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第148話 イーザリア大平原(2)

 時間的にもまだ余裕があるので更に南下を続ける。

 依頼を受けているのは残り一種、【フォレストタートル】だけだ。

 フォレストタートルは本来森林の中で擬態して過ごしている魔物である。イーザリア大平原に生息してるはずがなかった。

 確かに魔物は突然現れる事自体は珍しくはない。だが、生息域外に現れる事は滅多に無かった。


「フォレストタートルってどんな魔物なんだ?」


「基本森林や樹海に生息していて、その甲羅に何本もの木が生えているように見える事からその名が付けられたそうよ。あまり動くことなく。森林ではその特徴を生かし、寄ってきた鳥などを捕食する魔物ね。」


 つまり本来は擬態して過ごしてる訳だ。だがこの大平原には森はない。擬態しようがないだろう。

 目立ってしょうがないと思うのだが。


「多分砂漠のオアシスみたいになってるんじゃないかしら。あまり木の生えていないこの地域でフォレストタートルの甲羅は鳥たちや小動物にとってはオアシスなのよ。集落の住民もそれで騙されて被害にあったんだと思うわ。」


 何もないからこそ獲物を引き寄せる事が出来るという訳か。

 どんな魔物か気になるが、一応ブロンズランク依頼だ。そこまで強い魔物ではないだろう。

 それでも油断はせずにしっかり戦闘には望むけどな。


 レイヴィンらに聞いた話では、このイーザリア大平原では変異種も多数目撃されていて、あのコングチャンピオンもこの大平原で生まれた魔物ではないかという噂だという。

 事実はもう確かめようがないが、この場所ではそういう事がしばしば起きる事を念頭に入れて行動した方がいいだろう。


 かなり南下してきた。東には新たな集落が見えている。もしかしたらこの集落が被害者の出た集落なのか。だとしたら近いかもしれない。

 マップに映し出される魔物をタップしてみるがフォレストタートルは見つからない。

 肉眼で見ても森らしきものは見えてこない。

 そしてそのまま海岸までたどり着いた。陽も沈もうとしている。今日はここまでだろう。先程見つけた集落で今夜は世話になろう。


 集落に着いた時には既に辺りは闇に包まれていた。

 そんな中集落を訪れると、初めはかなり警戒されたものの、フォレストタートルを討伐すべく周辺を探索していた旨を説明すると快く中へと通してもらえた。


「あそこが酋長の家だ。宿はないから酋長に言えば部屋を貸してもらえるはずだ。」


 門番に案内され酋長の家へとやって来た。

 酋長の家は集会所としても使われている為かなり大きく、オレ達が泊まるにも問題なさそうな広さがある。そんな酋長の家を訪ねた。


「ごめんください。夜分申し訳ない。この近辺で魔物を狩っていた冒険者なのだが、目的の魔物が見つからずに日が暮れてしまったんだ。今晩の寝床を貸していただけないだろうか。」


「ほっほっほっ、それはそれは。大変だったのぅ。大部屋しかないので皆でその部屋を使ってもらうのだが、構わんかい?」


「泊めてもらえるだけでありがたい。世話になります。」


 極稀にしか冒険者が立ち寄らないこの集落に久方ぶりの客だったようで、集落を挙げての宴となった。

 これを機と見たオレはフォレストタートルの情報収集に取り掛かる。


「じゃあフォレストタートルは東へ移動してるっと事なのか?」


「ああ。奴は西から来てゆっくりと東に進んでいた。近付く魔物を全て養分としながらな。」


「けどあのルートを東に進んだら……」


「そうだ。魔力溜りにぶつかるだろうな。」


 イーザリア大平原にある三つの魔力溜り。そこはゴールドランクでも苦戦するような魔物の巣窟だ。フォレストタートルくらいならば瞬殺されるだろう。そうなればクエスト失敗となる。

 ペナルティはないが、今回一番高額依頼だ。出来れば逃したくない。


「あす早朝出発して追いつく事が出来るかの勝負だな。」


 夜間の移動ほど危険なものはない。暗闇の中では方向感覚だけでなく、平衡感覚すらも狂ってしまう。

 明かりを灯せばそれを頼りに魔物が集まる。雑魚ばかりならば問題ないが、偶にとんでもない強さの魔物が寄ってくる事もあるそうなので、冒険者の基本として夜中の移動は禁じられている。

 唯一夜間でも許可されているのがダンジョンだという事だ。

 そうとなれば早めに休んで明日に備えた方がいい。酋長にはその旨を伝え眠りに就いた。


 ◇


 日の出前、視界が利くようになると同時に東へと馬車を走らせる。

 この時間だと魔物の活動も少ないようで、マップにも殆ど写っていない。

 活動しないのは分かるが何処に消えているのかは謎だ。睡眠してる姿も見ないわけだから何処かに消えているという事なのだと思うが、真相は未だ解明されていない。


 走る事数時間、遂にマップにフォレストタートルを捉えた。その場所は魔力溜りのすぐ手前だ。周辺には他の魔物も多数集まっていて、魔物同士の縄張り争いの真っ只中という状況だ。

