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第174話 ロードウインズとしての一日(1)

 今日は久々に元ロードウインズの五人でのダンジョン挑戦となる。

 もう一組のパーティとなる、『ソニア・ルナ・ケント・メイ』パーティは、ソニアに二人のアタッカーを見てもらおうという狙いもある。

 メイも、前衛だけのメンバーの中での立ち回りは今後の為にもいい勉強になるだろう。


 オレとミルファは強くなった自分達を見て貰うので、かなりテンションが上がっている。

 興奮してなかなか眠れなかったが、そんな事関係ないくらいに気持ちは昂ぶっていた。

 よく見るとエイルも目の下のクマが凄い事になっている。どうやらエイルも同じような気持ちだったのかもしれない。

 同じような気持ちだったはずのルナはこれ以上ない程熟睡していたのだが、どういうことなのか謎だ。


 エイル達とは宿の食堂で朝食から一緒するよう話をしてある。宿を出る時からパーティとして行動すると決めているのだ。

 エイル達は昨日で70階層を突破したらしく、今日は70階層からスタートする事に決めた。

 ルナ達のパーティは人数の不安もある事から、今日は60階層へ行くようだ。


 因みに今日からオレは魔法を解禁する事にした。

 剣技を覚えたというのもあるが、何よりもエイル達に今のオレの力を見て欲しいというのが一番の理由だ。


 ギルドで受付をしていると、どこか見覚えのある二人組を発見した。


「ダーツ?やっぱりダーツだ!ライトレイクに来てたのか!」


「ん?おお、レイジか!久しぶり……でもねぇな。お前もライトレイクに来てたのか。そう言えばゴールドランク試験受けるんだよな。その為の追い込みか?それにしてはパーティメンバーが違うな?」


