第20話 歓喜、そして二組の夜
昨日は初めて一日500PVいきました。
皆様、目を通していただきありがとうございます。
これからも精進致しますので、是非ともよろしくお願いします。
以前も来た酒場、ヘヴン&ヘル。ここはこの街、ロードプルフを中心に活動する冒険者の憩いの場になっている。
「んじゃ、過去最高報酬にかんぱーい!」
286万G、これが今回の報酬だ。しかもその中で一番の素材はまだ金額をつける事が出来ないと言われ、保留にされている。にも関わらずこの金額なのだ。
メンバー全員が見た事ないくらいはしゃいでいる。
「すみません!オレは今回は飲みたいものを飲みます。」
皆して何言ってんだこいつって顔して見てきた。
「実はエールが苦手でして……。」
そう、実はエールは好きになれないのだ。飲めなくはない。飲めるけど好きではない。そんな感じなのだ。
前世においても普段はチューハイで外に飲みに行ってもチューハイか焼酎の水割りばかりで、ビールは最初の一杯だけであった。
しかもこの世界のエールは冷えていない。いや、冷蔵庫というものが無いから冷やす事が出来ないのだ。
「だははっ。レイジはエールがダメだったのか!まだまだだなー。」
「じゃあどうする?シードルでいい?」
「はい。それでお願いします。」
「私もそれでお願いします。」
ミルファもだった。見ると照れたように俯いている。可愛い。
「レイジ、ありがとう。お前のおかげだ。ありがとーう。」
なんだ?もう酔ってるのか?絡み方がおかしい。
全員のテンションが高すぎる。オレは人付き合いはいいほうだが、はしゃいだノリにはイマイチついて行けない節がある。
それとお礼を言われるのも何かむず痒くてどう返していいのか分からない。
オレはその場で苦笑いをしてるしかなかった。
「レイジくんはテンション低いねー。つまらない?」
「そんなことないですよ。ただ、こういう皆で騒いで楽しむ時ってどうしていいか分からないだけです。」
「だと思った。レイジくんは素直だけど自分の感情を知られる事を恐れてない?」
それはそうだろう。本音はそれだけで人を傷つける。
だったら自分の中に閉まっておけばいいだけの話なんだ。
人と揉めて自分が傷つかないように、でも相手に距離を感じさせないように、そんな距離感で接する。
それが最善だと思ってやってきてるんだ。
「こういう場で笑って、泣いて、怒って、それでも一緒にいる事が出来る。そういう関係って素敵でしょ?私はそうしてる。このメンバーは本当の気持ちを伝えたって絶対嫌な気持ちにはならないよ、私達三人はそうやって繋がってるんだから。ねっ。」
「……そっすね。」
確かにそうだ。エイルとマリーの関係、それを羨ましくも感じていた。
オレもそんな風になりたいと、人間性の部分でもこの人達に惹かれてるんだ。だったら恐れずに自分を出してくだけなんだ。
そんな事を思い、シードルを一気に飲む。
「おお!いい飲みっぷり!やるねー~。」
「マリーさん、ありがとうございます。」
ディルは皆の会話をずっと笑顔で聞いている。
「ディルさん、飲んでますか?」
そんなディルが気になり話しかけた。
「ああ、十分楽しんでる。こんな感じで打ち上げするのも久しぶりだ。」
「三人での活動って長かったんですか?」
気になっていた事を聞いてみた。
「そうだな。言われてみたらもう五年になるな。」
「五年……てか三人とも今いくつなんですか?」
これは一番聞きたかったことだ。
「俺は26だ。」
ディルは26歳らしい。思ったより若かった。
「オレとマリーは25だぞ。」
「ちょっと!何で私の年を言うのよ!」
「別にいいだろ!減るもんじゃねぇし。」
「そういう問題じゃないでしょ!大体アンタは……」
また始まった。まあ知りたかった事は知れたし放っておこう。
ミルファはまだ自分から話しかけに行ったりはしていない。
マリーはそんな様子を見て積極的に話しかけてるようだが、エイルとこうなった時は基本的にそれを苦笑いをしながら見ているだけの事が多い。
「ミルファ、一緒にこのチームに来てくれてありがとう。おかげで楽しく過ごせてるよ。」
「え?えーと、こちらこそ……レイジくんが誘ってくれてホントに嬉しかったです。ありがとうございます。」
ミルファは酔って少し赤くなってたのが更に真っ赤になっている。
これってやっぱりそうなのか?
