第51話 久々のギルドへ
昨日は初の1日2000PVいきました。感謝!!
これからもよろしくお願いします。
「なあ、ミルファ。」
「はい。どうしました?」
「どうしてミルファはその冒険者らしさってのに拘るんだ?そんなのよりオレらしさやミルファらしさの方がオレ的には重要だと思うんだけど?」
先程その言葉に妙に拘っていた事を思い出した。
気になって悶々としていてもどうしようもないのでこの際聞いてみた。
「うーん……気にした事ありませんでした。私、そんなに拘ってましたか?
……あ!多分あの出来事かも……。」
ミルファが幼かった頃、孤児院によく炊き出しに来ていた冒険者が居たそうだ。
その冒険者はその孤児院の出身者だったらしく、孤児院の子供達の憧れであった。
そんなある日、ケントが冒険者に質問をする。
「どうして冒険者なんて危ない事してるんだ?死んだら元も子もないじゃん。」
冒険者は答えた。
「俺達孤児は元から世間から見たらはみ出し者だ。俺みたいに頭が悪いと金持ちに死ぬまでこき使われるだけだ。
だったらせめて自由くらいは手に入れたいと思ってな。冒険者は死と隣り合わせだけど、対価として自由を手に入れる事が出来るんだ。格好良いだろ!そう思わないか?」
ミルファもケントもその時は全く意味が分からなかったらしい。
でもある時、魔力が多いからととある商家に貰われていった子が遺体となって帰ってきた。
その子の死因は魔力の枯渇だったらしい。
ただ餌を与えられ、死ぬまでその魔力を搾り取られたと誰かが言ってた。
その時、ミルファとケントはあの冒険者の言葉を思い出した。
孤児は世間からのはみ出し者。死ぬまでこき使われる……。
普通に生きてもこのように扱われて終わってしまうのか。
あの冒険者の言っていたことはこういう事だと、始めて理解した瞬間だったらしい。
「それから暫くして、その冒険者の方は片腕を無くして孤児院に来ました。
魔物にやられて腕は食べられたと言っていました。
それでも冒険者をやってて良かったと笑っていました。
その方は今は冒険者時代に貯めたお金で、王都にお店を開いてるらしいです。」
その時からミルファは、自由を求めて冒険者の道を志したのだった。
「レイジさんが私に縛られてたら私は絶対自分を許せなくなるんですよ。
勿論私も自由な冒険者です。大好きなレイジさんと一緒にいたいから、その為だったら何でもしちゃいます。それは私の自由ですよね。
レイジさんの元々の世界ではどうなのかわかりませんが、この世界ではこうなんだと思えばいいんですよ。ねっ。」
その時向けられた笑顔が最高に美しかった。
次の日、色々あった今回のダンジョン遠征を終えて、無事ロードプルフの街へと帰還した。
捜索依頼まで出ているので、先ずはギルドに行かなければならない。
エイルも面倒くさがっているが、こればかりは仕方ないだろう。
オレ達のレンタルしてた馬車を返却して、ソニアの先導でギルドに戻ったのだった。
久しぶりのギルドだが、相変わずこの時間は人の出入りが激しい。
ギルドの門前は様々な馬車が止まっているし、カウンターは依頼完了報告や素材の売却などで人が溢れ返っている。
そのギルドの入口をソニアは勢いよく開けた。
「今戻ったわ。依頼のロードウインズは我らが発見、保護してきたわよ。ギルド長を呼んでもらえるかしら。」
普段のソニアからは想像出来ない、ゴールドランクの風格を纏わせながらギルドのカウンターへと歩を進める。
たまにエイルも見せるが、この佇まいこそがゴールドランクである証なのだろう。
ギルドの受付嬢はそれを聴くと、オレ達ロードウインズに目を向ける。
ソニアの話が事実であると分かると、慌ててギルド長を呼びに走っていった。
「エイルー!無事だったか!何処行ってたんだ?長期間街を離れる際は、必ず一報入れろと言っておいたはずだろ。ゴールドランクのルールくらいしっかり守れ!いいな!」
