第11話 デート?
今回は閑話みたいな回です。
飛ばしても良かったのですが、1日飛ばすのも癪だったので何気ない1日を書いてみました。
朝、いつものように目が覚めるとゆっくりと身体を動かす。
うん、大丈夫だ。昨日、レッドウルフに襲われ大怪我を負ってしまった。たまたま通った冒険者に助けられ九死に一生を得たのだ。
回復魔法で傷は塞がったのだが、失った血液は戻らないみたいなので今日一日は大人しくしてなきゃいけないらしい。
そうだ!二度寝をしよう!再びベッドに潜り眠りについた。
再度目覚めた時には既に太陽が真上近くまで昇っていた。
かなりお腹が空いているので、早めに着替え食堂へ向かった。
「あ、おはようございます。今日は随分と遅い起床ですね。もう余り物しかありませんが、只今用意させていただきますね。」
フランスパンのようなハード系のパンと野菜炒め、具の入っていないスープを食べ、一旦部屋へと戻る。
アイテムボックスから鎧を出しその腹部を眺める。
昨日レッドウルフによって噛まれた部位が大きく抉れている。
今日はコレを直しに行き、小手辺りを買おうかな。
革の鎧を鞄に入れ、防具屋へ向かうべく部屋を出た。
ロビーを抜け外へ出ると見慣れた女の子がこちらに気付いた。
「あ、こんにちは!これからお出かけですか?冒険者さんとしては結構遅い時間だと思いますが。」
この子はこの宿で働いている子だ。名前は知らない。
「今日は防具の修理にね。あと、こういう出歩く時の服もこれ一着しかないから買いに行こうかと思ってるんだ。」
そう、こちらの世界に来た時に着ていた服だけしか持ってないのだ。
下着等は辺境伯から貰ったのだが…。
「そうなんですか?あ、良かったらお付き合い致しましょうか?防具は分かりませんが、お洒落な服を売ってるお店でしたらいいお店を知ってますよ。」
「うーん、それってデートのお誘いかなー?」
見た目的にはまだ十代前半くらいの子だ。オレからしてみたらまだまだ子供だ。茶化すように聞いてみる。
「あははっ、違いますよー。今日は夜まで空きなので丁度暇を持て余してたんですよ。お客さんのご案内も私の仕事ですし。」
うん、しっかりした子だ。じゃあお言葉に甘えるとするか。
「じゃあお願いしようかな?まずは防具屋に行って修理に出すから、直して貰ってる間にそのお店に案内して貰える?」
「ふふっ、わかりました。任せてください。」
「えっと、キミのお名前は?」
「あ!申し遅れました。私、デュティと申します。よろしくお願いしますね、レイジさん。」
オレは子供の割には随分としっかりした自己紹介をするものだと関心してしまっていた。
防具屋はギルドの隣なのでここからは直ぐだ。
防具屋に着き、修理して貰う革の鎧を出す。それを見た店員は驚愕していた。
「何だこの壊れ方は?どうやったらこうなるんだよ?」
それはそうだ。レッドウルフによって鎧ごとオレの腹を抉りとったのだから。
「いや、ちょっと強い魔物に遭遇しちゃって……まあ何とか生きて帰って来れましたから。」
「鎧がこうなって生還ってありえないだろ!って、今こうして此処にいるんだからそうなんだろうけどな。」
暫くその鎧を眺めてその後ゆっくり立ち上がる。
「わかった。今日中には無理だが、明日の朝までに直してやる。銀貨一枚で後払いになるけどそれでいいか?」
「問題ない。あとこの革の小手貰えるか。」
「それは一万二千Gだな。その分は今支払って貰っていいか。」
料金を支払い明日の朝来る旨を伝えて店を後にした。
この後はデュディに服飾店へ案内してもらう。断じてデートではない。まだ中学に上がるかどうかくらいの子供を相手にするような幼女嗜好は持ち合わせてないのだから。
いや、この年に幼女は失礼か、少女嗜好と言っておこう。
冒険者の集まるこの一角とは別の商店街。ここには青果店や精肉店などの食を扱う店から、生地屋・古着屋から既製服専門店に日用雑貨店など様々な店が並ぶ。
このショッピングストリートはその規模だけでいえば、王都のそれを上回る。だからこそ、この街には商人が集まり、その護衛として冒険者も集まってくる。
