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第158話 帰路は渓谷で残党狩り

 ミミリ山の頂上で一夜を明かし、この日は王都に帰る予定である。

 更に奥に進んでみてもいいのだが、折角家もあるのだしゆっくり探索してもいいのではないかと思った次第だ。

 ただでさえアイテムボックスの中には数百にも及ぶ魔物が入っている。それも中型以上の大きめの魔物ばかりだ。

 それをギルドで出したら間違いなく騒ぎになり、その換金に数日を要するだろう。

 これに更に追加するとなるとどれだけの量になるのか見当もつかない。

 そういった意味でも今回はこれで帰った方が無難だと思ったのだ。


「なあなあ、レイジは今回の魔物はどれくらいの値段になると思ってんだ?」


 徐にケントが金の話をしだした。まあ、気になるのは分かる。


「確実に億は行くだろうけどな。どれくらいかは見当もつかないよな。」


「ウチはそろそろお小遣いが欲しいのです。でもまだ装備分すら稼げてないのです……」


「そうだな……今回はかなりの金額になるだろうから、皆で分配しようか?」


 実際今まで皆の装備代はオレが支払っている。お陰で数億あった金が今では殆ど残っていない。

 だからといって皆に分配しないのは拙いだろう。

 今回は皆で分け合って、次回からパーティ費用として回収し、そこから今まで支払った分を回収させてもらうとしよう。


 今は来た道を戻っているのだが、流石に昨日一昨日の討伐分の魔物は増えていないようだ。

 一匹の魔物も現れる事なく順調に帰路につけている。


「しっかし、ここまで魔物が出ねぇと流石に調子が狂うな。この際渓谷から帰ってみたりするか?」


 ケントは冗談で言ったようだ。

 だがそれに反応したのが二人いた。オレとルナである。


「それいいな!一昨日の場所からなら後ろから攻めてくる心配も少ないし、帰り道だしな。」


「しかも鍛錬になるのです。お金も増えるのです。」


 そう言えば、ルナはお金目的でオレについてきたんじゃなかったっけ?

 それなのにここまで大した金を渡さずにきて、よく付いてこれたな。

 なんて思っていたのだが、実際は……


「お金がないのが嫌なだけなのです。ウチが持っていなくてもレイジくんが持っているなら安心なのです。」


 との事らしい。

 何ともルナらしい考えだ。


 そんなこんなで先日渓谷に降りたポイントにやって来た。

 一切魔物が出ないと時間は掛からないみたいだ。


「……ホントに行くんだよな?」


 自分で言っておきながらへっぴり腰になってるケント。

 しかしあれだけ倒しているのだから南側もそこまで魔物は残っていないと思っている。

 今後も北から魔物が溢れ出し、縄張り争いで負けたものから南に流れてくるまでは平和な状態が続くと思う。


「どうでもいいけどオレは行くぞ。」


「ウチも行くのです。」


「待って!私も行くよ。」


「ケント、皆行っちゃったわよ?行きましょ。」


「メイさん……はぁ……しゃあねぇ。やってやるか!」


 先日の囲まれた瞬間を思い出しビビってしまったケントだったが、一緒に囲まれたルナは平気な顔をして進んで行ってしまい、妻になるメイにも情けない姿を見せてしまった事に気付き、気合を入れ直した。

