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第169話 昇格試験へ向け、再度湖畔のダンジョンへ

 この日、朝起きてから大事な事を忘れている事実に気が付いた。

 今後の予定を一切組んでいなかったのだ。

 この事にはミルファもルナも気が付いていたようだが、オレに何か考えがあると思っていたようで敢えて聞かなかったそうだ。

 いや、オレが悪いのは確かだが、そこは声を掛けて欲しかったな。

 シルバーランク試験までは残り十日となった。

 残り時間を考えるともう少し鍛えておきたいところだ。

 そう考えたら一つ問題がある。魔物の数だ。

 多分今カスケイド山地に行っても、前回の半分も魔物はいないだろう。

 短時間でまとめて狩る事が出来る渓谷エリアはかなり魅力的だが、一度狩り尽くすと最低でも十五日は待たなければ再び同じ数の魔物を狩る事が出来ない。

 そう考えたらダンジョンへ行くのが手っ取り早いのだが、王都周辺にはビギナルダンジョンしかないのでそれも難しいのだ。

 結局現在手詰まりだったりするのかもしれない。


「ファスエッジダンジョンか湖畔のダンジョンへ行ければ一番いいのにね~。」


 ミルファの言う通りそれが一番手っ取り早いだろうが、ファスエッジダンジョンは遠すぎるし、湖畔のダンジョンまでは来る時は三日だったが、こっちから行くとなれば四日は掛かるだろう。

 シルバーランク試験まで残り十日で、往復七日掛かるのは結構痛い。

 シームルグでの移動もあるが、五人乗っての移動はシームルグ的にかなり厳しいようだ。


「だったら二回に分けて運んでもらえばいいのです。シームルグちゃんもそれなら出来ると思うのです。」


 ルナのそんなナイスな発想に、オレは一瞬何があったんだと目をパチクリさせた。

 いや、ルナを馬鹿にする訳ではないが、まさかルナからこんなナイスな発想が出るとは思っていなかったのだ。


「それだよ!ナイスだ、ルナ!それならファスエッジダンジョンでも行けるよな。」


 ルナを抱き寄せその発想を大いに褒め称える。

 不意打ちを受けたルナはどうしていいのか分からず、明らかに混乱していた。

 ミルファはそんなルナを羨ましそうに見つめていたが、突然の事で混乱しているルナの姿に、少しずつ笑顔になっていった。


「じゃあ朝食ついでにケントとメイさんに話する?」


「ああ、そうだな。行き先も皆で決めよう。」


 一緒になってくっついてきたミルファも抱き寄せ、此処で決めずにケント達の意見も取り入れ、今後の予定を決めようと話す。

 キッチンでは既にメイが朝食の準備に取り掛かっていた。

 ミルファとルナは慌てて手伝いに行く。

 ケントは朝から素振りをしに外へ出ているらしい。

 やはりリック王子の槍技に負けたくない一心なのだろう。

 だが考えてみれば、王城の英才教育と同等以上の特訓をするなんてのは容易な事ではない。

 それを成し遂げようとするのであれば、並大抵の努力では到底無理な話だろう。

 そう考えるならば、やはりダンジョンで鍛えるのは何よりの近道になる事だろう。


 ケントも家へと入り、朝食を食べ始める。

 それと同時にオレは直ぐに話を切り出した。


「今日からの予定って立ててないだろ?で、シルバーランク試験までも残り十日という事も踏まえて、いっちょダンジョンで一気に鍛えようと思うんだ。それで、何処のダンジョンでどうやって鍛えるか、皆の意見を聞かせて欲しいんだけど。」


 それに最初に反応を示したのはケントだ。


「待ち時間を作るのはあまり好ましくないよな。湖畔のダンジョンは魔物の質はいいけど、それがどうも気に入らないんだよ。」


 その気持ちは分かる。だが60階層くらいの深層部は人も少なく戦いやすいとも思う。


「それだったら噂のヒュバルツの近くに出来た新しいダンジョンはどうかしら?」


 これはギルドで噂になっているダンジョンの事だな。オレも聞いて驚愕したのだが、なんとファーストアタックで10階層までの道を切り開いたのがロードウインズだというのだ。聞いた瞬間オレとミルファは狂喜乱舞してた。

