第190話 シルバーランク試験合格者は……
3日連続投稿です!
三連休限定でした。今後はまたペース落ちます……m(_ _)m
「それではシルバーランク試験、合格者の発表をする。名前を呼ばれた者は、此方の係の者に新しいギルドカードを貰ってくれ。では、総合順位の高かった者から発表していく。先ずはトップ合格者だが……断トツで文句なしだな。……ミルファだ!」
トップ合格はミルファだ。
実技では文句なしでゴールドランク試験を勧められたくらいだから、そこはトップ通過だったのだろう。
筆記試験でも問題は無かったようだ。
「ミルファは実技・筆記の両試験共にトップだった。昨日も打診はあったと思うが、明日からのゴールドランク試験を受ける事も可能だ」
ミルファが前へ行き、係の者から新たなギルドカードが交付される。
流石はトップ合格者だ。皆からの注目が半端ない。
ミルファはギルドカードを受け取ると、直ぐに此方に駆け寄ってきた。
「レイジさーん!見ててくれた?トップ合格だったよ!」
「ああ。やったな、ミルファ!」
そのまま抱きついてきたミルファを受け止めると、褒めながら頭を撫でで上げる。
すると、顔を赤らめて「えへへ」と、嬉しそうにしていた。
そんな様子をルナは羨ましそうに眺めていた。ルナも合格した瞬間にしっかりと褒めてあげないとな。
試験官は「ゴホン」と咳払いをすると、二人目の合格者の発表を始める。
「次点はメイ!ミルファと大差は無かったが、ジョブの不利もあり次点となった」
メイが二位での合格だ。
多分ミルファとメイは、共に筆記試験で満点だったのではないだろうか?
そして二人の決定的な差は、武技を使用したかどうかなのだろう。
それ以外にも説明にあった通りだが、ヒーラー職は高得点が出づらいという一面もあったと思う。
だが、それを踏まえた上で、二位通過は大したものだ。
ケントも自分はまだ呼ばれていないのに、自分の事のように喜んでいる。
その後も呼ばれていく合格者達。
既に十人の合格者が発表されている。思った以上に合格者が多いようだ。
「次は……ルナ!」
漸くルナが呼ばれた。
先程から不安な表情をしていたルナだが、一気に笑顔に変わっていく。
ギルドカードを受け取ると、先程のミルファ同様、真っ直ぐオレの下へと駆け寄ってきた。
「レイジくん!やったのです!ウチもシルバーランクになれたのです!」
「ああ。ルナも頑張ったな。おめでとう」
オレは駆け寄ってきたルナをしっかり受け止めると、ミルファの時と同じように頭を撫でで上げた。
嬉しそうにするルナの目には涙が浮かび、心から喜んでいるのが分かった。
既に隣にいるミルファも再び抱き寄せ、二人を再度褒め称えた。
周囲の「いいかげんにしろよ」という視線に気付いたのは、それから間もなくの事だった。
それから数人が呼ばれるも、ケント、そしてトマスとフィオーラは呼ばれなかった。
「次が最後の合格者だ。……ケント!以上だ」
ケントが呼ばれた。
これでオレ達のパーティは全員がシルバーランクに昇格した事になる。
「っしゃぁぁーーーーー!!」
ケントが雄叫びを上げ、係の者からギルドカードを受け取る。
メイがケントの下へと駆け寄り、熱い抱擁を交わしている。
何となくだけど、この二人は夫婦として板についてきた感があるな。
そして、不合格者は落胆の声を上げている。
その中にはオレ達もよく知るメンバーもいるのだ。
「クソッタレが……戦いにばかり集中して勉学を疎かにしていたツケが回ってきちまったな……」
「だな~……俺もトマスも殆ど勉強はしてなかったからな~……ルナ達とはそこで差が出たんだろうな~……」
トマスとフィオーラは二人共、今回の自分達が不合格だった理由を把握しているようだった。
二人の口ぶりから察するに、実技では全く問題が無かったのだろう。
そして、今日行われた筆記試験に対しては、全く対策をしてこなかったと。
そういった者を篩い落すのが、このシルバーランク試験の意義であり、これより先は一定以上の学がなければいけないと再認識させられた。
そんな様子を見たレイヴィンもまた、経験者である自分がしっかりとフォローすべきだったと反省するのだった。
「さて、ミルファはどうする?」
オレの問いに対してミルファは首を傾げる。
何をどうするのか分かっていないようだ。
「ゴールドランク試験だよ。特別措置でミルファは今からの受付でもOKらしいからな。一緒に受けるか?」
一緒にというところ反応したのか、一発返事で受ける事が決まった。
実際ミルファの実力はレイヴィン同等くらいはあるはずだ。
なので、ゴールドランク試験でもいい成績が残せると思っている。
まあ、ゴールドランクといっても、ディルと比べたら断然能力も知識も劣るのだろうが、ゴールドランクトップと比べる必要もない。
武技も使えるのだし、受けれる時に受けた方がいいのは間違いないのだから。
◇
「レイジ、ちょっといいかな?」
今日は一緒じゃない方がいいと思いレイヴィンとは距離を置いていたが、向こうから話しかけてきた。
「大丈夫だけど……いいのか?」
「トマス達かい?二人共前衛だけに打たれ強いからね。これくらいじゃめげないよ。それよりさ、あの資料って貸してもらう事って出来ないかな?」
あの資料とはミルファら四人が今回の試験に向け勉強した資料の事だろう。
レイヴィンら、ケルベロスの雷は今回落ちた二人の他に、ククルとエヴァもこれから受ける事になる。
その為に直ぐにでも対策をしておきたいのだろう。
だがあの資料は――
「悪い。あの資料はオレ達の物じゃなく、孤児院から借りてるんだ。もし必要なんだったら、明日ミルファ達について行って、孤児院と直接交渉したらどうだ?」
「そうなんだ……じゃあ皆に話しておくよ。もしかしたら次回は四人が受ける事になるかもしれないからね」
そう言うとレイヴィンは他のメンバーと共にその場を離れていった。
流石にこの後一緒に、とは言える空気じゃないからな。
そして、見事に全員合格を果たした我がメンバーは――
「さーて、打ち上げと行きたいトコだけど、明日からはレイジのゴールドランク試験なんだよな。まあ、時間的に帰って作るのも面倒だし、何処かで食べてくか」
そんなケントの言葉に、女性メンバーからは『お前が言うなよ』と、言わんばかりの視線が寄せられる。
まあ、ケントの場合は食事を作らないのではなく、作れないのだから仕方ないといえば仕方ないのだが。
それでもこの場でのその発言は良くなかったな。
一先ず女性メンバーを宥め、ケントには女性メンバーの怒りの理由を説明してからギルドを出た。
ケントは『そんなつもりじゃない』と弁明していたが、最終的には謝罪し、普段から食事を作ってくれる皆にお礼を述べていた。
多分今夜からメイがケントの教育が始まるのだろう。
どのような教育が行われるのかは想像つかないが、まともな教育になるとは思えない。
ケントには頑張れと言っておこう。