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第131話 セイレーン

 ダンジョンでのレベリングは一旦終了し、この日は休養日として各自自由行動となった。

 ケントとメイはルナを引き連れ、ダンジョンの低階層で鍛えてくると朝から出て行った。

 残っているのはオレとミルファの二人だけだ。久々に二人で街の散策にでも行ってみようかと思っている。


「レイジさん、何時でも行けるよー。」


「おう。じゃあ行くぞ。」


 今回は観光というよりも、不足している日用品やマジックアイテムの補充、その他にも役に立ちそうなアイテムがあれば買っていこうと思っている。まあ、単純に買い出しだな。

 ロードプルフとは採取出来る素材が違うのだから、売ってるアイテムの種類も違うと思っている。

 どんなアイテムがあるのか楽しみだ。


 まずは普通の雑貨店で日用品の追加だ。割れてしまった食器の替えや火起こしに使う木材や油、馬車に使えそうな物も探してみた。

 布団なんかの寝具も一通り買っておいた。野営の際の小屋の中にあるベッドの布団はずっと洗ってもいないからな。そろそろ替えてもいいだろう。

 いや、生活魔法で綺麗にはしているけど、ちょっと不安だからな。新しい布団の方が気持ちよく眠れるはずだ。


 その後は食材と馬の餌を追加し、冒険者御用達アイテムショップへ。

 表立って売られているのはポーション等の基本アイテムだ。これらはミルファが調合してるので相当数の在庫が保管されている。多少売ってもいいくらいだ。

 とりあえず魔物よけは50程買っておいていいだろう。

 知ってるアイテムで追加するのはこれだけだな。後は見た事のないアイテムだ。


 気になったのは水面浮遊具というアイテムだ。

 靴の裏に貼り付ける事で水面を歩けるようになるとか。注意書きとして、波が強い時は使用不可となっている。多分この清恋湖ならではのアイテムで、海では使えないようだ。


「これ使って清恋湖を歩いてみようか?」


「面白そう。今日行ってみますか?……行ってみる?」


 まだたまに言葉使いを間違え言い直す所が可愛かったりする。

 でも可愛そうだな。好きにさせようか。


「もう無理に言葉使い直さなくていいよ。好きなように話して。」


「でもレイジさんは敬語は嫌なんでしょ?だったら普通に話すよ。レイジさんが喜んでくれる方がいいもん。」


 うん。人目が無ければ抱き締めてるトコだな。仕方ないから頭を撫でるだけにしておこう。


「じゃあ、これを買っていくか。他には?」


「これは必要かな?」


 ミルファが手にとったのは生活魔法の【点火】という極小さな火種を生み出す魔法が内蔵されたアイテムだ。


「いらないだろ。オレとミルファ、メイだって出来るんだ。三人いたら十分だよ。」


 生活魔法を内蔵したアイテムは様々な種類がある。

 一般的には重宝されているが、魔道士系が三人いれば全く必要のないアイテムだろう。

 このアイテムを含めた生活魔法が付与されたマジックアイテムは全て不要と判断し、それらは買わないと決めた。一応どんなアイテムがあるのかだけは見て回ったけど。


「防具とかはどうする?出来れば皆で見たいよな。」


「私もだけど、ルナちゃんも手首の保護を欲しがってたよ。一緒の方がいいかもね。」


 ルナも欲しい装備があるのか。だったら尚更皆で来た方がいいだろう。


「よし!今回の買い物はこれくらいにして、清恋湖でさっきの試してみようか。」


「やった!アレ楽しみにしてたんだ。」


 先程買ってみた水面浮遊具。水面を歩くってどんな気持ちなのだろうか。

 実はさっきから気になって仕方なかったのだ。

 ミルファと二人小走りで清恋湖へと向かっていく。


「コレを足の裏に……こうか?」


「多分大丈夫じゃないかな?私もこれでいいはず……」


「大丈夫かな?行ってみるか。」


 水面不遊具を靴の裏に貼り付け、清恋湖向かって歩いていく。

 既に水に浸かっている。そこから先に進んでいく。

 水の深さが5センチくらいまで行くと、足が底に着かずに浮いてきた。


「お!ととっ浮いてるわ。スゲェ!ホントに浮いてるって!」


「え!わ、私も行きます……行くね。」


 言い直しながらミルファも水に入ってきた。そして俺の所まで来ると足が底から離れ浮いてるのが分かる様になってくる。


「きゃっ、ごめんなさい。あ……ふうっ、大丈夫。バランス取れたよ。難しいけど慣れたら簡単かもね。」


 途中バランスを崩してオレにもたれ掛かってきたが、直後しっかりとバランスを保ち、しっかりと水面に浮いている。

