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第133話 レジスト魔法

 56階層。今回はゆっくり相手を確かめながらという訳にもいかない。

 かといって、急ぎすぎて魔物の不意打ちを喰らう訳にもいかない。

 警戒は怠らずに、最短ルートで次の階層を目指していく。

 ボスを倒したからといって、出現する魔物はそこまで変化はない。今まで同様新たな魔物は1種だけ増えてるだけだろう。

 そういう意味では安心しながら進んでいく事が出来ている。

 

 51階層からは一つのフロアに一組といった具合に冒険者がいるようだ。

 浅い階層と違い冒険者の数は減っているので、暗黙のルールでフロアを譲っているのかもしれないな。


 このフロアは問題なく通過し、57階層へ。

 このフロアで最初に姿を現したのが、スライムマーキュリーだった。

 ファスエッジダンジョン51階層で相当戦ったシルバーボディのスライムだ。決して経験値は多くはない。

 コイツの攻撃は全てに毒属性付きなので接近戦は要注意だ。オレの魔法かミルファの魔力矢が有効だろう。

 それを言う前に突っ込んでいったケントが見事に毒に掛かっていた。先程油断するなと言っていた姿は幻だったようだ。


 58階層では久々に冒険者の墓場を発見したが、今回の目的はレベリングではないのでスルーを決める。下手に入って魔力枯渇に陥ったら目も当てられないからな。

 59階層には珍しく複数の冒険者グループが闊歩していた。

 多分高額魔物がいるのだろう。だが今まで同様希少種だろうから、探して見つかるような相手ではないと思う。何れにしても今のオレ達はそれを探してるような余裕はない。

 今は先へと進んだ方がいいだろう。

 と、思った矢先、そいつは現れた。多分コイツが希少種で間違いないはずだ。

 オークナイト。重量感たっぷりの鎧を身に纏った、ハイオークよりも上位の魔物である。

 あの鎧は斬撃はなかなか通らないだろう。ルナの打撃は頭に有効でミルファとケントは鎧の隙間を狙いやすいはずだ。オレは魔法だろうな。

 正面でケントが相手をした瞬間にルナが不意打ち気味に脳天を叩き込んだ。ゴツイ兜が災いし、脳が揺れたのだろう。ふらついている。

 この隙にケントとミルファで一気に攻め立てていく。

 結構あっさり勝てたようだ。


「あー!くっそー。此処に現れやがったか。」


 このフロアにいた冒険者の一グループがオレ達が倒したオークナイトを見て悔しがっている。

 やはり冒険者達の狙いはこのオークナイトだったようだ。


「お前達見ない顔だな。……若いがなかなかの強さを持っているようだ。このフロアまで来るだけの事はある。フッ、邪魔したな。行くぞ。」


 リーダーと思しき髭の男はオレから見ても相当な強さを感じた。まるでエイルのような……

 ここらのフロアはあんな奴らが来るフロアなのか。

 そう考えると身震いしてくる。恐ろしくてなのか、武者震いなのかは分からない。だがオレ達はそんなフロアで普通に戦えているのは間違いない。

 そう考えると自信になってくるな。

 そして60階層への階段までたどり着いた。


「はぁ~、またボスか……強くて嫌になってくるな。」


「レイジさんが本気出せば余裕でしょ?問題なし!」


 ミルファが胸を張ってそう言う。

 確かに残りフロアを考えたら、本気を出しても魔力は大丈夫かもしれない。

 ここらで本気で戦ってみようか。


「そうだな。魔力温存は解除して本気でやってみようか。」


「だったら俺らの出番は無いかもなー。戦い通しだったから丁度いいか。」


「何時でもフォローは出来るのです。」


 ケントはそろそろ休みたいのか。ルナはまだまだ元気だな。


「じゃあ入るぞ。」


 ボス部屋の扉を開け、中へと入っていく。

 このフロアは従来のボス部屋と同様の普通の部屋だ。中央にはボスがいる。

 ボスはミノタウロスだ。


「ミ、ミノタウロス……元は神の眷属だったはずが、魔物に落ちた存在よ。神の眷属としての力は失われているとはいえ、その強さは計り知れないわ。」


 元は神の眷属……シームルグやセイレーンと同じ存在だったのか。とてもそのような知性は感じられない。

 今目の前にいる魔物は、本能のままに力を振るう畜生のような存在だ。

 魔物になったからこうなってしまったのか、こんなだったから魔物にされたのか、それは分からない。

 分かるのは、目の前のこの魔物が本能のままオレ達に攻撃を仕掛けてくるという事だ。

 ならばオレは迎撃するのみだ。


 魔法剣炎を使い鋁爪剣が赤く染まっていく。炎を発する事なくその熱だけを帯びた剣と化す。


「メイ!スピードを!」


「は、はい!」


 メイの魔法スピードでオレの敏捷が大幅に上昇する。

 そのスピードで一気に距離を詰める。

 だがミノタウロスはそんなオレをしっかり見据えていた。タイミングを合わせ、その斧で薙ぎ払ってくる。


「遅い。」


 その薙ぎ払いをジャンプして躱すと、勢いそのままに懐へ入り鋁爪剣で喉を切り裂いた。

 

