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side story ロードウインズ(2)

 あれから二日経ち、更に森の深くに入って行ってるものの、その景色は全く変わらなかった。

 唯一変わっていったのは魔物の強さくらいか。奥に行くに従ってその強さは次第に増していく。俺達の強さではそろそろ限界近く、これ以上先は明らかに危険であった。


「ねえ、ホントにこの先へ進む気?普通にヤバイわよ。」


「俺もそう思う。この数日でいくら強くなったとしても、ここらが限界だ。無理してもいい事なんて何もない。」


 ソニアとディルの言いたい事は分かる。だがこの先に何かありそうな気がするんだよな。


「もう少しだけ。ほら、あそこの大木まででいいから頼むよ。」


 頼むにしてもそろそろ限界だ。そこまで行って何もなかったら諦めるとしよう。

 渋々ながら皆協力してくれて、少し先の大木まで行ってみることになった。


 そしてその大木までたどり着く。


「ほら、やっぱり何もないわね。少しずつでも戻りましょ。」


 戻ろうとするマリーを他所に俺はこの先森が途絶えてるような感じがしてそこへ行ってみる。

 そこに広がる景色に思わず声を上げた。


「おーい!これ見てみろよ!凄い事になってるぞ!」


 ディル達は直ぐに駆けつけ、戻ろうとしていたマリーも渋々こちらへやってくる。

 そしてここからの景色を見るなり、一同は言葉を失っていた。


 ここから先は崖になっており、道は途切れていた。だが、崖下の先には明らかにダンジョンの入口があった。

 更にそこには何人もの冒険者達が集まっていたのだ。


「な!スゲェだろ?絶対あれダンジョンだぜ。スタンピードってここから溢れ出して起きてたんじゃね?」


「でもあれだけの人がいてスタンピードだなんて……ありえないわよ。」


「ともかく行ってみない事には何も分からないだろうな。」


「エイルの我が儘を聞いて初めて良かったと思えたわね。お手柄じゃない。」


 マリーも素直に褒めてくれればいいのにな。まあ、愛する男には素直になれない性格だからしゃーないか。


「へへ~。さっすが俺。早速いってみようぜ。」


 流石に直線では行けそうにないので迂回する。見た限りでは右周りの方が高低差が少なくなってる気がするので、そっちから行ってみるか。

 少し進むと下に降りられそうなポイントを発見したので、そこから崖下へ降っていく。上手いこと足場が出来ていて、下まで降りることが出来た。

 そこからダンジョン入口までは直ぐだった。周辺には幾人もの冒険者達が周辺の確認を行っている。どうやらこの冒険者達もこのダンジョンへ来るのは初めてのようだ。

 そんな中、この冒険者達のリーダーと思わしき男がこちらへ近づいて来る。


「そこの奴ら、見ない顔だな。ギルドを通してここへ来たのか?」


 此方を見て話しているという事は俺らに話しかけてるんだろう。ギルドを通してという事は此処はギルド管轄のダンジョンなのか。


「いや、この森で魔物の討伐をしていたら此処が見えたんで来てみただけだけど?」


「この時期にこんな所で魔物狩り?嘘だろ?……なあ、お前らどこから来た?」


「どこって……ロードプルフだけど?」


「なっ!おいおい、マジかよ!じゃあロードプルフからここまでこの森を抜けてきたのか?……ありえねぇ……」


「魔物の強さは半端なかったけどな。けどお陰でかなり強くなれたぜ。」


「……ははっ。おもしれぇ。気に入ったわ。俺はギリウム。ヒュバルツで活動してるゴールドランク冒険者だ。」


「おう。俺はエイル。んで、こいつらが俺のパーティで皆ゴールドランクだ。宜しくな、ギリウム。」


 俺に続きマリーから順に自己紹介をしていく。


「おお!全員ゴールドのパーティか。それは好都合だ。少し話があるんだが、時間いいか?」


「ああ。魔物を討伐してるだけだからな。」


