第74話 ブロンズランクへ最後の試練
昨日は二週間ぶりの3000PV、そして日間PVの最高記録を更新しました。
ブクマも間もなく200件。
これからも頑張りますので宜しくお願いします。
ブロンズランク試験の討伐対象はメノウグレート・メノウリザードオニキスのいずれかの討伐だ。
その対象をどちらも討伐したオレ達はロードプルフの街へ帰ろうとしている。
「なあ、俺はどうすればいいんだよー。助けてくれよー。」
このしつこい男はブリュードル。シルバーランクで今回の試験官だ。
オレが街で私財を叩き馬を購入して此処まで来た為、試験官達はオレ達に置いていかれる形になった。
試験官達がこのアゲトダンジョンに到着した時にはオレ達は討伐対象のメノウグレートを討伐した後だったのだ。
その後、もう一方の討伐対象のメノウリザードオニキスに殺される寸前の試験官達をオレ達が救う事になった。
結果、試験管であるこのブリュードルは俺以外の戦闘を確認しておらず、試験採点が出来ずに困っている訳である。
「そんなのテキトーに書いて全員合格でいいでしょう?ダメなんですか?」
「それで何か質問されたら何て答えたらいいんだ?困るだろうよ。」
「皆の戦闘スタイルは教えるから。そしたら何聞かれても大丈夫でしょう。」
そんな不毛なやり取りを見ていた、試験官でギルド職員の者が口を挟んできた。
「おい!そんな不正を我々ギルド職員が許すはずがないだろう?
そんな事をした時点でお前らは不合格確定だ。
ブリュードルは良くて降格か。まあ、それはどうでもいいか。
抑も我々を置いていって、勝手に討伐対象を倒したところで評価になる訳がないだろうが。
不合格だろうが自業自得って奴だな。馬鹿どもが。」
ニヤニヤしながら悪態を吐いてくる。
何故コイツにそんな事を言われなければいけないのだろうか。
「は?アンタは何言ってるんだ?抑もオレ達を見失ったアンタらに落ち度があるんじゃないのか?
だったらオレはその全てを報告するだけだ。
出発する前にギルド長が言った言葉を覚えているのか?
アンタらを居ない者として考えろ。確かにそう言ったよな?
だから居ない者として考え、オレ達は構わずに馬で此処まで来た。
ならば落ち度があるのは間違いなくアンタらだろう。
偉そうに言うなら仕事はしっかりこなしてみろよ。
あ、それとメノウリザードオニキスから救ってやった恩を忘れるんじゃねーぞ。」
あー、スッキリした。
絶対にオレのキャラの変わりように誰もが驚いてるだろう。
まあ、あんな事を言う奴が試験官だった事を嘆くしかないのかもしれない。
「いやー、鬼だわー。狙って置いてったくせにな。それにレイジって結構言うことは言うタイプだったんだなー。」
「何言ってるの?今の聞いてた?レイジさんは一切間違った事言ってないでしょ。」
「うん。レイジくんは間違ってないのです。」
女性二人はオレを支持してくれているが、オレはオレが正しいと思って行動した訳ではない。
ただ、オレの気持ちの赴くままに行動しただけなのだ。
正しさだけで言うなら、先ず初めから馬で行動する事を伝え、こんなに長ったらしく文句を言ったりしないだろう。
後はギルド長の判断次第だろう。
オレは実力は見せたが今のやり取りがマイナスだっただろうし、ケントとルナは抑も実力を見せていない。
問題ないのはミルファだけかもしれないな。
「でもあんなに怒って物事を言うレイジさんを初めて見ました。
ちょっと怖かったけど、カッコよかったですよ。」
「はいです。かっこよかったのです。」
不意にそんなこと言われたオレは思わず動揺してしまった。
その証拠にそんなオレを見てケントが腹を抱えて笑っている。
「いやー、お前らと居ると飽きないわ。将来独立する時にはお前らみたいなのと組んだら楽しいのかもな。」
「ウチは何時でもいいのです。レイジくんがチームを作るなら何時でも駆けつけるのです。」
今ので思い出した。
近い将来、ロードウインズを出て旅に出る事を。
今回無事合格し、ブロンズランクになったなら、その時はエイルに話を切り出すだろう。
そこから外までは、メノウリザードが現れる事もなく、外に出る事が出来た。
外に出ると陽が沈み始めている。
「少しゆっくりし過ぎた。急がないと暗くなるぞ。
ブリュードルさん、アンタらはどうやって此処まで来たんだ。」
「俺達はお前らを追って走って来たんだよ。馬をレンタルするだけの金も持ち歩いてなかったし、どうしようもなかったんだ。」
徒歩か。暗くなる前に帰るのは無理そうだな。
「ブリュードルさんはケントと二人で乗っていけるか?
