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第04話  冒険者ギルド

剣と盾をモチーフにした看板の前で、緊張した面持ちで立っている青年がいる。こことは違う世界から、転生という形でやって来たその青年は、物語の中にしか存在していなかったその建物を前に、万感の思いでそこに立っていた。

 門を抜けた先に大きな扉がある。剣や斧、弓などを携えた如何にも冒険者風の人々が扉を出入りしているようだ。

 中に入ると正面に広いカウンター。右にはテーブルと椅子が並べられ、冒険者達が飲食をしている。その奥に掲示板が掲げられ、それを見ている人もいる。左にはいくつかの扉と上の階へ行く階段がある。

 正面のカウンターへ行き、丁度目の前に座っている案内の受付嬢の所へ向かう。この受付嬢はなんとウサ耳である。これが本物のモフ耳だ。触ってみたい。撫でてみたい。頬擦りしてみたい。

 ウサ耳を見つめ固まっていると、向こうから声を掛けられた。


「いらっしゃいませ。当ギルドの御利用は初めてでしょうか?」


「はい。冒険者になろうと思ったんですけど、どうすればいいですか?」


 分からないことは聞くに限る。


「あ、冒険者登録ですね。では、あちらの二番の受付へ行ってください。」


 このお姉さんは登録をしてくれないようだ。案内はあくまで案内だけなんだな。言われたとおり二番の受付へ行く事にした。


 二番の受付はガタイのいい隻眼のおっさんだ。


「いらっしゃい。ここは冒険者登録窓口だ。登録するならこれを書いてくれ。」


 そう言って登録用紙を渡される。

 これはステータス情報ので書いたほうがいいのか?そう思いステータスを開く。


 レイジ(17)


 ジョブ:鍛冶師


 レベル:5


 攻撃:22(12)

 魔力:5 (0)

 俊敏:10(5)

 体力:17(10)

 命中:11(5)

 精神:5 (0)

 運 :8 (3)



 スキル:格闘・火耐性・氷耐性・鍛冶・言語変換・鑑定


 ユニークスキル:マップ


 スキルポイント:50



 称号:転生者・旅立つ者



 スキルと称号が増えている。あと名前がレイジだけになってるな。

 疑問に思いながらも、その情報を元に登録用紙を埋めていく。スキルは『格闘』と各『耐性』だけ記入しておいた。


「書きました。」


「おう、では幾つか質問をするぞ。まず、今使ってる武器はなんだ?」


 武器を聞かれても持っていない。全て正直に答えるしかないが。


「まだ武器は持っていないですね。」


「現在は活動拠点はこの街って事でいいか?」


「そうですね。」


「今のジョブは鍛冶師とあるが、変えることに抵抗はないか?」


「必要ならいくらでも変えますよ。てか、鍛冶師じゃ登録出来ないんですか?」


「いや、それは問題ない。次いくぞ、今までに人を殺したことはあるか?」


「え?いやいや、そんなのありませんよ。」


「ん、では魔物を倒した経験は?」


「それもないですね。」


 倒した経験どころか、魔物自体見たこともないのだ。


「そうか、では最後に、冒険者になって何をしたい?」


「んー、そうだな。冒険者として出来ることは何でもしてみたいですね。旅もしてみたいし、ダンジョンみたいなのも探索してみたいし、素材集めや魔物の討伐も、とにかく何でもやってみたいです。」


「そうか、まあ頑張れよ。じゃあ、三十分後に二階に上がってすぐ右の部屋で講習をやるからな。必ず来るように。よし、行っていいぞ。」


 講習か。思ったよりしっかりした組織らしい。三十分後だったらもう行ってもいいか。

 講習をやる部屋に入ると既に二人の冒険者が来ていた。二人は一瞬こちらを見たが、すぐに目線を外し話を続ける。多分元から知り合いでコンビで活動をするのだろう。

 始まるまでの時間暇だな。そうだ、新しく鑑定を覚えたんだ。使ってみるか。

 部屋にいる二人に心の中で鑑定と唱える。


【ケント】

【ミルファ】


 ん?名前だけなのか?疑問に思い部屋の隅に置いてある椅子を鑑定する。


【椅子】


 マジか……鑑定使えねぇ。いや、外で薬草とかを採取する時は使えるはずだ。うん、絶対そうだ!

 そういえばスキルにはレベルがあるはずだよな。鑑定はまだLV1のはず…見てみるか。


 鑑定LV1(3/10)


 お!三つの鑑定をして熟練度3ってことは、あと七回使えばレベル上がるんじゃないのか?

