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第170話 懐かしき面々

 オレ達は今湖畔のダンジョンの71階層で戦っている。

 ゴールドランク冒険者は70階層周辺にいると思ったのだが、見る限りそうでもない。

 いや、出てくる魔物がデッドリートレントやら呪いのミイラなど、素材としての価値が低い魔物が多いのが冒険者が少ない理由なのかもしれないな。

 オレ達としては、武器で討伐出来る魔物はスキルレベルを上げるのに丁度いいので、これくらいの魔物は大歓迎だ。

 魔法を多様してはオレの本来の目的である片手剣スキルを片手剣極スキルに進化させるのが遅れてしまうからな。

 魔法剣を使う分には問題ない。寧ろ魔法剣スキルにも分配されるので、その方が効率がいいと思われる。


 今回、今まで以上の活躍を見せているのがルナだ。

 新武器のミスリルメイス改による効果の違いは一目瞭然で、ルナが攻撃した後はその魔物はボロボロで見るも無残な姿になっているのである。

 攻撃力がそこまで上昇するのは大変喜ばしい事なのだが、これでは素材価値が殆どなくなるのも事実だ。

 金を稼ぐ目的の際には攻撃方法を変えるなり、何かしらの対応策を考えなければかなり安く叩かれる事になるだろう。


 現在ミルファの攻撃は今ひとつだ。理由として、第二ジョブに弓兵(アーチャー)を取り入れ、狙撃手(スナイパー)を目指し本格的に始動したからだ。

 うまくいけば本日中にでも狙撃手のジョブを入手出来るのではないだろうか。

 そういう意味ではメイは現在迷走中だ。

 司祭の上位ジョブは司教(ビショップ)になるのだが、先日行った王立図書館でもそれに至る詳細は分からず終いだったのだ。

 司教へ至る道筋さえ分かればそれに向けレベルか、若しくはスキルを上げていくだけなのだが、今のままではそれすらも分からない。

 とりあえず第二ジョブを魔道士にして様子見をしてる状態だ。


 ケントは第二ジョブに暗黒騎士を付けた。

 いつの間にかあったので付けたのだが、条件は謎のままだ。出来る事ならオレも暗黒騎士を付けておきたいのだが、オレはまだなれないようなので条件を模索中だ。

 変わりという訳ではないが、オレは魔弓士に変わり弓兵を取り入れた。

 狙撃手はあった方が、今後の派生には繋がりそうだったからだ。

 騎士に変えて重騎士という選択もあったが、後の事を考えた結果弓兵の方を優先させた。

 まあこれは成長の芳しくないジョブと交換という形をとってもいいだろう。


 全体的に戦力ダウンしているはずだが、ハッキリとした目標が定まっておりそのモチベーションが高い今、オレ達の勢いは止まる事を知らない。

 開始時間が遅かったのにも関わらず、この日だけで二百匹を超す魔物を討伐していた。


 到着早々騒ぎになるのも嫌なので換金は行わず、帰還報告を済ませ次第速攻でアブ爺さんの宿へと向かった。

 相変わらず不人気なようで、周囲には誰も近寄らない。裏手の醤油工場の工事はかなり進んでいるようだが。

 そんなアブ爺さんの宿へと入っていく。


「ちは~。アブ爺さん、いるかい?」


 俺の呼びかけに厨房からアブ爺さんが顔を出した。


「おー、お前さん!なんじゃ、もう戻ってきたのか?ちーっとばかし早くないかの?」


「いや、少しばかりダンジョンに用があってな。適当な距離でコンスタントに魔物を討伐出来るダンジョンってのがやっぱり此処だったんだ。」


「ファーッファッファッファ!まあ、そうじゃろうな。さあさあ、入ってくれ。今は他にもお客さんはいるがお前さん方の部屋は空いてるぞ。あの部屋をそのまま使ってくれ。」


「他の客?この宿に他の客が来たってのか?どこの物好きだよ……」


 アブ爺さんが言う他のお客さんという言葉にオレも驚いたが、ケントはモロ口に出してしまっていた。

 まあ、ミルファやメイもありえないって表情をしているのでバレバレなのだが。


「ファーファッファッファ、分かる人には分かるのじゃよ。そのお客さんはお前さん方が行って直ぐ来てるから……もう相当長い事泊まってくれておるからの。」


 一度泊まればこの宿の良さは分かるからな。その人も多分この宿の魅力に取り憑かれたのだろう。


 夕食は何時でも食べられるようなので、部屋で着替え次第直ぐに食堂へ向かう。

 食堂の一番奥の席には、既にもうひと組の宿泊客が夕食を食べていた。どうやら四人組の冒険者風の男女のようだ。

 顔は見えないが、微かに聴こえてくる声は何か聞き覚えがある。

 そう思い耳を傾けていると、ルナが突然立ち上がりその宿泊客の方に顔を向けた。


「姉さまなのです!」