ギルド長は怒り半分、嬉しさ半分といった感じで、エイルに説教を始めている。
マリーも、ディルも、同じように叱られてるのだ。なかなか見ることの出来ない光景だ。
三人は父親に叱られる子供のようになってただその説教を聞いていた。
「なんかギルド長ってあの三人に対しては父親みたいですね。」
すぐ傍にいたソニアにそう話しかけた。
「あら?知らなかった?あの三人とパウロって幼い頃にギルド長に拾われて、育ててもらってるのよ。
ギルド長は四人の事を本当の子供だと思って可愛がってるわ。それはいい大人になった今でも変わらない。
あれで相当親バカだからねぇ。ギルド長は何時まで経っても子離れ出来てないし、エイルは子供のままだし、あれはほっといて構わないのよ。」
そういう雰囲気はあった。しかしそんな経緯があったとは全くの初耳だった。
エイルのギルド長に対するあの軽い口調もそういう関係から来るものだと理解できた。
「あれ?ソニアさんは?ソニアさんは一緒じゃなかったんですか?」
「私?ふふふっ、ひ・み・つ。坊やがもう少し大人になって私が満足出来るくらい魅力的になったら教えてあげるわ。」
ソニアはオレの口に指を当てそう言うと一つ目配せをしてギルド長の元へと向かっていった。
思わずドキッとしてしまった事は内緒である。
「ギルド長、そろそろいいかしら?今回ロードウインズを発見してここまで連れて来たんだから、報酬の方はいいわよね?」
「う……まあ、仕方ないな。おい、ブラッドローズに最高額で報酬を。宜しく頼んだ。」
ソニア達のチームはブラッドローズと言うらしい。始めて知った。
最高額っていくらなんだろうか?凄く気になるが多分教えてはくれないだろう。
報酬と言われオレは思い出した。今回のダンジョンで集めた素材の数々を。
「あの、オレ達も素材換金しませんか?なんか、ついでだし。」
「おお!そうだ。おっさん、また大量にあるんだけど、いいか?」
「またあれか……俺も一緒に行くか……メノウリザードの時くらいあるのか?あれくらいなら大丈夫なように手配は出来るからな。」
メノウリザード?あの時の30倍以上はあると思うのだが、大丈夫だろうか?
必要食材を除いたとしても、20倍以上は間違いなくあるだろう。
オレが言うのもなんだが、多分解体班全員が腰抜かすと思う。
「おっさん……あの時の比じゃないと思うぞ?まあ、とりあえず行くか。」
◇
「オーグストン!お前の上客だ。頼んだぞ。」
ギルド長がオレ達ロードウインズの見積もり担当のオーグストンを呼ぶと、忙しそうにオーグストンが出てくる。
オーグストンはオレ達を見ると、「げっ!」と言いながら少し後退りしていた。
「そういえばおっさん、ここじゃスペース足りないかもしれないけどどうする?」
エイルの言葉にギルド長もオーグストンも固まる。
「はっ?なあ……お前ら何処行ってたんだ?此処に入りきらないって?」
「ああ、ファスエッジダンジョンだけど?あ!おっさんと昔行った時の記録は余裕で更新してきたからな!すげーだろ。
んで、倒した魔物は全部素材として持ってきたからな。すっごい量だと思うぞ。」
思った通りギルド長もオーグストンも固まって言葉が出ないでいる。
それはそうだろう。ファスエッジダンジョンはこの国最大のダンジョンで魔物の数も随一だ。
そこで狩ってきた魔物を全て持ってきた人物は今まで存在しなかったのだから。
「とりあえず、出せるだけでいいから出してみようか?」
そう言われオレは全体の3割程だけを出してみた。
オレ達がファスエッジダンジョンで討伐した魔物は2500を軽く超えている。
1階層平均で50匹近くは倒しており、食材として欲しいモノや、価値のありそうな魔物は重点的に狩っており、自分達の必要分を除いても2000匹はあるだろう。
とすると、3割でも700匹弱はあることになる。
今いる解体場所でもそれくらいなら行けるだろうという判断だ。
そして大体3割、約700匹をその場に一気に出していった。




