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第111話 連携

 清恋湖の湖畔周辺でマップを見ると、そこには10箇所以上の魔物の反応が確認出来た。


「結構多いな。片っ端から討伐していって、後で鑑定して確かめた方が早いかもな。」


 現在地から右に4匹、正面に5匹、左に2匹の反応がある。

 メンバーの振り分けだが、先程の戦闘ではルナが大した事出来なかったから、今回はルナに戦わせようか。


「オレとルナで右の4匹を倒してくる。ミルファとケントで左の2匹を頼む。メイはとりあえずケント達に付いて行ってくれ。終わったら合流して正面の5匹を討伐しよう。」


 ミルファとケントは嫌そうな顔をしたが、こればかりは仕方ない。ケントとルナだと前衛同士になるので極力避けたいのだ。

 オレはオールラウンダーだからな。どっちでも出来る。


 オレとルナの向かっていった先にいた魔物はサハギンとアクアスライムが2匹、それと少し離れた所にマッドドックだった。

 アクアスライムは速攻でサンダーを放ち消滅させると、ルナがサハギンに仕掛けていく。

 以前砂浜の洞窟でも討伐してるので、これは余裕で倒した。

 最後のマッドドックだが、オレがタンクとして引きつけ、隙を見てルナに倒してもらう。

 これだけで余裕をもって討伐成功だ。


「こんな簡単なんです?」


「連携したらこんなもんだろ。得手不得手は誰にだってあるだろうしな。」


 基本的にな戦い方は、ロードウインズの頃にやってた事をそのままやってるだけだったりする。

 パーティメンバーの振り分けだったら、ブラッドローズもあまり変わらないと思うのだが。


「ブラッドローズでは、自分が担当する魔物は自分でしっかり倒さなくてはいけないのです。勿論サポートにレイ姉さまかナディ姉さまが付いてくれるけど、倒すのは自分一人なのです。

