第59話 浜辺の洞窟
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大変喜ばしい事であります。
今後も精進致しますのでよろしくお願いします。
この時間のギルドは混んでいる。
そういえばそうだった。この時間はこの混みようなので避けるべきだったのだ。
これだとルナを探すのも一苦労だ。と、思っていたのだが、
「あ!ミルファちゃん発見です。」
と、簡単にルナが見つけてくれた。
よく見つけられたな。と感心していたが、聞くとオレ達の匂いを覚えているらしく、その匂いを感じたので此方に来たらしい。
流石は犬の獣人と言うべきか。
ともあれ、無事合流出来、挨拶もそこそこに出発しようとする。
「元々東の森に行く予定だったんだけど、昨夜止められたんだよね。だから浜辺の洞窟にって事にしたんだけど大丈夫?」
「東の森はウチも言われてるのです。絶対に行くなって。浜辺の洞窟ですか。だったらウチに任せるのです。普段から行ってるから詳しいのです。」
ブラッドローズの普段の活動場所こそが浜辺の洞窟であり、市場に出回ってる浜辺の洞窟の魔物素材の半数はブラッドローズが持ち込んでると言われる程だ。
「今日は姉さまがギルドの呼び出しを受けてるので他のメンバーもお休みしてるのです。
多分洞窟の中にもそこまで人はいないと思うのです。」
「ソニアさんも?エイルさん達三人もギルドに呼ばれてるんだ。ゴールドランクが揃って呼び出しだなんて、また何か問題でも起きたのかな?」
ゴールドランクが四人揃って呼び出しだなんて絶対に何か問題が起きたのは間違いないだろう。
もしかしたらマッドネスサイスのパウロも呼ばれ、この街のゴールドランク全員が呼ばれているかも知れない。
「まあ、考えても仕方ないですよ。早速行きませんか?」
「あ、待って欲しいのです。」
ミルファはオレたちの手を引っ張って行こうとしたが、ルナは待って欲しいという。
「どうせなら依頼受けて行ったほうがいいと思うのです。その方がお金になって皆が潤うのです。」
確かにその通りだ。
最近大金を手にした為か、金に関して無頓着になってたかもしれない。
ただ、オレ達は浜辺の洞窟に出てくる魔物の種類すら知らないのが現状だ。
すべてルナに任せるしかないが、それも仕方ないだろう。
「じゃあ、この二つを受けるのです。これなら浅いフロアでも十分に狩れるから問題ないのです。」
ルナが選んだのは『サハギン討伐依頼』『キラークラブの足納品依頼』の二つ。
いずれも日帰り出来るくらいの浅いエリアに出てくる魔物で見つからないという事もまずありえないという事だ。
サハギンは以前オレも戦ったことがあるので楽に倒せる事も知ってる。まず問題ないだろう。
浜辺の洞窟までは一時間も歩けば着く距離だ。
入口が縦穴になってるので、魔物が溢れてくる心配も殆どないようだ。
直径三メートル程のその縦穴の入口には梯子が設置されていて、五メートル程下っていく。
そこからは少しずつ穴が大きくなっていて、螺旋階段を下っていく。
底までたどり着くと、そこからはダンジョンのような迷宮になっていた。
「此処が浜辺の洞窟……まるでダンジョンだな。」
オレの言葉にミルファは頷き、ルナは首を傾げている。
「ダンジョンもこんな感じなんです?行ったことないから分からないのです。」
「そうよ。アゲトダンジョンだったらホントにこういう感じかな。ファスエッジダンジョンはもっと人工的な作りだけどね。」
「多分ルナもその内行く事になると思うぞ。冒険者なら誰だって行くだろうからな。」
普段からそこそこの数の冒険者が来ているこの洞窟は、入口周辺に魔物はまずいないだろう。
オレ達はこんな感じで話しながら奥へと進んでいく。
少し歩くと大きな地底湖に辿り着いた。
「ここから先はドンドン魔物が出てくるのです。二人共注意するのです。」
ルナがそう言った直後、地底湖の湖面よりサハギンが三匹飛び出してきた。
話し声に寄ってきたのかもしれない。
直ぐに構えるミルファとルナ。
「二人共ちょっと待って貰っていいか?新武器の性能を確認したいんだ。オレにやらせてもらいたいんだ。」
オレは戦闘態勢に入っている二人を静止させ一人前に出て行く。
「待つのです。いきなり三匹同時に相手するのは……」
「ルナちゃん。大丈夫だよ。見てて。」
ミルファに諭されルナは黙って見守る事にした。
ただ、何かあった時にオレを助ける事が出来るように、警戒は怠らない。
