第176話 お姉さまパーティ
「あの……今日は宜しくお願い致します……」
「うん!でも、メイって私と同い年でしょ?あんまり堅苦しくしないで欲しいな。」
今日はメンバーを入れ替え、エイル達、現ロードウインズのメンバーにウチのメンバーを鍛えてもらうべく、少し変わった編成でダンジョンに挑む事となった。
オレが入るパーティメンバーはマリー・メイ・ソニアの三人になる。
マリーにメイの指導をお願いし、ソニアはオレとまともにパーティを組んだことがないので組んでみたいという事からこういったメンツに決まったのだ。
面白い事にこの三人、実は同い年である。
エロお姉さまのソニアに、清楚系お姉さまのマリー、そして既婚童顔お姉さまのメイと、バラエティー豊かだがとても同い年には見えないな。
そんな同い年の三人だが、メイは昔からの憧れであったマリーにはつい敬語で話してしまい、距離を詰めたいマリーからは苦笑が溢れている。
ソニアはというと、かなりオレに詰め寄ってきて、ルナやミルファとの夜の生活についてグイグイ聞いてくる。二人にとって支障のない範囲では答えるが、それ以前にこれも一種のセクハラなのではないだろうか。
もうひと組ではミルファは引き続きディルに見て貰う事になっている。
そしてルナは、同じようにスピードを生かした前衛をしているエイルに動きを見てもらい、今後の課題を見出し修正させようという考えだ。
ケントは同じスタイルの者がいないので、エイルと、パウロと親交がありそのスタイルに詳しいディルが何かしらのアドバイスが出来ればと、買って出てくれた。
皆がこれを機に、何かを掴んでくれる事に期待したい。
向かうのは前日と同じ70階層。
四人なので60階層で、という意見もあったが、支援をメインで見るならば、ある程度の相手も必要となるのでこれくらいの相手の方がいいだろう。
ついでにソニアも80階層まで到達しておけば、明日からのロードウインズの探索も楽になるはずだ。
前衛にソニアを置き、中衛にオレ。後方にてマリーがメイを指導するといった形でダンジョンを進んでいく。
流石に三回目ともなればマップを見なくても道順が分かるようになっている。
だが魔物を探しながらなので、マップは見てるんだけど。
マリーの指導はかなり分かりやすい。オレは一歩前で聞き耳を立ててるだけだが、それだけで理に適っているのが分かる。そしてその有効性もだ。
中でも気になったのが、マジックエフェクターという魔法の有効性だ。
この魔法の効果は、受けた者がその後受ける魔法の効果を高めるのだが、白魔法である事から、どうしても味方に掛ける魔法だと思われがちだ。
だがこれを相手に掛ける事で、その後オレの放つ黒魔法の効果を高める事が出来るのだ。
勿論、相手が回復魔法を使わないという大前提があった上でその使用が認められるのだが、それでもかなりの頻度で有効な場面がある事だろう。
「ソニアさん、次の右の通路にデビルサスカッチ。」
「オーケーよ。スネイクストライク!」
ソニアの鞭技、スネイクストライクは鞭が蛇の如き動きをしながら、死角にいる魔物さえも打ち抜く技だ。
今も完璧にデビルサスカッチの眉間を打ち抜き、一撃で絶命させていた。
「ヒュウ!流石です。オレの出番ないな。」
「こんな大技、何度も打てる訳ないでしょう。次は坊やの番よ。その実力を私にも見せてちょうだい。」
ソニアに背中を押され、オレが前衛になった。
この人数で戦うならば、魔法で戦った方が効率はいいのだが、まあ仕方ない。
前衛でも魔法は使えるし、戦い方はちょっとした工夫でどうでも出来ると思う。
そうだな、今回は前衛での魔法の使用方法の工夫を試してみようか。
今までの魔法の使い方は、殆どが魔法を【飛ばす】か【置く】使い方だった。
今回考えたのが、攻撃時に自らに【纏う】使用方法だ。
これならば近接戦闘に於いても近くの味方への被害もなく、状況に左右されずに使用する事が可能だろう。
問題は相手に密着していないと使えない点だが、今のオレの身体能力ならばそこまで問題はなさそうだ。
早速試してみようか。
現れたのはメガロウルフか……丁度いい。ウルフ系ならばこの戦法を試すのにもってこいの相手だ。
