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side story ロードウインズ(5)

 あれから8日。俺達はこの新規ダンジョンの50階層を突破していた。

 かなりの強行軍で突破してきた為、俺を含め全員の疲労はピークに達していた。


「さーて、どうする?まだ先へ進むか。それとも一旦帰って立て直すか。」


 このダンジョンは内部への転送陣が存在していなかった為、一度出るとまた1階層からやり直さなければならない。

 ヒュバルツで1日休んで2日でこのダンジョンに戻ってきた。ここで更に1日休んでからこのダンジョンに再度アタックして、今日で4日目である。

 ダンジョンに入ってからの1日の睡眠時間は普段の半分だ。実際かなり辛い状態である。

 その為、一旦戻るのも視野に入れなければいけなかった。


「此処まで来て戻るですって?冗談でしょ!次来てまた同じ思いなんてしたくないわ。」


 ソニアの意見はもっともだ。だがこれ以上進むのはまさに命懸けだ。俺達にはやらなければいけない使命がある。それを果たせずに倒れる訳にはいかない。


「いや、此処は一度諦めるべきだ。まだこの先いくらでもチャレンジ出来るんだからな。」


 ディルは今の状況を客観的に見る事が出来ているようだ。逃げ腰になって言ってる訳じゃないとその目が訴えかけている。


「マリーはどう思う?」


「うーん……ソニアはどうしてこの先に拘るの?」


「そんなの魔物の強さを見たら分かるでしょう?これ程今の私達に適した状況はなかなかないわよ。折角のチャンスを無駄にはしたくない。それにまだこのダンジョン内でオーディンの手掛かりを掴んでいないわ。」


 ソニアの理由はよく分かる。今いるフロアの魔物はあのスタンピードで戦ったオーガ並みの強さだ。今の俺達にはもっとも適した強さになっているのだ。

 そしてオーディン。考えてみれば手掛かりなどないのかもしれない。

 あのスタンピードの際に表立って率いていたのは、あのフギンとムニンだ。オーディンは直接関わっていないと考えるべきだろう。


「だと思ったわ。それならライトレイクに向かうのはどうかしら?」


「どういう事?」


「以前レイジくんにライトレイクについて尋ねられた事があったの。その時は分からなくて自分なりに調べてみたのね。そしたらあの街にはダンジョンがある事が分かったわ。しかも10階層毎に転移できるらしいの。」


「それはつまり、戻っても同じところからやり直せるという事か?」


「そうよ。10階層毎に1万G掛かるけど、そんなものは私達にとっては端金でしょ。無理せずに戦いたいフロアで直ぐに戦える。今の私達には一番適したダンジョンじゃない?」


 そんなダンジョンなら是非ともチャレンジしてみたい。後は皆がどう思うか……


「いいと思う。俺達は目的を果たすまで決して死ぬ事は許されない。そこなら無理せずに適した状況で戦い続ける事が出来るだろうからな。」


「……はぁ、分かったわよ。確かにこのまま戦い続けるのは危険だものね。行きましょう、ライトレイクへ。けどオーディンについては何も分からなかったのは辛いわね。」


「多分だけど此処には何もないと思うぞ。戦神が直接こんなところに来ると思うか?手掛かりがあってもそれはフギンとムニンのだろうな。このダンジョンには情報はねぇよ。」


 俺達は全員の総意でこのダンジョンから引き上げ、ライトレイクを目指す事となった。

 ライトレイクはレイジが向かった街だ。もしかしたら出会う事もあるかもしれない。そう思ってるのは多分俺だけじゃないはずだ。もしかしたらソニアもそれを考えこの提案を受けた可能性もある。