 オレのパーティメンバーが違う事を不思議に思うダーツ。

 そこにエイルが顔を出してきた。


「レイジ、知り合いか?どうも、俺はエイル。レイジとは以前同じパーティにいたんだ。宜しくな。」


「おう、俺はダーツだ。レイジとはついこの間同じ依頼を受けた仲だな。宜しく頼むわ。」


 何処となく熱い感じの挨拶を交わす二人の横では女性たちはほのぼのと挨拶を交わしていた。

 しかも司祭のマリーと大魔導師のエミルとでは何か通じるものがあったのか、この短時間でかなり仲良さげに話をしていた。


「俺達は来たばかりで、まだ50階層で腕慣らししてるだけだが、レイジはどうなんだ?」


「オレ達は昨日80階層を突破したよ。なかなかだろ?」


 80階層に反応したのはダーツだけではなく、周囲の冒険者もだった。

 それもそうだ。この湖畔のダンジョンの階層記録は84階層なのだ。それに迫る階層を攻略したと聞けば、誰だって黙っているはずがない。

 しかも見た目からして冒険者になったばかりであろう餓鬼がそんな事を言っているのだ。大半の者は信じたりはしないだろう。

 だが、倉庫でのエマージェンシーコールを見た事がある者はそれなりにいる。

 そういった者たちの証言で、これが事実だと徐々に広まっていくのである。


「ダハハハハッ、流石はサウザンドキラー様だわ。俺も先輩としてもう少し頑張らにゃいかんな。」


「ん?何だ?サウザなんちゃらって?」


 エイルはダーツの言うオレの二つ名について詳しく聞いていた。

 それを聞いたエイルは妙に納得していて、ロードプルフで活動していた当時について語ったりしていた。


「そろそろ行かない?もう結構話し込んでるだろ?」


 彼此三十分以上話しているので、そろそろダンジョンへ向かうように促す。

 エイルとダーツは妙に意気投合したようで、明後日以降共にダンジョンへ潜る約束までしているようだった。


「んじゃ、レイジ、また王都でな。」


 ダーツは先に50階層へと向かっていく。オレ達は70階層だ。


 ◇


「よし、それじゃあ先ずはレイジとミルファの今の実力を見せてもらおうか。」


 エイルがそう言うと、マリーもディルも興味津々な様子でオレ達を見てくる。

 普通に今のオレ達の力がどれほどになったのか、見てみたいようだ。

 オレはミルファと目で合図し、通路の先にいる魔物に向かって歩き出した。


 そこにいたのはナイトオーガ。シルバーメイルを身に纏ったオーガの上位種だ。

 見つけると同時にオレはナイトオーガに向かって走り出し、鋁爪剣にサンダー剣を掛けておく。

 それと同時にミルファが魔力矢を三射放つ。

 全てがナイトオーガに命中し、叫び声を上げながら仰け反った時、オレはサンダー剣で斬りつけた。

 銀の電気伝導率の高さはこの世界でも変わらないようで、ナイトオーガは一瞬にして全身に電気が走り、煙を上げながら倒れた。


「マジかよ……レイジもミルファもここまで強くなってんの?」


「これ……二人相手に今のロードウインズ四人全員で掛かっても敵わないんじゃない?」


 エイルもマリーも呆然とした様子だ。


「ミルファ、魔力矢って事は魔弓士なのか。だったらその矢筒は不要だろ?何故持ち歩いてるんだ?」


 ディルはミルファの戦闘スタイルと持ち物との違和感に疑問を持ったようだ。


「えーと……じゃあ、次の戦闘でそれについて見せますね。レイジさん、次のポイントいい?」


 右の通路の先へ向かい、再度魔物と戦う。

 次は先程とは違った戦い方を見せるとしよう。


「パワーアロー!」


 今度はミルファは狙撃手のスキル、パワーアローで仕掛ける。これは通常の矢を使うスキルだ。これにより矢筒の意味が分かっただろう。

 そして止めにオレは中級魔法のフレイムランスで終わらせた。


「パワーアローだと?それは狙撃手のスキル……そうか、レイジの力だな。納得だ。」


 ミルファのジョブを魔弓士だと読んでいたディルが狙撃手のスキルである、パワーアローを使ったミルファを見て驚愕の表情を浮かべている。

 だが、その二つのジョブを同時に付ける事が出来る術がある事を知っているディルは即座に理解したようだ。

 マリーもディル同様に驚きの表情をしていたが、直ぐに理由を察知下模様。

 エイルは……何一つ疑問にすら思わなかったみたいだ。


「大体こんな感じですね。どうですか?」


「えーと……普通に私達より強いような気がするんだけど……」


 マリーが顔を引き攣りながら、これ以上何を教えればいいのか分からないという。

 そんな中、ディルはミルファに近づき声を掛けた。


「ミルファ、威力、精度共に申し分ない弓術だ。だが、相手を発見してから狙いを定めるまでに掛かる初動時間とその際に相手のウィークポイントを探す時間に手間取りすぎだな。多分ミルファならあと二秒早く撃てるはずだ。この先はそれを意識してみようか。」


 本格的な弓使いとしてやっているミルファを見るのは初めてのディルは、今回本気でミルファに教えるつもりで此処に来ている。

 当時は、単なる遠距離攻撃手段として弓を教えただけだったはずが、知らないうちにその道のスペシャリストとなろうとしている弟子に少しでも教える事が出来たら、という思いがディルを突き動かしているのだろう。

 マリーもそれが分かったのか、温かい目でその様子を眺めていた。


「そんじゃ、此処からは俺達も参戦するけど、レイジは後方待機な。」


「え?」


 オレはエイルの言葉の意味が分からず戸惑う。


「オレより確実に強くなってるレイジに戦いに於いて教える事はないからな。ここからレイジにはリーダーとして指示出しだけをしてもらう。ダメなところは順次修正させるからな。行くぞ!」


 これはありがたい。将来的にはメイに任せるとは思うが、暫くはオレが指示出しをするだろうから、それを見てもらえるのはかなりありがたい事だ。

 此処でしっかり基本を学ぶとしよう。


 そこから75階層まではオレの指示の下、ドンドン進んでいった。

 魔物のタイプによって最初の指示出しが遅れる事が多々あり、それは何よりも指摘された。

 今までも何度かそういった事があり、ミルファは独断で仕掛けて事なきを得ていたが、今後更に強力な魔物と戦う際にはそんな訳にもいかないだろう。

 今修正出来る事はしておいた方がいい。エイルやマリーのアドバイスを聞き、迷いを少しでも失くし素早い指示出しを心掛けるようにしていった。

 75階層のボスもそうして難なく倒し、76階層へ進んでいく。

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