「グオオオオォォォ……」


 激しく出血し、その叫び声が小さくなっていく。

 そして、膝をつくと前のめりに倒れた。


「おいおい、一撃かよ……半端ねぇな。」


「レイジくん、また強くなってるのです。」


「いやー、メイのスピードって魔法は凄いな。あそこまで早く動けるとは思ってなかったわ。」


 実際その力が今回の圧勝を支えていたのだろう。

 本来の速度だとミノタウロスは振るった斧を戻して防御する事が出来たはずだ。だが、メイのスピードによって上昇したその速度はミノタウロスが腕を畳むスピードを上回った速度で懐に潜り込んでいた。

 多分ミノタウロスは何をされたか理解することなく死んでいっただろう。

 

 こうやってミノタウロスの死体を見てみると相当筋肉質だ。コイツは牛肉としての価値はそこまでないかもしれないな。

 そう思いながらもアイテムボックスへと収納しておく。

 別な用途で使えてそこそこの値段になるかも知れないしな。


 こうして続く61階層へと進んでいく。

 ここからは魔物は一新される。

 全く未知のゾーンだ。一切気を抜く事は許されないだろう。

 余計な魔物と戦わなくて済むように、マップを見ながら最短ルートを進んでいく。

 最初の魔物は100メートル先にいる。肉眼でも見えているようだ。

 その魔物は岩で出来た狼のような獣、ストーンビーストだ。

 ストーンビーストはオレ達を確認すると即座に攻撃を仕掛けてきた。土魔法ストーンブラストだ。

 幾つもの石が散弾銃のように飛んでくる。


「ストーンウォール!」


 思わずストーンウォールを使ったが、これだと直ぐに破られるだろう。

 その時、メイが見た事もない魔法で対処した。


「アースレジスト!」


 オレ達の周囲を黄色い光が包み込む。


「これは?」


「アースレジスト。土属性の攻撃だけを無効化するバリアよ。その代わりに他の属性の攻撃は普段以上に効いてしまうから使い所が限られてる魔法よ。」


 デメリット付きの魔法か。だが今は効果的だ。

 この間に一丸となってその距離を詰めていく。

 その距離が一定以上まで近づくと、ストーンビーストは噛み付きに来る。

 ルナとケントはここぞとばかりに攻撃に転じた。

 ルナの攻撃の方が効果的だ。ケントの攻撃でも石を削り取っていくが、ルナが殴りつけるとその部分が爆発するように弾け飛んでいく。三回も殴れば魔石が出てきて崩れていく。

 コイツは消えるまで待ってドロップアイテムを入手した方が良さそうだ。


「強いっていうか、攻撃を仕掛けてくるのが早いな。こんな戦闘が続くなら結構消耗する事も念頭に置いておかないと、途中で力尽きてしまうかもな。」


「このストーンビーストのように明らかに属性が分かってる魔物ならば私のレジスト魔法で対処出来るわ。ただ、二属性を使う魔物ならばこの手段は使えないわね。」


「その際にはある程度のダメージ覚悟で挑むしかないだろ。」


「それは俺の役目だよな……仕方ねぇ。覚悟を決めるか。」


 誰も否定することなく先へと進んでいく。その時のケントはどことなく寂しそうだったが、メイがしっかりとフォローしていた。


 この先の横の通路から四人組の冒険者がこちらへ来ている。丁度接触するようだ。


「ちょっと止まろうか。」


 全員を一旦止め、その冒険者との接触を避けようとしてみたが、向こうも此方に気が付いたようだ。


「あん?なんだこいつら?ガキじゃねぇか。ここは61階層だぞ?お前らみたいなガキにはまだはえぇよ。とっとと帰んな。」


 先頭の柄の悪そうな男が絡んできた。普通なら鼻で笑い挑発し返すトコだが、コイツは相当強い。無駄な戦闘は避けたいトコだ。

 そんな中、後ろにいた男がこちらを見て駆け寄ってきた。


「お前、レイジじゃねぇか!もうこんなフロアまで来てやがったのか!」


 よく見るとこの男はシルバーランクのハロルドだった。


「ハロルド?今度はこっちのパーティか。忙しいな。」


「ああ。このパーティは今度ゴールドランク試験を受けるパーティなんだ。それで少々強い魔物相手に鍛えたいらしくてな。俺に声が掛かった訳だ。」


 ゴールドランクに挑戦か。強そうな訳だ。


「んだよ。おっさんの知り合いか?だったら俺達の邪魔をするなって言っとけや。」


「悪いな。試験に向けて気が立ってるんだ。刺激しないでやってくれ。」


「ああ。分かったよ。オレ達はちょっと用があって65階層を目指してるんだ。先へ進むだけだから気にしないでくれ。」


「そうか。オレも65階層までは行った事ないからよく分からんが、十分気をつけていけよ。」


「ああ。ありがとう。それじゃあまたな。」


「おっさーん!早く来いや!」


「分かった。待ってくれ!じゃあな。」


 ハロルドも大変だな。だが、あの態度ではゴールドランク試験に落ちるだろう。確か人間性のテストもあると聞いたが、あれはロードプルフだけなのか……分からないけど、まあいいか。アイツがどうなろうがオレには関係ないし。


 そして、オレ達は先へと進んでいく……

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― 新着の感想 ―
[一言] んん?なんでゴールドランクの試験受けるための訓練に、シルバーランクに助っ人を頼むんだ?ゴールドランクの狩場で鍛えないと意味がないような気がするんだけど(ー ー;)
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