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第71話  選択

「此処が2階層への階段だ。」


 オレ達は此処まで2匹のメノウリザードを倒し、これより2階層へとその歩を進める。


「なあ、次も任せてもらっていいか?」


「またかよ。今戦ったばかりだろ?次はオレの番だ。」


「いや、さっきのはミルファの腕前を見せただけだろ?次はオレの実力を見せなきゃな。」


 オレは余裕の笑みを浮かべながらそう言い放つ。

 この言葉にはケントも反応を示した。


「いいぜ。見せてみろよ。自信満々なその実力ってヤツをよ。」


 思いの外ちょろい奴だ。

 まあ、これでオレの力の一端を見せれば本番で思うように戦えるだろう。



 そして現れたメノウリザード。

 オレはアイテムボックスから鋁爪剣(りょそうけん)を出すと素早く身構えた。

 ミルファはガードの魔法をオレに掛ける。


 メノウリザードは、一歩、二歩とゆっくり此方へ近づいてきている。

 お互いの間合いまで残り二歩。オレは魔法剣氷を発動させた。


「なっ……ま、魔法剣?」


 ケントのそんな声が聞こえたが、反応はしない。

 残り一歩。そしてメノウリザードは飛びかかってきた。

 しかし、それに合わせたかのように俺の剣が振り下ろされた。

 結果、メノウリザードは頭から胴の前半分が真っ二つになった状態で凍りついていた。


「……マジかよ。パウロさん並じゃねぇか。」


「レイジくんってこんなに強かったです?前は手を抜いてたのです?」


 二人は驚きと共に、その強さに尊敬すらしていた。

 これもオレの狙いの一つだった。

 ゴールドランク並みの強さを見せつけ自分の言う事を聞かせる。

 これにより、この試験の間思うような戦闘をする事が出来るようになると考えていた。


「よし、まあいい感じだな。」


「この相手だったら氷じゃなくてもいいような気もしますね。少し抑えても問題ないですよ。」


 ミルファのこの言葉が、今のオレの攻撃が平常運転だという事の証明になっただろう。

 ナイスアシストだ。


「レイジくん……この間一緒した時は今の使ってなかったです。」


「ああ。あの時は魔法剣を使わないようにしてたからな。今はもう解禁したからいくらでも使うぞ。」


「はあ~……やっぱりレイジくんは凄いのです。」


 本来ブロンズランク以上でなければ魔道書の閲覧は出来ない為、ブロンズランク試験を受ける人間が魔法剣を扱うなどありえない事なのだ。

 オレはロードウインズという最強パーティに所属しているお陰で、王立図書館での閲覧を許可された。

 しかし、皆の記憶が無くなった以上、試験官の前で使うのは危険だろう。

 そんな試験官がいないなら、魔法も魔法剣も使っても問題ないはずだ。


「お前……何なんだ?」


「何なんだって言われてもな……ロードウインズのレイジだな。」


「フッ……だっはははっ、分かった。俺はレイジに合わせてやる。その方が強敵が出てきた時に対処がしやすいだろ。」


 ケントは頭はイマイチだと思っていたが、なかなかの切れ者だった。

 この短時間で現状を把握し、オレに合わせると言ってきた。

 強さを測れるだけでないく相手の強さを認める事も出来るというのは誰にでも出来る事ではない。

 この先ケントは間違いなく強くなるだろう。レイジはこの時確信したのだった。


「この先は皆で戦ってドンドン進んでいこう。それで今日中に帰れば最高だろ?」


 無理かもしれないが、それが皆のモチベーションになれば最大のパフォーマンスを発揮できるはずだ。

 先へと進み、出てくるメノウリザードを次々と倒していく。

 ちょっと余裕過ぎるくらいに順調だ。


 二階層が終わり、3階層へと降りていく。

 此処はただ広い空間だ。

 初めて来た時に野営したフロアでもある。


「このフロアはただ真っ直ぐ進んでいくだけだ。

 その代わり全てのメノウリザードを倒していく必要があるからな。」


 ケントとルナにこのフロアの特徴を説明し、更に進んでいく。

 オレは先程からは魔力を使わずに単なる剣術だけで戦うようにしている。

 何故か。それで十分だからである。


