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第18話  アゲトダンジョン

 ロードウイングスとして初めての依頼はメノウリザードの魔石の入手と赤色油の搾油だ。


 それらの入手場所は北西、赤狼の丘を迂回した先にあるアゲトダンジョンである。

 ダンジョンの入口は岩山の間に空いた穴になっており、割と見つけやすい位置に存在していた。

 ダンジョン内に生息する大半はリザード種で、それらの殆どが背中から鉱石を生やしている。この鉱石がメノウリザードの魔石である。

 この魔石は通常の瑪瑙に類似したその外見に魔石であるが故に魔力を帯びている。

 その為、冒険者や騎士のアクセサリーとして何かしらの術式が施され使用されている。


 赤色油はそのまま油なのだが、食用としては用いられない。

 生活における様々なカラクリの潤滑剤として扱われる油になる。

 例えば、門の開閉装置、跳ね橋の動力部、馬車の鉄車輪なんかにも使われている。


 今回はダンジョンに潜るという事で、一泊の予定で採取に向かうことになった。


「ここに着くまで随分掛かっちまったな。」

「仕方ないわよ。レイジくんの鑑定が便利過ぎて、見つかる素材を全部回収するんだもの。」

 そうだ。昨夜オレの持つスキルを皆に公表することにしたのだ。

 その為今回は鑑定をフルに使用しながら行動している。


 しかしこれからが本番だ。このダンジョン内には様々なリザード種がいるらしい。

 未だアイアンランクのオレはまだ此処に挑むレベルではないのだ。

 極力ゴールドの三人の足枷にならないように行動するよう心掛けなくては。


 ダンジョン一階は特に何もなく通り抜ける。


 二階。基本一階と変わらぬ雰囲気の通常の洞窟のような景色。

 遂に出てきた。赤いメノウリザードだ。

 背中に瘤のような出っ張りがある。これが目標のメノウリザードの魔石だ。

「ミルファはディルと共に弓で射撃、レイジは俺といくぞ!」

 盾を構えて前へ出る。近づくとエイルと二手に別れ挟撃にする。

「正面と背後は危険だぞ。側面から足を狙ってけ。」

 側面へ周り前足を狙って攻撃していく。爬虫類の鱗のような皮膚は分厚く硬い。

 少しづつ削っていく。前足の踏ん張りが効かず前に倒れた処で正面から一気に切り刻んでいく。


「凄い、こんなの倒せるんですね。」

「余裕だろ?レイジ、面倒だからこのまま持ってってくれ。」

 言われた通りそのままアイテムボックスに仕舞った。


 二階では合計三匹討伐する。そのまま三階へ。


 三階は何もない広い部屋が一つだけになっている。

 そこは言うなれば大空洞、ただ広い洞窟そのものである。

 メノウリザードも数匹の群れになっている。

「全て刈り取るぞ。」

 その言葉にディルが反応する。

「レインアロー!」

 10本の矢を上から降らせるように放つジョブスキルだ。

 降ってくる矢が無作為に襲い掛かり、三匹いたメノウリザードは一瞬にして殲滅されていく。

 初めて見たジョブスキルは、圧巻だった。

 オレは一歩も踏み出さないうちにその戦闘は終わっていたのだ。


 何もない空間を突き進んでいく。マップを見ても隠し部屋すらもないようだ。

 見つけたメノウリザードは全て倒し、その亡骸は全て持ち帰る。

 そして四階へ


 そのフロアは荒野のような迷宮であった。

 大小様々な岩が転がり、激しい起伏が多数見られる。

 たまにある広い部屋には大きな赤い泉があり、その周囲はメノウリザードの巣になっている。

 その中でも異質な一部屋、その部屋の赤い泉は小さいがブクブクと泡立っている。

 他の部屋と同じようにメノウリザードが囲んでいるが、唯一違うのはその最奥に居る存在である。

 他のメノウリザードと大きさは然程変わらない。しかしその肉体に秘められた魔力量は他を凌駕する。

 背中の鉱石は白と黒のコントラストを描くかのように光り輝いており、その存在をより一層絶対的なものとしている。



「凄いトコですね。燃えるような泉がありながら全く暑くはない。何なんですかここは?」

「この泉が目的の物だぜ。」

 そう、これが赤色油だ。しかし実際にはこれではない。

 これでは純度が低すぎるのだ。

 その高純度の赤色油を求めて更に奥へと進んでいく。


 このフロアで三つ目の広い部屋に出た。

 今までに比べて泉は小さい。だがその泉は明らかに今までのとは違う。

 周囲のメノウリザードは今までの個体より落ち着きがあり、ゆっくりと此方を見極めるように身体を起こす。

 