 しかし初めて行く場所にシームルグでひとっ飛びというのはどうも気に入らない。

 此処は一旦保留としたい。


「でもレベリングとスキルを鍛える事の両面で考えると、今はどれくらいのレベルのダンジョンが丁度いいのかな?」


 前回のカスケイド山地での戦いで、オレ達のレベルは相当上がっている。

 魔法戦士のレベルは既に42にまで上がってるくらいだ。

 魔物の討伐数の割には上がってないように思うが、レベル30からの上がりにくさを考えると、かなり上がってると思う。

 そう考えると湖畔のダンジョンならば70階層くらいで戦うのが一番いいような気もする。


 スキルだが、これは現在のオレの片手剣スキルがレベル8で熟練度が244/650だ。

 もしかしたらレベル10まで上げれば、エイルが持っていた極が付くスキルになるのかもしれない。

 エイルもディルもこの極スキルを所持していた事を考えると、ゴールドランクにはこの極スキルは必須のような気もするのだ。

 いざとなればスキルポイントを使うとして、残り十日で出来るだけこのポイントを上げておきたい。


「実際オレ達に一番足りないのってスキルレベルっぽいんだよな。技能の指輪の効果で成長速度が二倍でも、オレとミルファ、あとケントは冒険者になって百日くらいなんだ。経験が足りなすぎる。ならばトコトン戦い続けるしか方法はないと思うんだよな。」


 ルナは冒険者として一年以上経験してる分、ある程度は動きがしっかりしている。

 メイは最近ブランクを感じさせない程、動きが良くなっている。

 それに比べてオレ達三人は、まだ戦闘感が足りていない。

 こればかりは戦い続けるしか成長させる方法はないだろう。

 スキルともレベルと関係ない経験則とでも言うのだろうか、こればかりは戦い続けるしか改善はされないだろうな。


「そう考えたらやっぱ湖畔のダンジョンか~。レイジとミルファで行ったっていうファスエッジダンジョンはどうなんだ?」


「あそこはただ戦い続けるにはもってこいだが、フロア更新するのは過酷だぞ。オレのマップを使って最短距離を移動しながらでも10階層移動するのに丸一日掛かるからな。」


 ファスエッジダンジョンの転移陣は機能しておらず、シームルグの力で50階層にだけ転移は可能だ。だが今現在のオレ達の能力で50階層はかなりヌルゲーになってしまい鍛錬には向かないだろう。

 その先へ進むとして考えるなら、移動を考慮するとあまり得策とは言えないかもしれない。


「じゃあやっぱり湖畔のダンジョンか。まあ、この周辺よりは全然効率いいよな。」


 ケントも渋々ながらそれで良しとするようだ。勿論オレもそれに賛成である。

 アブ爺さんとこんなに早く再会するとは思っていなかったが仕方ないだろう。

 それに、もしかしたらエイル達に会えるかもしれないなんて期待もあったりする。


「じゃあシームルグに運んでもらえるか聞いてみるか。」


 庭でシームルグを呼び出す。近隣の事も考慮して人型での召喚だ。

 光の中からシームルグが姿を現す。それと同時にシームルグは飛び掛ってきた。


「レイジ~~!!寂しかったぞ!何故此処まで呼んでくれないんだ?放置プレイか?お前はそういうプレイが好きなのか?答えてみろ!さあ!」


 物凄い剣幕で囃し立てるシームルグ。先日セイレーンを召喚した事もその勢いを増長させているようだ。


「悪かったよ。今後は呼べるタイミングがあれば極力呼ぶようにするから。だからちょっと頼みを聞いてくれ。」


 シームルグはただ呼ぶだけでなく食事も所望してくる。

 頼みを聞いてもらう為にここはそれを了承するしかない。

 そしてライトレイクの街までオレ達を連れて行って貰えないか、確認をとった。


「全員を一度に運ぶなら断るが、二回に分けて運ぶなら全く問題はないぞ。此処って王都ファスエッジだろう?此処からライトレイクまでならばかなり近いしな。」


 近いという事に疑問を抱いたが、飛んでいくならば直線で行ける。それならばシームルグのスピードなら30分あれば行けそうだ。

 そう考えたら湖畔のダンジョンを選んで良かったのかもしれない。


 準備を整えたら王都を出て人目につかないような場所からシームルグで移動をする。

 最初はミルファとルナ。オレだけ乗ったまま戻り、次にケントとメイを連れて行く。

 僅か三週程で再びライトレイクの街に戻ってきたのだった。

次回更新は18日土曜日です。

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