第31話 赤狼の丘再び
今日からエイル達は王子の護衛任務で別行動になる。
元々一人でやってたオレは、この期間でどう成長できたか確かめるチャンスでもある。
ただ、一人でやってた時との違いはミルファの存在だ。
二人でどう連携を取っていくか、それが大事になってくるはずだ。
「じゃあレイジも一緒にギルドに向かうのか?」
「はい。ミルファと二人でコモンの依頼をやってみようと思います。」
「マリーがいないと回復がな、大丈夫か?」
「ふっふっふっ、昨日のあのポーションを見ませんでしたか?全然大丈夫です。」
オレは不敵な笑みを浮かべながらエイルに答えた。
「ミルファちゃんは大丈夫?気を付けるんだよ。」
「大丈夫です。いざとなればこれがありますから。」
出したのは昨日作った短剣だ。鑑定しても名前が無い。切れ味は良いので役には立つはずだ。
「じゃあいくか。」
オレ達も一緒に家を出る。自分達の腕試しだ。
今日のギルドは物々しい雰囲気だ。
それもそのはず、ギルドには既にこれから王子が来るという情報が伝わってるからだ。
それでも公には出来ないので、慌ただしくしてるのはギルド職員だけとなっている。
「俺達は会議室だからこっちに行くからな。無理はしないで頑張れよ。」
そう言ってエイル達は二階会議室へと向かっていった。
「じゃあオレ達は掲示板見に行くか。」
コモンの欄は初めて見るが、アイアンに比べると依頼数かなり多い。
但し内容に比べて安いのが多く、中には暫く放置されたままの物も見受けられる。
そんな中で一件の依頼書に目が止まった。
【ウルフリーダー討伐】
見ると、レッドウルフという絶対的リーダーを失ったウルフ種が、いくつかのグループに別れ馬車を襲う事件が多発してるという。
レッドウルフには殺されかけた苦い記憶がある。
まあ、そのおかげでロードウインズの皆に逢えた訳なんだが。
ウルフリーダー討伐とは、そのレッドウルフの後継者になるだろうその芽を、早くに摘み取ろうって事なんだろう。
これは自分の成長を確かめることが出来る丁度いい機会だろう。
「ミルファ。これ受けていいか?」
「ウルフリーダー?……あっ!」
ミルファもマリーからロードウインズとレイジとの出会いは聞いていた。
直ぐにピンときたのだろう。二つ返事で了承してくれた。
赤狼の丘。しかしそこに今は赤狼はいない。
これから行うのは残党狩りだ。
今回は以前通った直進ルートではなく、迂回する正規ルートで行くことにした。
「レッサーウルフは多いな。前はこんなにいなかったんだけどな。」
「私達が初めて会った日の翌日ですよね。特別依頼が出てた……虹の結晶でしたっけ、その依頼ですよね。」
「そうそう。あの時もレッサーウルフは襲ってきたけど、全部合わせても数匹程度だったんだよな。」
あの時に比べると明らかに数が多い。それも一定間隔で襲ってくる。様子を見るかのように……。
「レイジさん!」
考えていたその時、またしてもレッサーウルフが襲いかかって来た。
咄嗟に盾で防いだが、完全に不意を突かれた。
その時、背後にも気配を感じ振り向く。
「なっ!」
明らかに大きい個体が目の前まで迫り襲いかかって来た。
「くっ…ファイア!」
直撃したのだがその身を翻し火を消してきた。
しかし直後にミルファの放った矢が眉間に命中し、絶命した。
直ぐに後ろを振り返り、残りのレッサーウルフと対峙する。
オレは走り出しその距離を詰め、一気に切りつける。
瞬間襲ってきたもう一匹もすかさずなぎ払い、今回襲撃してきたウルフは全て討伐できた。
「この大きいのがリーダーか?明らかに他と違うよな。」
「多分そうですね。大きさが全然違いますもん。」
「しかしミルファ、よく倒したな。いいトコ持ってかれたもんな。」
「え?たまたまですよ。レイジさんの魔法で隙が出来てましたし。」
「助かったよ。ありがとな。」
「い、いえ。こちらこそです。」
討伐したウルフは全てアイテムボックスへ入れていく。
そして更に先へと進んでいく。
途中単独のレッサーウルフに遭遇はしたものの、群れに遭うことはなく丘の頂上付近までたどり着いた。
そう、虹の結晶のあったレッドウルフが居た場所である。
そして今この場所には二匹のウルフリーダーと周囲にはその取り巻きのレッサーウルフが十数匹。
「ミルファ、いけると思うか?」
「レイジさんなら間違いなく。私が足を引っ張らなければですが。」
「よし!じゃあ一気に矢で仕掛けるぞ。」
合図と共に一緒に矢を射っていく。
この奇襲でレッサーウルフを数匹仕留め、リーダー一匹にも命中させた。
気付いたレッサーウルフ達は一斉に襲いかかってくる。