ミルファはオレの後ろに来てくれ。それでアンタら二人はミルファの馬を使え。急いでくれ。」
咄嗟に判断したが、多分問題ないだろう。
ブリュードルとケントだと重量に不安はあるが。
ギルド職員はブツブツ何かを言っていたが、もう気にしないでおく。
気にしたら多分怒りが再燃しそうだからだ。
急いで戻ったお陰で、ギリギリ周囲が見える間にロードプルフの街へ帰還する事が出来たようだ。
ギルドに着いた時には既に真っ暗になっていて、結構危なかった。
時間的にも遅いからだろうか、ギルドのカウンターも既に落ち着きを散り戻していた。
「では、ギルド長を呼んでくる。そのまま待機しておく事だ。」
ギルド職員はそう言うと、二人でギルド長室へと向かっていった。
「アイツ等何しについて来たんだろうな。」
ケントがそんな疑問を投げかけてきた。
「そう言わないでくれ。あれでも試験官として長年やってきてるんだ。そのランクの強さを熟知してるのはあの二人だけなんだよ。」
そうなのか。ブリュードルが冒険者目線で見て、あの二人が今までの合格者から判断するという役割があったようだ。
という事は、オレ達の試験官を置いていくと言うのは、歴代の中でも異常行動だったのかもしれない。
まあ、それでもオレは自分の行動が間違ってたとは思わないが。
「はぁ~~……報告するの嫌だわ~。」
今まともな事を言ってたと思ったら、急に溜息をつくブリュードル。
もう今更だから諦めればいいのに。
「お疲れ。今日中に戻ってくるとはな。」
ギルド長がやってきた。
その後ろから試験官をしてた二人もついて来ている。
「話は聞いたぞ。メノウリザードオニキスを倒すとはな。流石だ。」
あの試験官の二人がその報告をするとは。オレに文句を言われ、何かしらの嫌がらせを予想してたが杞憂だったようだ。
「ブリュードル、腕は大丈夫か?メノウリザードオニキスに飛ばされたと聞いたぞ。
それをミルファが治したともな。マリーがそこまでの傑物を育てるとはな。
ケントと……ルナ……だったな。お前達はメノウリザードオニキスからこの二人を守りながら戦ったと聞く。素晴らしい功績だ。
お前達三名のブロンズランクへの昇格を認めよう。よくやった。
レイジは……残念だが今回は見送らせてもらう。次回頑張れよ。」
まさか……オレだけが落ちた……?
何故……
その時試験官の姿が頭を過り、すかさず二人を見た。
試験官の二人は手で口元を隠しているが、その目には笑みがこぼれている。
その時に全て理解した。
ギルド職員という立場を使ってオレを陥れたのだと。
「待ってください!」
オレが怒りに震えてる中、声を上げたのはブリュードルだった。
「コイツ……レイジは何故不合格なんですか?抑も俺は一切報告してませんが。」
「ブリュードル。お前はレイジと道中かなり仲良くしてたようだな。試験官は受験者と会話をしてはいけない。忘れたか?
しかも二人で虚偽報告をするよう話してたと聞いたぞ。
証拠も無いからそれに関しては不問とするが、そのような疑いがある以上、お前の報告は当てにできないと判断させてもらった。」
それ自体に嘘はない。確かにそんな話はしていた。
だがブリュードルはそれを断っているはずだ。
そう考えると、ブリュードルも嵌められた一人のようだ。
このギルド職員はどうしようもない奴だ。
「な……確かにそれは……し、しかし、単独でメノウリザードオニキスを討伐してるんだ。不合格はおかしいでしょう?」
「……と言ってるが?」
「ブリュードルさんが討伐したのに、それをその者の手柄にするとは……嘆かわしいことです。」
「ふむ……双方の意見に食い違いがあるようだな。では受験者に聞こう。メノウリザードオニキスを討伐したのは誰なのだ?」
「「「レイジ(さん)(くん)です(だ)!」」」
「ギルド長、別にメノウリザードオニキスじゃなく、メノウグレートでもいいんですよね?」
「ああ、問題ないが、報告では4階層までしか行っていないと聞いてるぞ。」
その時オレは口元に笑いを浮かべていた。
反撃のチャンスが来たんだと。
アイテムボックスを開き手を掛ける。
「コイツがメノウグレートを倒してきた証拠です。」
そう言ってメノウグレートを目の前に出した。
虚偽報告をしたギルド職員は目を見開いて固まっている。
ブリュードルも驚いてはいるが、倒した事については伝えているのでそこまでではない。
「これは……間違いなくメノウグレート……おい、どういうことだ。」
「いや、これは……何かの間違いで……」
その後、ブリュードルによって全てが伝えられた。
開始からオレ達を見失った事から、オレとギルド職員との確執の事まで全てを。
その結果、オレのブロンズランクへの昇格も認められ、虚偽報告をしたギルド職員も処罰を受けることになった。




