだ。
「ミルファ。」
「はい。ガード!」
オレとルナにガードが掛けられ、オレ達の戦いが始まった。
「くっそっ、ヤベェじゃんか。一人でこれだけ相手には出来ねぇって……」
ブリュードルは今の状況を嘆いていた。
ブリュードルはシルバーランクだが、他のパーティメンバーはまだ若く、コモン以下ばかりの為、前線に出ているのはブリュードルただ一人だった。
そんなブリュードルに背後に回ったオークが襲いかかる。
その時、そのオークが顔面を殴られ吹っ飛んでいく。
ルナによる戦棍を使った殴打による攻撃だ。
「うお!ルナか!助かったわ。」
「まだピンチなのです。」
そう言うと、横から来ているオークに棍を振り下ろす。
そしてブリュードルが相手しているオークが突然炎に包まれる。
「なんだなんだ?……って、こんな事出来るのはレイジだけだろうな。」
その通りだ。ブリュードルの真後ろから肩越しにファイアショットを放ってやったのだ。
そのオークは燃え盛る炎の中、膝から崩れ落ちていく。
「ブリュードルさん、お待たせ!」
「お前、俺がピンチになるまで見てたんだろ?」
人聞きの悪い。そんな陰険な事する訳がない。
とりあえず今ので、オークは今のオレの敵ではない事が分かった。
それならば蹂躙するだけだ。
「そんな訳ないでしょ。」
そう言いながら鋁爪剣を取り出す。
この一帯の魔物を一気に掃討するつもりでやる。
使うのは魔法剣炎。オレの使える最強クラスの技だ。
燃え盛る鋁爪剣を構え、目の前の二匹のオークを見据える。
一歩後ろに居たオークが咆哮とともに襲い掛かってくる。
と、同時に振り下ろされた鋁爪剣に一瞬で焼き切られていた。
もう一匹は怯み、半歩だけ後退る。が、これをルナとブリュードルは見逃さない。
ルナに胸を殴打され、前傾姿勢になった瞬間を、ブリュードルによって首を跳ねられたのだ。
最初にルナに殴り飛ばされた一匹は、飛ばされた先でブロンズランクの連中によって殺されていた。
「次行くぞ。」
「はいです。」
次は一番右。逆はケントが行ったので一先ずは大丈夫だろう。
此処で戦ってるシルバーランクの冒険者は既に虫の息だった。
かなりのピンチだ。
「ミルファ、あそこの一匹は任せた。」
ミルファは弓を構え、オレから一番遠い一匹を狙い射つ。
眉間を狙ったのだろうが僅かに逸れ、左目に命中した。
その間にオレは辿り着き、目の前のオークを胴体から真っ二つになぎ払った。
ルナはその冒険者に止めの攻撃をしようとしている一体に向かって戦棍を振り下ろす。
鼻と口から血を流しそのオークは倒れ込んだ。
残ってる一匹は思わず此方を見るが、その瞬間オレの一撃が首を通過していく。
その首はゆっくりと落ちていき、体もまた同じようにゆっくりと後ろに倒れていった。
ミルファによって最初に左目を射抜かれたオークはその後右目も射抜かれ、最後に心臓に打ち込まれ倒れていく。
倒れたのを確認すると、ミルファは直ぐに倒れてる冒険者に駆け寄り、ミドルヒールを掛ける。
殴られた傷なのでハイヒールではなくミドルヒールで十分だとの判断なのだろう。
その傷はみるみる回復していき、その冒険者は目を覚ました。
「かはっ…こほっ、う…助かったのか?」
「大丈夫そうだな。次行くぞ。」
シルバーランクの冒険者の無事を確認すると、オレ達は直ぐに次のオークに向けて走り出した。
この冒険者がそうだったように結構ギリギリなのだ。
次の場所ではオーク八匹を相手に、シルバーランク二人とケントの合わせて三人で戦っている。
更に言えば、これでも二匹は倒しているのだ。
その内の一匹は駆けつけたケントの不意打ちによるものだ。
しかしオークたちは動揺する事もなく、確実に三人を追い詰めていく。
一匹がケントに襲いかかる。
しかし、それを一人のシルバーランクが止めに入ると、それを狙っていたかのように、二匹のオークがそのシルバーランクに襲いかかる。
更にはそれに目を奪われたケントを含めた二人にも、其々に二匹ずつのオークが襲いかかって来たのだ。
三人は殴り飛ばされ、更に追い打ちを掛けてくる。
ケントは一瞬で意識を飛ばされる。それはほんの一瞬。だがその一瞬が命取りだった。
意識を失ってた一瞬で、既に一匹のオークに馬乗りにされていたのだった。
ヤバい。このままじゃ死んでしまう。ケントは本当の命の危機を感じた。
が、次の瞬間にはそのオークは首がなくなった状態で動かなくなっていた。
「危なかったな、ケント。」
「おせーよ、レイジ!」