「じゃあ立ち話もなんだからこっちへ来てくれ。」


 ギリウムに付いていくと簡易的なキャンプが出来上がっていて、そこをホームにここでの活動をしているようだった。

 そして俺達は一番大きなテントへ案内された。


「ギルド長、ちょっといいか?」


 中には入りギリウムが声を掛けたのはまさかのギルド長だった。

 そして奥にいたのはおっさんより少し小柄な男性だ。何となく見たことある気がするな。


「ギリウムか。どうした?何か進展があったか?」


「そうじゃないけど……まあ、来客だな。そこにフラッと現れた冒険者なんだが、どうもロードプルフから森を抜けてきたらしい。全員ゴールドランクで腕も立ちそうだから手伝いを頼んだらどうだろうか?」


「ロードプルフから!?……って、お前エイルじゃねぇか!そうか、もうゴールドランクになっていたか!ダインの兄貴は元気か?」


「ん?あんた俺の事知ってるのか?しかもおっさんの事も……?」


「も、もしかしてデインおじさんですか?」


「嬢ちゃんは……マリーか?また随分と大人になりやがって……じゃあお前が……ディルだろ?こっちの色っペぇ姉ちゃんは……?」


「デインおじさまには一度しかお会いした事なかったわね。覚えてないかしら?」


「近所に住んでいたソニアよ。覚えてない?」


 マリーがデインのおっさんに教えてあげた。


「ソニア……って、あのソニアか?かあ~、人間どうなるか分からねぇな。」


「デインって……おっさんの弟のデイン伯父貴か!」


「あんた今頃気がついたの?」


「だっはっはっ。エイルは相変わらずだな。しかし、パウロだけいねぇな。どうしたんだ?」


 俺達はデイン伯父貴に先日のスタンピードの事を話した。そしてそこでパウロが散った事も。


「……そうか。パウロは逝ったか。残念だ。そっちもかなり大規模なスタンピードだったようだな。」


「そっちも?って事は?」


「ああ。ヒュバルツにも大量の魔物が押し寄せてきやがったんだ。そこで今回この森の調査に入ったんだが……」


 デイン伯父貴は何かを言いかけてギリウムの顔を見た。


「すまん。ここからは俺が説明する。」


 デインの伯父貴に代わりギリウムが説明をするようだ。


「今の話がお前達に話したい内容に繋がるんだが、今回の調査で初めてこのダンジョンを発見したんだ。つまり、未発見の新規ダンジョンって事だな。」


 新規ダンジョン――――誰も手をつけていない未開のダンジョンだ。

 階層や魔物の強さも分からない為、低ランク冒険者がうっかり入ってしまえば高確率で命を落とす危険さがあり、見つけ次第ギルドへの報告が義務付けられている。

 今回のスタンピードはこのダンジョンが原因だとヒュバルツ冒険者ギルドは疑ってるようだ。

 ただ俺達はあのスタンピードはオーディンが引き起こしたと読んでいる為、この話を聞き流している状態である。

 それでもこのダンジョンが関連している可能性は拭えない。

 つまり、このダンジョンにオーディンに関する何かしらの情報が隠されているかもしれないから。

 これは何が何でもダンジョン探索の部隊に入らなければ……


「そこでだ。このダンジョンを調べるにあたって、ファーストアタックを任せられる高ランク冒険者を募っていたんだよ。」


「そんな中俺達が現れたという訳か。」


「その通りだ。全員ゴールドランクのパーティとなると、どんな高ランクダンジョンでも10階層までは行けるだろうからな。そこまで調べる事が出来たらこのダンジョンのランクが判明するだろう。

 その役目を是非ともお願いしたい。」


 よし、来た!これは願ってもないチャンスだ。俺達のレベリングにもなり、更にオーディンについても調べる事が出来る。

 このチャンスを逃す訳にはいかない。


「へへっ。その役目、俺達ロードウインズが引き受けた!」

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