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第25話  ミゲレート村

 朝、目覚めると同時に横を見るが、今日もミルファの姿がない。

 一体どれくらい早く起きてるのだろうか。


 起きて行くと昨日と同じように風呂へと促された。

 今日からは魔法で洗うから早い。掛かった時間は一分だ。


「え?早くない?ちゃんと洗った?」

 マリーは不思議そうだったが、魔法を使ったことを話すと納得していた。



「今日はポーションと毒消し薬をそれなりに持ってくぞ。」

 どういう事か分からなかった。

 このパーティだとマリーが回復魔法を使える為、基本的にポーションは使うことがない。

 その為、今回のポーション所持の意味が分からなかった。


「ミルファが目指す神官になろ為に必要なのが、『治療』と『手当て』の二つのスキルだ。これの習得には兎に角誰かを回復させる必要があるんだ。

 それで手っ取り早いのがポーションだ。使いまくれば手当ては覚えるはずだ。

 で、治療なんだけど…なぁ……。」

 エイルは頭を掻きながら言葉を詰まらせている。

「あのね、状態異常の回復が必要なのよ。例えば毒とか麻痺とかね。それって普段はまずなる事なんて無いじゃない?でね……。」

 状態異常、毒……麻痺……まさか……

「レイジくん!毒草食べて!」

 そのまさかだった……。



 ギルドで今回受ける依頼はポイズントードの討伐だ。


 東の森から北に迂回し、200キロ程行った先にあるミゲレートという村がある。

 そこから森に入り南東に進んだ先に毒の沼地がある。

 そこに生息しているのがポイズントードである。

 確かに毒を持ってて危険なのだが、基本温厚で人を襲うことはまず無い。

 しかし最近そこに大型のポイズントードが現れたらしく、こいつが近くを通る人々を襲っているらしいのだ。

 更にこの沼一帯に生える草は殆どが毒草で、摂取量が50グラムを超えると死ぬ可能性もある危険な草に育っている。


 ギルドの購買所でポーションと毒消し薬を大量に買い、ミゲレートを通る乗合馬車で向かう。

 

 初めての馬車は快適とは程遠いものだった。

 木製車輪でサスなどはついていない。

 街道の整備も行き届いていない為、揺れが兎に角酷い。

 更にシートも木張りで表面の加工も施されていないので、揺れる度にケツが強打されるのだ。

 最悪オレはいい。ミルファのお尻がキズモノになるのを防ぐ術はないのだろうか。


「ねえレイジくん、アイテムボックスに布地のモノって無い?」

 言われてみれば防寒用の毛布は入っている。それを出した。

「これで少しは良くなったわね。ありがとね。」

「おい!ちょっと待て。なんでお前とミルファだけなんだ?俺達のは?」

「すみません、エイルさん。これしかないんです。」

 そうなのだ。防寒用なのに一枚だけしか用意してなかったのだ。

 正確には前回の抜き忘れが一枚あっただけなのであった。

 今回は村に宿泊し、野営は無いということで野営品はほぼ持ってきていない。

 それが仇となった形だ。


 今回の道程は約八時間。男三人のケツは無事でいられるのだろうか。



 何事もなくミゲレート村に着いた。

 ケツと腰が痛い。

 色々な物語だと盗賊の襲撃があるものだが、至って平和だった。魔物も襲って来るのは皆無だったのだから。

 辺りは既に真っ暗である。かなり遅い時間であるが、とりあえず村長に話を聞きに行くことにした。


 村長は今回の依頼人である。正確には村からの依頼で、村長はその代表者となっている。

 まずはその村長から話を聞いた上で、明日早朝から行動開始しようと考えてるのである。


「村長、我々が今回ポイズントード討伐を任されたロードウインズだ。よろしく頼む。

 とりあえず、その沼地までの地図かルート説明って出来るか?」

「は、はい。この村の南の柵から向こうは森になっています。東から出ていただいて、森に入ると獣道程度でしょうが道があるはずです。途中別れてる場所もありますが、南東を目指せば着くはずです。」

「今回の成功報酬は現地で相談と言われてきたのだが?」

「はい、何分何もない村でして、お支払い出来るお金も村からかき集めた10万Gしかなく……申し訳ありません。」

「食事と宿は出るのか?」

「あ、はい。寝泊りは此方をお使いください。二部屋用意させて頂いております。食事も質素ですがこちらで用意致します。」

「じゃあいいんじゃね?なあ。」

 オレ達全員が頷く。

「ありがとうございます。では簡単ですが食事を用意させていただきます。」


 その食事はホントに質素だった。しかし一点だけ気になるものが。

「村長これって木耳ですか?」

 そう、木耳である。あんかけ焼きそばに入っているアレである。

「よくご存知で。その通りでございます。この辺りの森ではよく取れるのですが、採取しに行ったものはポイズントードにやられまして……。」

「エイルさん、これがあればまた違う美味しいもの作れますよ。」

「お!マジか!村長、ポイズントードを倒し安全を確保出来たらこれを報酬に加えて欲しいんだが。」

「おお!いいですとも。そんなもので宜しければ村の備蓄を全部でも持って行ってください。」

 思わぬところでいい品を発見した。あんかけは今度作るつもりだったから丁度いい。


 食後、各部屋へ案内された。男と女に部屋分けをする。

 村長が身体を洗う為の桶を持ってきてくれたが、もっといい魔法というものがあるのだ。

 エイルとディルもそれで頼むと言っている。

 オレ達だけというのもアレなので、女性二人にもキチンと声をかけた。

 外は真っ暗なので見られる事はないだろう。

 念の為服は着たままでやってみる。「ウォッシュ!」

 なんと服ごとキレイになったではないか。

 勿論服の中の見えない場所もキレイになっている。思った以上に素晴らしかった。


 部屋へ戻ると案の定エイルにミルファとの事を根掘り葉掘り聞かれた。

 勘弁して欲しい。

 

 この日は男三人、特にやることも無いので早めに就寝した。



 --------------------



「ねえねえ、実際のトコどうなの?レイジくんと。」

 女性の部屋ではマリーとミルファが談笑している。

 所謂恋バナだ。

「どうって……前に話した通りです。」

「今朝は二人の時間なくて聞けなかったでしょ?そのイヤリングの事とか?教えてー!」

「これは、レイジさんが……目の色にそっくりだって……。」

 ミルファは既に真っ赤になっている。

「やーん。それで?それで?」

 マリーは興味津々に攻めるように聞きに来る。

「それでレイジさんが着けてくれて……。」

「もーう、レイジくんってば、なかなかやるんだねぇ。」


「ねえ、ミルファちゃんって冒険者になって半月くらい?」

「そうですね。大体それくらいだったと思います。」

「最初の講習の後に避妊魔法を掛けてもらったと思うけど、次回の更新は生理がきたらだからね。覚えておいてね。」

「は、はい。ちゃんと受けるようにします。」



 --------------------



 翌朝、日の出と共に出発し、森の中へ入っていった。


「んじゃあ、まずはとっととポイズントードを倒しちゃって、レイジに毒を食わすぞ。」

 もっと言い方はないのだろうか?

「その毒草って使い道って何かないんですか?」

「あるよー。普通に毒を抽出して矢に塗って使ったり、粉末にしてボールに包んで魔物に投げて使ったりね。」

 あるなら帰る前に少し採ってストックしておこう。

 いずれ調合する時に役立つかもしれない。

 しかしそれも毒を食べて生き残れたらだが……。

誤字報告いただきありがとうございます。

予測変換で変換されてることもあるようです。気をつけます。


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