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第45話  ファスエッジダンジョン(4)

 ファスエッジダンジョン30階層


 遂に中級職である魔法戦士のジョブへの変更資格を得たオレは、早速戦士を外し魔法戦士をメインジョブに設定した。

 その為当面は攻撃力不足に悩むだろうが、基本魔法攻撃で乗り切ろうと考えている。


「次の40階層までは前衛は俺一人だからな。皆そのつもりで行動してくれ。」


 直ぐにエイルが説明してくれた。前衛をできない訳ではないが、前衛ジョブがLV1の魔法戦士だけなので流石に厳しい。

 魔物の強さを考えたら、40階層までいけばシーフのレベルも上がってるだろうし前衛でも問題ないはずだ。


 こうして、これからのパーティ編成をしてから階段を下りていく。


 31階層目、スライムが魔法使いが被るあの帽子、三角帽子を被っている。

 スライムマジシャンだ。

 出会い頭にウォーターボールを使ってきた。

 オレも負けじとファイアボールをお返しとばかりに放ったが、それで簡単に倒してしまった。

 魔法攻撃特化で体力は全くない魔物だったようだ。


 ゴブリンもかなり進化してきている。

 ゴブリンナイトというジェネラルの劣化版だ。

 強くはなっているが、やはりジェネラル以下なので前衛で先制攻撃を仕掛けたエイルの攻撃だけで倒した。


 32階層ではまた可愛いのを期待していたが、この期待は裏切られた。

 二足歩行で二頭身、だがダラダラとヨダレを垂らしカクカクと首を動かしながら動いている犬だ。

 マッドドッグというらしいが、とりあえず気持ち悪い。

 ミルファにまで気持ち悪いと言われ射抜かれていた。


 両手と尻尾が剣になってて、物凄いにやけながら攻撃してくる狸も、その表情が気持ち悪かった。

 両手の剣と尻尾、ある意味三刀流で繰り出してくる攻撃はエイルも捌くだけで精一杯だ。

 しかし、遠距離攻撃には弱く、ミルファの矢で楽に倒すことができた。


 33階層では早くもオレの中の昆虫の王様が現れた。

 ホーンビートル。頭の角が鋭利な槍になったカブトムシだ。

 コイツは突進してくるだけかと思いきや、その急な方向転換で頭の槍を振り回してくる。

 攻撃には一目置く存在だが、見た目に反して防御が弱く、背に当たる前はねも思った以上に脆く、一刀で切り伏せる事ができた。


 34階層にはホーンビートルとは正反対で防御に長けた魔物が現れる。

 アイアンプラントといい、鉄並みの強度を誇るつる植物だ。

 一応弦で攻撃はしてくるが、如何せん遅い。

 しかしその硬さでダメージもなかなか通らず苦戦を強いられたが、火力を上げたファイアで焼き払う事ができた。


 驚いた…いや、笑ったのはもう一方の魔物だ。

 その姿、バナナだった。

 剣を所持している。これも皮を剥いたバナナだった。

 そして美味。前世で好物だった高級バナナ以上の濃厚な味だ。

 植物エリアは必ず食材が出てくるが、これは冒険者への配慮なのだろうか?