 それが普通なのです。違うのです?」


「それも一つの考え方じゃないか?新人を育てるのにはそれが効果的だったりするだろうけど、今は皆しっかり出来るだろうからな。

 でも、一人でやりたかったら言ってくれ。それはしっかり考慮するから。」


「分かったのです。レイジくんのやり方は好きなのです。」


 ルナの戦闘スタイルは殴打のみで、相手による使い分けが全く効かない。

 ミスリル製の戦棍を使ってるんだから、魔力を通して属性攻撃でも出来れば、戦闘の幅はかなり広がるはずなんだが。


「ルナは魔法とかどうなんだ?今の戦い方だと絶対限界が来ると思うぞ。」


「獣人は全体的に魔法が苦手なのです。昔、神様によって獣人は魔法を操る力を封じられたと聞いたのです。」


「でも全く使えないわけじゃないんだろう?」


「そうなのですが……うん、レイジくんが使えと言うならやってみるのです。」


「そうだな。先ずは獣騎士(ビーストナイト)になってから考えようか。」


 倒した魔物をアイテムボックスに回収し、先程ミルファ達と別れた地点へ戻っていく。


「あ、来ました!レイジさーん!」


 ミルファ達は既に魔物を倒し終え戻ってきていた。

 2匹とは言え早いな。そんなに弱い魔物だったのだろうか。


「サハギンが2匹だけだよ。ミルファが一人で射ち抜いてオレの出番は無かったわ。」


 多分ミルファの嫌がらせだな。困ったもんだ。

 てか、メイの出番も無かったって事だな。


「よし!じゃあ次は正面に2匹の魔物だ。状況を見てそのまま奥の3匹もやって構わない。

 ただ、見た時にヤバそうなヤツだったら直ぐ止めるからな。」


 4人は頷くと、正面に向かって歩を進めていく。

 200メートル程進んだ先に2匹のキラークラブだ。ブロンズランク推奨の魔物で、4人で戦うには丁度いい相手だろう。


 ルナとケントが同時にキラークラブへ襲いかかる。


「メイさんケントにガードを!ルナには私が掛けます。」


 メイはミルファの声に即座に反応し、ガードを唱えた。

 ルナとケントにガードが掛けられ、二人は其々別の個体を相手する。


 ルナはキラークラブの攻撃を掻い潜り懐へ潜り込むと、腹を目掛けて連続で殴打を入れる。

 結構危険な行為だが、効果は抜群だ。


 ケントは攻撃してくる鋏をいなしながら、ピンポイントで関節だけを狙い続けている。

 その3回目の攻撃で、キラークラブの鋏がポロリと落ちていった。

 すかさずもう一方の鋏で攻撃してくるが、それはミルファの放った矢で阻まれる。

 横から関節を狙う事で、鋏だけ麻痺状態になったのだろう。完全に鋏の動きが止まっている。


「ミルファの援護ってのが気に入らねぇけど、ナイスアシストだわ。」


 ケントが懐に入り込み口を目掛けて連撃を入れる。

 結局は圧勝。一切のダメージを受けず、ケントはキラークラブを倒した。


 ルナは、腹に連続で殴打を浴び怒り狂うキラークラブの攻撃を喰らい、派手に吹き飛ばされていた。

 勿論武器で受けていた為ダメージは軽減されているが、低レベルになっているルナにはキツいはずだ。


「けほっ、負けないのです。」


 再度走り出し、キラークラブに詰め寄っていく。

 そんなルナに対し、未だ怒りの収まっていないキラークラブの全力攻撃が襲いかかる。


「させないよ。」


 それを援護したのはミルファだった。

 ケントの援護をした直後、直ぐに此方に目を向け、ルナの援護として矢を放っていた。

 それがキラークラブの口に刺さったのだ。

 キラークラブはのたうち回り、泡を吹いている。


「流石ミルファちゃんなのです。これでも喰らうのです。」


 ルナはミスリルメイスを大きく振りかぶり、回転しながら全力で目の間を殴りつけた。

 目と口の間にある触覚を全て潰されたキラークラブは、そのまま倒れ込んでいく。

 完全に死んでいるようだ。


「やったのです。レイジくん、見てくれたので……す?あれ、レイジくんがいないのです。」


「お!終わってるな。皆ナイスだ。」


 オレは一人その場を離れ、残りの3匹を討伐してきてたのだ。

 状況をみて奥の3匹もとは言ったが、オレが待てなかった。


「この辺の魔物はこれで全部だ。街の西側に移動しよう。」


 ルナにはオレがヒールを掛け、移動を始める。

 オレがヒールをかけた理由は、単純にスキルレベルを上げれるチャンスを使いたかったから。勿論ルナの頑張りを褒めるのも理由の一つだ。

 勿論キラークラブは回収してある。売っても食料でもどっちでも使いようはあるからな。


 此処はヒルゼストの裏になる為、街からは死角になっている。誰にも見られる心配が無いので、シームルグで移動しよう。

 超低空飛行で飛び、僅か1分で街の西側に着いた。とは言っても少し離れた誰にも見られない場所に降りてるけど。


 此処でマップを使うと此方の畑には人が確認出来ない。代わりに畑の場所に魔物が数体いるようだ。


「畑に魔物だ。急ぐぞ。」


 ケントとルナは相当疲れているな。少し休ませないとマズイか。


「ケントとルナは一旦休んでろ。ミルファとメイは援護頼む。」


「「はい!」」


 畑の中に確認出来た魔物はオオダンゴムシと人食いイナゴが2匹ずつ、それとゴブリンが5匹。

 結構数が多いが、魔物自体はアイアン・コモンクラスなので心配は要らない。

 ついでだから少し実験をしてみようか。


「ミルファ、手を出して。」


 出されたミルファの手を取り前に掲げる。


「オレと同時に風魔法だ。いいか。せーのっ……」


「「ウインド!」」


 二つのウインドは共に絡み合い、螺旋を描きながら飛んでいく。魔物付近に到達する際には、一つの小さな竜巻になっていた。


「うお!すっげっ!」


 竜巻は魔物たちを巻き上げ、全9匹の魔物は全て絶命していた。

 但し、その被害は魔物だけでは済まされず、竜巻の通った軌道上にあった畑の作物は全て粉々になってしまっていた。



「レイジさん……これ、どうしましょうか……」


「やべぇ……やっちまった……」


 魔物がいなくなり、やってきた農家の方々にはちゃんと謝罪をしたところ、魔物が闊歩してるより被害は少ないから問題ないと言ってくれた。

 それでも被害が小さく、多少の傷だけで済んでいる作物にはヒールを掛け、元気な状態にしておく。


「へー、ヒールをそんな使い方するのは初めて見たな。今度ギルドに相談してみるか。」


 なんて、農家の人は植物を元気にさせるやり方に驚いていたな。


「ホントに申し訳ありませんでした。」


 最後にもう一度謝ってから、残っている街道の北へと向かった。

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