 それはレイジではなく一緒にいるルナに出会う事なのだろうが。


 皆の意見が纏まり、俺達は転送陣を使い外へと出て行く。今回既に俺達より進んでいるパーティがあった為階層更新はならなかったが、それは時の運である。

 次回来ることがあれば、その時こそ階層更新してロードウインズの名を残してやるさ。


 ダンジョンの外には既にギルドのテントはなく、代わりに様々な行商たちがテントを建てていた。

 冒険者達にポーション等のアイテムを売り、出てきた冒険者からは素材を買い取り転売するためだろう。

 この場に行商がいて買い取ってくれると分かっていれば、多少無理をしてでも素材を持ってくるだろう。二日間森の中を持ち歩くよりよっぽど合理的だ。

 俺達は初めから魔石以外は放置している。魔石だけならばヒュバルツまで運んでもたかが知れてるからな。

 そういう訳で今回行商には用はない。無視してヒュバルツまで戻っていく。


 ダンジョンを出て疲労した体で帰るのは流石にきつい。それでも二日掛けヒュバルツまで戻ってきた。

 この後ライトレイクまで行く事を考えるとしっかり休んだ方がいいだろう。

 とりあえず一泊し体力の回復具合を見てみるとしよう。


「私は休むのはもう十分よ。早くライトレイクへ行きましょう。」


「俺も問題ない。何時でも行ける。」


「エイルがリーダーなんだからエイルが最終判断をしてね。あ、私も疲れは取れてるから何時でもいいよ。」


 満場一致で行くのが確定だ。もう一日休もうとした俺の考えは一瞬のうちに砕かれた訳だ。

 でも確かに一日でも早く行きたいよな。ライトレイクにはレイジ達がいるかもしれないんだ。皆口には出さないが、早く行きたい理由はそれだと思う。

 そう考えたら俺も早く行きたくなってきたな。


「うっし!じゃあとっとと行くか!ライトレイクへ!」


「「「おー!」」」


 結構な距離があるので乗り合い馬車で行く事を提案したが、道中魔物を討伐しながら行くという事で徒歩で行く事になった。

 まさかの徒歩だ。どれだけ掛かると思ってるんだ。とは言っても俺はこの女二人の決定には逆らえない。

 仕方ないので道中の景色でも楽しむとしようか。


 ヒュバルツを出発して2日。王都方面との分かれ道が見えてきた。ここを右へ行けば王都だ。リック王子は元気にしているのかね。また抜け出したりしてなければいいけど。


「あ!月光花!ちょっと待ってて!」


 マリーは街道から少し離れた場所に月光花を見つけたようだ。

 別にいらないとは思うが、見つけたら取りに行ってしまうのは癖みたいなものだろう。

 待ってる間にライトレイク方面から来た馬車が王都方面へ曲がっていく。

 遠目ではっきりとは見えなかったけど、馬はレイジのに似ていたが御者はレイジではなかった。一瞬レイジかと思って焦ったわ。


「……エイル。今の馬車……レイジのじゃなかったか?」


「俺もそう思ったけど御者が違ったぞ。ディルもレイジが気になり過ぎてそう見えてしまうのか?」


「……多分御者はパウロのトコにいたヤツ……ケントだったか。そいつだったぞ。」


「は?マジか!ちょ……マリー!早くしろ!今行った奴がレイジかもしれんとよ。」


「え?なーにー?思った以上に色々な素材があって採取しすぎちゃった。」


「この近辺凄いわよ。手を付ける人が居ないのかも知れないわ。」


「バカ野郎!それどころじゃないんだよ!今そこを曲がっていった馬車がレイジ達だったかも知れないんだ。直ぐ追いかけるぞ。」


 マリーはミルファに、ソニアはルナに会いたい。だからこそライトレイク行きを急いだのだ。

 それが行き違いで会えないなどあってはいけなかった。


 街道の分かれ道は50メートル先だ。急いでそこまで向かいその馬車を確認しようとする。だが行動が遅かった。その馬車は既に遥か先へ行ってしまっていて目視出来なくなっていた。


「見えねぇ……」


「ホントにその馬車レイジくん達だった?見間違いじゃないの?」


「俺だって最初は違うと思ったよ。でもディルが言うんだから間違いないだろ!」


「あ!それは間違いないわ。」


「そうだね。間違いない。」


 この信用度の違いは一体なんだろうか。そんなに俺のいう事は信用できないのか。

 いや、それよりもこれからどうするかだ。このままライトレイクへ向かってもレイジ達には出会えない。それなのに行く必要はあるのだろうか。


「え?関係ないでしょ?私達はダンジョンに入る為にライトレイクへ行くんだよね?そりゃあミルファちゃん達には会いたいけど、今の目的はダンジョンで強くなる事。そうでしょ?」


 マリーの正論に誰も反論出来ない。俺達の目的はオーディンを倒せるくらい強くなる事。そこを間違えてはいけなかった。


「……そうだな。しゃーないな。ま、レイジにはその内会えるだろ。」


 全員がそれに納得し、俺達はライトレイクへ向かう。

 レイジやミルファにはまた会える機会が訪れる。俺はそう信じているから。

40万PV&ユニーク4万人!

なんだかんだで毎日更新でき、随分と遠くまで来ちゃった気分です。

今後も途切れる事ないよう更新出来るよう頑張ってまいります!

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