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第141話 王都のピンク宿

「ふっふっふっ……どうでしょう?少し先ですが、ゴールドランク試験を受けてみませんか?」


 ゴールドランク試験。確か人間性を確かめる試験もあったはずだ。

 オレがゴールドランク試験か。まだ早い気もする。だが、一度受けてみるのも良いかもしれない。

 だがオレの前にランクを上げなければいけない奴がいる。


「ゴールドランク試験よりブロンズランク試験はやらないのか?」


 メイのブロンズランクへのランクアップだ。実力は十分なのだ。試験があれば受けるべきだろう。


「ブロンズランク?明日ですが……受けたい方がいるのでしょうか?困りましたねぇ……これからのエントリーとなると、手続きが間に合うかどうか……」


「レイジさん。私は別にコモンのままで構わないわ。そこまで拘ってないし……」


「いや、パーティランクに影響するから上げれる時に上げておいた方がいいんだ。」


 そう。このままオレがゴールドランクになってもパーティランクはブロンズのままなのだ。

 パーティメンバーでランクアップ出来る者は出来る時にしておいて損はない。


「……いいでしょう。手続きは何とか致します。受ける方のギルドカードを出して下さい。」


 メイは申し訳なさそうにギルドカードを出す。


「メイさんですね。失礼ですがジョブは何でしょうか?」


「……司祭です。」


「!司祭ですか!それでブロンズランク試験とは……いいえ、分かりました。では明日日の出前にギルド正面入口前に集合ですので、必ず来るようお願い致します。」


 実際中級職はブロンズランクへ昇格後、シルバーランクになる為に足を踏み入れる領域だ。

 レベル30から極端にレベルが上がりにくくなる為、中級職になっておいた方が能力の上昇は早い。単純にその方がカッコイイからという理由も少なからずいるのだが。

 ミルファも司祭になった後にブロンズランク試験に挑んでいたのだが、それも異常だったということだろう。


「因みにシルバーランク試験は?」


「ゴールドランク試験と同じタイミングですよ。日程をずらして一気に行います。そちらも受けるのですか?」


「おうよ。俺は受けるぜ。ダメで元々、他の受験者と比べて俺の強さがどんなもんか確かめるいい機会だしな。」


 ケントは受けたいようだ。その理由もポジティブなもので是非とも応援したくなる。


「私も受けます。このままじゃレイジさんの隣に居続けることが出来なくなってしまいますから。」


「ウチもです。強くなったウチを見せるのです。」


 つまり全員受けたいという訳か。多分皆取り残されたくない一心なのだろう。焦らなくてもいいが、前向きなのはいい事だよな。


「ふっふっふっ、よもや全員ランクアップを望みますか。本当にその実力があるのか、或いは無謀なだけなのか……実に楽しみですねぇ。」


 本部長は不敵な笑いを浮かべているが、どことなく殺気めいた気が流れている。先程の言葉を借りるなら、無謀だと判断されているのかもしれない。


「ゴールドランク試験とシルバーランク試験は後日日程発表があります。ギルド掲示板を確認していれば情報は分かるはずです。参加お待ちしていますよ。」


 そうなると結構長期間王都に滞在する事になるな。一度今後の動きを確認した方が良いかもしれない。


「さて、コングチャンピオンはお売り頂けるのですか?」


「ああ。このまま引き取って貰えるか?」


「勿論です!金額は……今後への期待と初回サービスを含めて、一匹300万G。全部で600万Gでどうでしょうか?」


 なかなかの金額だ。これで少しは金を回収する事が出来る。


「それで頼む。あと、オススメの宿を紹介して欲しい。」


「宿ですか……もしかしてずっと宿住まいでいるつもりですか?ランクアップ試験を受けるなら住まいは整えた方がいいですよ。住居はいくらでもありますから。しかし今日はもう遅いですからね。泊まるなら激烈スライム亭なんかいいと思いますよ。食事は普通ですがサービスが他とは違いますから。一度だけでも宿泊する事を勧めます。」