 ルナの叫びに近いその大声に奥にいる宿泊客が此方を覗き込む。

 現れた人物の顔を見てオレは驚きのあまりテーブルに膝をぶつけてしまう。

 ミルファも驚いたのか完全に固まってしまっている。


「エイル……さん?」


「レイジ……レイジじゃねぇか!元気にしてたか?」


「は、はい……エイルさんも相変わらずっぽいですね。」


 結構離れた距離でそのまま会話をしていたが、エイルの奥にいたソニアがルナの姿を見るなり駆け出し、ルナを抱き寄せた。


「ルナ……会いたかった……元気だった?ちゃんとご飯は食べてる?無理やり変な事はされたりしてない?」


 その姿は完全にオカンだった。

 そんなルナとソニアを眺めていると、マリーとディルも姿を見せエイルと共に此方へと歩み寄ってくる。

 ミルファはマリーと目が合うと、溢れ出る涙を堪える事が出来なくなってしまう。

 マリーやディルにそんな姿を見せまいと必死になって顔を隠すが、マリーはそんなミルファを優しく包み込んだ。


「雰囲気で分かる。この短期間でまた随分と強くなったな。」


 ディルはオレの前に立つとそんな事を言う。

 強くなってるのは実感出来ているが、見ただけで分かるものなのか。強者を見抜く目というのだろうか、ディルにはそういう力があるのかもしれない。

 オレ達の下へ駆け寄ってきた三人に対し、一人取り残されたエイル。

 普通弟子が師匠に駆け寄るものじゃないのかなどと思いながらも、全く相手にされない寂しさから仕方なく皆の下へと行く。

 食事を用意し持ってきたアブ爺さんに、全員で座れる席を用意して貰い、久しぶりにロードウインズとの食事を楽しむ事になった。


 エイルからは、王都にいるはずのオレ達が何故此処にいるのか、とか、あれからどんな旅をしていたのか、など聞かれ、オレからはシュバルツの新たなダンジョンを最初に入るってどういうものなのかを聴いたりしていた。

 

「……そんな訳で、今度王都で行われるランクアップ試験に全員受ける事にしたんです。」


「て事は、レイジもいよいよゴールドランクか……」


 今回ライトレイクに至る経緯を話すついでに、間もなく行われるランクアップ試験の事もエイルに話す。

 エイルはディルやマリーとアイコンタクトを取り、何かを決心したかのように真面目な表情で話しだした。


「レイジ、お前に教えなかったゴールドランクになる為の裏の条件を伝える。心して訊け。」


 ゴールドランクはただ強ければなれるものではない。その為の絶対条件というものが設定されているらしい。


「それは何かしらの武器、若しくは魔法のスペシャリストである事だ。俺の場合は短剣、ディルは弓、マリーは白魔法がそれに当たるな。スペシャリストである証明は、試験中に武技を使うかどうかで判断するのが一般的だ。例えば俺の陰翳殺(いんえいさつ)やディルのレインアローなんかがそれに当たる。あの技はジョブで覚える技ではなくその武器のスペシャリストになった際に覚える技なんだ。」


 エイルの言うスペシャリストとはスキルに表示される【極】の事なんだろう。

 エイルにもディルにもそれが表示されていた。

 今回オレが目標としていた事もそれだったので、決して間違った鍛え方をしていた訳ではなかったようだ。


「やっぱりそうだったんだな……ありがとうございます、エイルさん。オレの指針が正しかったと分かっただけでも僥倖です。明日からも同じようにやって行けば多分試験前には目標に到達出来ると思います。」


「へっ、やっぱりレイジは答えにたどり着いていたか。余計なお世話だったな。」


 苦笑いを浮かべながらそう言うエイル。だがオレはそれを伝えてくれたエイルに本当に感謝している。

 『多分』でやっていくのと『確実』でやっていくのは気持ちの面で大差ある。

 精神的不安が解消されているならば今まで以上に効率が良くなるはずだろう。


「けど、それなら魔法に関してもそれがあるんですか?」


「あるわよー。でも魔法に関しては人それぞれなの。だから私が覚えた魔法をミルファちゃんが覚えるとも限らないし、えーと……メイちゃんも覚えるとも限らないわ。ただ突然閃くから吃驚しないよう心掛けておくといいわね。」


 それはいい事を聞いた。

 今後黒魔法でもそれを目指すのに覚えておきたい事だ。


「助かりました。これで試験までの期間にやるべき事が定まりました。後は鍛えるだけっすね。」


 エイルもマリーもそしてディルも笑顔でそれに答えてくれた。

 この後、遅い時間まで積もる話を語り合う事で一ヶ月半の空いた隙間を埋めていった。

次回、明日投稿します!

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