「レインアロー!」

 その掛け声と共に現れる十本の矢。それに射たれ絶命していく。

 それと同時に離れた場所の個体は、一人の短剣ともう一人の片手剣によって足から削られ潰されていく。

 そんな中最奥の個体、漆黒の肉体と白黒の背中の鉱石。名を『メノウリザードオニキス』

 明らかに上位種。他と比較しようのない圧倒的な存在感。

 それは起き上がると同時に、切り裂くような高音の咆哮をあげた。

 あの黒板を引っ掻くような、不快で虫唾の走る音。

 身の毛がよだつようなその音に身が竦む。


 瞬間、既にそこにはメノウリザードオニキスはいない。エイルに襲いかかっていたのだ。

 その体当たりのような噛み付きを、すかさず左手の短剣で受け流し、右の短剣を振るう。

 メノウリザードオニキスはバックステップで躱し、そのまま火球を吐いてくる。

 エイルは間一髪躱したが、その顔は驚きを隠せていない。


「ありえない動きだろ。なんだあいつは?」

「オレが隙を作ります。エイルさんはその隙をお願いします。」

 オレがそう言うとエイルは首を横に振った。

「無理だな。お前は下がってろ。ここは俺ら三人でやる。」


 そう言うとエイルは飛び出した。

 その勢いのままメノウリザードオニキスに攻撃……せずに消えた。

 そこに現れたのは二本の矢。それはエイルの真後ろから現れたのだ。

 死角から現れたその矢にはマリーによる補助魔法が掛かっている。

 ヤツは一本は弾くが、一本が当たりメノウリザードオニキスは後ろに弾かれる。

 弾かれた先の背後には、蜃気楼のように揺らめきながら佇むエイルが待ち構えている。

陰翳殺(いんえいさつ)……」

 その瞬間メノウリザードオニキスの首が身体から離れた。



「ふぅー、久々にヤバいヤツだったなー。」

 首のないメノウリザードオニキスの身体にもたれ掛かりながらエイルは気の抜けた声で言う。

 傍目には完勝だった。しかし当人にとってはそうではないらしく、一歩間違えれば殺られてたのはこっちだったらしい。


 オレ達はそこにある小さな泉の前に立った。

「この泉を鑑定してもらえる?」

 マリーにそう言われ泉を鑑定する。

 【赤色油99.9%】

「凄いですよ。99%超えてます。今までのと比較にならないですよ。」

 その言葉に一同は笑みを浮かべ、アイテムボックスから出したドラム缶にその泉、赤色油を詰め込んでいく。


「これ以上は入れる物ないなー。ちゅーかよ、全然減らねぇじゃねぇか。どうなってんだこれ?」

「多分底から湧き出てるのよ。この出てきてる泡は空気も一緒に出てきてるんじゃないかしら?」

 難しい事は分からない。オレ達は単なる冒険家なのだから。

 赤色油を入れたドラム缶10個とメノウリザードオニキスをアイテムボックスに入れ、ダンジョン三階に戻った所で、この日の探索を終了し野営する事にした。


 ダンジョン内では時間の感覚が分からない。実は既に深夜になっており、まもなく日付が変わろうとしていた。


 かなり遅い夕食の準備と、仮眠を取るためのスペースの確保を同時に行う。

 持ってきている食事は保存の効くパンだけだ。

「メノウリザードって食べれないんですか?」

「油臭くて食べられないって聞いたわよ。試した事はないからホントかどうかは分からないけどね。」

 重油に塗れた魚が食べられないのと同じ事のようだ。


「てか、折角オレのアイテムボックスがあるんだから、食材持ってきても良かったですよね。」

 それを聞いた全員が、次からはそうしようと目を輝かせていた。


 食事を終え、仮眠を取る事にする。

 この三階にいたメノウリザードは全滅させてるのでそこまで心配は無いが、下から上がってくる事がある為見張りは立てる。

 見張りの順番は、最初にマリーとミルファ、次にディル、最後にオレとエイルの順番だ。

 あとは帰るだけと言う事で、見張りは二時間ずつの交代で仮眠時間はそれぞれ四時間にした。


 後のことを最初の見張りである二人に任せて、オレ達は眠る事にした。

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