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閑話  その時メイは 

 私の名前はメイ。今回レイジさんの旅にパーティとして同行させて頂く事になりました。

 しかし私は、元々そんなつもりは毛頭ありませんでした。

 今回このようになった切欠は、恋人であるケントがレイジさんの旅にに誘われた事です。

 しかし、ケントはレイジさんについて行きたい気持ちを押し殺して、私と共に居てくれる事を選んだんです。

 私がそれを知ったのは、このパーティメンバーでお買い物に行った時でした。



「ねえ、メイさん。ケントから聞いてますか?」


「ケントから?何をですか?」


「レイジさんはあと数日で旅に出るんですよ。勿論私とルナはそれについて行きます。

 それで、レイジさんはケントの事も誘ったんですけど、断られたんですよね。必要としてくれてる人がいるから無理だって。

 それってメイさんの事ですよね?だとしたら、メイさんも一緒に来たら万時解決だと思うんですよ。」


 ケントが?あの子がそこまで私を想ってくれてるなんて思いもしなかった。

 だって、私はケントが命を落とさないように、嫌われるのを覚悟でかなり過保護にしてきたんだから。

 普段は慕ってくれてるけど、陰では口煩いおばさんと言われても仕方ないくらいにね。

 そんなケントが、私を想ってレイジさんの誘いを断ったなんて、嬉しくてこの場で叫びたくなっちゃうわ。

 でもその反面、私がケントを縛り付けてる事に胸が痛んだ。

 私のせいで、あの子が成長出来るチャンスを逃す事になると考えたら、それだけで気が狂いそう。


 その旅に付いて行ったら、それだけで死ぬリスクは高いと思うわ。

 でも、ケントの夢は強い冒険者になって世界を巡り、その冒険譚を次の子供たちに伝える事。あの時のあの人のように。

 これはその夢を叶える第一歩なのよね。


 この日の帰宅後、私はケントにその話をした。


「ケント、レイジさんの旅に誘われてるって?」


「まあな。でも俺は行かないぜ。メイさんを残しては行けないしな。それにそんな危険な旅なんて、メイさんに怒られるし。」


 そう言うケントの笑顔は作り笑いだってハッキリ分かるものだった。

 やっぱり私が足枷になってるんだ。

 私が今まで、危険な事をするなって言い続けたのも原因の一つだってハッキリ分かった。

 じゃあどうすればいいのだろう。

 行っていいよって言えばいい?ううん、多分それでもケントは行かないと思う。

 ミルファちゃんはあの時なんて言ったっけ。私が一緒に行けば……私がケントと一緒に行く?

 そんな事許されるのかな。でもそうすればケントは夢に一歩近づくんだ。


「じゃあ、私も一緒に行くって言ったら?そしたらケントはレイジさんについて行く?」


「何言ってるんだ?そりゃあ、メイさんがいるなら俺はどこでも行くけど、でも孤児院の仕事だってあるだろ?そんな事は出来ないだろ。」


 このケントの一言で私は決心した。私は何があってもケントを支えていくんだと。

 

 次の日孤児院に行った私は、マザーサリサに孤児院でのシスターを辞める旨を伝えた。

 多分ケントとの事も伝えなくてはいけないだろう。そうしたら破門で二度とシスターには戻れない。

 修道女(シスター)のジョブを変える事になったら、神官として出直すしかないかな?

 そんな事を考えていたが、マザーサリサはあっさりと認めてくれた。

 そして意外な言葉を口にしたんだ。


「メイ、貴方があの子達を支えてあげてくださいね。頼みましたよ。」


 マザーサリサは全て知っていたのかもしれない。知っていながらずっと黙って見守ってくれていたのかな。

 それを確認する勇気が私にはない。

 私もこの孤児院で育ったマザーの子、親であるマザーには全て筒抜けだったという事だろうね。

 でも、それを知っていながら何のペナルティもないのはおかしい。


「マザー、あの……私の罰は……?」


「ただ辞めるだけの貴方に何故罰を?何も悪いことはしてないのでしょう?それよりも今日まではしっかり働いてもらわないと。不足備品を倉庫から持って来てください。」


「は、はい。」


 結局私はマザーサリサの優しさに甘え、そのまま辞める事になった。

 マザーサリサには大いに感謝しなくては。


 ケントの家に帰り、同じように帰ってきたケントに孤児院を辞めてきた事を伝えたわ。


「マジかよ!何考えてるんだよ!そんな事されたって俺は行かねぇぞ。」


「じゃあ、私が行くわ。それでもケントは残る?」


「何だよそれ……危険な旅なんて止めろって。前からそう言ってたのはメイさんだろ。

 今更何なんだよ……」


「ごめんね。でも、ケントが世界中を旅する夢を今でも持ってるのは分かってるから。

 だから私はそんなケントをサポートするって決めたの。一緒に行こう。ねっ。」


「……あんだけカッコつけて断ったのに、やっぱり行きますってカッコ悪ぃな。」


「私から見たケントはカッコイイよ。」


「メイさん、ありがとう。」


 この後の出来事は秘密だけど、こうして私とケントはレイジさんに付いていく事を決めたわ。

 急遽決めたけど、元々行くつもりがなかったので、全く準備が出来てなかったから翌日は準備に大忙しだった。

 足りない物を買い足して、家の片付けもして。

 次の日の朝には出発だからね。一日で全ての準備を終わらせたわ。


 そして出発当日。

 陽が昇る前から行動を始めていた。

 全ての準備を終えると、ケントはマッドネスサイスのメンバーにパーティ脱退の申し入れに向かった。

 そこでもあっさりと脱退を認められたみたい。

 実は新リーダーのダニエルさんも、レイジさんにケントを連れて行くようにお願いしてたらしいわ。

 ただ、条件があって、行く前にパウロさんに報告する事。それだけは絶対に忘れるなって。

 でもそれは大丈夫!その為にこんな早くから準備を初めたんだから。

 選別にって一本の槍を頂いたみたい。これからケントは槍に持ち替えるのかな?


 パウロさんのお墓で今回旅に出る事を伝え、暫く来れない事を謝罪してたわ。

 パウロさん、どうかケントを見守っていてください。


 出発は冒険者ギルド。

 ケントはマッドネスサイスのメンバーとの別れは済ましてあるし、急に行くなんて恥ずかしかったんでしょうね。

 ギルドの皆の前だと恥ずかしくて、街門の前で待つ事にしたの。

 そして皆に合流出来たのよ。


 皆は年も近いし、何度かパーティを組んでたから連携も取れてるんだろうけど、私ははっきり言って部外者みたいな感じだ。

 それでも一生懸命頑張るので、これから宜しくお願いします。

夜には第1章登場人物の紹介をアップします。

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