第181話 カスケイド山地(3)
前回と比べ、かなり余裕を持ってストンドラゴンを倒したオレ達は、更に迫り来る魔物を討伐しつつ、その先へと進んでいく。
とはいえ、戦闘を開始してから既に三時間が経過しており、流石に疲労が溜まってきている。
一度後続を絶って休憩を入れたいところだ。
「ミルファ、レインアローを頼む。その後一旦離脱して少し休憩しよう。」
ミルファは迫り来る魔物の先頭付近にレインアローを打ち、後続と距離をとった。
更にストンウォールで魔物との間に壁を作った。この隙に一旦後退して休憩する事にした。
「周囲を見る限り、まだ前回渓谷に降りたポイントにすらたどり着いてないよな。」
ストンドラゴンがいた事からその周辺まで来たかと思っていたが、未だに前回この渓谷に降りたポイントにも着いていない事が分かった。
前回オレ達が降りたポイントは森林サイドの崖が大きいながらも段差が出来ており上へ戻る事も出来たのだが、今の所はそういった段差を見つける事が出来ないでいたからだ。
「けど移動距離から考えた限りでは、結構近くまで来ているはずよ。そこからどれくらい奥へ行けば目的のモノがあるかは分からないけど、上手くいけば次のアタックで行けるかもしれないわ。」
うん。オレもメイの考えと同じである。
マップで確認した限りだと、此処から一キロ程はまものが今まで同様に闊歩しているが、その先は一気にその数が減っていくようだ。
そう考えると、次のアタックで残りの魔物を蹴散らしその先へ行ければ、今回の目的であるマンドレアとシロコダイルがいる可能性が大いにあるだろう。
「多分問題ないと思うぜ。今回はこのタイミングで休憩を入れてもらったけど、なんかあまり疲れてないんだよな。多分あのまま続けてても、あと二、三時間はいけたわ。」
「ウ、ウチもなのです。以前は魔物に押されて結構苦しかったけど、今回は余裕を持って戦えてる所為なのか、全然疲れてないのです。今休んだお陰で、次は五時間くらい戦い続けても問題ないのです。」
一番苦しいはずの前衛二人が余裕そうにしているのを見て、以前より確実に強くなってるのを実感する。
そして休むこと一時間、再度渓谷の奥へ向けて、その歩みを進めていく。
先程まで戦っていた場所には既に魔物の姿は見当たらない。
どうやら元々の拠点まで戻っていったみたいだ。
この渓谷における魔物は、普通の魔物とは少し異なっているようで、戦闘の匂いを嗅ぎつけたらそこに集まる習性があるようだ。
その戦闘が一時的に止んだことから、魔物たちは解散を始めその場を離れていったと見える。
そしてそこから200メートル程進んだ時、再び魔物の群れが襲いかかってきた。
初手はミルファのレインアロー。
そこから再度集まった魔物に対し、オレのサンダーショットが炸裂する。
この二撃だけで100匹近い魔物が息絶えた。
単独で残った魔物から順にルナとケントで始末していく。
そこからは総力戦だ。
新たなストンドラゴンや、未だ見た事のない魔物がいるが、それらはオレが優先的に始末していく。
先程までより更にハイペースで進んでいく。
ルナやケントのレベルが上がってるからだろう。
攻撃力や俊敏性が上昇した事で、更に前進するスピードが増しているのだ。
中型以上の巨大魔物も結構楽に討伐出来ている。
これもオレやミルファのレベルが上昇している結果だろう。
此処まで既に800匹以上の魔物を倒している。
それだけ倒していれば、間違いなく複数回のレベルアップをしているはずだ。
ルナも殆どの魔物を一撃で仕留める事が出来るようになっている。
そのお陰で、ケントの出足の悪さをカバーし、一歩遅れながらもそのケントが確実に魔物の足を止めている。
そこにミルファの援護が入る事で、いい流れで魔物が殲滅されていった。
そして休憩明けから三時間。
見える範囲にいる魔物は全て討伐し終えたのだった。
「はーっ、やっと終わったか~。時間は掛かったけど、思ったより負担は感じなかったな。」
「ケントの言う通りなのです。まだまだ出てきても問題なく戦えるのです。」
頼もしくなった前衛二人はまだまだ余裕があるようだ。
それに対して疲労の色が濃いのがミルファだ。
基本、矢を使わず、殆どの攻撃が魔力矢だったのもあり、魔力が枯渇寸前まで追い込まれているようだった。
「ミルファ、大丈夫か?」
アイテムボックスからマジックポーションを出し、ミルファに手渡す。
「あ、ありがとう、ございます。ング、ング、ング――はぁっ、もう、大丈夫……ごめんなさい……」
「いや、謝るのはこっちだ。戦闘中でもマジックポーションを渡すべきだったよな。ごめんな。」
オレも戦闘に集中してしまって、魔力の状態を把握出来ていなかった。
完全に怠慢によるミスだ。
「いえ、私がペース配分を誤っちゃった所為なの。今後は気をつけるね。」
「ん~、じゃあお互いに気を付けよう。それで、ミルファとメイはマジックポーションを一つ持ち歩くようにしようか。そうしたらこういう事態にならずに済むよな。」
アイテムボックス内には、まだそこそこの数のマジックポーションが常備されている。
だからこそ出来る事だが、こういった自体を避ける為に出来る事は、どんな事でもやっていきたいと思う。
人命が第一なのは当たり前の事なのだから。
今は全員にミドルポーションを携帯してもらっているが、ミルファとメイはそれをマジックポーションと入れ替える。
これならば特別荷物が増えるわけでもないので、邪魔にはならないはずだ。
「丁度いいから此処で野営にしようか。見る限りこの先は湿地帯になっているし、休むなら此処の方が良さそうだ。」
目的のマンドレアとシロコダイルはこの先だ。
此処で一旦夜を明かし、明日本格的に目標の魔物を探す事にしよう。
続きを書こうとすれば、何故か全く違う物語が頭を過るので、ストーリーを書き留めて新作の準備をしています。
とは言え、書く時間が取れていない現状ではまだまだ先になるとは思いますが……
先ずはこの王都編を完結まで走り抜けます。
今後もよろしくお願いします。