今度はその冒険者が素材を集めてきて、商人がそれを買い取り他の街へ持っていく。
加工された商品を持ってまた商人が戻ってくる。
基本的にはそのサイクルでこの街は成り立っているのだ。
そんな商店街に来たオレは全てを物珍しそうに見ながら歩いている。
「どうです?凄い賑わいですよね。この商店街こそがこの街の最大の魅力なんです。お給料が入ったらここでお買い物するのが私達の楽しみなんです。」
デュディは目を輝かせながら説明している。どこの世界でも女の子は同じみたいだ。
「あ、オススメのお店はここです。探せば結構掘り出し物も見つかるんですよ。」
そこは大型の古着店だ。しかし現代日本に比べて衛生面に乏しいこの世界の古着とはどうにも受け付けない。
「うーん、古着か。新品のはないの?」
「ありますけど、高いですよ。一枚で銀貨一枚しますから。」
銀貨一枚だと1万Gだ。別に普通だと思う。
「そこに連れてって貰える?」
「はい、分かりました。こっちです。」
そこから少し小洒落た雰囲気の店が立ち並ぶエリアへ着き、一軒の店へ入る。
「この店がオススメです。値段も安めなのにお洒落な服が多いんですよ。」
商品を見ていくと、確かにいい商品が並んでる。元々はお洒落にはそこそこ気を使っていた。まあ、その理由はモテたいからってだけだったんだが。
そして、今街を歩いて見た限りだと、間違いなくこの店の服はセンスがある。
「これはいいな。」と服を手に取る。サイズ表記は無いので身体に当ててみる。
そうやって上下二枚ずつ選んだ。
「デュティも一枚選びなよ。」
「え?」
狐につままれたような顔をし呆然としている。そういう目的があって連れてきたんじゃないのか?
「いやいや、何言ってるんですか。こんな高い店の服、そんな訳にはいきませんよ。」
まあ、確かに高いがあくまでお礼だ。特に気にしたものでもない。
「今日のお礼だよ。気にせず選びな。でなかったらオレが勝手に選ぶぞ。趣味じゃないのになってもいいのか?」
「ええー!いや、うぅー、選びます。ま、待ってください。」
デュティは頭を掻き毟り少し混乱気味になりながらも慌てて選びにいった。
そんな姿に「こいつ可愛いな」なんて思いながらうっすら笑みを浮かべながら眺めていた。
いや、それでも少女嗜好ではないのだが。至ってノーマルです。
「あの、ありがとうございます。私ときた所為で余計なお金使わせちゃったみたいで…、その、ごめんなさい。」
「なんで?案内してくれたじゃん。てか、オレ一人でこの商店街から店探し出すの無理だったし。」
「でも、まさかこんな……えーと……」
「気にするな。その分残りの泊まってる間サービスしてくれればいいから。」
そう言うと、顔を赤らめ俯いて黙ってしまった。
何か変なこと言ったかと思い、考える。しまった!そういうサービスではない。
「いやいや、そういうサービスじゃなくて、いたって普通のおもてなしっていうか、な?今まで通りいい対応してくれってことだから。」
もうオレも慌てて何言ってるのか分からない。全然動揺を隠せていない。
そんな慌てようを見てデュティはクスクスと笑い、
「そんなに慌てなくてもわかってますよー。あの、ありがとうございます。これ、大事にしますね。」
最高の笑顔でデュティは礼をした。
うーん、オレはロリコンじゃない。でも可愛い。しかし……待てよ、オレは今17なんだから五つくらいしか違わないのか?じゃあセーフじゃね?
そんなことを考えたが、17歳の高校生が小六、もしくは中一に好意を抱くのは少しヤバい気がした。
無い無い。自分に言い聞かせ帰路に着いた。
夕方、食楽亭へ戻るなり直ぐに働き始めたデュティを見て、オレも頑張らなきゃな。と気合を入れ直し、部屋へと戻った。
明日からはゴールドランク「ロードウインズ」の一員だ。足を引っ張らないようにしないと。
昨日のPVが前日より倍近くになってました。
ありがとうございます。
これからも読んでいただけるように頑張りますね。