 ボディバランスが取れてない人には向いてないかもしれないが、大半の人は出来そうだ。

 そして何より面白いな。


「行けそう?じゃあ少し先まで行ってみようか?」


「少し怖いから手を繋いでもいい?」


「あ、ああ。気が回らなくて済まない。ほら。大丈夫か?」


「えへへ。大丈夫。行こう。」


 満面の笑みで答えるミルファ。確かに手を繋いだ方が安定する。これでもっと先まで行ってみよう。


 1キロ程沖まで来てみた。湖面は全く波立っていないので、かなり安定している。


「この調子ならもう少し行ってみても大丈夫かな?」


「私はレイジさんと一緒ならどこまででも大丈夫だよ。」


 先には何も見えないが、とりあえず行ってみようか。

 行ってみたら何か見つかるかも知れないし。


 更に1キロ程進んでいく。

 と、その時俺の両手が光りだした。


「これって……シームルグか?」


「そうだと思います。シームルグ様の輝きと同じです。」


 この光に興奮してミルファの話し方が戻っているが、それには触れずに両手を掲げシームルグを呼び出す。


「……スマンな。レイジのいる場所の周辺に神気を感じたので此方から繋いで呼び出してもらった。」


 神気?それはなんだろうか。全く聞きなれない言葉だ。


「……やはりいるな。……いるのは分かっている。姿を現されよ。」


 シームルグが呼びかけると、辺りが霧に包まれ、湖面が揺らめき出す。


「レイジ!大丈夫か?」


「これ以上揺れたらバランスが保てない!乗せてもらえるか?」


「勿論だ!来い!」


 オレはシームルグにしがみつき背に乗る。その後ミルファの手を掴み引っ張り上げた。


「何が起きてるんだ?」


「私と同じ神の眷属だな。この場所だと多分あ奴か……」


 シームルグの言葉の直後、霧の中から美しい女性が姿を現した。

 この女性も湖面に浮いている。しかも下半身が魚……人魚であった。


「まさか……人魚?」


「そうとも言えるし、違ってもいる。あ奴はセイレーン。私やフギン、ムニンと同じ神の眷属だ。」


「セイレーン?この湖の伝説になってる魔物か!」


「それは人間が勝手に作った話だろう?決して魔物などではない。そこを履き違えたら殺されるぞ?」


 殺される……物騒だな。しかし怒らせる訳にもいかないか。

 とりあえずシームルグに任せよう。


「殺したりなんかしないわ。その子、あなたを使役してるわね?それはあの方の命令かしら?」


「……いや、私の独断だ。だが、抑もこのレイジはあの方と繋がっている。だからこそ私は召喚契約を持ち掛けたのだ。」


「あの方と……?もしや異世界からの?おかしな波動を感じると思ったけど、そういう事だったのね。納得したわ。」


 二人が言うあの方とは誰なんだ?話から察するにオレをこの世界に呼び寄せたあの光の事だと思うんだが。


「まあいいわ。私が姿を現した理由を話すわ。そこの街から通じているダンジョンは分かるわね?その65階層のボス部屋内に隠し通路があるの。そこにある封印球を壊して来て欲しいのよ。」


「理由を伺っても?」


「あれは私の力の一部を封印したものよ。そこの街にある私の噂って聞いたことないかしら?」


「ええ、聞きましたよ。」


「大体の話は事実よ。それをあのお方にこっぴどく叱られて、自分を戒める為に自分の力を封印したの。ところが気が付くとダンジョンの魔物が強くなってしまっていて、力を封印したままの私ではそこまでたどり着くことも出来なくなってしまっていたのよ。」


 ああ、ドジっ子なのか。見た目の美しさとのギャップ萌え狙いなのか?


「そんな時貴方の波動を感じたわ。貴方、あのダンジョンの50階層まで行ったわね?そこまで行けたなら後は直ぐよ。お願い出来ないかしら?」


 まあ、こんな綺麗なお姉さんの頼みは聞いてあげたいが、信用してもいいのだろうか?


「ふむ、セイレーンよ。レイジに物事を頼む以上、報酬はあるのか?曲がりなりにも私と契約している者なのだ。ただ働きなどとは言わないよな?」


 おお!シームルグが交渉してくれているのか。これは頼もしい。


「そうね。考えておくわ。大丈夫よ何かしらの報酬は約束するわ。」


 仮にも神の眷属だ。約束を反故にしたりはしないだろう。


「シームルグはどう思う?」


「私か?聞く限り裏はなさそうである。レイジが良ければ手を貸してやって欲しいといったトコか。」


「うん、分かった。それを壊した後はまた此処に来ればいいのか?」


「そうね。そうして貰えるかしら。」


「了解。その依頼引き受けよう。楽しみに待っていてくれ。」

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