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第162話 リック王子との再会

「あの冒険者達が倒したのか?本当に凄腕の冒険者だったんだな。」


 そんな事を言いながら姿を現したのはリック王子だった。

 グレイトタランチュラの糸で身動きが取れないでいたオレは、ケントに助けられ今は解放されている。

 だが無様な姿を晒し討伐するに至れなかったオレ達は、結局のところ只の道化師で終わってしまったようだ。

 こんな状態でリック王子に会いたくなかったオレは透かさず姿を隠した。


「おお!これは本当に見事なまでに倒せているな。流石だぞ。」


「ふん。俺達が来た時には既に瀕死だったんだ。止めを刺させて貰っただけなんだから大きな顔は出来ねぇよ。なぁ、そこの冒険者!」


 リック王子の護衛依頼を受けている冒険者と思われる男は、そんな事を言いながら此方に話しかけてきた。

 こうなればリーダーであるオレが隠れている訳にはいかない。

 体に残る糸を撤去し前へと出た。


「オレ達は倒し損ねた。実際に討伐したのはアンタ達だ。」


 気に入らなさそうに顔を背ける冒険者に対し、こちらを見て目をぱちくりさせるリック王子の姿がある。


「ご無沙汰しております、王子。覚えていますか。」


「お前は……レイジ?レイジなのか?」


 リック王子はオレが分かったようでその顔が一気に笑顔になっていく。


「覚えていただいて光栄です。先日より王都へ来ておりまして、此方で冒険者稼業を勤しんでおります。」


「ホントにレイジなのか……僅か二ヶ月前の事だというのに随分と見違えたように見える。して、今回は?どうして此処にいるんだ?」


「一般兵の依頼を受けまして、今回は一兵士として参加させて頂きました。しかし無様な姿を晒しましたね。」


 その言葉に反応したのは王子の護衛をする女の冒険者だ。


「よく言うわよ。私達が出て行かなくても貴方達だけで十分倒せたわよね。あの瞬間、一瞬魔力を集めていたのを見逃すと思って?」


 反論してきたのは王子護衛の女性魔導師風の冒険者だ。

 グレイトタランチュラに糸で絡まれた直後、ファイアで焼き切って反撃を狙っていた。

 だが、この冒険者達が攻撃する意図が分かったので、敢えて何もせずに動向を見ていたのである。

 しかしこの女魔道士はかなり弱めたファイアの魔力を読んだとなると、相当な感知能力を持ってるようだ。

 まあ、それでも実際にグレイトタランチュラを討伐したのはオレ達ではなくこの冒険者達だ。その事実に違いはない。


「凄い観察眼だな。しかし結局オレ達は倒せなかったんだ。無様だった事には変わりないさ。」


 そんなやり取りをするオレ達の空気が悪くなってる事を察したリック王子が割って入る。


「ま、まあ、折角冒険者同士なんだから仲良くな。ついでだから紹介しておこうか。この男はレイジと言って、以前俺がロードプルフで世話になった冒険者だ。レイジのお陰で強くなる決心をしたくらい恩ある冒険者だ。」


 護衛の冒険者は「へぇ~」って感じで聞いている。


「それでこっちの冒険者が今回俺の護衛を務めるゴールドランク冒険者のダーツとエミルだ。昨日決まったようで詳しくは知らないが、王都では有名な二人組冒険者らしいぞ。」


 どうやらこの二人はゴールドランク冒険者のようだ。

 確かに募集はゴールドランクとなっていた。それで選ばれたのだからその実力は本物なのだろう。

 実際見た限りでは男の冒険者、ダーツはスピードとパワーを兼ね備えた剣士で、女の冒険者であるエミルは、魔法を見る限り大魔導師くらいだと思う。

 そして実力的には、ダーツがエイルより僅かに劣るくらい。エミルに関しては知り合いの魔道士がいないので判断しにくいが、オレより魔法の威力は低いと思う。

 だがその分オレより使い方に工夫が施されており、魔法の腕としてはオレより上といった印象か。


「……おう。ダーツだ。レイジっつったか。お前アレだろ?今話題のコングチャンピオン殺しだろ?あと王都にきて数日で既に千を超える魔物をギルドに持ち込んでるとか……有名人だよなぁ?」