 そう思い、辺りの物を適当に鑑定する。


 鑑定LV2(1/50)


 上がった。これであの二人を鑑定してみる。


【ケント(16)男】

【ミルファ(16)女】


 よし!年齢と性別が鑑定対象になったぞ。やっぱりレベルが上がればより詳細な鑑定が出来るみたいだな。

 同じように椅子も鑑定してみたが、こちらは変化が無かった。


 そんなことをしていると、既に時間が経っていたようで、ギルド職員の制服を着たベテラン冒険者風の男性が入ってきた。


「では、これより初心者講習を行う。まずは冒険者としての心構えから説明していく。」


 それからは依頼者への対応の仕方、冒険者としてやってはいけない事、他の街へ行った時のギルドで行う事、国とギルドの繋がり、指名依頼と通常依頼・常設依頼の違い……等など、三時間の講習が終わり、昼食を摂る。

 午後からはダガーを持って対人戦闘訓練だ。一時間で『短剣』スキルを獲得していた。

 他の二人はまだだったようで、その間にショートソードで訓練してみる。二人が終えるのと同時に『剣』スキルも獲得でき、これで講習は終了となった。

 帰り際にギルドカードを貰い外へ出る。

 

 冒険者としてやっていくためにはまだ準備が足りていない。そう、装備である。

 日没までまだ時間があるのを確認し、ギルド職員に武器・防具を揃える為の店を紹介してもらう。防具屋はすぐ隣らしい。

 防具屋に入ると、何というか、懐かしい匂いが立ち込めている。革の匂いや鉄の匂い、それらが混ざり合い独特の匂いとなっている。

 店に入り鎧を見ていると、女性店員に声を掛けられた。


「何かお探しですか?」


 お世辞にも可愛いとは言えない容姿だが、愛想が良く、とても好感が持てる店員だ。


「今ギルドで冒険者登録してきたんだよね。それで初めての防具が欲しいんだけど、最初ってどんなのがいいのかな?」


 こっちへ来てから初めて敬語を使わずに普通に喋った気がする。

「登録してきたばっかりですか?これから頑張ってくださいね!初めてですと、多くの方はやはり革の鎧ですね。ブロードソードくらいなら刃を通しませんし、金属より軽いので動きやすいのが特徴です。

 予算はどれくらいなんですか?」


 予算か。そういえば辺境伯から貰った鞄の中身見てなかったな。

 メニューを見てみると、そこには150000Gと書かれてた。鞄ごとアイテムボックスに入れたら、自動で中身を分けてくれるようだ。これは素晴らしい。

「武器と防具、合わせて10万Gで抑えたいんだけど、大丈夫かな?その辺の事さっぱりわからないんだよね。」


「それだと、この革の鎧に皮の盾も付けて大丈夫だと思いますよ。」

「あ、武器は剣と短剣の二つ考えてるんだ。それでも大丈夫?」

「大丈夫ですよ!あ、この二つセットで買っていただけたら、あちらの革の靴をつけちゃいますよ!この三つで三万五千で!」

 お、いいねぇ。これってもう少しいけるのではないだろうか?


「うーん、それは惹かれるね。でも三万五千か~、もう一声欲しいな~。」


 露骨に値切りにいってみた。


「仕方ありませんね、冒険者登録祝いと、今後もご贔屓にという意味を込めまして、三万四千Gに致しましょう。」


 うーん、思ったより値下げにならなかったが、ここはこれで良しとしよう。


「じゃあそれで買います。」


 防具を買い、武器屋に向かう。武器屋は鍛冶工房が並ぶ職人街の近くに多いらしく、歩いて二十分くらいの所にある。

 かなり陽が沈んできた。急がないとな。


 武器屋に着くと既に片付け始めていた。


「すみません。まだ買えますか?」


 店の前にいた、店主っぽい厳ついおっっちゃんに声を掛けてみた。


「ん?お客さんかい?もう閉めようかと思ってたんだが……まあいい、見ていきなよ。」


 渋りながらも了解を得ることが出来た。


「とりあえず、片手剣と短剣が欲しいんだけど、どんなのが良いのかな?」


 武器の知識が全く無いので、とりあえず聞いてみる。


「お前さん、初心者ルーキーかい?そうだな、短剣はダガーがオススメだな。

 草刈だけならナイフでいいんだが、剥ぎ取りや解体に使うならダガーは必要だろうな。

 あとは、片手剣か。まあ初心者ルーキーなら大体ブロードソードを使うんだが、身軽さを重視する奴はシミターもアリだと思うぞ。」


 ブロードソードは両刃の所謂幅広の剣、一方でシミターは片刃の湾曲した剣、刀に通じるものがある。

 今のステータス的にはブロードソードが良さそうだが、個人的にはシミターを使いたい。個人的な好みだが、曲刀のが格好良く思ってしまう。


「完全な好みで選んでも問題ないのか?」


「今は問題ないと思うが、将来的に合わない武器はそのまま命の危険に繋がると思うぞ。

 自分に合う武器に早いうちから慣れておいた方が効率的にもいいだろうな。」


 やっぱりそうなんだろう。しかし、効率だけで選んで後悔はしたくない。合わなければジョブを変えて合わせればいいのだ。


「うん、シミターのが見た目が好みだからそっちにするよ。あと、短剣はダガーでお願いするよ。」


 完全に好みで選んだ。後悔はしない……多分。


「わかったぜ。兄ちゃん見た感じ初めての武器なんだろう?本来、合わせて五万なんだが、ここは四万にしておいてやるよ。」


「マジか!ありがとう。」


 防具より割引大きかった気がする。かなりラッキーだ。


「いいってことよ。頑張ってビックになった時に返してくれればいいんだからよ。」


 店主は笑顔で答える。

 ついでにオススメの宿を教えてもらい店を出た。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 武器や防具の値段設定が安すぎる気がする。現代の技術でもけっこうな手間暇がかかるのに、この世界ではもっと大変じゃないだろうか。スキルで一瞬で作れたり、ドロップ品が多い設定ならわかるが、説…
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