前に出たオレは、アイテムボックスよりひと振りの剣を取り出した。
白銀に輝く刃渡り一メートル程になる大剣。
その名も鋁爪剣である。
その大剣を片手で取り扱う。傍から見たら怪力の男に見えるだろう。
魔物の爪とジュラルミンから作られたこの剣は、僅か300グラム。
一般的な剣の重量が1000グラムである事から考えると、異常なまでの軽さだという事が分かる。
その剣を取り出すと同時にサハギンに向かって走り出す。
勿論その前にミルファはガードを掛けている。
サハギンは即座に反応し、一匹が迎え撃つが、伸ばした腕を切り落とし、その勢いのままなぎ払うと胴が真っ二つに分かれた。
それを目の当たりにした残りの二匹は、同時に襲いかかってくる。
サハギンは左右に分かれ、挟撃体勢をとって攻めてくる。
オレは右にステップを踏み、そのままジャンプ。右から来たサハギンに体を寄せ、その爪での攻撃を出す前に押さえつける。
そのまま爪を受け流していき、空いた背後を切りつけて二匹目を討伐。
すかさず切り返し、三匹目に刺突を繰り出す。
サハギンは腕で抑えようとするも、腕を貫き更にはその勢いのまま頭まで貫く。
一瞬でサハギン三匹を葬り去った。
特筆すべきはその剣の性能である。
切りつけた攻撃はその全てが相手を両断し、その突きも貫通しているのだ。
自分が思った以上の攻撃性能に思わず恐怖を感じる始末だ。
「す、す、凄いのです。レイジくんの強さは姉さまと同じくらいなのです。
サハギン三匹を一瞬で倒すなんてレベルが違いすぎるのです。」
「レイジさん、それが新しい剣ですか?綺麗……。」
「持ってみるか?持ったらこの剣のスゴさがわかると思うぞ。」
そう言ってミルファに鋁爪剣を手渡す。
「え?なんですか、この軽さは?普通の剣の半分もない……これがレイジさんの新たな剣……。」
更にルナも持ってみる。
「ホントなんです。すごく軽いのです。しかもあの切れ味なのです。これは名剣で間違いないのです。」
ここまで褒められると逆にむず痒くなってくる。
まあ、制作した自分でさえ、その切れ味に驚いてるのだ。
ほかの人から見たら多分それ以上なのだろう。
しかし、ここまでその身体が真っ二つになってるとアイテムボックスに入れるのも躊躇ってしまう。
それでも無事アイテムボックスに入れ、先へと進んでいく。
因みにルナはアイテムボックスの事を既に知っているので問題はない。
ここからは全員で戦っていく。
ミルファは補助魔法と弓で。ルナの武器は戦棍のようだ。
「戦棍とはまた少しマイナーな武器を使ってるんだな。」
「殴るだけだから扱うのがわかり易いのです。でもハンマーじゃ重くて持てないので、これくらいが丁度いいのです。」
ルナの可愛らしい見た目に反して、その戦う姿は何ともシュールな絵面になっている。
出てくる魔物を只管殴りつける。まあ、この戦い方なら戦棍は最適なのかもしれない。
そして、ルナの先導で進んでいくと、洞窟内の砂浜に出てきた。
此処には結構多種の魔物が姿を現すようだ。
亀型のストンタートル、海老型のマッドロブスター、烏賊型のツーヘッドスクイードなど、珍しい魔物が次々に飛び出してくる。
そして、目的のキラークラブが姿を現す。
「コイツだろ?キラークラブって。鋏がヤバそうだな。」
「そうです。あの鋏でやられたら命がないと思うのです。でも動きはそこまで早くないからちゃんと交わせば問題ないのです。」
ミルファは顔を目掛けて撃っていき、ルナは腹を中心に殴りつけている。
「斬るなら関節か……。いくぞ。」
オレは走りだし、一番下の足を斬りつけた。
切られた足は宙を舞っている。
いけると判断したオレは、二本目、三本目と切り刻んでいく。
キラークラブは怒り狂い暴れだしている。
そして鋏を振りかぶり、真下にいるルナ目掛けて振り下ろした。
が、すかさずオレはその鋏を切り落とす。
ルナは間髪入れずに腹を殴りつけ、ミルファの矢が目の間に刺さったと同時に崩れ落ちていった。
「ふーっ、強かったなー。こんなのといつも戦ってるのか?」
「……違うのです。いつも戦ってるキラークラブはこんなに動きが早くはないのです。」
ルナは青褪めながら答えた。
普段と違う強化された魔物。
どういうことだ。とレイジは思っていたが、直後その答えを知る事になる。
「ねえねえムニン。あのカニさん倒されちゃったよ。」
「そうねフギン。カニさん思ったより弱かったんだわ。」
その声に振り返ると、漆黒のローブを身に纏った少年と少女がそこに立っていた。