オレは剣を構えそこを飛び出し迎え撃つ。
この時オレの自作の剣、シャムシールが本領発揮した。
以前までのシミターより長いのに細身にしてる為、その重量は変わらない。
間合いが伸びたこともあり、襲いかかってくるレッサーウルフを次々へと屠っていく。
たまに背後に来る奴はミルファが射抜く。
残っているリーダーは知恵が働く分状況を理解出来てるのだろう。
威嚇をしてくるが既に逃げ腰だ。
「ウインド!」
風が吹き乱れリーダーの身体が舞い上がる。
オレは走り出しその距離を詰める。
「パワースラッシュ!」
ウルフリーダーとのすれ違いざま放った戦士の一撃。それにより首が落ちる。
全て倒した。と思った瞬間、最初に矢で射抜いたリーダーが起き上がりミルファに襲いかかる。
「ミル……」
その瞬間血を吹き倒れたのはウルフリーダーだった。
ミルファの手には短剣が。
昨日渡した短剣だ。
「ミルファ。大丈夫か?」
直ぐに声をかけた。
「大丈夫です。これのお陰で。」
ミルファは凄いドヤ顔で短剣を見せてくる。
うん。可愛いから問題ない。
「一先ずこんなトコだろ。帰るか。」
「そうですね。レイジさん凄かったです。」
「いや、ミルファのが凄かったぞ。リーダー二匹撃破だからな。」
来た道を戻り帰っていく。
真っ直ぐ前回の道の方が近いが、あっちにはまだウルフが潜んでるかもしれない。
今の状態で戦っても危ないので安全ルートで帰るのが一番だ。
オレも成長してる。そう思った。
ギルドは何時にも増して騒々しい。
王子が来てるのがバレたのか?そんな事を考えながら受付に行き、オーグストンを呼ぶ。
オーグストンはこの時間は忙しく、解体場まで行くように言われ、そこで見積りをしてもらう。
「レイジ達二人でこれかー。伊達にロードウインズのメンバーやってないな。」
そう言い見積りの結果を渡された。
結果は全部で5万7千G。オレ達も二人でこれだけ稼げるようになったんだ。そう思える額だ。
帰ろうか、そう思いその場を離れようとした。
「あ、忘れてました。エイル様より伝言です。「今日は帰れないわ。よろしくな。」だそうです。
受付を通しての伝言ってありなんですか?そう思ってしまった。
今日はオレ達二人っきりだ。
家もどこか広く感じる。
ミルファも二人っきりだという事を意識してしまってるのだろう。いつも以上に他人行儀だ。
夕食の料理中も、手がぶつかっただけで顔を赤らめている。
因みにこの日の夕食はなんてことのない焼き魚だ。
寝る前にステータスの確認をすることにした。
数日見てなかった気がする。
レイジ(17)
メインジョブ:戦士 LV13
2ジョブ :冒険者 LV14
3ジョブ :狩人 LV12
4ジョブ :魔道士 LV9
攻撃:88 (36) (20)(19)(0)
魔力:56 (0) (13)(13)(24)
俊敏:71 (13) (22)(20)(11)
体力:82 (29) (27)(13)(5)
命中:82 (11) (18)(35)(12)
精神:37 (0) (13)(10)(9)
運 :49 (10) (17)(10)(7)
スキル:短剣・片手剣・弓・格闘・盾・黒魔法初級・生活魔法・ガード・警戒・命中・火耐性・氷耐性・毒耐性・暗闇耐性・鍛冶・調合・採掘・料理・清掃・洗濯・言語変換・鑑定
ジョブスキル:索敵(冒険者)パワースラッシュ(戦士)狙い撃ち(狩人)
ユニークスキル:マップ・ジョブ
スキルポイント:260
称号:転生者・旅立つ者・幸運者・迷宮から帰還せし者・冒険者ランクコモン・毒愛好家・一般鍛冶職人
強くなってるし、スキルがかなり増えてるわ。
じゃあスキルは?
短剣LV2(10/50)
片手剣LV3(62/100)
弓LV2 (30/50)
格闘LV3(29/100)
盾LV2(34/50)
黒魔法初級LV3(06/100)
生活魔法LV MAX
ガードLV1(04/10)
警戒LV3(17/100)
命中LV2(11/50)
火耐性LV3(05/100)
氷耐性LV3(09/100)
毒耐性LV2(16/50)
暗闇耐性LV2(01/50)
鍛冶LV4(82/150)
調合LV2(05/50)
採掘LV2(04/50)
料理LV2(14/50)
清掃LV2(13/50)
洗濯LV1(06/10)
言語変換LV4(133/150)
鑑定LV4(71/150)
マップLV3(48/100)
ジョブLV5(24/250)
うーん……
スキルポイントの使い道をどうするか、答えがでず保留にしてこの日は終わった。