メガロウルフはオレ達の姿を捉えると、此方に向かって一直線に突進してきた。
これなら狙い通りの攻撃が出来そうだ。
従来ならば盾を使いガードするか受け流すか、若しくは躱すかといった対応だったが、今回は盾を装着している左腕にサンダーを纏わせる。
これに触れた相手はそのままその魔法を受けたのと同様のダメージを負うはずだ。
メガロウルフの突進をサンダーを纏った左腕を使い、受け流すようにその身を翻す。
その瞬間、メガロウルフはサンダーの魔法をその身に受け、完全に動きを止めた。
「今です!ソニアさん、宜しくです。」
ソニアが止めを刺し、メガロウルフは簡単に倒れた。
「防御すると見せかけて、それが攻撃とはね。私まで騙されてしまったわ。やるじゃない。」
うん、この方法は今後も使えそうだ。
そしてソニアからも及第点を得る事ができ、一先ずこれで確認は済んだ事になる。
その後も75階層まではマリーによるメイへの教授が行われ、この間ソニアのオレの見定めがされていた。
しかし76階層からは何故か女子会モードとなっていた。
「え~~!メイってケントと婚約してたの?」
「は、はい。結構最近ですけど、ケントからプロポーズされまして……でも、年齢的に来年までは結婚出来ないので、とりあえず婚約といった形だけですけどね。」
恋人の話題からメイが婚約した話になり、マリーがかなり驚いている。
「えーと、マリーさんはどうなんですか?聞いたところ、エイルさんとそういう関係なんですよね?」
「うーん……私たちは旅に出てからはそういう感じじゃないからね。エイルも多分ソニアに遠慮してるのもあると思うし……」
ん?ソニアに遠慮?もしかしてソニアってエイルの事を思っていたのだろうか。
そう思ってソニアを見ると、顔を真っ赤にして顔を逸らしていた。
「ソニアさんってエイルさんの事が好きだったんですか!」
「煩いよ!私だってマリーがエイルと結ばれたのを知って、忘れようとしたのよ。でも、一緒にいたら忘れる事なんて出来なくて……」
こう見えてソニアはかなり純情のようだ。
照れながらそう話すソニアの顔はまさしく乙女モード全開だった。
「まあ、ソニアがこんな風になってたら、流石にイチャイチャする訳にもいかないでしょ?一応自重してるのよ。」
「……でも、二人は仲良しなんですよね?」
「「勿論!」」
メイの問いかけに二人共自信を持って答えた。
本当に仲良くやってるのだろう。
「だったら二人共エイルさんの恋人でいいんじゃないですか?レイジさんだってミルファちゃんとルナちゃんの二人をとても大事にしてますし。」
それを聞いたマリーとソニアは固まった。
それはそうだろう。一夫多妻が当たり前のこの世界でも、極力独占したいと思うのが人の心だ。
ソニアはそうしたいと思っても、マリーは流石にいい気分ではないはずだ。
と、思ったのだが……
「そうよ!それだわ!別に私たち二人でエイルをシェアすればいいだけの話よね。」
「マリー!?アンタそれでいいの?今のままだったらエイルはアンタだけの物なのよ!」
「別に……私はアイツの事を独占したいとかそんな欲求もないし、私は、私とエイル双方が幸せであればいいと思ってるの。それに、ソニアだったら何の文句もないわよ?」
満面の笑みでそう言い放つマリー。
ソニアは少し驚いた顔をしていたが、大きく息を吐いて呆れた表情を見せた。
「アンタには一生勝てそうにないわね。分かったわ。私もエイルに想いを伝えるわ。でもマリー、後悔するんじゃないわよ?」
ソニアはそれだけ言うと踵を返し先へと進んでいく。
「弟子であるミルファちゃんが幸せそうにしてるのに、私が後悔するわけないでしょ……ね、レイジくん!」
そこでオレに振らないでほしい。
オレはミルファとルナ、二人の事が好きだから受け入れているだけだ。
ただ、エイルやマリーには幸せでいてほしいし、ルナはソニアに幸せでいてほしいだろう。
そういった意味で言うなら、三人がくっつくのはアリだと思っている。
後はエイルがソニアを受け入れるかどうか、それだけだ。
そんな話も一段落し、更に先へと進んでいく。
その後、80階層のボス、ダークオーガをしっかり討伐し、今日の探索を終了した。
更に更新が遅くなりそうです……
申し訳ありませんm(_ _)m