今朝のエイルの話を思い出した。ミルファがオレに惚れてる?
初めて顔を合わせたのはギルド登録した時の講習会。けどその時はお互い顔を見ていない。
次に会ったのはその二日後、雨の日のギルドの食堂だった。一人で食べている処に相席してきたんだった。
スタンピード後の打ち上げで思わずパーティに誘い、そのまま同じ部屋で暮らす事になったんだ。
出会ってまだ十日。しかしそれからは偶然出会う事が多く、一緒にいたいと思える人になっている。
この子がオレの事を?いやいや、まさかそんな事は……。
そんなことを思いミルファに視線を向ける。
「どうしました~?」
変に意識してしまいまともに目が見れない。ヘタレイジ……よく言ったものだ。
「ミルファ……何でもない。これからも宜しくな。」
既に皆飲みすぎて、エイルは泣き上戸、マリーは笑い上戸になっている。
ディルは何も変わらず、ミルファは真っ赤になってはいたがそこまで変化は無い。
最終的に閉店まで飲み続け、皆が千鳥足で帰っていった。
「ただいまー。ダメだー、明日は休みな。うっぷ。ちゃんと寝ろよー。」
エイルはダメそうだ。ディルが肩を貸している。
「ミルファちゃん、(ファイト!)」
マリーとミルファの不思議なやりとりがよく分からず首を傾げる。
「ん?何、今の意思疎通は?」
「何でもないでーす。」
やはりミルファも飲みすぎてテンション高めだ。
オレはそんなミルファの手を引いて部屋へと入っていく。
「大丈夫か?とりあえず装備外そうか。」
「出来ません。レイジさんがやって下さい。」
何言ってるんだ。と一瞬思ったが、酔っ払ってるからかと直ぐに納得し、靴を脱がせ小手を外し、胸当てまで外してやる。
「外したぞ。オレも自分の事するから、後は自分で着替えれるか?」
「ありがとうございます。あとは任せて下さい。」
とりあえず自分の防具を外し、アイテムボックスから着替えを出す。
「大丈夫か?着替えどこにあるか分かる?」
部屋は真っ暗なので手元がうっすら見えてるくらいだ。
「大丈夫ですよー。もう着替えちゃいました。」
早いなー。なんて思いながら着ている服を脱ぎ、寝巻きに手を伸ばす。
その時急にその手を掴まれ引っ張られ、ベッドの上に倒れ込んでしまった。
倒れ込んだオレにミルファは抱きついてくる。
「レイジさん、どうして何もしてくれないんですか?私じゃダメですか?」
その言葉でオレはノックアウトされてしまった。
ミルファに唇を重ね、そのまま夜は更けていった。
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「じゃあここからはマリーが部屋まで連れてってくれ。」
ディルにそう言われたマリーは、エイルの腕を自分の肩に回し部屋へと連れて行く。
その様子をディルは保護者のような顔で見送っていた。
「ほら、大丈夫?んしょ、ん…きゃっ!」
ベッドの上に下ろそうとしたが、そのまま倒れ込んでしまう。
「ご、ごめーん。今よけ…!」
急にエイルに抱き寄せられマリーの言葉は続かない。
「ど、どうしたの?アンタらしくない……。」
「マリー、なんか充実してるな。こんな日常が来るなんてあの頃は思ってもみなかったわ。」
エイルは何かを思い出すかのように静かに語りかける。
「……あの子達のおかげかもね。この数日はアンタ本当に生き生きしてるもの。」
「お前が隣にいてくれるからだ。あの頃から変わらず……。」
月明かりが作り出す二つの影は、そのまま重なり消えていった。
R15での性的表現のラインが分からず少しだけにしておきました。
朝投稿の内容では無かったかもしれませんが、ストーリー上という事でご容赦ください。




