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第184話 孤児院で瘴気中毒治療

「ただいま~」


 昼前に帰ったオレは、そのまま調合を行っているミルファの下へと向かった。

 ミルファは朝からマンドレアから瘴気中毒の薬の制作を行っている。

 とは言っても、現在作っているのはある程度までの病気にも効能がある万能薬だ。

 専門家ではないので瘴気中毒薬なんていうピンポイントに効く薬など作れる訳もなく、広くレシピが伝わっていて、ある程度の調合士なら製作可能な万能薬を作っているのである。

 ただ、通常の万能薬とはマンドラゴラから製作するのに対し、現在制作しているのはマンドレアを材料にしている。

 その為効能は通常の万能薬より優れているので、ほぼ間違いなく瘴気中毒者を治す事が出来るだろう。

 それを最初から制作に成功したので、現在は同じものを大量に生産しているのだ。


「どうだ?ある程度の数は出来たかな?」


「お帰り、レイジさん。とりあえず50人分は出来たよ。出来た分だけでもこの後持っていく?」


「サンキュー。この間の状況だとこれで足りそうだけど……」


 今日の午前中だけで50人分の万能薬を作ったとか、中々のハイペースで製作していたようだ。

 お陰で午後から孤児院に持って行く事が出来るのだが……


「それじゃあ、行ってくるわ」


 午後からはケントとメイと共に孤児院へ向かう。

 元々孤児院でシスターをしていたメイが一緒に行きたいと言い、ケントが『メイさんが行くなら俺も行くからな』などと言って付いてくる事になった。

 ミルファは引き続き調合を行うようで、ルナは同じ調合部屋で試験に向け勉強に励むようだ。

 ケントは大丈夫なのか不安ではあるが、オレがメイと二人っきりになるよりはいいだろうし、一緒に来る事には何ら問題はない。

 その代わり、残りの期間は勉強に励むしかないが。


 孤児院の手前でリモンドとライアンに会い、万能薬を持ってきた旨を伝えると、二人は飛び跳ねて喜んでいた。

 被害者に同僚の弟も含まれていたりして、この二人も相当心を痛めていたようだ。


 二人に促され、急ぎ孤児院へと向かう。

 部下に当たるライアンが先行し、孤児院にいち早く情報が伝わり、オレ達が到着する前に孤児院からは代表のラーゼンを始め、職員一同が出迎えてくれていた。


「レイジさん?ホントに万能薬を?流石に早すぎませんか?」


「あ、ラーゼンさん。昨日カスケイド山地から帰ってきて、ウチの頼もしいメンバーが今日の午前中で50人分の万能薬を完成させたんだ。一応効能が無かった時の事も考慮してマンドレアも持参してきているから。もしダメだった際にはコレを使って万能薬を作ればいいだろう。」


