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第122話 湖畔のダンジョン(3)

 ボス部屋を出て直ぐの所にある転送陣を使いダンジョンを出る。

 そこはギルド奥の小部屋であった。


「此処は……ギルド内部の何処かだな。疲れたわ。速攻であの宿へ行こうか。」


 皆はそれに賛成し、ギルドを離れる。あの宿は目と鼻の先なのであっという間に到着した。


「すみませーん。また泊まっていいですか?」


 声を掛けるとアブ爺さんが直ぐにやってきた。


「お?朝っぱらからどうしたのじゃ?ああ、今ダンジョン帰りか。なるほどのう。同じ部屋に行っていいぞ。朝飯は食うじゃろ?出来たら呼びに行くから休んでいたほうがええ。」


 その言葉に甘え、直ぐに部屋へ行く事にした。

 布団を敷き、横になる。やっと休めたよ。

 30分もした時、アブ爺さんが食事が出来たと言いに来る。

 あるもので適当に作った物だから味の保証はせんとか言っていたが、十分美味かった。


 食後部屋に戻ると秒で眠りに就いた。ミルファとルナに挟まれ相当苦しかったと思うんだが、それに気付かないくらい熟睡していたようだ。


 目が覚めたのは夕方だ。

 既に起きていたミルファとルナは黙って寄り添っているだけだった。


「んん。おはよう。二人共ちゃんと寝たか?」


「はい!十分回復したので何時でもダンジョンに行けます。」


「ウチもなのです。早くレベルを上げるのです。」


 元々レベルという概念が無かったのだが、ミルファもルナも今では普通に言ってるようだ。

 鑑定士に鑑定してもらってもLVと表示されレベルとは誰も言わないとか。

 まあ、それはどうでもいいか。


「夕食時に次の出発時間を話そうか。ケント達も含め全員の希望を纏めよう。」


 夕食時にそれを話すと、満場一致でこの後直ぐという事になった。

 信じられない。もう少し休みたかったのオレだけだったのか。


 食後、本当にギルドへやって来た。

 アブ爺さんには、またダンジョンに行くので出てきたらまた泊まりに来ると伝えてきた。

 二つ返事で送り出してくれたよ。


 陽が沈んだ後にダンジョンアタックする冒険者も一定数いるようで、転移陣にはチラホラと人が出入りしているようだった。


「え?シルバーランクのレイジさんですか?いつ戻られていたんですか?ダンジョンからの帰還届けが出されていないようですが……」


 うん。出していない。説明にあったっけ?そうか。ごめんなさい。


「前回が初ダンジョンだったようなので不問としますが、次からは気をつけて下さいね。」


 はい。問題にされずに済んで良かった。帰還届けか……忘れないようにしなければ。


 今回は二度目であり、転移陣も使えるので、20階層まで転移して続きといこう。

 転移し出てきたのは20階層なのだが、小部屋になっていて、下層への階段があるだけだった。

 下っていくと、21階層の通常階段の隣に繋がっていたようだ。そう言えば前回ボス部屋の後下りたらこういう作りになっていたな。


 この時間も10階層へ行く人間が多いのか、このフロアでは冒険者の姿は見当たらない。

 オレにとってのダンジョンは、こうでなければいけないと思っている。

 マップ通りに進みながらも、身体を解す目的も込め魔物を討伐していく。

 まあ、現れるのはバッタやネズミ、ゾンビなどのまだまだ弱い魔物ばかりだ。

 確かに1階層よりは強くなってはいるが、オレは勿論、ブロンズランクであるミルファ達パーティメンバーにとっても余裕のある相手だ。


「20階層を超えてもこの程度か。ダンジョンっていっても大した事ねぇな。」


「ファスエッジダンジョンなら30階層から一気に強くなったな。此処も同じかもよ。」


 ファスエッジダンジョンでは31階層からいきなり魔物が強くなった気がする。

 いや、そのタイミングでジョブに魔法戦士を付け、オレのレベルが下がったのもあるのだが、それを抜きにしても強くなっていただろう。

 此処も同じだったら心構えが必要だからな。今の内に伝えておこう。


 22階層、23階層と問題なく進んでいく。

 此処まで進んできて分かったのは、ボスまでの4フロアでは魔物が殆ど変わらずに、新たな追加魔物がいるかどうかだけのようだ。

 24階層も難なく進んでいき、25階層のボス部屋の前にたどり着いた。

 途中二組の冒険者と出会ったが、それだけだった。それだけにボス部屋の前にも誰もいない。

 すんなりと入っていけた。


 ボスはウインドイーグル。ファスエッジダンジョンでは何処かのフロアに普通に出てきてた魔物だ。


「少しは私にもやらせてください。」


 珍しくミルファが名乗りを上げた。

 鳥系魔物であればミルファの弓であれば絶好の的だろう。

 事実、このウインドイーグルも簡単に倒してしまった。


