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第151話 ジオラ魔石店のクォーターサキュバス

 鋁爪剣への付与(エンチャント)は夕方には完了する。

 それまでの時間でギルドへ行き昨日出した素材料金を貰ってくるとしよう。


 ギルドへは入らずそのまま裏の倉庫へと向かう。素材を出し査定を行っているのはこの倉庫にいる解体班なのである。

 そこはライトレイクとは違い、ロードプルフと同様の手法で行われてるようだ。

 但し大きな違いとしては、ギルド運営の素材回収馬車の存在だろう。ギルドに売却額の二割を支払えば魔物を丸ごと運んでくれるのだ。冒険者にとってはかなり有難いサービスであろう。

 例えばオーク。これを自分達で丸ごと持ち帰るのは厳しく、腹回りの一番高い部位だけを厳選して持ち帰って8万G稼いでいたのが、この素材回収馬車を使えば30万~40万Gになるのだ。二割引かれても24万~32万Gである。その差は歴然だ。これを使わない手はないだろう。


 この時間は2回目の素材回収馬車が戻ってきて素材を置いていったばかりの為、相当忙しくしている時間だった。間が悪いといえばそれまでだが、こっちは金を受け取りに来ただけだ。そこまで手間は掛からないだろう。


「すみません。昨日来た冒険者だが、換金額を貰いたいのだけど。」


「お!お前らか?昨日300匹以上の魔物を持ち込んだ凄腕冒険者ってのは?」


 どうやら昨日の職員はいないようだ。今此処にいるおっさんはオレの事を値踏みするかのように物凄く見てくる。少し怖いくらいだ。


「はーはっはっはっ。納得だ。コイツは強いわ。王都に来て腕慣らしでイーザリア大平原で狩りをしてたってトコか。ならば次はカスケイド山地で本番か?楽しみだな、おい!」


 大声で笑いながらバシバシ肩を叩いてくる。似たような親戚のおっちゃんは苦手だったが、このおっさんはそうでもないな。痛いけど。


「んじゃギルドカードはあるか?本人確認はしないと拙いからな。」


 大雑把な性格に見えてそこらはしっかりしている。一応は信用できる人物なのかもしれない。


「確認完了だ。これを換金受付に持って行ってくれ。カスケイド山地からの素材持ち込みを期待して待ってるぞ。」


 預かった札を持ち今度はギルドへ向かう。こちらはまだそこまで混み合ってはいないようだ。楽に換金が出来るだろう。


「はい。此方が今回の換金額になります。またのご利用お待ちしております。」


 今回の換金額は450万Gであった。300匹いてこれは少なく感じたが、雑魚が大半を占めていたのでこんなもんかと思い、金をアイテムボックスに仕舞いこんだ。

 無理をせずともこれくらいの稼ぎを続けていけば生活には困らない。王都を発つ際にあの家を売れば十分元はとれるだろう。

 だが金より強さを求めるウチのメンバーはより強い魔物との対峙を求めると思う。強い魔物との戦闘は死と隣り合わせではあるが、その売却額もかなり跳ね上がっていく。

 何より経験値が豊富で、一気に強くなりたいならばやはり高ランクの魔物が一番いいだろう。


「まだ早いかも知れないけど、ジオラの魔石店へ行って終わるの待とうか。今日のやる事はもうないし。」


「だったら先に帰ってていいかな?折角だから夕食作りたいし。」


「だったら私も一緒するわ。ミルファちゃんと一緒に夕食作りなんていつ以来かしら?楽しみね。」


「ウチも作るのです。仲間外れは嫌なのです。」


「じゃあオレとケントで行ってくるわ。夕食は宜しくな。」


 女性三人は夕食支度の為先に帰っていくという。

 アイテムボックスから言われた食材を出しミルファに手渡した。昨日買った食材は家の冷暗所に保管してあるので、今回渡したのは以前から持ち歩いている肉である。

 キッチン用品は住み始めて直ぐにキッチンに置いといた。アイテムボックス内にある必要な物はこれだけだろう。

 さて、何を作ってくれるのか、楽しみだ。


「……なあ、ミルファの料理って大丈夫なのか?」


「全然問題ないけど……まさか昔は?」


「ああ。俺の知ってるミルファの料理は暗黒物質だったからな。……いや、今は問題ないならいいんだ。聞かなかった事にしてくれよ。俺がレイジにそんな事を教えたなんてバレたら間違いなく射抜かれるだろうからな。」