 オレが依頼を受けたのはマンドレアの採取だけである。

 しかしそのままでは薬としては使えないと、鑑定をした事で判明していたのだ。

 ミルファの調合レベルを上げるのにもちょうどいいのもあって、予め頼まれてもいない万能薬に調合しておいたのである。

 因みに、恩を着せるような言い回しはわざとである。

 別に何かを求めるわけではないが、これが当たり前だと思われないようにしたかったからだ。


「何から何までありがとうございます。ですが、調合のお代までは――」


「まずは投薬が先だろ?急がないとヤバいんじゃないのか?」


「そ、そうでした。此方へ」


 ラーゼンの先導で急ぎ病人達の下へと向かう。

 前回は立ち入らなかった二階の大広間。

 そこには沢山のベッドが並べられ、幾人もの人が苦しそうにしている。

 そこにはオレの予想を遥かに上回る患者が並べられていた。

 明らかに薬が足りないが、今は出来るだけの事をするしかない。


 まずは入って直ぐ目に留まった患者に目を向けてみた。

 見た目には特別変わった様子は見られない。

 だが、服の下を見ると、その症状が一目瞭然だった。

 心臓に位置する部分の皮膚が黒く変色しているのだ。


「これが瘴気の所為で?ヒドイな……」


 心臓からなのかは分からないが、確実に心臓周辺が瘴気に犯されていて、殆どの人が肺もやられているのだろう。

 誰を見ても呼吸が乱れていて、ちょっとしたショックで息が止まってしまいそうな状態だ。


「さあ、これを飲んで。その症状に対する特効薬だ」


 ポーションのような液状薬で良かったと思う。

 これが錠剤だったなら、誰一人として飲む事が出来なかっただろう。

 それでも少しずつしか飲めてはいない。

 それでも何とか飲みきる事が出来た。

 そのまま様子を見る事五分程――相当苦しそうにしていた呼吸が次第に落ち着いていくのが手に取るように分かった。


「うっし!成功だ!皆でドンドン飲ませていこう!」


 その場に歓声が沸くと、シスターを筆頭に皆で手分けして次々と万能薬を与えていく。

 ただ、今回用意出来たのは50人分だけだ。

 まだ軽傷だと思われる患者には今は待ってもらい、重症患者を中心に万能薬を与えていく。


「午前中で完成したのはこれだけだけど、また同じくらいは完成してると思うぞ。この後誰かウチまで付いて来てくれれば、残りの患者の分の万能薬も渡せると思うけど」


「は、はい。では私と……リモンドさん、護衛お願い出来ますか?」


「勿論です!直ぐに行きましょう、残りの者も早く治してあげたい」


 ラーゼン自ら付いてくるらしい。

 護衛にはリモンド一人のようだ。

 ライアンは此処に残り、残る患者の警備にあたるようだ。

 逆にメイとケントは残るようだ。

 メイが万能薬を与えた患者の様態が気になるのもあるが、この孤児院での生活の様子などももう少し見ていたいとの事だ。

 ケントは――只の付き添いだな。

 そんな訳でオレ達は、ミルファが更に作ってくれているであろう万能薬を取りに、再度我が家へと向かう事になった。



 数時間後、大量の万能薬を作り終えたミルファも連れて孤児院に戻ってきたオレ達は、手分けして残りの患者に万能薬を与えていく。

 一通り全ての患者に万能薬を与え終えたので、後は時間と共に快方に向かうだろう。


「この度は本当に、本当にありがとうございました。ただ……頼んでおいて申し訳ないのですが、当孤児院には今回の薬に見合うだけの報酬を渡すだけの蓄えが無いのです。金銭以外で出来る事があるならば何でも致します。それで何とかならないでしょうか?」


 元よりこの孤児院にそこまでの報酬を求めてはいない。

 大半は慈善事業のつもりでやったようなものだ。

 だが、無償で万能薬を寄贈したなんて噂が立つのも困る。

 今後そういう輩が増える可能性があるからだ。

 どうしようかと頭を悩ませていると、子供達と共に奥の部屋からメイとケントが走ってきた。


「これ、これ見て!シルバーランクの学科試験の対策を纏めた資料よ!この資料を借りることは出来ないかしら?」


 どうやら二人は子供達の学習を見ていたところ、本棚からこの資料を発見したようだ。


「ああ、この孤児院から出た冒険者が試験に臨む際に勉強するようにと、先に試験に受かった者で纏めた物ですな。そんな物でいいならば、どうぞ持って行ってください」


「いいのか?」


「ええ。先程も申しましたように、我々には今回の皆様方の働きに対して支払える物が御座いません。そのような資料が皆様にとって必要だと言うならば、喜んで提供致しましょう」


 このまま無償で終わらせるより、コレを報酬として受け取った方が冒険者としても面目が立つし、丁度いいのかもしれない。

 此処はありがたく頂戴しよう。


「では、今回の報酬としてこの資料を頂こう」


「良かったわね、ケント。これで筆記試験も何とかなりそうよ」


 ケントはこれで合格に一歩近づいて嬉しい半面、明日は勉強漬けになる事を嘆き、微妙な面持ちになっていた。

 ともあれ、シルバーランク試験まで残り二日。

 オレ以外の四人は、明日はこの資料を使って勉強する事が決まったのだった。

100万PVという数字を見てやる気が断然アップしました!

もしかしたら更新が早くなるかもしれません。

今後もよろしくお願いします!

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