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第138話 ファスエッジ大橋封鎖

本編再開、新章突入です。

 ライトレイクを出発して2日。そろそろ街道の分かれ道が近づいてきていた。


「なあ、分かれ道を左でいいんだよな?」


 御者をしているのはケントとメイだ。俺は荷台で寛いでいて、声が掛かれば前を見るようにしている。

 しかしこの街道はしっかり整備もされていて、魔物の出現もかなり少ない。声が掛かっても今のような道の確認くらいしかない。


「曲がるからなー。掴まってろよ。」


 王都へは街道を左に曲がっていく。ここを曲がれば暫く直線が続くので一気に飛ばしていけるだろう。


「曲がる前にヒュバルツ方面に突っ立ってる奴らがいたな。何してたんだろうな。」


「見た目冒険者みたいだったわ。ライトレイクのダンジョン目的かもしれないわね。」


 ケントとメイは前方に冒険者を見つけていたようだ。

 まあ、ヒュバルツに知り合いはいないし、オレには関係ない事だ。まさかこんなところにエイル達がいる訳ないしな。


「よーし、飛ばすぜー!」


 この馬は元々かなりの暴れ馬だっただけあって、かなりの馬力とスピードを誇っている。例え一頭でこの幌馬車を引いていたとしても難なく走る事ができ、その気になれば時速30キロは出るだろう。

 そして今、その本気の時速30キロ近くを出し、一気に進んでいく事を選択したようだ。

 この時、遥か後方で件の冒険者達が俺達を追い掛けてきていたなど知る由もない。その冒険者がエイル達だったと知るのはこれよりかなり先になる。

 ケントのこの選択が俺達とエイル達との再会を阻んだとは思いもしなかった。

 

