第07話 雨のギルド
昨日は初の1日100PV~♪
自己満足の為に始めたのが読者がいるのに驚いている今日この頃です。
これからも見ていただけると幸いです。
目が覚めると何やら音が聞こえる。これはまさか…。
窓の外を見てみる。大雨だ。この世界でも雨は降るみたいだ。
こんな日は出たくない。幸いにもまだアイアンランクの為、常設依頼しか受けることが出来ない。
その為、前日に依頼を受けたりはほぼ出来ないのだ。
朝食を食べながら今日一日をどう過ごすか考える。
周囲からもため息や文句、諦めの言葉が飛び交っている。苛立っているのか、声のボリュームも普段より上がっている。
そういえば、雨だからこそ採取出来る素材ってあるのだろうか?そういうのを採取すれば結構稼げそうだとな。
しかし、レインコートみたいな物は用意していない。雑貨屋も行っておけば良かったと、今更ながら後悔している。
かと言ってここで無駄に一日を過ごしたくはない。いや、以前は休みを無駄にダラダラして過ごしていたんだけども。折角の異世界でそういう時間の使い方はしたくはないのだ。
朝食を食べ終え、部屋で準備を済ませると、とりあえず一階の受付前まで行く。
他の冒険者達も一階で集まっている。
レストランも席が半分しか埋まっていないようだ。一般の町民も今日は出歩かないよな。
ここからギルドまで、走れば一分も掛からずに着くだろう。とりあえずそこまで行ってみるか。
勢いをつけて、せーので走り出した。オレが走り出したのを皮切りに、他の冒険者も後を追うように走り出す。
兎に角全力で、それでいて足元の水は極力跳ねないように、水たまりを避けながら走った。
早かった。でもかなりビチャビチャになってしまった。
今日のギルドは空いていた。それでも掲示板を見に来ている人たちは一定数いる。
「ドライ必要な方いませんか~。三百Gですよー。」
大きい声で呼びかけている熟年女性がいる。
ドライ?何を売っているのか、気になったので話しかけてみる。
「すみません。ドライってなんですか?」
「はい、いらっしゃい。ドライは乾燥の生活魔法ですよ。雨に濡れてしまったでしょ?そのままでいるのが嫌な人に掛けてやってるの。三百Gでどう?」
魔法!そうだ、異世界といえば魔法なのだ。全く盲点だった。今まで見る機会が無かったのもあるが、魔法があってこその異世界だ。
魔法、それは我々の夢なのだ。それが現実に使える世界にいる。
見てみたい。いや、出来ることなら使ってみたい。とりあえずそれを見る機会が目の前にある。
ここで断れば今日一日後悔して過ごす事になるだろう。答えは一瞬で出てた。
「是非お願いします!魔法って初めてなんですよ。」
興奮を隠しきれず、前のめりになって女性に答えた。
「あら?珍しいわね。まだ駆け出しかしら?冒険者としてある程度熟練の域に達すれば生活魔法くらい使えるわよ。まあ、そういう初な子を相手に商売してるんだけどね。」
「そうなんですか?昨日初めて依頼をこなしたばかりで。まだ全くの無知なんです。」
「そうなの、これから頑張ってね。そうだ、二階の資料室にいけばそういう事は調べることが出来るわよ。一度見に行ってみたら?とりあえず掛けるわよ?三百Gいい?」
資料室なんてのがあるのか。講習で教えて欲しかった。
三百Gを渡し、ドライを掛けてもらう。全身に一気にドライヤーで乾かすような、程よい熱風が全身を巻くように流れる。ものの三十秒程で終わったが、それは見事に乾いていた。
考えたらこの世界の知識を全く得ていなかった。魔法なんてのも、今初めて知ったわけだ。
今後の事も考えたらここらで一度、この世界ならではの常識から冒険者として生き抜く知識、魔法やスキルについても調べたほうがいいだろう。
幸いにも今日は雨。しかもたった今、資料室のことも聞いた。
今日は依頼を辞めて、資料室へ行ってみるか。
冒険者ギルドの資料室は、街の王立図書館に次ぐ蔵書量を誇っており、魔物・スキル等の戦闘系、植物や鉱石等の自然産物の図鑑においては王立図書館以上とも言われている。
そんな資料室には暇を持て余した冒険者が集まりだしていた。
何から調べようか…そう思いながら本を見渡す。ふと一冊の本に目がいった。
『冒険者とそのジョブについて』
気になり手に取りめくっていく。その本には基本職と呼ばれる初級のジョブとそれに転職するための条件が書かれてた。
その中でも目を引いたのが、『魔道士』だ。
条件は、どれか一つの魔道書の閲覧・一定以上の魔力だそうだ。
探せばここにも魔道書があるのではないか。その本を手に持ったまま、魔道書を探す。
何処にも見当たらない。此処には置いていないのだろうか?そんなことを思いながら、職員に訪ねてみた。
「魔道書は貴重品の為、ブロンズランク以上が入ることが出来る特別室に置いてあります。」
とのことだ。残念だ。早くそのランクまで上げてこなければ。
「生活魔法の事でしたら、こちらの本にも書かれていますよ。」
そう言って一冊の本を渡された。それを受け取り、他にも気になる本、全部で六冊程を手に取り席に座った。
一冊目は先程目を通した『冒険者とそのジョブについて』
二冊目が職員に渡された『冒険者、その能力の全て』
三冊目は『ロードプルフ周辺の知識』
四冊目は『魔物大全』
