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第39話  名も無き村の盗賊

今日は久々に2話いきます。

よろしくお願いします。

 雨の中オレ達は走り出した。他にも被害者がいるなら早く救わなければ!そう思っていた。


 この時オレは初めて人を斬った事に動揺していた。

 ミルファはそれを悟ったのだろう。

 一旦オレの歩みを止めると、手を握り「大丈夫」と、一言だけ言葉を発した。

 その一言はオレを落ち着かせ、物事を冷静に見れるようにしてくれた。


 すぐ隣の家には老夫婦の遺体だけがあり、家具は全て荒らされている。

 他の部屋を見ても誰もいない。


 次の家へ向かう。

 両手足を縛られ倒れている中年夫婦がいた。

 多少怪我をしているが、命に関わるものではない。

 縛っているロープを解き、ミルファにヒールを掛けてもらう。

 この家には盗賊がいないのを確認し、また別の家へと向かう。


 次の家。

 玄関を開けると台所から声が聞こえる。

 見るとまたしても若い女性が陵辱されている。

 しかも母娘でだ。

 オレは飛び出すと手前の盗賊の心臓を一突きで殺すと、奥の盗賊へ向かって走り出した。

 盗賊は直ぐに構えるが、膝をつき女性と繋がったままであった為、何も出来ずに首が落ちた。

 直後ミルファが駆け出し女性達を開放した。



 その間エイル達も奔走している。

 この時点で既に五人の盗賊を倒し、十人以上の村民を救っている。


 エイルが次に入った家では盗賊は住人をサンドバックにして楽しんでいた。

 暗殺者であるエイルは気付かれる事なく盗賊を始末していく。


 ディルは真っ先に物見櫓に登っていた。

 騒ぎを聞きつけ出てきた盗賊を仲間の元へ行かれる前に処分する為に。

 それとは関係無くても、民家から出てきた人物はその姿を確認し、村民じゃないと分かれば射抜いている。


 そしてレイジ達は村長の家の前に立っていた。


 少し大きめの、だが周囲と変わらず廃れた建物である。

 エイルとマリーは既にそこに来ている。ディルはオレの到着を待って、物見櫓を出てきたようだ。


 見た限りでは此処が最後の一軒である。

 エイルを先頭に玄関から入っていく。

 中は思ってたより静かだ。

 しかし中から漂っているのは、噎せ返るような血の匂い。

 エイルは右、オレは左から捜索を開始する。


 最初の部屋は無人だった。

 中まで確認をし、次の部屋へと移る。


 外から見る限りは誰もいない。

 同じように中へ入ろうとした時、扉の影に人影が見えた。

 村人か、盗賊か。ミルファを下がらせ中へ駆け込んだ。

 

 中にいたのは盗賊だ。

 ダガーを持って待ち構えていたが、一気に駆け込まれ攻撃する瞬間を逃したようだ。

 振り向き盗賊なのを確認したオレは勢いそのまま斬りつけた。


 今回盗賊は待ち伏せをしていた。

 つまり盗賊達は既にオレ達に気が付いているようだ。

 エイルの方も同じだろう。

 それでも師匠であるエイルは問題ないはずだ。

 オレはそのまま先へと進む。


 この通路の最後の部屋だ。

 同じように扉を開け入ったがその部屋は何もなかった。


 一旦戻るとエイルの方も戻ってきている。

 合流し、正面へと進んでいく。


 先程までの部屋は応接室や執務室だった。

 これから向かう方が村長の屋敷になるのだろう。

 ゆっくりその歩を進めていく。


 その部屋に入ると、とてつもない景色が視界に入ってきた。


 裸で両手足を縛られ、天井から吊るされている若い男。

 磔にされ喉を斬られ絶命している老人。

 そして首輪を付けられ、裸のまま鎖で繋がれている若い女。


 全部で盗賊は五人だ。

 一人は若い男に剣を突きつけていて、一人は女を繋いでる鎖を持っている。

 二人が此方を牽制するように剣を向けているが少し腰が引けているようだ。

 最後の一人が頭目だろう。椅子に座り踏ん反り返っている。


 状況的には人質を取られてるようなものだろう。

 頭目らしき男は此方を見て不敵に笑っているのだ。


「ホントに来やがったのか。見たところ冒険者か?

