第55話 お金持ち
今日で漸くギルドへ素材を運ぶ日々も終わりを迎える。
まあ、報酬を貰いに明日も行く事になるとは思うが。
朝食を食べ終わると、早速昨日の続きである武器制作を再開させた。
既に焼入れは済ませてある。
この日は焼戻しから始める事にする。
焼入れの時より低温加熱し、冷却。
ここまでで強度は出ているだろう。
更に3時間程加熱し、組織を均一化、軟化を促し加工を容易にさせていく。
所謂焼鈍というやつだ。
ここまでで既に時間は正午過ぎである。
この日の完成はないのではないかと不安になってきた。
ここからは錬成で処理していく。
刀鍛冶でいう砥ぎに当たる作業を全て錬成で処理していった。
こうする事で所要時間の大幅短縮が可能になる。
ここからがオレにとっての鬼門になる。
其々の素材の結合を錬成にて行うのだが、この成功は単純にスキルレベルに依存される。
その為、思い切ってスキルポイントを200程使ってスキルレベルを5まで上げる事にした。
この状態で芯に使うレッドグリズリーの爪、切先に使うキラータイガーの爪、そしてジュラルミンで出来てるカッティングエッジを馴染ませるように接合していく。
多分、前世からの人生でここまで集中した事は無かったのではないか、と思うくらい集中していた。
そして、成功した。
グリップはまだ無いが、鍔は既に作ってある。
ここまで出来たら後は直ぐだろう。
今日もギルドへ行く準備を始めるとしよう。
因みにこの三日間、ミルファは調合に精を出していた。
その成長が馬鹿に出来なく、既にそのスキルレベルは5に達していた。
しかも作ってるポーションを鑑定してみたら、なんとミドルポーションとなっているではないか!
ミドルポーションはポーションの上位にあたり、ハイポーションの劣化版になる。
ポーションの性能は、全治5日~10日程の傷や打ち身などを回復させるのに対して、ミドルポーションは10日~20日くらい掛かる裂傷や打撲、少しの骨のヒビまでも回復させる事が可能だ。
完全な骨折までも治してしまうハイポーションには及ばないとしても、冒険者や兵士からはとても重宝されている回復薬なのである。
ミルファは既に、その性能のミドルポーションを20本程生成していた。
因みにマリーも調合は出来るらしいが、ミドルポーションをギリギリ作れるレベルらしい。
それを考えると、ミルファは天性の才能を持った天才だということが分かる。
それでも本人はそんな事を歯牙にも掛けず、只管調合を続けていく。
努力する天才。前世の時にもこのタイプはいたが、唯唯尊敬するばかりである。
「あ、そろそろギルドへ行くんですか?私も行きます。」
今日もミルファは一緒に来ると言ってる。マリーはディルと食材の買出しに行くらしい。
野菜と魚のストックが結構減ってるようだ。
ホントはオレが行けば荷物も待たずに済むのだが、たまにはゆっくり食材を見てきたいとの事で二人が行ってくれるらしい。ありがたい事だ。
エイルは最近のこの道中、頗る機嫌がいい。いや、それは全員がそうなのかも知れない。
ずっと笑顔で鼻歌まで歌っているのだ。
まあ、気持ちも分からないでもない。ここまで受け取った売却額は3375万Gにもなっているのだ。
この額なら、新たに屋敷を建てる事も可能な金額だ。
しかも高級な素材分はこれからなのだ。最終的に幾らになるのか、少し恐ろしく感じてしまう。
昨日より早い時間に来た為か、まだ人は疎らのようである。
もう既に受付嬢は此方を見てもスルーしてる有様だ。
そろそろオレも顔を覚えて欲しいとも思ったりしているが、この調子ならまだ無理だろうなと思ってしまう。
解体場では昨日の分が少しだけ運び終えていなかった。
既に部位別に解体の終えているトロル肉が並べられ、順次運び出されている最中のようだ。
オーグストンは此方に気付くと、もうすぐ終わるから少しだけ待ってくれとの事だ。
「今日で終わりですので、なんかすみませんでした。」
「気にするな。ギルドとしては大儲けだし、俺達も特別ボーナスが支給される事になったからな。
ロードウインズ様様だぜ。だーはっはっはっ。」
「そうかい。んじゃあ俺達も強くなってるし、解体が大変なカチカチな魔物ばかり狩ってくるかー!」
「そういうのは頼むから勘弁してくれ!アイアンプラントとか本当に大変だったんだからな!」
などと談笑しながら運び終えるのを待っていた。
「オーグストンさん、これで運び出し完了でーす。何時でもオーケーでーす。」
