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第126話 湖畔のダンジョン(6)

 41階層。

 ファスエッジダンジョンではここから魔物が強くなり、パーティとしての戦いが重要となっていた。

 魔物の強さが類似しているこのダンジョンでも同様の戦いが求められると考え、皆に注意を促してある。


「今までと比べたら魔物の強さが段違いに感じるかもしれないからな。油断はするなよ。」


「そればっかりだな。心配するな。油断はしねぇよ。」


 少し先に魔物がいるようだ。まずはそこへ向かう。

 いたのはカマイタチ。ファスエッジダンジョンでも出てきた鼬だ。

 ルナとケントが近づくと、両手の鎌を振るってくる。


「武器持ちの魔物は久々なのです。やる気が出るのです。」


 ルナがやる気を出してるのを確認すると、弓を構えているミルファを制止した。

 少し二人に任せてみたくなったからだ。


「ケント、いつものように挟むのです。」


「おうよ。いくぜ!」


 この二人はなにげに相性がいい。しっかり左右に分かれ的を絞らせずに相手をしている。

 カマイタチはルナが指示を出したと見ると、ルナに向かって攻撃を仕掛けた。


「甘いのです。」


 鎌による攻撃をミスリルメイスで受けると、背後からケントが攻撃を仕掛ける。

 三回程刺されながらもカマイタチはその鎌をケントに向かって振るう。が、槍である特性が生き、その間合いでは鎌は空を切る。


「ウチに背中を見せたらダメなのです。」


 完全に背後を突く形になったルナのフルスイングが、カマイタチの顔面を捉えた。

 吹き飛び、壁に激突しその場に倒れる。


「まだ生きてるのです。しぶといのです。」


 止めを刺す為ルナが近づく。

 ミスリルメイスを振りかぶった。


「あ、やべぇ!ルナ、下がれ!」


 倒れたままのカマイタチが鎌を振ると見えない刃が飛んできた。

 オレの言葉でその身を仰け反らしたルナの前髪が切られるも、何とか無事だったようだ。


「今のは……危なかったのです。」


 カマイタチはケントに頭を貫かれ動かなくなった。


「ルナ、油断はダメだ。気を抜かずにいこう。」


 ルナの表情が引き締まる。もう今みたいな事は起きないはずだ。


「今の……よく気が付きましたね。私には全然分かりませんでした。」


「なんとなくだ。メイはこれからはこういう危険を知らせる事も意識してやってみようか。勿論支援管理も忘れずにな。」


「はい。やってみます。」


 全体的にいい感じに意識が変わってきた。

 ここからはオレも動いていく事にしよう。


 リザード兵やスケルトン、更には懐かしのレッドウルフなどが現れるが、苦にする事もなく倒していく。レッドウルフは赤狼の丘の個体より結構小さかった。

 スケルトン相手にはメイのホーリーを試してみたり、レッドウルフにはオレが単独で挑んでみたりと、様々な戦い方も試していく。

 レッドウルフ相手に攻防共に余裕を持って倒す事が出来たのは自信になった。

 冒険者になった当初はコイツに殺されかけていたんだ。それが今では余裕を持って倒せるのだ。

 自分が成長出来ていると確信が持てるいい機会になった。


 メイもこのパーティでは初めて魔物を倒す事で少し自信がついたようだ。

 完全なサポート要員だったのが、討伐面でも役に立てると分かったのは相当嬉しかったに違いない。


 それにしても、高額になる魔物は全然現れないようだ。

 いや、違うか。ここで大量に素材が入手出来る魔物の価値が下がってるだけなのかもな。


 ケントの被弾数は多いものの無事に45階層に到着した。

 そのままボス部屋の扉を開いていく。


 このフロアのボスはグレートサハギン。通常のサハギンの倍近い体躯で、その手にトライデントを持つ。


「おー、強そうなボスになってきたな。」


「トライデントじゃねぇか。オレのサブウェポンに丁度いいかもな。」


「サハギンの癖に大きいのです。」


 オレを含め前衛陣は各々の好きにしゃべっている一方で、ミルファとメイは二人掛りでガードとマジックガードを掛けていく。


 その間にゆったりとした動きだったグレートサハギンがギヤを上げ、一気にこちらへ迫り来る。


「皆バラけろ!ストーンバレット!」


 ボス部屋の入口に固まったままだったメンバーにその場からバラバラになるよう命じ、弱点だと思われる土属性魔法でグレートサハギンの足を止めに行く。

 だが、それらをトライデントで弾きながら迫ってくる。


「くっ……ストーンウォール!」


 皆に時間を与える為、壁魔法で時間を作る。


「キシャアアアァァァ」


 グレートサハギンはトライデントでストーンウォールを突いてきた。

 が、流石にビクともしない。

 グレートサハギンはめげずに攻撃し続けている。


「お前の相手はこっちなのです。」


 側面に回り込んだルナがミスリルメイスで横っ腹を殴りつける。


「ギャアアァァ」