 現在視界の範囲内の渓谷に魔物の姿は確認出来ない。此処より南下していけば、嫌でもパトリシオンのいる地点に出る事が出来るはずだ。


 ゆっくりだが進んでいく。

 偶に岩山エリアから顔を覗かせる冒険者がオレ達を見て驚いている。

 いや、もしかしたらこの周辺に魔物がいない事に驚いているのかもしれない。

 500メートル程進むとかなり先だが漸く魔物らしき姿を発見出来た。

 こんな先まで討伐していた事が驚きである。


「あそこに見えるのって魔物だよな?こんなトコまでいないって……あの時は相当頑張ったんだな。」


 今見えてる魔物までの距離はおよそ500メートル。そうすると約1キロに渡る魔物を討伐していたようだ。

 途中までレイヴィンが参加していたとはいえ、ブロンズランク四人で討伐するような魔物の質と量では無かったはずだ。

 相当頑張ったんだろうな。後ででもルナを褒めておかなければ……

 え?ケント?アイツはメイに褒めてもらうから別にいいだろう。問題ない。


「さあ、あの魔物がこっちに気が付いて近付いて来てからが勝負だぞ。今は無駄に体力を使うなよ。」


 どれくらいの距離で敵を認識し襲いかかってくるかはその魔物による。

 鳥系の魔物は1キロ先でも発見し襲ってくる事もあるし、比較的穏やかな性格の魔物は確実に攻撃できる距離に入らない限り襲ってこなかったりもする。

 今視界に捉えてるのはオーク系の魔物であり、人間であると認識すれば襲いかかってくるだろう。

 その周囲にはキラータイガーのような虎の魔物やリザード系の魔物も多々見受けられる。

 戦闘になった瞬間、これらの魔物を一斉に相手しなくてはいけないようで、一度戦い始めれば前回のように暫く戦闘が続くのだろう。

 ケントも覚悟が決まったようで、パルチザンを手に戦闘態勢に入っていた。


「始めるか!」


 オレの合図と共にミルファの魔力矢が連続で放たれる。

 近くにいた魔物は一気に倒れていき、その奥にいた魔物が此方を認知したのか、次々と押し寄せてくる。

 こうなれば次はオレの出番だ。

 出し惜しみする事なくサンダーショットで複数の魔物を撃ち抜いていく。

 当たった魔物は絶命するか、麻痺するかのどちらかだ。ざっと見、三分の一程は生き残ったようだ。

 その生き残った魔物はルナとケントで止めを刺していく。結構合理的だろう。

 しかしこのサンダーショットによって遥か先の魔物まで此方に気が付いたようだ。奥からもわんさか魔物が集まってくる。


「レイジくんはやり過ぎなのです。一気に魔物が押し寄せて来たのです。」


「またこのパターンかよ!囲まれないようにフォローしてくれよ!」


 前衛二人は先日の事があった為か、今の状況に少し腰が引けているようだ。

 まあ、あんな感じにはオレがさせないけど。


 押し寄せてくる魔物の中心目掛け、合成魔法ファイアストームを放つ。

 これによりソコにいた魔物だけではなく、その周囲の魔物も巻き込むように嵐が巻き起こった。

 ルナとケントが戦っている魔物の後ろに大きなスペースができ、ルナとケントに掛かる圧がなくなる。

 すると二人は一気に目の前の魔物を蹴散らしていった。


「後ろから押し寄せる魔物がいなくなるだけでこんなに楽になるとはなぁ!」


「ホントです。今までの苦労が嘘のように体が前に出たのです。」


 二人が苦戦していた理由、それは身体の重心だ。

 普通相手と対する際に身体の重心は前傾になる。だが、今回のように魔物が次々と押し寄せてきた際にはその重心は地面に対して垂直に近くなる。

 その為、攻撃の際の踏み込みが甘くなり攻撃に力が乗らずなかなか倒せない事態に陥っていたのだ。

 だが、相手の魔物の後方にスペースが出来た事で攻撃した際相手が仰け反るようになる。そこで一歩力強く踏み込む事ができ、本来の力が発揮され魔物を倒す事に繋がったのだ。


「そうか……相手を吹き飛ばす事が出来ればいいんだな!だったらこれだ!」


 ケントはその場に立ち止まりパルチザンを構える。そしてそのまま全ての力を一撃に込め始めた。

 そう。以前にも使用した重騎士のスキル【チャージ】である。

 それに加え新たに覚えたであろうスキル【破断撃】で新たに迫り来る魔物を薙ぎ払った。


 【破断撃】は武器で薙ぎ払った時衝撃波を発生させる事により、周囲にいる者にまでダメージを与える技だ。

 ケントの武器は槍であるパルチザンだ。それ故、本来払うという動作をしてこなかった。

 だがこの技を使える事になり、以前大剣を扱っていた時の感覚で薙ぎ払いをしたのだ。

 使えるのは感覚で分かっていた。そしてどんな技かも……

 これはケントが慕っていたパウロが、複数の魔物を相手した際に使っていた技なのだから。


 これにより一気に魔物は吹き飛んでいく。そこにルナが飛び込み、次々と倒していく。

 後ろから迫り来る魔物はミルファが順に倒していき。その後ろにオレが魔法を落とす。

 このパターンが上手いこと嵌まり、300匹程の魔物は一気に討伐されたのだった。

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