仕出し用通路からゴーサインが出て、最後の素材を出していく。
爪だけが無くなっているキラータイガー、レッドグリズリー、ファイタードラゴンの三種にワイルドドレイクなどのドラゴン。それにアイスホークなど明らかに素材価値がありそうな魔物を300匹程、その場に並べていった。
「何となく予感はしてたが、やはり最後にコレが来たか……。」
床に敷き詰められたドラゴン種を見ながらオーグストンは小さく呟いている。
まあ、これだけ多種多用な魔物が出てくる中、ドラゴン種が全くいないのは違和感があるだろうな。
流石に四日目ともなると、ある程度の予想がついてた為か、驚きもなく淡々と作業を進めていく。
それはそれで少し寂しい気持ちになるものだ。
ともあれ、これで無事に全ての素材を引渡し終え、後は換金を済ませるだけになった訳だ。
昨日の分の査定額の確認に入る。が……オレは目を疑った。
167,000,000G
一、十、百、千、万……1億6700万Gだった……。
「これ……桁間違ってません?」
念の為聞いてみた。
「間違ってねぇよ。だから大台いくっつったろ?けどよ、多分今日持ってきた奴はもっとだぞ。コイツは相当期待出来るぞ。」
それを聞き、エイルとミルファが横からその羊皮紙を覗き込んでくる。
「はあっ?一、十、百、千、万、十万……マジか~~~!」
「え?え?えーと……1億?え?ホントなんですか?」
まあ、そうなるよな。
しかもこれで終わりではないのだ。
後一回、先程出した分の査定が明日には分かる手筈になっている。
これを含めたら全部でどれだけの金額になるのだろうか。
とりあえずは換金だ。そう思い受付へと向かおうと足を向ける。
「あー、ちょっと待て。その金額は受付では流石に不味いからギルド長室で渡すって通達があったわ。」
オーグストンから呼び止められ、通達の事を知らされた。
エイルはかなり嫌がっていたのだが、ミルファに諭され嫌々だったが行くことにした。
「失礼します。ロードウインズです。」
「いいぞ。入れ。」
エイルは背後から付いてくるだけだったのでオレが先頭に立ち入っていく。
「ん?レイジ?エイルは隠れて何やってるんだ?」
「別に。受付で金受け取って帰るはずだったのに、金は此処じゃないと貰えないって言うから仕方なく来ただけなんだよ。」
子供か!と、思ったがここは黙っておくことにした。
「ふーっ、すまんなレイジ。入室の作法といい、どっちがリーダーか分からんな。」
ギルド長は困り果てたように言ってきた。
「これが今回の代金になる。気をつけて持って帰れよ。1億とかなかなかお目にかかれないからな。
それでだ。来てもらったのは他にも用事があってだな。」
やはりそれが本来の目的だったらしい。
別の個室でもいいのに、ギルド長室なんておかしいとは思っていたのだ。
「ほらな。おっさんが自分の部屋に呼ぶなんておかしいと思ったんだ。」
「お前じゃない。レイジとミルファに用があるんだ。
先日ディルに話しておいたんだが、エイルの許可がいるとか言われて返事を貰ってないのでな。
お前らの事だし、直接話すのが早いと思ったんだ。
まあ、大した事じゃない。単刀直入に聞くが、ブロンズ試験受けないか?」
ブロンズ試験。
ブロンズランクからは、魔道書の取り扱いや貴族依頼など身分と強さの証明が必要になってくる。
その為、ここからは試験官立会いの元での指定魔物の討伐が必要になってくるのだ。
勿論ソロでもいいのだが、ミルファのように回復職もいる訳なので、四人までならチームを組んでの参加も認められている。
但し。その人数によって討伐対象は異なるので、そこは注意が必要になってくる。
「ブロンズランク試験……受けたいです。エイルさんいいですか?」
「好きにしろー。お前だったらブロンズ試験なんて楽勝だろ。」
「はい!じゃあ受けます。お願いします。」
「ミルファもいいんだな?」
「はい。私もよろしくお願いします。」
二人揃ってブロンズ試験に参加する事になったのだ。
「いや、実はな、他にも二人程参加者がいるのだが、お前達が受けるなら丁度いいと思っていたんだ。
そいつらと合わせて四人での試験になると思うが、頑張ってくれ。日程は追って連絡する。」
日程は決まっていないようだが、近々行われる事には間違いないだろう。
とりあえずの目標が出来た。
ブロンズランクになる為、今一度気合を入れ直すのだった。




