第17話 初夜
本日二度目の投稿です。
オレは今自分達の部屋に一人でいる。
この部屋で共に生活することになったミルファは今、昨日まで泊まっていたマリーの部屋に荷物を取りに行っている。
先程までステータスやスキルチェックはしていたため、そちらもやることがない。
この部屋には先日買って、今日届いたベッドが一つだけである。つまり、二人でこのベッドを使うという事なのだ。
いや、別にいきなりそういう事しようとかそんな事を考えている訳ではなく、異性と同じベッドで寝るという事に、ただただ緊張しているのだ。
静寂の中一人佇む。自分の心音がやけに大きく聞こえる。身体も熱くなってる気がする。
とりあえず着替えよう。このまま寝るわけにもいかないし。
寝巻きを用意し、服を全部脱いだ。
ガチャ。「遅くなりましたー。」
…………流れる沈黙。
「ご、ごめんなさい。ノックくらいするべきでした。」
何というタイミングの悪い事だろうか。完全に狙ってました、と言うべきタイミングでミルファは部屋に入ってきたのだ。
更にはドアから入ってきた際に、丁度オレの息子が見える位置に向いていたのだ。
慌てて着替えを済まして一旦部屋から出ているミルファを呼び戻す。
まあ、逆に緊張が解けて良かったのかもしれない。
ミルファは着替えを済ませてから来たらしい。少し残念だ。
しかしながら着替えたその姿は思ってた以上に艶かしい。
ゆったりとしたズボンを履いているが、その薄さで中の下着が透けて見えそうだ。
上も同じ生地で出来たシャツでズボンほどゆったりはしていない。だからこそ胸周りが強調され、突起の形が分かるくらいだ。
あまり凝視していいものじゃないな。そう思いゆっくり視線を外した。
「じゃ、寝るか。ミルファは明日こそは寝坊しないようにしないといけないしな。」
「うぅ、言わないでください。普段はちゃんと起きれるんですから。」
茶化すように言って場の空気を和ませようとしてみる。
しかしホントに申し訳なく思っているらしく、俯いてしまった。マズイ!
「あー、ごめん。意地悪だったな。気にするなって言いたかっただけだから。」
「……はい。わかってますよ。寝ましょう。」
…………しかし二人共動かない。
「ど、どうやって寝ようか?どっちがいい?」
「えーと、レイジさんが好きなところで寝てください。私は空いてるトコで寝ますので。」
もうお互いの緊張がバレバレである。
…ぷっ、あはははははっ!
お互いの目が合うとそんな気持ちが解ったかのように、二人共一緒になって笑ってしまった。
「じゃあ、オレが奥に行くよ。ミルファはこっち使って。」
「はい。おやすみなさい。」
こうして二人は眠りに就いた。
(嘘です。オレはこの後三時間は眠れませんでした。)
―――翌朝。
寝たのは遅かったがいつも通り日の出の少し前には起床した。
目を覚ましたのだが布団がやけに重い。普段の何倍もあるような……。
暗く目が慣れてない今は殆ど見えていない。手探りで布団を捲ろうと手をかけた。
むにっ。
柔らかい何かの感触。考える。そして思い出した。今一緒に寝ている人物の存在を。
このテンプレ展開、まさか……。
ヤバいと思いながらもオレも男なのだ。もう一度触ってみる。
むにっ
しかし二度目の感触でどことなく違うような違和感がある。
それを鷲掴みにして揉んでみる。
むにゅっ、むにゅっ
その手を周辺へと弄らせる。
これは……二の腕?
ミルファの二の腕だ。決して胸を揉んでいた訳ではない。
ミルファの腕がオレの胸あたりに掛けられ、足が腹部から下腹部あたりに乗っかっていた。
下の方の位置が気になるが、敢えて何も無いような素振りでゆっくりと手と足を退かす。
「んん、あ、おはようございます。」
起きたようだ。そりゃそうだろう。二の腕を揉み、手と足を持ち上げて退かしたのだから。
しかし、毎日こんな感じだと身体が持たないな。いっそのこと手を出しちゃった方が楽なんじゃないだろうか。
中身アラフォーのおっさんに16歳の少女を無理やりなんてのは、倫理的観点から見ても相当にありえない。
とりあえず今は我慢できてる。でもこれからもとなると分からない。兎に角、自信は無いが頑張ってみようと思う。
この暗さの中だったら着替えても全く見えないだろう。
アイテムボックスから着替えを出しその場で着替えていく。
「着替えてるんですか?じゃあ私も着替えちゃいますね。」
わざわざ言わなくてもいいのに。暗いだけに妄想が掻き立てられるのだ。
視界がないと逆にエロく感じる。
「着替えました。行きましょうか。」
まだ誰も起きてきてなかった。
まだ暗いのでランタンを点け朝食の準備をする。
「レイジさん、私がやりますよ。」
そう言うミルファに一緒にやろうと伝え、一緒に準備に入った。
何作るかな?久々の料理だ。転生前でも一ヶ月はしていなかった気がする。
実はそこそこは作れるのだ。ただ、片付けが嫌なので作らないだけなのだ。
食料庫を見ても、保存の効く果物と野菜だけしかない。
まずは買ってこないと。そう思いミルファにそれを伝え走って買い出しに出た。
パンとクズ肉、それと卵を朝食分だけ買い直ぐに帰る。
「ただいまー。」
家に帰ると、ディルとマリーが起きていた。
「おかえりなさい。何処行ってたの?」
朝食の買い出しに言ってた旨を伝え作り始めた。
昨夜の残りのスープに卵とクズ肉を入れ片栗粉を溶かしただけの卵スープだ。
マリーがエイルを起こしに行き、全員で食べる事になった。
「これおいしー。レイジくんが作ったんでしょ?」
「マジで美味いわ、トロ味がヤベー。」
「初めて食べました。ホントに美味しいです。」
ディルは何も言わないが表情が緩んでる。
好評で良かった。聞いたら片栗粉は肉を揚げる時に使うだけらしい。
トロ味に使うやり方は今まで聞いたことも食べたことも無いようだ。
そうなると餡掛けとか作ったらやばそうだ。是非一度作ってやらねば。
「今日から本格的に依頼こなしていくぞ。その中でお前たち二人は経験を積むことを第一にやっていけよ。」
「ミルファちゃんは多分まだ神官になる条件を満たしてないと思うから、その条件を満たすように頑張ろうか。」
「レイジはとりあえずその三つのジョブの経験を積むことだな。お前の見えるレベルという数字がどれくらいになれば良いかとかは分からんけど、ジョブスキルである程度判断出来るはずだから。」
二人から今後の方針の説明を貰い、ギルドへと向かった。
この日、エイルは掲示板から二枚の依頼書を手に取った。
〈メノウリザードの魔石〉
〈赤色油の搾油〉
両方ブロンズランク依頼だ。
ミルファが加入した事でオレ達のパーティランクはブロンズになっている。
そのギリギリを受けるようだ。
パーティ申請にミルファを追加記入し、このパーティで最初の依頼へと向かう事となった。