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第167話 我が家の鍛冶工房

 家に帰ってきたオレ達の視界に飛び込んできた光景に笑みが溢れた。

 煉瓦作りで扉が鉄製のその建物は出発前とは様変わりし過ぎていて、とても同じ場所とは思えない。

 そう。鍛冶場が完成していたのだ。


「これってレイジさんが頼んでいた鍛冶場?凄く立派な建物が出来たんだね。」


「ホントだな。設計の話ではミルファの調合も出来るようにしておいたから後で見に行こうか。」


「そうなの!うわー、楽しみ♪」


 胸の前で手を組み喜びを爆発させるミルファ。調合出来る場所がそこまで嬉しいのだろうか。作って良かったな。

 家の玄関には鍛冶場の完成を報告する手紙が置かれていた。何か問題があればメリアに伝えるようにとの事だ。

 夕食を済ませた後、皆で新たに完成した鍛冶場へ向かう。

 この時の為に買い置きしておいた明かりを照らす魔道具も取り付けなければいけない。

 設計の段階でこの魔道具を取り付ける場所は確保してある。なので、その場所にこの魔道具を置くだけで使用出来るようになっていた。

 明かりを付けると内部の全容が見ることができ、その出来栄えに思わず息を飲んだ。

 簡単に言えば素晴らしいの一言に尽きる。

 入口から入り手前が鍛冶場で奥が調合室になっている。間は壁で仕切られているのだが、いくつも窓が取り付けられ両方の動きが分かるようになっている。


 鍛冶場は広くスペースが取られ、工程毎に場所を移動する事で道具を固定で使えるよう工夫されている。

 炉は全部で三つあり、火力の調整をせずとも使い分けが可能となっていた。まあ、全部に火を入れたらとんでもない暑さが襲って来るのだろうが。

 錬成スペースと鍛冶スペースのそれぞれに棚が備え付けられており、魔物素材や鉱石を保管出来るように使う人に優しい作りだ。


 調合室は鍛冶場に比べて手狭だが、使いやすいように様々な工夫が施されていた。

 資材棚はそれぞれの素材を種類別に置けるようにしてあるだけでなく、アフラ草などのよく使う素材を置く棚は大きくなっていたり、中には危険物を置いても大丈夫なように密閉扉が付けられてる棚もある。

 中央には球体の器具が備え付けられている。これがなんなのか分からずにいたが、ミルファがいち早く反応した。

 どうやらこれは魔導調合器具らしい。ミルファも図書館で見て知ったらしいが、魔力で調合するやり方をする際にはこれを使うという。

 こんな物まで設置してくれるとは、素晴らしいサービスだな。


 一通り見て回ったが、これで明日から鍛冶が出来るという訳だ。

 だが、ラウハイーツの依頼の品を作るには素材が足りない。

 コレはラウハイーツが揃えるようなのでそれが届くまでは手を付ける事が出来ない。

 なので、とりあえずそこそこの数があるミスリルを使って何か作ってみようか。

 この日はこれで家へと戻り、翌日から鍛治に取り掛かるとする。



 翌日、パーティとしては休日とし、オレは鍛冶に、ミルファは調合に取り掛かった。

 メイも調合に興味があるらしく、ミルファに付いている。

 ルナとケントは二人で相変わらずのトレーニングのようだ。

 ただ、この二人は放っておくと倒れるまで止めないから困りものだ。なので一時間置きに顔を出せと伝えてある。


 ミスリルを使った武器作りを開始する。

 一応数にも限りがあるので使用量の少ない槍でも作ってみるか。

 一本でも持っていたらケントのパルチザンを借りずに済むだろうしな。

 そんな訳でミスリルの錬成からスタートさせていった。


 一方でミルファも調合を開始していた。

 傍らでその様子を見ているメイに説明も兼ねて、基本のポーションから作っていく。

 メイに分かるように、丁寧に説明しながら一本完成させると、メイにポーション作りは任せてミルファ自身はミドルポーションの作成に取り掛かった。

 そして一本目のミスリルランスが完成しようとする時、この鍛冶場に来客があった。


「あの……此方にレイジさんと……あ!いました。ご無沙汰しております。」


 やって来たのはラウハイーツとエリスだ。


「ラウハイーツさん!もしかして?」


「はい。レッドグリズリーの爪を持ってまいりました。これでレイジさんと同じ剣を作って頂きたく参ったのですが……」


 何やら歯切れが悪いラウハイーツ。何かあったのだろうか?