 殲滅する勢いで行かなければ逆に此方が危ない。皆にも注意喚起を促す。


「っしゃあ!漸く本気で戦える状況ってわけだ。気合い入るぜ!」


「最初に私が牽制するから先走んないでよ。」


「分かってるのです。でも何時でもいけるように準備は大事なのです。」


「ルナちゃんに遅れないようにケントには直前でスピード掛けるから。」


 皆の準備が整いフォレストタートルの姿を肉眼で捉えた。周囲の魔物の数も想像以上に多い。ある程度の苦戦は考えておいた方がいいだろう。いよいよ戦闘開始だ。


「行くよ!」


 ミルファが構えると同時にルナとケントが飛び出す。

 それに続くようにオレが出るとミルファの魔力矢が撃ち出された。

 魔力矢は操作出来る魔力量によって一回に撃ち出す事の出来る本数が変わる。ミルファが出せるのは三本までだ。それら全てがフォレストタートルに命中した。


「キュオアオオオォォォ……」


 動きが鈍くなり、この機に周囲の魔物が一斉にフォレストタートルに襲いかかる。

 このままではフォレストタートルがキズモノとなってしまう。それは拙い。


「ストーム!」


 変哲のない強力な風を巻き起こす魔法で、周辺の魔物を一度吹き飛ばす。

 これでフォレストタートルを仕留めるだけだ。

 ここでその狙いを定める。コイツは飽くまで亀だ。ならば狙いは首であろう。

 ルナとケントはその首を狙い懐へ潜り込む。


「喰らうのです。」


 ルナが首の付け根辺りを全力で殴りつけると、その首が一気に伸びる。その衝撃に縮ませておく事が出来なくなったようだ。

 これで後はケントが狙いつけるだけだ。

 通常の槍より切先が長く、払いに適した形状のパルチザンでフォレストタートルの喉元を掻っ切る。声を上げる事も出来ず苦しみ暴れだすフォレストタートル。懐に潜り込んでいるルナとケントが踏み潰されそうで危険な状況だ。

 オレは手を出すつもりはなかったが仕方ない。既に周囲が見えていないフォレストタートルに近づきその首を落とす。

 フォレストタートルはそのまま崩れ落ちるが、ルナとケントはその間に離れていて無事だった。


 しかしこれで終わりではない。

 周囲に集まっていた魔物たちが、今度はオレ達を標的とし襲いかかってきたのだ。

 ルナとケントは相手をしながらも少しずつ後退していき、ミルファは馬車の位置から魔力矢で魔物を倒していく。

 オレは属性融合による魔法ウォーターストリームで周囲の魔物を纏めて殲滅していく。

 空中に巨大な水流を巻き起こし、取り込まれた魔物は水流の中で息絶えていく。一切素材を傷つける事なく倒す事のできる魔法だった。


 後に残されたその魔物を見てみると、表面は無傷だったが、内部の筋肉などの繊維はズタズタに捩れていた。そんな魔物が150匹以上。かなりの収入が見込まれると予想でき、大いに喜び湧いた。

 だが此処はまだ魔力溜りの近くである。そんな歓声に魔力溜りの魔物たちが一斉に此方を見る。


「や、ヤベェ!皆急いで馬車に戻れ!あのとんでもない魔物がオレ達を狙ってるぞ。」


 討伐済みの魔物を急いでアイテムボックスへと収納し、オレも馬車へと入りだす。

 幸いにも魔力溜りの魔物は此方を襲う事はなかったが、オレ達の気分は最悪だ。見ただけで敵わないと自覚してしまう程の圧倒的な力差を見せつけられた。


「あれ……ゴールドランクでも無理じゃねぇ?」


「オレもそう思う……生きた心地がしなかったし。」


「二度と見たくないのです。」


 近くにいた俺たち三人はその圧倒的な潜在能力を感じ取り、既に戦意喪失寸前であった。


「あんな魔物もいるんだな……」


 王都の近くにあんな魔物がいたらやばいんじゃないか?そんな事を思いながらもオレ達は王都への帰路に着く。道中も魔物を狩りに狩りまくり、この二日で討伐した魔物は300匹を優に超えていた。

昨日は初の日間1万PV達成してました^^

書き始めて4ヶ月……漸く最大目標を達成しました。

とりあえずは肩の力を抜いて気楽にやっていこうと思います。

今後も極力今のペースで更新したいと思いますが、飽くまで予定という事であしからず……

これからも宜しくお願いします^^



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