 そうか。状況によっては1ヶ月以上滞在する事になるのか。それなら家を借りる事を視野に入れてもいいかもしれないな。


「分かった。ありがとう。住居については考えてみるよ。あとはその宿の場所だけ教えてくれないか。」


 激烈スライム亭。どんな宿か全く想像つかない宿だが、本部長のオススメなのでとりあえず行ってみよう。少し不安ではあるが。





 激烈スライム亭はこのメインストリートから少し奥に入った娼館が立ち並ぶ如何わしい通りに面していた。

 馬車はギルドカードがあればギルドで預かってくれるというので、そこまでは徒歩で移動する。

 時間的な事もあり、道中娼館の客引きが多く見受けられたが、こちらも三人の美女が同伴の為一切声を掛けられる事はなかった。それはそれで少し寂しかったのだが。

 この際ケントとアイコンタクトをとり、二人で何かを示し合わせたのだが、この事に女性陣は気付いてはいなかった。

 そして30分後、目的の激烈スライム亭に着いたのだが……


「此処ってラブホじゃねぇかーーーー!!」


 オレの魂の叫びが周辺一帯に木霊した。

 ピンク一色の建物に入口には垂れ幕をして外部から見られないように配慮されている。

 宿の看板はまり○っこりのようないやらしい目をしたスライムがキャラクターとして使われており、誰が何処から見てもラブホテルにしか見えない。


「ラブホって何なのです?」


 基本純真なルナがそこに食いついてきた。

 なんに関しても興味を持ち、知識を得る事はいい事だろう。

 しかしまさかこの世界にコレがあるとは夢にも思わなかった。

 これはなんて説明すればいいのか、誰か説明する奴はいないのだろうか。


「さあ?俺にもわかんね。メイさんは分かる?」


「私も聞いた事が無いわ。でも見るからに性的興味をそそられる作りよね。」


 ケントもメイも分からないとすれば、ロードプルフには存在しなかったのだろう。

 思えば今まで泊まった宿では普通に女性を連れ込んでる奴らを見かけたが、そういうことなのだろう。

 何れにせよ此処での説明は難しいので、今は誤魔化すしかない。


「まあ、入ってみたら分かるさ。行こうか。」


 宿に入り受付へ。

 内部ロビーの内装はいたって普通で、そこに性的興奮を刺激するような感じは一切なかった。それに関してはホッとしている。


「いらっしゃい。おやおや、普通のお客様だね。5名なら……二部屋だね。部屋のタイプはどうしましょう?」


「部屋のタイプ?」


「ウチの宿は一般客室とカップル客室で作りが違うのさ。一般客室は何処にでもある普通の部屋になってるよ。カップル客室は……部屋に入ってのお楽しみだね。どっちのタイプにする?」


 大体想像つくな。まさしくラブホテル仕様だという事だろう。

 この世界のラブホには凄く興味はある。だが、明日はメイのブロンズランク試験だ。下手な環境で調子を崩すより、普通の部屋でしっかり体調を整えた方がいいと思う。


「そりゃカップル部屋だろう。なあ、メイさん!」


「そうね。私達の関係でいっても間違いないわ。」


「レイジさん!カップル部屋にしようよ。どんな部屋なのか気になるし。」


「ウチもカップル部屋がいいのです。レイジくんとは番なのです。」


 揃いも揃ってそっちを選んだか。いや、オレもそっちがいいよ。でもそれでいいのか?


「メイはそれで大丈夫か?明日のブロンズランク試験に支障が無ければそれでいいんだけど……」


「?支障が出るような部屋なのかしら?泊まるだけだから問題ないと思うけど。」


「……いや、分かった。じゃあカップル部屋を二部屋で、一つは三人だけどベッドの大きさは大丈夫か?」


「ふっふっ、一部屋はベッドの大きい部屋にしとくよ。食事は部屋に運ぶからゆっくりしてていいよ。」


 先に料金を支払い、部屋の鍵を受け取ると階段で6階へ。

 因みに3階までが一般客室らしい。そして6階は最上階だ。

 この世界で6階建ての建物は初めて見た。流石は王都だ。


 部屋の広さの違いがある為、オレ達とケント達の部屋は離れていた。

 部屋の鍵を開け、入口の魔法陣に手を翳すと部屋が明るく照らされる。

 オレとミルファで使う明るく照らす魔法を使った魔道具のようだ。実用化してあるとは、流石は王都といったところか。

 中に入り、激烈スライム亭の意味を理解した。

 大量のスライムゼリーを使ったウォーターベッドが目の前に飛び込んできたのだ。

 一目散にダイビングする。

 タプン……と柔らかく包み込んでくれる。何とも言えぬ心地良さだ。

 ベッド横のテーブルにはスライムゼリーローションがあり、浴室にはスライムゼリー入浴剤が置かれている。

 これぞまさしくカップル部屋だろう。

 ミルファはスライムゼリーローションをまじまじと眺めていて、ルナは風呂を見ている。

 部屋に風呂がある時点で、この世界に於いては相当の高級宿だと思う。

 食事が来るまでの間、この部屋の設備を隅々まで調べていた。

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