「あ~、アレって貴方だったのね。まあ、その魔力量なら納得よ。単純な魔力量だけなら私の倍くらいはありそうだもの。」


 魔物の持ち込みまで話題になってるとは思ってなかった。冒険者の守秘義務は何処にいったんだ。

 そんな事も思ったが、ギルドの解体倉庫に魔物を持ち込んだ際も冒険者がチラホラ来ていたな。

 話の出処は職員ではなくそういった冒険者からだろう。そうあって欲しい。

 ただ、あんまりそういった事で注目を浴びたくないので、少し辛かったりする。

 そんなオレを見てミルファとルナが駆け寄ってきた。


「レイジさん!大丈夫?」


「おお!ミルファか!元気そうだな。相変わらずレイジとイチャついてるのか。」


 駆け寄ってきたミルファにリック王子が声を掛ける。


「お、王子!お久しぶりでございます。王子におかれましては、益々御健勝のことと存じ上げます。」


「ミルファが冷たい……やはりあの事を根に持っているのか……本当に申し訳なかった……」


 リック王子が言うあの事というのは、逃げ出して物陰に隠れていたリック王子を保護した時の話だ。

 どうする事も出来ないのでリック王子をミルファに見ててもらい、オレはギルドに知らせに言ってる間にリック王子は戻りたくないと大暴れし、ミルファが怪我を負うという事態になったのだ。

 勿論ミルファはそんな事は全く気にしておらず、王子相手に失礼の無いように話しただけなのである。


「ところでレイジ、エイルらゴールドランクメンバーはいないのか?」


「オレ達はロードウインズを抜けてこの国を回ってる最中なんです。まあ、暫くは王都に滞在予定ですけどね。」


 リック王子はオレとミルファがロードウインズを抜けた事に少し驚いていたが、現在自由に冒険してるという事に羨望の眼差しで此方を見てきた。

 リック王子自身そういったシチュエーションに憧れを抱いていて、そういった事から以前のオレ達との出会いがあったと言えよう。

 今回のダンジョンアタックもそういった思いを出来る範囲で実行した事なのだろう。


「王子!魔物の処理は完了しました。そろそろテントへ戻りお休みください。」


 グレイトタランチュラの後処理に行っていた騎士団長が戻ってきて王子に休むよう告げた。

 どんな知り合いでも、一般兵と王子がこのような場で堂々と会話している状況を快く思ってないようだ。


「うむ。分かった。では俺は戻る。ではレイジ、またな。」


「お前達は一般参加の冒険者だな。魔物討伐の任、ご苦労だった。此度の活躍に免じて王子との軽口は不問とするが、次はないぞ。気を付けたまえ。」


 この騎士団長は冒険者そのものが嫌いなようだ。先程ダーツとエミルに対しても嫌悪感を表に出していたので間違いないだろう。


「だーはっはっはっ。早速あのクソ野郎に嫌われたようだな。」


 まだこの場に残っていたダーツは騎士団長をクソ野郎と呼ぶようだ。


「はあ、次はないって何がないんだ?てか、不敬であったとしてもアイツに言われる筋合いはねぇよな。」


「ちげぇねぇわな。だがアイツはそんなもんお構いなしだ。アイツの中で黒と判断されれば黒であり、その場での断罪する権限を持ってやがる。まあ、ゴールドランク相手にそれをする根性はないだろうがな。だははははっ。」


「それで、まだ何か用でもあるのか?」


 リック王子の護衛のはずが此処に残るという事はまだオレに用事があるという事だろう。

 単刀直入に聞いてみた。


「お!分かるか?なかなかの観察眼だ。だが用があるのは俺じゃなくてエミルなんだよな。」


 ダーツがそういうとエミルが一歩前へと出てきた。


「……いいかしら?貴方のジョブって何なのかしら?」


「ジョブ?魔法戦士だけど?」


「……嘘ね。魔法戦士にそこまでの魔力量は無いはずよ。……まあ素直に教える訳無いわよね。いいわ、そういう事にしておいてあげる。でも今後は気をつけなさい。鑑定系スキル保持の権力者にはそのような嘘は通じないなら。」


 オレの魔力値がバレている?もしかしたら鑑定を持っているのかもしれない。

 いや、完璧には分かっていないが、凡その範囲で分かるという事なのかもな。

 だからこそ忠告してくれたのだろう。大魔導師のジョブのお陰で相当魔力値が高いのだから。

 うん、鑑定される事を踏まえて何か対策を講じなければならないのかもしれないな。肝に銘じておこう。


 この後は特に問題もなく夜を過ごす事が出来た。

 次に問題が起きたのは翌朝になってからだった。

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