五冊目が『世界の植物と逸話』
六冊目、『ファスエッジ王国の歴史』
本を読み続けて数時間、時間的には昼頃だろうか、小腹が空いてきたので一階の食堂兼酒場へ向かった。
そこは朝に比べて活気に包まれていた。というよりも、昼にして既に飲み始めている人たちで溢れている。
カウンターでパンとスープを注文し、空いている席に座る。直ぐに出来上がり、持ってきてくれた。
辺りの五月蝿さに顔を顰めながら食べていると、一人の女性が話しかけてきた。
金髪のボブカットに赤いヘアバンド、整った顔立ちの可愛い女性だ。
「すみません。ここ空いていたら一緒していいですか?」
顔を見てみると、どことなく見覚えがある。しかし思い出せない。
とりあえず「いいよ」と伝え、思い出そうとしていると、
「おーい、ミルファ!あ、そこか。」
食べ物を持った男性が近づいてくる。
こちらは茶髪でショートウルフ系の髪、まだ幼さの残るやんちゃ小僧って感じの男性だ。
「あ!ケント、こっち~。すみません、もう一人一緒させて下さい。」
ミルファ・ケント……思い出した。最初の講習で一緒だった二人組だ。
「自己紹介がまだでしたね。私はミルファ、昨日神殿で冒険者のジョブにしてもらったばかりなんです。こちらがケント、同じく昨日冒険者になったばかりの初心者です。仲良くしてください。」
「よろしくなー。」
「オレはレイジ。てか、登録した時の講習で一緒だったよな?」
記憶が間違ってないか確かめるように聞いてみた。
「あ!あの時もう一人いたヤツかー。思い出したわ。」
ケントは思い出したようだ。ミルファは首を傾げている。わからないらしい。
「じゃあ、あんたも今日から依頼を受けようとして来たのか?一緒だな!でも、この雨じゃ行く気も無くすよな。」
「いや、オレは昨日、初依頼はこなしてきたんだ。今日は雨だから調べ物をな。」
「は?ジョブに就かずに依頼受けたのかよ!気合入ってるなー。いや、命知らずなだけか。」
「こら、そんな言い方ないでしょ?相手の気持ちになれってずっと言われてるでしょ。」
しまった。オレは『ジョブ』の能力で何時でも転職出来るが、普通は神殿に行かないと出来ないのを忘れてた。
「オレは元々鍛冶師をやっててジョブも鍛冶師なんだよ。多少は戦闘能力はあるから、そのままやってるんだ。」
うん、嘘は言っていない。2ジョブを冒険者にしただけだから。
「そうなんですか?前職があるなんて、若く見えるけどそうでもないのかな?」
「バッカお前、小さい頃から修行してきたに決まってるだろ!わかれよなー。」
「ははっ。オレはまだ17だぞ。二人は?てか、どういう関係?恋人?」
「何言ってるんですか~、ケントとは同じ孤児院で育った幼馴染みたいなもんですよ!ちなみに二人共16歳です。」
「コイツと恋人とか笑えるだろ~。オレはメイさん一筋だし。」
違った、カップルだと思ってあの時イラッとしてしまっていた。申し訳ない。
「私たちも成人したので、働いてお金を稼がなきゃいけませんから。育ててくれた孤児院に少しでも恩返ししなきゃ。」
「オレはメイさんの為だけどな。メイさん、いつも大変そうだから少しでも楽にさせる為だし。」
「二人共しっかりしてるんだなー。すげーわ!」
心からそう思った。
「これも何かの縁だし、これからもよろしく頼むな。」
右手を出し、二人と握手を交わし再び資料室で本を読み、知識を詰め込んでいった。
本を読んでて思ったのが、強さの概念が曖昧だったことだ。
レベルというわかりやすい指針があるにも関わらず、大体これくらいという表現が多かったのだ。
「もしかしたら他の人にはステータスが見えていないのか?」
ふと、口に出していた。しかし、鑑定士というジョブに就いている者もいるのだから、レベルのことが分かっててもいいはずだ。
そこで達した答えは、鑑定士もレベルは分からないという事。もしかしたら人物の鑑定は出来ないのではないか?
あくまで仮定である。答えが出ない以上考えても意味がない。
用意した本を一通り読み終わる頃には既に薄暗くなっていた。
軽くストレッチをして片付けをし、そこから出ていった。
ギルドのロビーに出ると、そこは昼よりも賑わっていた。
雨の中依頼や探索を行っていた者が帰ってきている。
よくやるな。と思いつつその場を離れようとしていると、
「レイジさん、今から帰るんですか?」
ミルファだ。この娘もまだいたらしい。
それにしてもホントに可愛いな。こんな娘が冒険者なんてやってて襲われたりしないのだろうか?
「何処にお住まいなんですか?」
「ああ、食楽亭に泊まって活動してるんだ。」
「えー?それだと赤字になりませんか?大丈夫なんですか?」
実際月光花が採れないと結構厳しい。しかし、家を借りるにしても先立つ物がないと無理なのは現代人の常識なのだ。
「実際は厳しいけどな。今は何とかなってるからゆっくり考えるよ。じゃ、またな。」
そう言って、オレはその場を去った。
既に雨は小雨になっており、少し小走りくらいで帰れば問題ないくらいになっていた。
小雨になったこともあり、食楽亭はまた賑わっている。
この日までしか泊まることになっていないので、更に三日分支払いをしてこの日は終わった。
再登場の2人でした。
これからも登場するのかは全然未定です。