第104話 獅子の咆哮亭、その料理
本日2話目です。
オレたちが泊まる部屋は思ってた以上に広い部屋だ。
食楽亭に三人で泊まった事があったが、その時より遥かに広い。
元の世界で温泉ホテルに泊まった時の部屋と同じくらいはある。
この広さで和室だったら、布団を敷いて三人で寝たらゆっくり出来るのに、勿体無いな。
部屋に入る前にケントたちの荷物は渡してきたので、食事まではゆっくり出来るだろう。
「ぷはーーっ、疲れたなー。」
ベッドに飛び込むように横になり、その寝心地を確かめる。
マットレスみたいなものは使われてはいないが、布団の質は結構良さそうだ。
いや、ファスエッジダンジョンで使ってたヤツ程ではないけどな。あれはオレの想像から出来ている。 その為現代のそこそこいいマットレス仕様になってるので、この世界にはあれ以上は存在しないだろう。
「心地いいなー。あ!そうだ。ルナ、ちょっとこっち来てくれ。」
丁度いい機会だ。今まで我慢してきたのだ。これまでの分も十分堪能させてもらうとしよう。
「こっちに座ってくれ。いいか?」
俺の手がルナに伸びる。
そしてそのままルナに触れた。
「え?ちょっ、レイジくん……そこ、あ……」
優しく揉んだりつまんでみたりと色々と弄ってみる。
思ったとおり最高だ。ルナのイヌミミは。
ずっとこうしたかったのだ。モフ耳最高だな。
「レイジさん?なんか触り方がいやらしいですよ。」
「ミルファも触ってみ。」
「え?え?ミルファちゃんもです?ちょっとまっ……や、んん~。」
ミルファがルナの耳に触れると、ルナの声はより一層色っぽくなった。
「ルナちゃん……これ……いい。気持ちいい。」
ミルファもこの素晴らしさに気付いたようだ。
ただ、これはあまり人前では出来ないな。ちょっと卑猥すぎる。
「酷いのです。ちゃんと言ってからして欲しかったのです。」
「ごめんごめん。ずっと触りたかったの我慢してたから、欲求が爆発しちゃったわ。」
「最初にルナちゃんを見かけた時からレイジさんは言ってましたよね?気持ちが分かりました。」
「ウチには分からないのです……うう……」
ルナは嫌だったのだろうか。だとしたら悪い事をしたな。
「ルナ、嫌だったか?ごめんな。」
「嫌じゃないのです。ただ変な声が出てたから恥ずかしかったのです。」
嫌がってた訳じゃなくてよかった。まあ、確かに恥ずかしいよな。
声だけだったらちょっとエロかったし。
三人だけの時間を十分堪能し、日が暮れ夕食の時間となった。
「レイジ!いるかー?飯にしようぜー。」
ケントが呼びに来てくれたようだ。
ずっとモフってた訳じゃない。いや、イチャついてたのは間違いないが。
一階食堂は思ってたよりは混んではいなかった。
オレの想像では食楽亭のような大混雑を思い描いていたから。
実際は適度な客入りで丁度いいくらいだろう。
そして此処の食事にオレたちは驚愕した。
メニューのオススメを頼んだのだが、肉も魚もスープも真っ赤なのだ。
そう、此処ヘルゼストの名産品は唐辛子だった。
基本、どの料理にも唐辛子が使われており、この店はその中でも最高の辛さを誇っている事で有名だとか。
恐る恐る一口食べてみる。……美味い。…………うわっ、辛っ!
