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第19話  高報酬

本日2度目の更新です。

「おい、見張りの時間だぞ。起きろー。」


 目を覚ますとそこにはエイルの姿がある。


 ――ここはアゲトダンジョン三階。オレ達はギルドの依頼を受け此処に来ている。

 既に目的は果たし帰るだけなのだが、時間も日付が替わっており、体力面・精神面のどちらを見てもこのまま帰るのは危険だということで仮眠を取っている。


 オレが見張りをするのは一番最後、既に外は日が昇っている頃だ。


「あ、エイルさん……、おはようございます……あ!見張りですね。すみません。」

「お前忘れてたろ……。」


 苦笑いで誤魔化しつつ先に見張りをしていたディルと交代した。


「見張りって何するんですか?」

 よくよく考えたら魔物への警戒以外分からない。

「何って、魔物が来たら全員を起こす事だろ。」

 普通の回答が来た。

「いや、それはわかるんですけど、それ以外に何か特別なことって無いのかなーって。」

「別に無いだろー。まあ、危険は無いけど怪しいものを発見したとかあったら、それは状況に応じて対処しなきゃいけないけどな。」

「ほう、どうするんですか?」

「口で説明するモンじゃないからな。その時になったら覚えろ。」

 まあそうだろう。状況はさまざまだ。臨機応変にやらなきゃならないのだ。

 それを説明しろって言われても困るだろう。変な質問をしてしまった。


「それよりもレイジ、ミルファと一晩一緒してどうだった?ん?」

「どうって……別に何もありませんよ。直ぐ寝ましたし。」

 きたよ、上司のハラスメント。前世でもこれはホントに嫌だった。

「何も無い訳ないだろ。男と女が同衾して何もないって……マジで?」

「マジっす。そんなこれからずっと一緒にやってく仲間にそんな事出来ないですって。」

「バカ野郎!お前、一緒に一つのベッドで寝ましょうってなった時点で相手もOKって事だろうが!逆に何もしない方が失礼ってもんだぞ。」

「いやいや、そんなことないでしょ。だって向こうだって直ぐ寝ましたし。」

「寝たふりしてお前が来るの待ってたんだろ?このヘタレが!ヘタレイジだな。だーはっはっ!」


 そんな訳ありえない。と思いつつも、ホントに待ってたなら……などと考え込んでしまった。

「まあ、俺も他人事だから煽ってるのもあるけどな。でもミルファはどう見てもお前に惚れてるだろ?」

「……え?」

「違うのかなー?分かんね。いや、何となくそう思ったんだけどな。」

 そんな素振り見せてただろうか?いや、見た感じだと誰に対しても同じ対応だったはずだ。


 元々オレは女心というものが分かってない。

 前世でも自分が中心であり、相手を思って行動したことが無かった。

 ただ、今思えばこの身体になってからは、そこまで自己中ではなくなった気がする。オレってこうだっけ?と思うことも多々ある。

 それに関して違和感はない。逆に人との関係を大事にしたいと思っている。

 だからこそ、ミルファにも自分の欲望だけでそういう事をしないようにしていたのだ。

 しかし、相手が待っていたとは寝耳に水である。

 確かめたい。でもいいのだろうか?と自問を繰り返す。

 答えが出るはずもない。少ししてこれに気付き考えるのを止めた。



「さて、そろそろ皆を起こして出発するかー。」

 そう言われ立ち上がり、身体を伸ばす。

「おーい、お前ら起きろー!そろそろ行くぞー。」

 全員が起きて軽く身体を動かし、装備も確認してから出発した。



 ダンジョンから出てからは兎に角見つけるものを片っ端から採取していく。

「鑑定!ん?なんだこれ!」

 鑑定を使った時の表示が変わっている。


 幻妖花 ☆☆


 名称の後に星が付いた。

 どういう事か分からず皆にそのことを伝えた。

「それって多分レア度じゃない?商人ギルドでそのアイテム毎にレア度を設けてるのよ。例えば……このアフラ草を鑑定してみて。」


 アフラ草 ☆


「星一つじゃない?それがレア度なのよ。星が多いものほど高く取引されているわ。」

 そうなのか。しかし片っ端から採取するなら要らない情報かもしれないな。

「それがあれば悪徳商人に騙される心配ないわね。」

 その通りだ。初見のモノでもその価値がある程度分かるっていうのは大きかった。

 やはり大変役立つ情報だった。

 