「どうした?何かあったのか?」


「いえ、外の屋敷の庭にケントさんともう一人、女性の方が倒れていたのですが……」


 あれほど言ったにも関わらず、ルナとケントがやらかしたようだ。

 ラウハイーツとエリスには少し待っててもらい、二人をそれぞれの部屋へと連れて行き寝かせておく。

 再び鍛冶場へと戻り、ラウハイーツに謝罪をした。


「お見苦しいところをお見せして申し訳ない。それで、鋁爪剣の作成だったな。」


「はい。約束のレッドグリズリーの爪を此方に用意致しました。これで作って頂けるんですよね?」


 少し不安そうにしているラウハイーツを少しだけでも安心させる為に、残りの使用素材を出して工程説明をする事にした。


「それじゃあこの鋁爪剣の説明をするか。先ずは刀身だが、芯に使われるのがこのレッドグリズリーの爪になる。その上にアルミニウム合金、ジュラルミンを被せるんだ。切先だけは別にキラータイガーの爪を付けている。この方が刺突に使用した際の切れ味がかなり上昇するんだ。

 鍔と柄頭にはファイタードラゴンの爪を使う。耐衝撃への強さと柔軟性が求められるからな。これが一番適してると思ったんだ。

 剣としてはこれで完成だ。鞘は作るが、本職じゃないので不格好だからな。しっかりしたのが欲しかったらちゃんとした鍛冶師に頼んでくれ。」


 ここまでの説明を聞いたラウハイーツはその作りに感動したかのような眼差しで、「是非お願いします」と懇願された。

 オレが使用してる鋁爪剣は三日程掛かったが、今なら二日掛からずに作れるだろう。その旨を伝えると、その速さに驚いているようだった。


 早速レッドグリズリーの爪から錬成していく。

 これには技術も何も必要ない。全てイメージで決まるのだ。

 同じようにファイタードラゴンの爪も錬成していく。これは刀身次第なところもあるので最初は大体の感覚で十分だ。

 そしていよいよジュラルミンの加工に入るのだが、ここからは集中したいのでラウハイーツ達には一旦お帰り願おう。と思ったのだが……


「あの、もし宜しければ奥で調合してるお二人に付与(エンチャント)の基本だけでも教えていきましょうか?そうすれば簡単なものなら自分達で付与が出来るでしょうし、何よりこれだけの工房があるなら付与だって余裕で出来そうですからね。やらなきゃ損ですよ。」


 どうやらラウハイーツ自らがミルファとメイに付与を教えてくれるという。これはオレ達にとって願ったりだ。

 技術の流出とか大丈夫なのか聞いたところ、そこはオレ達を信用してるのと、商売としてやるような人達ではないと確信しているとの事だ。それならば是非ともお願いしたい。

 エリスは何も出来ないから食事でも作って役に立ちたいと言うので、キッチンへ案内し食材等の場所を教えてあげる。このまま夕食までお願いしてみようと思う。

 エリスがこの屋敷に驚いていたのは言うまでもないが、キッチンにある食材の数々に目を輝かせていたのは何とも微笑ましかった。

 ついでにエリスにはルナとケントの事もお願いしておき、オレは再び鍛冶場へと戻っていった。


 調合室ではラウハイーツがミルファとメイに付与について教えている。

 どうせだから練習用にミミリ山の泉の精に貰った武器を出して、これらを練習用にと渡しておいた。

 さて、ここから本格的に鍛冶を始める訳だ。

 今日の残り時間を考えると、焼入れと焼戻しまですれば良いトコだろうか。

 少し遅くなってしまったが、何とかそこまで終わらせる事ができ、本日の作業は終了した。

変わらず話作りが捗りません。

次回、火曜日更新予定にします。

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[一言] フフフ、苦しくなってきたようですね、同士よ(^^)なんて、失礼なコト言ってすみません。自分もとうとう続編の方も完結してしまい、エタり気味な過去作にどう取り掛かろうかと悪戦苦闘しています。自分…
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