 35階層まで来た。かなり魔物は強くなっている。

 一人だったならとても此処までは到達出来てないだろう。

 このフロアの鳥系の魔物も強力になって来ている。


 ウインドイーグルというその名の通り、風を操る鷲がかなりの強敵だ。

 一応セオリー通りに火魔法で攻めたのが功を奏し、ある程度楽に倒す事は出来た。

 しかし魔法が使えないパーティは相当苦労するように思えた。

 それくらい圧巻な姿であった。


 恐ろしかったのは、もう一匹の魔物であるダークネスオウルとセットで出現した時だった。

 ダークネスオウルはこちらの視界を奪う暗闇の霧を浴びせてくる。

 これを受けると本当に何も見えなくなる。


 ディルが優先して倒すようにしてから危険は減ったが、最初は普通に苦戦を強いられたのだ。


 36階層は死霊フロア。オレが毎回憂鬱になるフロアだ。

 今回の魔物は犬のゾンビとマミー、所謂ミイラ男だ。


 この死霊フロアはオレとしては嫌いなのだが、マリーとミルファという二人の聖属性使いがいるので、全く苦にする事なく進んでいく事が出来ている。

 素材としてもそこまでの価値は無い為、このフロアは最短距離で進んでいく。


 37階層の魔獣は、マジカルモンキー。その名の通り魔法を多用してくる魔物である。

 コイツは単体ではなんて事ない雑魚に分類されるが、もう一体のキラータイガーと共に出現した時が一番危ない。

 マジカルモンキーの使う魔法は支援魔法がメインで、その中でもバフ効果、味方の強化がその大半を占めている。


 キラータイガーがこれで強化された場合、スピードはエイル以上となり、今までで一番厄介になってくる。

 このスピード強化は時空魔法になるらしく、マリーも使うことが出来ないという。

 マジカルモンキー優先で倒していけば、その脅威度は半分以下になるだろう。

 それでもキラータイガーは少々厄介ではあったのだが。


 38階層目、巨大なモンスターだ。

 その魔物、トロルは岩のようなゴツゴツとした肌を持ち、その手には巨大な棍棒を持っている。

 その姿は昔話に出てくる巨人のイメージそのものだ。

 コイツはボスキャラじゃないのかと思うほどその姿は禍々しく、見るものによっては悪魔に映るだろう。

 見た目通りその皮膚に刃は通らず、攻め手に欠けていた。

 しかし動きは鈍く、身体のバランスも悪い為転ばせた上で急所を突いていけば思いの外楽に倒すことができた。


 39階層では姿の見えない敵に襲われた。

 あたり一面に魔法を放つとその姿を現した。

 ステルスカメレオン。暗殺者の異名を持つ魔物だ。

 その名の通りその姿を目視するのは難しく、認識される事が殆どないという厄介な相手だ。

 何かしらのダメージを当てる事でその姿を表すので、そこで一気に片付けるのが一般的な倒し方だ。


 そして最も厄介な相手が人間と同等の大きさのドラゴンであるワイルドドレイクだ。

 知性は皆無であり、見たもの全てに襲いかかるドラゴンである。

 極稀にだが姿を現していたステルスカメレオンすらもコイツに殺されていった。

 ただ、その性質上群れる事はなく、単体でしか相手にする事はないので、単純な力技で倒していく。


 このフロアを抜けボスの待ち受ける40階層へと足を踏み入れた。


「やっぱり10階層一気は長すぎですね。早く休みたいです。」


 ダンジョンに入って4日目ともなると、流石に辛くなってきていた。

 オレも少し愚痴っぽくなってきているみたいだ。


「とりあえずはボスだ。気を抜いたら殺されるぞ。引き締めていけ。じゃ、行くぞ。」


 40階層ボスの間の扉が開く。


 40階層のボスマンドラゴラ。

 叫び声を聞くと死ぬという伝説があるが、強ち嘘ではない。

 この魔物は天敵を前にした時に叫び声を上げる。

 この叫び声を聞いた者は一定時間経過後確実に死に至る。

 この時間が経過する前に倒してしまえば死は免れるのだが、これがなかなか至難の業なのだ。


 そして今対峙しているマンドラゴラは、此方を視界に入れると直ぐに叫び声を上げた。

 大気が震える程の甲高いその叫びはオレ達全員の頭の芯まで響き渡った。


「ぐうっ……酷い叫び声だ……うっ、身体が……どうなってるんだ?」


「急いでヤツを倒すぞ。あいつはマンドラゴラ。あの叫び声は死の宣告と言って聞いた者を一定時間後に殺してしまう技だ。早く倒さないと俺達は全員死ぬぞ。」


 死の宣告……ゲームでしか聞いたことがなかったが、まさか自分の身に受けるとは思っても見なかった。


 オレとエイルは走りだし、ディルとミルファは弓を構える。


「レイジ!近接攻撃解禁だ。魔法剣で蹴散らせ。」


 まだ一回も使った事のないスキル魔法剣。

 ぶっつけ本番だが、それを使うのに全く不安はない。

 元から自分の一部かのようにそれを繰り出した。


「ファイア!」


 剣を構えたまま、ファイアを体内から剣へと伝えるイメージで唱えた。

 すると、剣先から刀身全体に炎が広がっていく。

 それはまさしくオレが思い描いた魔法剣そのものだった。


 オレはそのままマンドラゴラ目掛けて走り出した。

 この時、死の宣告の事すらオレの頭にはない。

 自分の魔法剣で相手を倒す。それだけを考え走り出している。


 その瞬間オレの口元が笑った。

 振り上げた剣から揺らめく炎は僅かな陽炎を作り出し、マンドラゴラの身体を焼き切っていく。

 その一撃でマンドラゴラは絶命していた。


「……すごい……。」


 ミルファはその光景にそれしか言えない。

 隣にいるマリーとディルも口を開けたまま固まっているくらいだ。仕方がない。

 しかし、エイルは分かっていたようでその口元に笑みを浮かべている。


「完璧な一撃だったじゃねえか。ここからまた前衛に復帰だな。」


 エイルのその言葉にオレは笑顔で頷いた。


 マンドラゴラは万能薬として重宝されている しっかりとお持ち帰りしていく。

 掛かっていた死の宣告も消え、体のダルさも消えていた。

 オレ達はやっと休める事に安堵し、この先でテントを張ったのだった。

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