「はっはっはっ。飛ばしすぎたか?コイツもかなり疲れただろうな。」


「ねえ、そろそろこの子にも名前付けてあげない?コイツとか、この馬とか呼ばれて可哀相だよ。」


 ずっと思いながらも先延ばしにしていた事に、遂に手をつける時が来たようだ。

 だがこの時、この名付けも一筋縄にはいかないような予感がしていた。そして悪い予感は的中するものだ。


「だったらカッコイイ名前だな。ダイナフロイトとかいいんじゃねぇ?」


「それは物語の勇者と聖騎士の名前を合わせただけでしょ。やっぱり可愛いのがいいと思う。キャロってどうかな?」


「ミルファちゃん。それってキャロラインから付けたでしょう?」


 キャロラインとはこの世界にある童話に出てくる主人公の少女らしい。

 ドラゴンの討伐に向かう王子を救う為、魔女の力でクリスタルの装備に身を包んだ少女が王子より先にドラゴンを討伐し、王子の手柄にしようとする。

 だが王子に姿を目撃され慌てて逃げ出すも、逃げ出す際に履いていたクリスタルの靴を落としてしまう。

 その靴を拾った王子は持ち主であるキャロラインを見つけ出し、自分に助力してくれたキャロラインを娶って幸せになったという話。


 なんか知ってる童話の異世界アレンジ感が半端ない。

 まあ少女がドラゴンと戦うというトコが異世界らしさが出ているだろう。


「馬だから普通にポチでいいと思うのです。」


 ルナ……それは犬だろ。


「ルナちゃん、それは安直過ぎない?もっとちゃんとした名前を考えてあげようよ。」


 あれ?ポチって安直か?明らかに的外れだと思うのだが、この世界では普通だったりするのだろうか。

 よく分からない謎が出来てしまった。


「レイジさんは考えてたりするの?」


「オレ?何も考えてねぇな。」


 本当に何も考えていない。抑もこの馬とはブロンズランク試験の時だけのつもりで買ったのだ。ここまでの付き合いになるなら初めから名前を付けておけば良かったと後悔中だ。


「でも、そうだな……名前を付けるなら……」


 馬車を引く馬なら真っ先に思い浮かぶのはあの国民的RPGに出てくる馬だろう。

 だが安易にそのままの名前にする訳にはいかない。それならば……


「パトリシオンだな。」


 二作品の馬を合体させただけで結局何の捻りもなかった。

 それでも牡牝どちらでも問題ない名前ではあるだろう。そこだけは評価してもらいたい。


「おお!何かカッコいいのです。」


「だな。いい名前じゃんか。」


「可愛い……それがいいと思う!」


「もう決まりね。この子の名前はパトリシオン。これからも宜しくね、パトリシオン。」


 案外簡単に決まってしまった。

 だが我ながらいい名前だと思う。まあ、出会った頃の暴れっぷりだったらこんな名前を付けはしなかっただろう。あの頃はコイツに乗れない為に態々乗馬スキルにポイントを振ったりしたくらいだ。それくらい乗りこなすのが難しい駄馬だったから。

 それでもコイツはオレと共にあのスタンピードを駆け抜け生き延びた。だからこそ、今回の旅の馬にコイツを選んだんだ。

 これからもオレ達を色んな土地へ連れて行ってくれると期待しよう。


「宜しくな。パトリシオン」



 一切問題なく進み、次の日には王都手前のこの国最大の川、セージ川に掛かるファスエッジ大橋に差し掛かろうとしていた。


「ここを越えれば王都は目と鼻の先よ。道中何もなくて良かったわ。」


 もしかしたらメイのこの一言がフラグを立てたのかもしれない。

 ファスエッジ大橋の手前には人集が出来ていて直前で足止めを食らう形になってしまったのだ。


「なんだこの人集は?まさかの渋滞か?」


 基本街間の往来が少ないこの世界に於いて、街の外での渋滞などありえない現象だった。

 あるとすれば魔物の襲撃か、或いは道の封鎖である。

 前者だった場合は人集が出来るだけでなく、それにパニックが加わる。現状そのような兆候は見られない為これはないだろう。

 とすると、考えられるのは後者である。橋の手前での足止めで道の封鎖。それから推測すれば大体皆同じ考えにたどり着くだろう。


「旅の者か。この先のファスエッジ大橋に魔物が居座って通行が出来なくなっているんだ。現在王都に救援を求めている。カタがつくまで少し待って頂きたい。」


 衛兵がやってきてそう告げる。此処にやってくる人全員に説明してるようだ。

 どうやら魔物が橋を占拠してしまっているとの事。これでは誰も此処を通行できない。


「その魔物って何なんだ?」


 もしオレ達に討伐出来る魔物であるならば倒してしまって先へ進みたい。

 こんな所で足止めは御免被りたいからな。


「コングチャンピオンだ。本来シルバーランクが一人でもいるパーティなら倒せる相手なんだが、変異種だと思われ先程もシルバーランク二人を含むパーティがあっさり敗北したよ。」


 まさかシルバーランクが二人いても勝てない相手とは……

 しかし今のオレ達ならいけるのではないだろうか。既に全員が中級職なのだ。ジョブだけでいえば既に全員シルバーランクに値する。


「冒険者であればチャレンジしていいのか?」


「お前達は冒険者なのか?しかし低ランク冒険者じゃあ手に負えんよ。大人しく待っていた方が身の為だ。」


 オレ達を見た目の若さから低ランク冒険者と判断したようだ。そんなに弱そうに見えるのか。


「オレだってこれでもシルバーランク冒険者だ。そのコングチャンピオンがどれほどの強さなのか気になるからな。」


 衛兵にギルドカードを見せオレがシルバーランクだと知らせる。毎度の事だが一々驚かれるのは何故なんだ。


「シルバーランク冒険者ならば止める道理はないのだが、アイツはホントに強いぞ。ゴールドランクがいても勝てるかどうか……」


「だったら尚更戦ってみたいな。今のオレ達の強さを確かめる絶好の相手だ。」


 以前ゴールドランクに最も近いと言われるベロニカに辛勝だった。あれから強くなっているなら、ゴールドランクがいても勝てるかどうかの相手でも勝負出来るはずだ。


「俺は止めたぞ。後は自己責任だ。」


「ああ。情報に感謝するよ。」

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