 ミルファは初日から普通に料理は出来てたはずだ。ケントの知るミルファとの間の僅かな期間に何かあったんだろう。

 血が滲むような努力の賜物。そう思っておけばいいだろう。

 とりあえずケントの弱みをまた一つ握れた事は僥倖だったな。


 ◇


「いらっしゃいませ~。あ!お客様!すみません。完成まではもう少し掛かりそうなんです。」


「ちは。まだだよな。用事は終わらせてきたから後は此処で待たせてもらっていいか。」


「大丈夫だと思います。あ、では此方でお待ちください。」


 店主は奥で付与(エンチャント)を行ってるようで、エリスが一人で店番をしていた。

 そのエリスはオレ達を奥の来客用のテーブルへと案内してくれた。


「粗茶ですが。」


「ありがとう。なあ、一つ聞いていいか?」


「は、はい。私に答えられることなら。」


「さっきの魅惑ってスキルは誰でも覚えられるのか?」


 あれは状況によっては使えるスキルのような気がする。

 もし覚えられるなら覚えておきたいスキルだ。


「ええと……いえ、その……他言無用でお願いしますね。あれは私のユニークスキルなので誰でも覚えられるスキルではないと思います。」


 まさかのユニークスキル持ちだった。てか、オレ以外に始めて出会う事ができた。


「ユニークスキル持ちだったのか。ならばオレには覚えられないな。」


 もしかしたらリストにあるかもしれないが、そこまでして欲しいスキルではない。飽くまであれば使えるという程度である。


「……私の父方の祖母はサキュバスなんです。ある日精力を求めて祖父に襲いかかったところ、一目惚れしてしまいそのまま一線を超えたようで……でも父はその力を受け継ぐ事はなく、隔世遺伝的に私にその能力が受け継がれたようなんです。

 この力の所為で要らぬ疑いを掛けられ奴隷堕ち。幸いご主人様に拾って頂けたので普通の生活が送れています。」


 つまりクォーターサキュバスという事か。最初に見た瞬間天使みたいだと思ったが、どうやら悪魔の血筋だったらしい。

 だが、この容姿ならばスキルを使わずともチヤホヤされそうだが。


「でもよ、さっきはレイジだけでオレはスキルを使われなかったけど、アンタは普通に綺麗だと思うんだよな。チヤホヤされたいって言ってたけど、普通にチヤホヤされるだろ?」


「そ、そんな……私がされる訳ないじゃないですか!髪の毛だってお年寄りみたいな色だし……」


「そのシルバーヘアがいいと思うんだけどな。スゲー綺麗だし。」


 えらくベタ褒めをするケント。だが魅惑は使われていない。素で言ってるようだ。

 メイがいないとこういう一面もあるとは知らなかったな。


「其の辺にしてあげて貰えますか?エリスは褒められるのに慣れてなくて、容量オーバーしちゃうと自然と魅惑スキルが発動しちゃうので。」


 エリスが顔を真っ赤にして照れていると、店主が現れ間に入ってきた。

 これ以上は本当に危ないのかもかもしれない。


「店主さん。出来たのか?」


「店主さんって……ああ、そういえば名乗っていませんでしたね。私はラウハイーツ。実はゼッペルト男爵家の三男です。男爵家ってそこまでお金は無くて、三男ともなると成人後は独立して自分の力で生きていかなければいけないのです。なので今は只のラウハイーツです。以後宜しくお願いします。」


 お前の名前はジオラじゃねぇのかよ!と思いはしたが、ツッコミはいれずに敢えてスルーを決め込む。お陰で貴族だという話はどうでもよくなっていた。

 まあ、それがなくてもどうでもいいが。


「それで付与は終わりました。終わったんですが……この剣は一体何ですか?全く見た事のない金属だし、それに芯も鍔もこれって魔物の爪ですよね?こんなの見たことないです。何処で手に入れたんですか?」


 オレの鋁爪剣に興味があるとは、何とも嬉しい事だ。

 別に鍛冶師ではないが、こんな反応されると作った身としては何か込み上げてくるものがある。


「自作だよ。アルミニウム合金で作ったんだが、この素材の武器は売ってないからな。鍛冶をする機会があったから自分専用の武器を作ったんだ。」


 それを聞いたラウハイーツは少し何かを考え、その後何かを決心したかのように真っ直ぐ此方を見た。


「……あの、仕事として一つお願いがあります。」

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