「ミルファちゃんってどれだけ強いの?元は私のようなヒーラーだったはずよね?」


 メイの疑問も分かる。回復補助、弓術、更には調合による生産と、実はあらゆる分野に精通してる天才、それがミルファなのだ。

 実際調合はオレの方が先に始めたのに断然ミルファの方が実力は上だ。なのでオレはもう調合はしないだろう。


 ドンドン進んでいく。

 26階層からはホブゴブリンやミドルウッドなどの知ってる魔物から、ベビータイガーなど初めて見る魔物まで様々ではあるが、まだまだ余裕で倒していく。


 28階層でちょっとした異変があった。

 マップで見ると右にちょっとした広間に入る入口があるのに実際には壁になっているのだ。

 おかしいと思い手を掛けると、壁が動き出し入口が現れた。


「隠し部屋?宝箱とかあるんじゃね?」


 これはラッキーだと思い中へと入っていく。

 そしてその中には20匹程の魔物が!


「ぐお!マジかよ、マップには魔物の姿は確認出来なかったぞ。」


「噂程度ですが聞いた事があります。此処はモンスターハウス。通称冒険者の墓場と言われる魔物たちがひしめき合う部屋です。

 しかし、見てみるとこのフロアに普通に現れる魔物ばかりだ。恐れる必要もない。寧ろケントやルナのいい練習台になるのではないだろうか。


「よし!ルナとケントで行ってみよう。やばかったらミルファが援護してくれるから気楽に行っていいぞ。」


 最初は何言ってんだコイツ!って顔をしていた二人だが、自らを鍛えるいい機会と判断したのか、その目は直ぐに魔物の方に向いた。


「メイは二人をしっかりサポート。二人に出来なかったらこの先何も出来なくなるからな。」


「……分かりました。任せてください!」


 そう言うと直ぐ二人にガードを掛けておく。

 魔物達はゆっくり近づいてくる。二人は示し合わせたかのように同時に飛び出した。

 装備の差があるからだろう。ルナの方がケントより断然早く攻撃を仕掛ける。

 ミスリルメイスによる打撃は強力で一撃で魔物を潰していく。


 動きが遅いケントも自分から近づくのは遅いが、魔物から来てくれるので、そこまで遅れる事なく魔物に攻撃を仕掛けていく。

 だが、ケントは自分の速度を十分理解して行動している。だからこそ冷静に普段通りの一撃に注力し、攻撃を仕掛けていく。


 それでも20匹からいる魔物の攻撃を捌けるはずもなく、地道ながら攻撃を喰らい傷ついていく。

 それをカバーすべく動くのがメイだ。

 ダメージは少ないが被弾の多いケントと、被弾は少ないがダメージ量の多いルナ。その二人を差別なく均等にサポート出来るかが今回メイの課題だろう。


 ミルファには本当にヤバそうな時だけサポートしてくれと伝えてある。

 その為、未だ弦に指を掛けてはいない。いや、弓を構えてすらいなかった。


 そして、僅か1分で魔物の数は半分の10匹となった。

 この数であればもう余裕だろう。

 その先は被弾する事なく問題なく討伐に成功した。


「くっ……はあ、はあ、はあ……何とか倒したぞ……」


「んっ……ぷはぁ……やったのです。」


 傷はメイに回復して貰ってるので問題ないが、体力の消費が大きいな。

 しかし、メイを含め三人で乗り越えたのは及第点だろう。

 この先へ進んでも問題なくやれる事を証明した事になる。


「お!宝箱発見!」


「「「「え!」」」」


 オレの言葉に全員が一斉に振り返った。


 少し大きめの宝箱。てか、始めて見る宝箱に興奮を隠せないでいる。


「開けていいか?開けるぞ!」


「レ、レイジさん、興奮しすぎです。落ち着きましょう!」


 そして宝箱を開けた……


 中に入っていたのは1本の杖だった。

 鑑定してみると【ヒールロッド】と出る。名称からすると回復特化の杖だということだろうか。

 いずれにしてもメイが使える役立つアイテムが出た事は喜ばしいことだ。


「メイ!お前のだ。」


「え?私ですか?」


「だって杖だぞ?他に誰が使う?有効活用してくれよ。」


「そんな……いえ、はい!分かりました!」


 よし!それじゃあ先へ進むとするか。

 ケントとルナは消耗が激しいから暫くはオレとミルファで対処しよう。


 そこから先は問題なく進み、29階層が終わり30階層へと降りていく。

 そう。ボス部屋の入口である。

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cont_access.php?citi_cont_id=444348564&s
― 新着の感想 ―
[一言] んーと、イメージとしては、市場で流通しているのは五百円玉くらいまでで、千円以上の紙幣は、存在してるだけで殆ど出回らない都市伝説的な通貨ってこと?それと、マジックバッグ。高級品かもだけど、庶民…
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