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第145話 超昇格

 屋敷の契約が正式に完了し、家の鍵を受け取った。これよりオレ達の家はあの屋敷となる。

 この時点でまだ正午過ぎである。ブロンズランク試験が終わり、メイが帰ってくるまで時間があるので、一旦屋敷に向かい掃除をしようと思う。


「どうせ今日は暇だし付き合うよ。二人もいいだろ?」


「どうせ一人でも行くんだろ?恩を売るならトコトン売っておくか。」


「だな!貸しは大きく作っておいてやらねぇとな。」


 レイヴィンらはこれで帰ると思ったのだがまだ付き合ってくれるという。

 恩とか貸しとか言ってるが、多分手伝う事はないと思う。

 だがそんな気持ちを無下には出来ないので、ありがたく手伝ってもらう事にしようか。


 新居―――この屋敷はギルドからは徒歩だと20分程だ。そのまま外に狩りに出る事を考えた際、馬車で行く事になるのでそこまで時間は掛からないだろう。

 とりあえず今は馬車もパトリシオンもギルドに預けたままなのでメイを迎えに行った際に引き取って連れてくる事にしよう。


「ねえ、掃除するのに手ぶらでいいのかい?掃除道具を売ってる店は反対だよ?」


「持ってるからな。大丈夫だ。」


 レイヴィンはどういう事か分からず首を傾げている。

 いくら世話になったからといってアイテムボックスの事は教えない。カモフラージュに使ってるバッグから出すふりをして誤魔化す予定だ。

 てか、それ以前に掃除道具は今回使う必要がないしな。


 屋敷に到着し中へ入ると、玄関から順に生活魔法クリーンで一気に掃除していく。オレとミルファの二人掛りだ。かなりのペースで進んでいく。

 レイヴィンらの驚き方はなかなかだ。口をあんぐりと開けたまま固まってしまっている。本気で驚いたらこうなってしまうと、改めて知る事が出来た。

 実際にホコリが消えてなくなる訳ではなく、効果の範囲内の不純物や汚れを一箇所に集めてしまうだけだ。

 勿論ウォッシュも同じである。だからこそ風呂場でウォッシュをする事が多かった訳だ。

 ホコリや汚れを集める場所には要らない布地を置いておく。集めたホコリはそのまま捨てればいいが、汚れはその布地にこびり付きそのまま残る。その為何も轢かずに集めるとそこの床が大変な事になってしまうのだ。

 掃除を初めて2時間弱で一通り完了した。まだ時間は早いが、ギルドで待っていても良いかもしれない。


「レイヴィン、今日は本当に助かった。メンバーを迎えにギルドへ行くんだろ?無事全員ブロンズランク昇格を果たしていたらお礼も兼ねてお祝いに食事に行かないか?失敗してたらまた後日って事で。」


「マジで?レイヴィン!コイツ良い奴だったわ。絶対行こうぜ!」


「そうだね。皆無事に昇格していたらだけど。」


 トマスは食べ物にはめっぽう弱かった。レイヴィンに至っては不吉なフラグを立てにいってるのだろうか。

 フィオーラはトマスの言動に呆れ返っている。こっそりミルファに謝罪をしてるようだ。


 レイヴィンに王都でのブロンズランク試験の掛かる時間を聞いてみるが、その時によって様々らしい。

 早ければこの時間に帰ってくるし、遅ければ翌日になる事もあるという。

 オレ達も当日に帰って来れたが、実際は翌日までの予定だったからな。其の辺はどうなるか分からないようだ。

 しかしメイは新居の場所は知らないので、オレ達は待つしかない。レイヴィンも同様に待つようだ。


 とりあえずギルドで王都周辺の冒険者の活動エリアを聞いておく。

 先ずは南にイーザリア大平原。この平原には大小様々な村があり、討伐依頼はこの場所が六割を占めている。

 北にはカスケイド山地。中級以上の魔物が犇めき合う弱肉強食の山岳地帯だ。縄張り争いに負けた魔物が王都近辺に来る事もあるので注意が必要だとか。

 東には隣国ドラフィリオル帝国との国境にあたるアルタミラ山脈がそびえ立つ。此処は超大型ドラゴンの縄張りであり、近付く人間は誰一人存在しない。唯一のルートは一本のトンネルで此処に関所を設けてドラフィリオル帝国との貿易はされている。

 更にそこより少し南下した場所にはダンジョンがあるとか。但し、超初級ダンジョンで最奥が20階層であり、そこのボスがゴブリンキングだとか。ゴブリンキングの強さはオークより少し弱めだ。ブロンズランクでも余裕で倒せるだろう。確かに初心者ダンジョンだ。