 一応気になったので、今回の目的である赤色油を鑑定してみた。


 赤色油 ☆☆☆


 星三つだ。結構良いのではないだろうか。

 メノウリザードの魔石は解体してないので調べることが出来ないだろう。


 採取を続け、ロードプルフへ戻ったのは夕刻だった。

 辺りがオレンジに染まり、人々が帰路に着くため行き交う。

 ギルドも帰還した冒険者で溢れている。

 今回は荷物が多い為、別室を用意してもらった。


「この部屋じゃ入りきらないんじゃない?」

 マリーの言葉に職員は首を傾げる。

 気持ちは解かる。何しろ今オレ達は手ぶらなのだ。

 外に荷台がある訳でもない。なのに何故……

 職員の疑問に対し、オレ達はギルド長を呼んでもらう事にした。


「よう、おっさん!申し訳ないけど採取品を出す場所を貸してくれねぇか?」

 相変わらずのエイルの軽い言葉にギルド長はその理由を聞いてくる。

「おっさんだから教えるけど誰にも言わないでくれよ。」

 そう言ってオレのアイテムボックスの事を打ち明けた。

 ギルド長はかなり驚愕していたみたいで、此方を見た時の顔がおかしな事になっていた。


「お前らに専属の担当を付ける。付いてこい。」


 そこはギルドの裏にある資材倉庫。

 建物の半分が解体用の広場になっている。


「オーグストンはいるか?」

「ギルド長!どうしたんです?」

 ギルド長に紹介された人はオーグストン。ここの解体責任者とのこと。

 此処には基本、解体職員以外が立ち入ることはなく、ギルド長の責任の元、秘密は必ず守らせると言う。

「オーグストンだ。よろしく頼む。で、その素材は何処にあるんだい?」

 そう言われエイルを見ると小さく頷いたので、そこに全ての素材を出していく。

 一匹で20キロ程あるメノウリザードを約60匹、赤色油が入った200リットルのドラム缶が10個、そしてメノウリザードオニキス。

 それ以外に道中採取したモノが全部で300点程。

「な…なんだこれは?それより今どこから出した?」

 ギルド長もオーグストンも驚きを隠せずにいる。

 初めて見る人は皆同じ反応なんだな。


「お前らが隠そうとする理由が解かった。このことはギルドが責任を持って隠蔽しよう。あと、これからは直接此処に来るようにしろ。わかったな。」

 ギルド長はそう言うとその場を後にした。

「あのおっさん逃げたな……。」

 そう、これら全ての見積もりをしてもらうのだ。

 多分それが分かったからギルド長は足早に立ち去ったのだろう。

 オーグストンはまだ固まったままだ。これは時間が掛かるな。


 オーグストンは我に返ると、解体職員を集め全ての見積もりを始めた。

 とりあえず依頼分を終えるとそれを羊皮紙に書き、受付で依頼完了報告をするようにとそれを渡された。


 受付で羊皮紙を渡すと、その受付嬢も驚きの表情に変わる。何度見ても面白い。

 それと同時に謝罪してきたのだ。

「メノウリザードオニキスは非常に珍しい種族ですが、その強さからゴールドⅠ以上に認定されています。今回の依頼はその調査不足でブロンズ依頼にしてしまいました。大変申し訳ありませんでした。」

 そうなのか。強いと思ったらそういうことだったらしい。オレは手出しすらさせて貰えなかったからあまり関係ない。凄いのはエイルたち三人なのだから。

「そして、ゴールド三人と共同とはいえ、問題なくそこから帰還されましたアイアンⅡのお二人につきましては、一足飛びでコモンⅡへの昇格とさせていただきます。」

 オレとしてはこれが一番吃驚だ。

 突然コモンⅡへ昇格してしまった。

 ミルファも驚いている。オレ達は二人共冒険者になってまだ十日ほどだ。この後何か悪いことが起きなければいいが。


 今回の依頼報酬は赤色油1リットルで500G、100リットルまで。これが5万G。

 メノウリザードの魔石が一つ3万G、これが64個で192万G。

 残りの赤色油が1リットル300G買取で1900リットル分、57万G。

 メノウリザードの残りの部位が一匹5000Gで、32万G。

 合計で286万G………ありえない数字だった。


 まだそれ以外の往復時に採取した素材が残っている。これらは後日集計するらしい。

 エイルとマリーは抱き合って喜んでいる。

 しかし一点、メノウリザードオニキスの分が計上されていない。

 聞くと、非常に特殊な魔物らしく直ぐには金額が出せないとの事。

 更なる大金の可能性に一同期待することになった。


 オレ達の懐は温かい。今日は酒場でパーティーだ。

 エイルはオレとディルと肩を組み、マリーもミルファの手を引いて笑顔で酒場へ向かった。

いつも読んでいただきありがとうございます。

コロナウイルスにびびって出歩かない分此方を書いています。

これからも宜しくお願いします。

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