最初に旨みが広がり、その後に最強の辛さが襲ってくる。
辛味は味覚ではなく痛覚で感じ取るって話だったはずだ。それならヒールで和らぐのではないだろうか。
「ヒール」
おお!口の中から辛さが消えた。魔力は消費するけど、美味しく食べる事が出来るな。
オレのそんな食べ方を見て、ミルファとメイも真似をし出す。
「あ!これなら美味しく頂けます。」
「だろ!ルナにも掛けるか?」
「お願いするのです。口の中が痛くて感覚が無いのです。」
ルナにもヒールを掛け、辛味という名の痛みを緩和させながら、美味しく頂く事が出来た。
ただ一人、ケントだけはヒールを拒み続け、そのまま食べ続けた。
汗が半端ないくらいに溢れ出し、顔も真っ赤だ。
そのまま完食し、食べ終わって初めてメイにヒールを掛けてもらっていた。
いやー、男見せたな。オレには無理だわ。
「アンタたち、変わった食べ方してたね。見てて面白かったよ。」
話しかけてきたのは恰幅のいいおばちゃんだ。
見るからに人の良さそうな雰囲気を醸し出している。
「ははっ、作ってくださったシェフには少し悪い気はするんですけど、そのままは無理そうなんで。」
「いいって、いいって。この街の人だって無理なものは無理なんだ。全部食べてもらえたら御の字だよ。ねえ、アンタ。」
おばちゃんがそう話を振ったのは、その後ろにいた背の低いおじさんだ。
「そうだね。宿泊客は大概の人が残していくからね。どんな方法でも全部食べてもらえるのはありがたい事だよ。」
「もしかして、シェフの方ですか?」
「ああ、申し送れたね。此処のコック長をしているエルニエルと申します。
こちらが此処のオーナーのマーサです。」
「いやね、若い子が五人宿泊してると聞いてちょっと見に来たら、この食堂の中でもとびきり辛いのを注文してるんだもの。
大丈夫かと思って見てたら、全部食べちまうんだ。ホントに驚いたよ。」
て事は、普通のメニューもあったのか。オススメは当てにならないな。
「兄さんがたはアレだろう。冒険者だろう?この街には立ち寄っただけかい?」
「はい、そうですね。ライトレイクを目指してたんですけど、急ぐ事も無いので立ち寄ったんです。」
「へー。じゃあ冒険者ギルドでひと仕事していくのかい?」
「ええ。明日からやる事が決まってます。」
「もしかしてアレかい?子供たちの……」
まさか此処でその話が出るとは思わなかった。
「知ってるんですか!」
「あ、ああ。エルニエル、話しちゃっていいよね。」
「いいだろう。この方々は捜索の手伝いをしてくれるんだよ。我々の話が役に立つならいくらでも話そう。」
エルニエルの話では、この店の副料理長の娘もその被害者らしい。
娘が行方不明になった副料理長は現在仕事も休んでいて、家で塞ぎ込んでるようだ。
いなくなった当日、その子は街の最東端、外壁近くで遊んでいたそうだ。
一緒に遊んでいた友人の話では、その時追いかけっこをしていたらしく、被害者の子は逃げる役だったとの事。
路地を曲がり草むらに入るとそのままいなくなってしまったようだ。
「それはおかしいな。その周辺に何かありそうだ。」
「捜索してくれている兵隊さんや冒険者の方もそこは探してくれたのですが、何も発見できなかったそうで……」
「ではオレたちも明日はその周辺から調べてみます。お話、ありがとうございます。」
「こちらこそ。お願いだよ。あの子を……イオナをどうか探し出しておくれ。」
ここまでお願いされたらしっかり探し出さないとな。
全員やる気に満ちた目になっている。いっちょ頑張るか!
明日は明るくなったら即行動開始するという事で、ケントと話をつけ部屋へと別れた。
部屋に戻ったオレは少し考え込んでいた。
「レイジさん、どうかしたんですか?」
「ん?いや、ちょっとスキルの事でな。」
「何かあるんですか?」
そんな考え込んでるオレにミルファは抱きついてくる。
嬉しいんだけど集中出来ないな。
「マップのスキルなんだけど、レベル7まで上げたら現在地エリアにいる人物が表示されるようになるんだ。これを使えばどうかと思ってるんだけど……」
「凄いじゃないですか!それを使えば簡単に発見出来るんじゃないですか?」
「もし居るならな。現在いるエリアっていうのがどこまでを指してるのかも分からないし、抑も今のスキルレベルは5なんだ。スキルポイントを600使わなくちゃいけない。それで悩んでるんだよ。」
「難しいですね。レイジさんのスキルポイントは、然るべき時の為に取っておきたいですもんね。」
「先ずは明日、普通に探してみて、それからかな。」
「ん~。よく分からないのです。」
「あ、そうか。ルナにはまだ全部は話していなかったな。」
この後、ルナにもオレの持つユニークスキルとそれ以外の能力も全て教えた。
その反応は他の人たちと一緒で、唯一の違いはオレを見る目がハートになってた事くらいだ。
お陰でこの後ルナに言い寄られ、それにヤキモチを妬いたミルファも言い寄ってきたのだが、久々に見張りをする事もなくゆっくり休めるので、今日は二人を落ち着かせ眠りに就いた。
ユニークPVが2万人達成目前でした。
初期から読んでくださってる方も、最近読み始めた方も、皆様ありがとうございます。
2章に入り数話、まだまだ先は長そうですが、これからも宜しくお願いします。