 つまりオレ達だと北のカスケイド山地がベストという事になる。勿論レイヴィンらもそこで活動してるらしい。

 冒険者の数が多いので相当なダンジョンがあるのかと思ったがそんな事は無いようだ。少し肩透かしを食らった気分だな。


「まあ、カスケイド山地に行ってみれば分かるさ。でも最初はイーザリア大平原で王都周辺の状況を確認してからの方がいいかもね。」


 コングチャンピオンと戦ったばかりで腕が鈍ってる訳でもない。そこまで念を入れる必要はないと思うが、レイヴィンがそう言うならそのアドバイスに従ってみるか。オレ達が行っても問題ないような場所なら、どちらにしても行ってみる事になるだろうから。


「おい!ブロンズランク試験が終わって一団が帰ってきたぞ。皆無傷のようだ。」


 冒険者の一人が報告の為ギルド内までやってきた。

 死者はおろか怪我人もいないとは優秀な人材が揃っていたようだ。

 直後、若き冒険者の一団がギルド内へと入ってくる。若くもない人物も混ざってはいるが。


「よし、集まったなー。ではブロンズランクへの昇格者を発表する。呼ばれた者は会議室へと向かってくれ。そこで新しいギルドカードを渡す事になる。最後まで呼ばれなかった者は残念ながら次回また頑張って欲しい。」


 どうやらこの場で発表されるようだ。30人もいたら試験官も大変だっただろうな。

 自分の事を棚に上げてそんな事を思ったりしていた。

 そんな中番号で呼ばれていく。それならば飛び入り参加のメイは最後かも知れない。


「28番……30番……最後は31番。以上だ。呼ばれなかった者は残念だったな。これからも精進して、今後昇格できる事を祈っている。」


 メイは……会議室へと向かっていった。どうやら無事昇格出来たようだ。


「どうだった?」


「会議室へと行ったわ。昇格出来たみたいだ。」


「そっか。こっちも三人とも昇格出来たみたいだ。約束は守ってもらうよ?」


 今夜の食事か。問題ない。世話になった訳だしな。


「王都の店は分からないから店は任せるが、高級店は止めろよ?庶民の店で頼むわ。」


 一人1万G以上の店に行かれたら堪らない。ある程度は遠慮した店選びをお願いしたい。


「ここでいいよ。俺達もしょっちゅう使ってるし。」


 そういえば昨日来た際も沢山の冒険者がここで飲食をしていたな。

 ロードプルフにもギルド内にバーがあったが、昼に一回使っただけでほぼ利用していなかった。

 ギルド内で食事をするという事で、ミルファとルナ、それとトマスとフィオーラで席を確保しに向かう。

 周囲を見るからに昇格した者のいるパーティが一気になだれ込む予感がしたから。

 そして昇格した者達が戻ってきた。


「ケント!レイジさん!無事ブロンズランクへ昇格したわ!しかもブロンズⅠランクだって!」


 昇格時にブロンズⅠランクとはかなり凄いと思う。俺達は誰一人そうはなれなかったのだから。


「マジかよ!メイさん、おめでとう!」


「やるなー。おめでとう、メイ。」


 そんなメイの後ろからレイヴィンのパーティメンバーもやってきていた。

 男性二名の女性が一名。男女一人ずつはエルフのようだ。


「レイジ、こいつらが残りの俺のパーティだよ。ちゃんとした紹介は後でいいかな?皆が待ってるから先にそっちへ向かおうか。」


「え?メイさん?リーダー、メイさんのパーティと知り合いだったんスか?」


「え?もしかしてコリンはレイジのパーティメンバーと同じグループだったとか?」


 どうやらレイヴィンのパーティの一人と同じグループだったようだ。


「違うのよ。ほら、コモンランクまでは基本魔法は覚える事が出来ないでしょう。だからヒーラーは私一人だったの。なので私は全グループを担当してたわけ。お陰で魔力は枯渇寸前よ。」


 オレ達の時はミルファというヒーラーがいた。それ自体が普通ではなかったようだ。

 一般的にブロンズランク以上になって初めて魔道書の閲覧許可が下りるため、このタイミングではヒーラー不在になるのが普通だ。その為ポーション等のアイテムを使い回復を図る事になる。その使用するタイミングも評価基準になるのだ。

 だが回復魔法を持つヒーラーがいると話は変わってくる。回復魔法が使えればほぼ間違いなく支援系魔法も使えるであろう。そうなってくると、戦闘難度は急激にイージーモードへ変わるのだ。

 多分今回の試験はそれを踏まえたものへと変え、全てをメイありきで考えて行われた事だろう。

 ギルドの昨夜の苦労を考えると少し申し訳なくなった。


「あ、こっちこっち~!」


 ミルファ達はテーブル三つを繋げ、二つのパーティ全員が会せるよう準備してくれている。

 後に双巨頭と呼ばれる二つのパーティの初顔合わせが始まる……

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