 とりあえずこのまま引き返せ。そうしたらこいつらの命だけは助けてやる。」


 頭目が放った言葉は、下っ端雑魚のやられフラグが立ったのかと思うようなセリフだった。


「俺達が引き返したらそいつらが助かるっていう保証は何処にある?

 その時点でその男は殺されるんだろ。女は奴隷扱いか?クソ野郎。」

 エイルの言葉に頭目らしき男はその剣を女の首筋に当てる。


 同時にディルとミルファも弓を構えた。


「……はんっ。辞めだ。勝てっこねえ。」

 頭目らしき男はそういうがその剣は下げたりしていない。

 オレ達は警戒を解かずに盗賊たちに対し構え続ける。


「だからってこのまま逃がしちゃくれねえよな。だから取引だ。

 とりあえずこのままこの女を人質として外まで連れて行く。

 あんたらは距離を置いて付いてくればいい。

 確実に逃げられる距離まで離れたら女は解放する。どうだ?」


「馬鹿か。確実に逃げれる距離まで離れてたら女は殺されるって分かるだろ。そんなの受けねえよ。」

 それはそうだ。盗賊らしい間抜けな事を言ってきた。


「な、なら絶対に傷つけたりしねえよ。約束する。なっ。どうだ?」

 盗賊はこれでもかと頼み込んでくる。しかしこれだけの事をしてる盗賊を逃がす気など元よりない。


「そんな口約束をお前らが守る訳ないだろ。もういいか?」


 エイルはそう言うと一歩近づく。

 すると、頭目らしき男はビクッとしてその剣を此方に向けてきた。


 その瞬間、ディルとミルファが狙ってたかのように同時に矢を放った。

 ディルの矢は吊るされてる男に剣を向けている盗賊に、ミルファの矢は頭目らしき男にそれぞれ命中した。


 その矢が放たれると同時にオレとエイルも動いていた。

 エイルは走り出し前で剣を構えている盗賊を切りつけ、オレはストーンを放って鎖を持っている盗賊へ攻撃、そのまま走りだしもう一人の剣を構えている盗賊を切り倒した。


 エイルは既に頭目らしき男に向かって動いている。

 オレはストーンを当てた盗賊に止めを刺しに行く。


「ぐあっ!っそがー!」

 頭目らしき男はその剣を振り上げる。


「疾風斬!」

 エイルが一瞬で間合いをなくし首を斬った。


 全ての盗賊に息が無いのを確認し、生きている男女を救出した。

 この二人は村長の息子夫婦らしい。

 そして村長は磔にされたままその命を落としていた。


 村人の半数は殺され、無傷の村民は皆無。女性は一人残らず陵辱されている。

 盗賊を討伐した状況を素直に喜べるものでは無かった。


 それでも少し落ち着きを取り戻した村人からは深く感謝され、この日村に滞在する許可を得ることが出来たのである。


「盗賊を倒しても正直辛いですね。」

 ミルファも苦虫を踏み潰したような表情をしながら呟く。

「これでまともで居られるのは精神的にヤられてる奴だけだよ。

 それでも北の山脈付近はこんなことが日常的に起きてるらしいぜ。信じられねえわ。」

 エイルは今の辺境の情勢について話し始めた。


「魔物が村を襲って貧困が進むとそいつらが盗賊になる。

 盗賊は結局別の村を襲っていく。盗賊は騎士らに討伐されても、盗賊に襲われた村の生き残りはまた盗賊になっていく。

 魔物を討伐する事でしかその元を絶つことは出来ないんだ。その為に俺達冒険者がいる。」


 行き着く先には必ず魔物がいる。その元凶は魔物である。

 しかし魔物とは何処で、どうして現れるのか。解明した者は誰もいない。

 その解明こそが元凶を断つ一番の方法なのかもしれない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔物が滅びたら滅びたでそれで生計建ててた人や人口過剰で貧困になった人達が盗賊になるんでしょ
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