 一回に相手にするメノウリザードは多くても二匹までだ。

 そして此処にはなかなかに頼もしいメンバーが三人も揃っている。

 二組に分かれて戦うなら、其々が一匹だけを相手にすればいいだけなのだ。


 このメンバーはロードウインズには劣ると思って行動していたが、実際は各々の役割をしっかり行って行動すれば何の問題もないと実感させられた。

 今まではエイル達に助けられてただけで、本来のパーティの姿とはこのような形なのかもしれない。

 このメンバーで戦っていると、そんな事を考えたりもしていた。


 オレ達四人で、合計50匹程倒しただろうか。

 漸く4階層への階段に到達した。

 前回の時よりこのフロアのメノウリザードは、若干多く生息していたようだ。

 4階層へ降りる前に皆と打ち合わせを始める。


「これから4階層だけどどうする?」


「どうするとはどういうことでしょう?」


「オニキスを探すか、真っ直ぐ5階層を目指し、メノウグレートを狙うか。」


「近い方が楽でいいだろ。考えるまでもねぇ。」


 前言撤回だ。どうやらケントは脳筋タイプのようだ。

 此方が何故聞いてるかを考えてないな。

 事戦闘に関してだけは頭が回るタイプのようだ。


「どっちのほうが倒しやすいです?」


「オレもミルファもメノウグレートは遭遇してないから分からないんだ。

 だが、オニキスは強い。あの頃はオレもまだ弱かったから正確には把握出来てないが、多分シルバーランクでもそこそこ苦戦しそうな強さだったぞ。」


「そうですね。あの時、私とレイジさんは何も出来なかったから……」


「それってかなりヤバい相手じゃねぇか?」


 ケントの質問にオレとミルファは黙って頷く。

 そんなオレとミルファの様子を見て、ケントはその恐ろしさを理解したのか、生唾を呑み身震いした。


「まあ、そんな訳でオレは5階層でメノウグレートを希望するけど、皆はどうだ?」


「私もそれがいいですね。」

「ウチもです。」


「……そんな事聞かされたらそれしか選択肢がねぇだろ!オレもそれでいいぞ。」


 ミルファとルナは有無を問わずに賛同してくれた。

 そしてケントもオニキスの恐ろしさを理解したのか、5階層行きで納得したようだ。


「それじゃあ4階層は慎重に進んでいくぞ。万が一オニキスに見つかったら一大事だからな。」


 方針を定めたオレ達は4階層へと下っていく。


 メノウリザードオニキスは滅多に出現しないレアモンスターだ。

 普通ならこの4階層に10回来ても出会う確率は10%程だろう。

 つまり出現率は1%。前回はその100分の1を見事に引き当てた訳だった。

 今回も遭遇するとなったら100分の1の二乗なので10000分の1なのだ。

 流石にそれは無いだろう。

 そして、一行の不安を余所にメノウリザードオニキスは現れる事なく、4階層を抜ける事になる。


「なあ、この赤い液体って何なんだ?」


 ケントが恐る恐る聞いてくる。


「ああ、これは赤色油だな。たしか、工業用の油として使われてるって言ってたな。」


「そうなのか。血溜りじゃないならどうでもいいや。」


 この反応から察するに、かなりビビって聞いてきたのだろう。

 しかし、可哀想だからそこは弄らずにそっとしておいてやるか。


 このフロアは部屋毎に区切られている。

 そんな中を、マップのスキルを使いながら最短距離で、且つ慎重に5階層へと向かっていった。


「オニキスは出なかったな。此処から5階層だけど、オレもミルファも初めて行くからな。

 どうなってるのか分からないから、十分注意して進んでいこう。」


 全員に警戒を促し、階段を下っていく。


 階段を下りた先には、大きな扉があるだけだった。


「レイジさん、これって……。」


「ああ、間違いないだろうな。ボス部屋だ。」

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― 新着の感想 ―
[一言] まーいいんだが、パウロさん並と評価したレイジがいれば、オニキス狙いでも良かったんじゃなかろーか(^^;)
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