 不意を突かれたグレートサハギンはまともに喰らい、三歩後退し悶絶している。


「痛がってる暇はねぇぞ?」


 今度は背後に回っているケントが連続で突いてく。動きがスムーズなので連撃のスキルを獲得してるだろう。

 しかし流石に連続で不意打ちは成功しないようだ。

 ダメージは与えるものの、気付いて直ぐ防御体制に入り、致命傷を避けたようだ。


「そっち向いてていいのです?」


 反対からルナも追撃に行く。

 ルナとケントの挟撃だ。

 ルナの回転撃がグレートサハギンを捉えた。


「キ……シャアアアァァァ!」


 その攻撃を喰らい、血を吐きながらもトライデントを振りかざし、ルナ目掛けて振り下ろす。


「くっ……しまったのです……」


 しかし、グレートサハギンのその腕は途中で止まった。

 その目に矢が射さり、首にも魔力矢が刺さっている。


「あぶねーな。この魚野郎が!」


 二人の連携に見入ってて動きが遅れたオレは、ミルファと同じタイミングで矢を射っていた。


「キシャ……アア……」


 グレートサハギンはまだ生きてるようだ。なかなかしぶとい。

 しかも喉を射抜かれて声を出せるのか。凄い奴だな。

 だが、生きてるだけだ。ルナとケントによる攻撃で止めを刺されたグレートサハギンはその場に倒れた。


「二人共凄いな!連携が上手くて見入っちゃったわ。」


「だよな?俺自身すげー上手くいった実感あるからな。」


「でも、最後少し油断しちゃったのです。舐めてはいないつもりだったのです……」


 ルナは反省しているが、あれはオレのミスでもある。オレも反省しなければいけないな。

 メイは全員の状態を確認しつつ、ヒールを掛けて回っている。

 ダメージは無いが、疲労による体力の低下を多少回復させる効果があるので、これはありがたい。


「この先更に魔物が強くなってるかもしれないからな。次のフロアでまた確認から始めよう。」


 オレのその言葉に全員が頷き、46階層へと足を踏み入れる。


 46階層もダンジョンの作りは変わらない。だが確実に魔物は強くなっている。

 最初に現れたのはミスリルスライム。ミスリル並みの硬度と魔力耐性を持つスライムだ。

 ルナのミスリルメイスではダメージは通らない。ケントのパルチザンでも効果が無いようだ。ミルファが弓で射つが、これも効果がない。

 オレもファイアやウインドで攻撃してみるが、全く効果が見られない。


「コイツ倒せるのかよっ……」


「何か方法はあると思うよ。でもレイジさんの魔法でも倒せないなんて……」


 ケントもミルファもどうしていいか分からず困り果てている。ルナは既に考えるを止めたようだ。

 オレも考えているのだが、全然分からない。


「レイジさん、サンダーショットを放ってください。」


 指示を出したのはメイだ。何か考えがあるのか。


「……分かった。考えがあるんだろ?」


「はい。自信はありませんが。」


「問題ない。……サンダーショット!」


 雷がミスリルスライムに向かって一直線にほとばしる。そのままミスリルスライムに当たるがダメージは無いようだ。


「ダメじゃん!メイさん、どうしたんだ?」


「いや、そういう事か。」


「はい。成功ですね。」


 ミスリルスライムはその場から一切動かなくなっている。

 今のサンダーショットによって完全に麻痺したようだ。


「考えたな。麻痺させてしまえばどうとでもできるからな。」


「はい。まあ、賭けではありましたけど、成功して良かったです。」


 麻痺したミスリルスライムを調べると、地面に接した底面にミスリルになっていない部位を発見した。


「此処だ。この弱点を突くしか倒す手段は無いんだな。メイのおかげだ。」


「流石メイさんだ!スゲェぜ!」


「メイさん、凄いです。私も負けられませんね。」


 皆に褒められメイの顔は真っ赤になっていく。少し可哀想になってくる。


「凄いのです。流石最年長なのです。」


 ルナの言葉に一同は固まってしまった。

 それは禁句だといつの間にか暗黙のルールになっていたから。


「ルナちゃん。最年長は関係ないよね?ねっ?」


 もの凄い形相でルナに詰め寄るメイにオレはかつてない恐怖を覚えた。

 多分、これ以上の恐怖はこの先感じる事はないだろう。


「は……はい……なのです……ごめんなさいなのです……」


 ルナは完全に涙目になってしまっている。少し漏らしてしまってるかもな。

 でもこればかりは助けようがない。頑張れ!


 気を取り直して、底の弱点をケントが突くとミスリルスライムは溶けるように消えていく。

 やはりスライム系はそのままは残らないようだ。

 そして、その後にはミスリルインゴットが残されていた。


「これだけ苦労してミスリルインゴット1つだけ?美味しくはないな。」


 わざわざ探す程ではないと判断され、オレ達は先へ進んでいく。

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